デザイナーズ賃貸オフィスの探し方!メリットと東京のおすすめ物件

デザイナーズ賃貸オフィスの探し方!、メリットと東京のおすすめ物件

企業の「顔」とも言えるオフィスは、単なる執務スペース以上の意味を持つようになりました。特に、デザイン性に優れた「デザイナーズオフィス」は、企業のブランドイメージを向上させ、優秀な人材を惹きつけ、社員の創造性を刺激する重要な経営資源として注目されています。しかし、その魅力的な響きの裏で「賃料が高そう」「物件探しが難しそう」といった不安を感じる方も少なくないでしょう。

この記事では、デザイナーズオフィスの基礎知識から、具体的なメリット・デメリット、そして失敗しないための探し方・選び方のステップまでを網羅的に解説します。さらに、東京主要エリアの賃料相場や、具体的なおすすめ物件も紹介し、貴社に最適なオフィス移転を実現するための実践的な情報を提供します。

デザイナーズオフィスとは?

デザイナーズオフィスとは、建築家やデザイナーがコンセプトを持って内装デザインを手がけた、意匠性の高いオフィスの総称です。一般的なオフィスが機能性を重視した画一的な空間であるのに対し、デザイナーズオフィスは企業の理念やブランドイメージを空間全体で表現することを目的としています。コンクリート打ちっぱなしの壁、無垢材のフローリング、開放的なガラス張りの会議室、カフェのようなリラックススペースなど、そのデザインは多岐にわたります。近年では、単に見た目が美しいだけでなく、社員の働きやすさやコミュニケーションの活性化を促す機能的な設計が施された物件が増えています。

一般的なオフィスとの違い

デザイナーズオフィスと一般的なオフィスは、具体的に何が違うのでしょうか。デザイン性はもちろんのこと、コストのかかり方や入居までのプロセスにも大きな違いがあります。自社の目的や予算に合ったオフィスを選ぶためには、これらの違いを正しく理解することが不可欠です。

比較項目 デザイナーズオフィス 一般的なオフィス(スケルトン/標準仕様)
デザイン性 非常に高い。 独自のコンセプトに基づき、細部までこだわった空間。 標準的。 白い壁紙、OAフロアなど、機能性を重視したシンプルな内装。
初期費用 比較的低い傾向。 内装や什器が備え付けの場合、工事費や購入費を削減できる。 高額になる傾向。 内装工事費、什器購入費、デザイン設計費などが別途必要。
入居までの期間 短い。 内装完成済みのため、契約後すぐに入居可能な場合が多い。 長い。 設計から工事完了まで数ヶ月を要することが一般的。
レイアウトの自由度 やや低い場合がある。 完成されたデザインのため、大幅な変更は難しい。 非常に高い。 何もない状態から自由に設計・レイアウトできる。
ブランディング効果 非常に高い。 オフィスそのものが企業の「顔」となり、内外にアピールできる。 限定的。 内装デザインに多額の投資をしない限り、差別化は難しい。
月額賃料 やや高い傾向。 デザインや内装の付加価値が賃料に反映される。 比較的安い。 内装費用が含まれていない分、賃料は抑えられる。

一般的なオフィスは、床・壁・天井が最低限の仕上げのみ施された「スケルトン」状態か、あるいは白い壁紙やタイルカーペット、空調などが設置された「標準仕様」の状態で引き渡されます。どちらの場合も、そこから自社のオフィスとして機能させるためには、内装デザインの設計、工事業者の選定、工事の実施、デスクや椅子といった什器の選定・購入といった多くのステップを踏む必要があります。これには、多額の初期費用(内装工事費は坪単価10万円~30万円以上かかることも珍しくありません)と、数ヶ月にわたる時間、そしてプロジェクトを管理する人的リソースが求められます。レイアウトの自由度が高いというメリットはありますが、企業にとっては大きな負担となり得ます。

一方、デザイナーズオフィス、特に後述する「セットアップオフィス」は、これらの内装や什ICC器が既に設置された状態で貸し出されます。そのため、内装工事に伴う莫大な初期投資や、煩雑なプロジェクト管理の手間を大幅に削減できるのが最大の魅力です。月々の賃料は一般的なオフィスに比べて割高になる傾向がありますが、退去時の原状回復費用が通常の内装工事に比べて安価に済むケースも多く、移転にかかるトータルコストと時間的価値を考慮すると、結果的にコストパフォーマンスが高い選択肢となることも少なくありません。

まとめると、ゼロから自社の理想の空間を追求したい企業には自由度の高い一般的なオフィスが、コストと手間を抑えつつ、デザイン性の高いオフィスで企業の魅力を高めたい企業にはデザイナーズオフィスが適していると言えるでしょう。

デザイナーズオフィスの種類

一口にデザイナーズオフィスと言っても、その成り立ちや提供形態によっていくつかの種類に分類されます。代表的なものとして「フルリノベーションオフィス」と「セットアップオフィス」が挙げられます。それぞれの特徴を理解し、自社のニーズに合ったタイプを選びましょう。

フルリノベーションオフィス

フルリノベーションオフィスとは、既存のビルを一棟まるごと、あるいはワンフロア全体を、特定のコンセプトに基づいて大規模に改修(リノベーション)したオフィスを指します。元々倉庫や工場だった建物をコンバージョン(用途転換)して、天井高のある開放的な空間に生まれ変わらせるようなケースもこれに含まれます。

このタイプの特徴は、共用部に強いこだわりが見られる点です。例えば、ホテルのロビーのような豪華なエントランスラウンジ、入居者なら誰でも利用できる貸し会議室、フィットネスジム、ルーフトップテラスなどが付帯している物件も少なくありません。専有部(自社が借りるスペース)だけでなく、ビル全体で統一された世界観が構築されており、そのビルに入居していること自体が企業のステータスとなります。

デザインの自由度は物件によりますが、専有部はスケルトン渡しで、共用部のデザインコンセプトに合わせてテナントが内装を自由に作り込むケースや、あらかじめ作り込まれた内装の区画を借りるケースがあります。他社とは一線を画す、強力なブランドイメージを構築したい企業や、クリエイティブな発想を刺激する非日常的な空間を求める企業に向いています。

セットアップオフィス

セットアップオフィスは、あらかじめ貸主側(ビルのオーナー)が内装デザインから施工までを行い、デスク、椅子、キャビネットといった什器や、会議室、受付などを設置した状態で提供されるオフィスのことです。入居する企業は、PCや複合機などを持ち込むだけで、すぐに業務を開始できます。

最大のメリットは、前述の通り初期費用と入居までの時間を大幅に削減できる点です。通常であれば数百万円から数千万円かかることもある内装工事費や什器購入費が不要となり、資金を事業投資に集中させることができます。また、移転計画から入居までの期間も最短で数週間から1ヶ月程度と、スピーディーな移転が可能です。

一方で、デザインやレイアウトは既に完成されているため、企業の独自のカラーを強く打ち出したり、特殊なレイアウトを組んだりする自由度は低いという側面もあります。しかし、近年では多様な働き方に対応できるよう、複数のデザインテイストを用意したり、可動式の間仕切りを採用したりと、柔軟性を高めた物件も増えています。

急成長中のスタートアップ企業、プロジェクト単位でオフィスが必要な企業、支社や営業所の迅速な立ち上げを目指す企業など、スピード感とコスト効率を重視する企業にとって、非常に合理的な選択肢と言えるでしょう。

デザイナーズオフィスを借りる5つのメリット

企業のブランディングにつながる、採用活動で有利になる、社員のモチベーションや生産性が向上する、社内コミュニケーションが活性化する、移転コストや手間を削減できる場合がある

デザイン性の高いオフィスを選ぶことは、単なる見栄えの問題ではありません。企業の成長を多角的に後押しする、戦略的な投資です。ここでは、デザイナーズオフィスがもたらす5つの具体的なメリットについて、その理由とともに深く掘り下げていきます。

① 企業のブランディングにつながる

オフィスは、訪れる顧客や取引先、パートナー企業にとって、企業の理念や文化を体感する最初の接点となります。洗練されたデザインのオフィスは、言葉で説明する以上に雄弁に企業の価値観を伝え、ポジティブな第一印象を与えます。例えば、開放的で風通しの良いデザインは「透明性の高い企業文化」を、自然素材を多用した温かみのある空間は「人を大切にする姿勢」を、先進的なテクノロジーを駆使した空間は「革新性や将来性」を、それぞれ来訪者に感じさせることができるでしょう。

これは、対外的な信頼性の向上に直結します。商談や打ち合わせで訪れたクライアントが、「こんな素敵なオフィスで働いている会社なら、きっと仕事も丁寧でクリエイティブだろう」と感じれば、ビジネスが有利に進む可能性が高まります。オフィス空間そのものが、企業の「サイレントセールスマン」として機能するのです。

さらに、オフィスの写真は、ウェブサイト、会社案内、SNS、プレスリリースなど、あらゆる広報物で活用できる強力なコンテンツとなります。美しいオフィスのビジュアルは、企業の魅力を直感的に伝え、他社との差別化を図る上で大きな武器となります。企業のアイデンティティを体現したオフィスは、一貫性のある強力なコーポレートブランドを構築するための重要な基盤となるのです。

② 採用活動で有利になる

現代の求職者、特に優秀な若手人材は、給与や待遇だけでなく「どのような環境で働くか」を非常に重視する傾向にあります。数多くの企業の中から一社を選ぶ際、魅力的で働きやすそうなオフィスは、求職者の心をつかむ強力なフックとなります。実際に、求人情報に掲載されたオフィスの写真が応募のきっかけになったという声は少なくありません。

採用面接の際にオフィスツアーを実施すれば、その効果はさらに高まります。デザイン性の高い空間はもちろん、社員が生き生きと働く様子や、リラックスできるカフェスペース、集中できる個人ブースなどを見せることで、求職者は「ここで働きたい」という入社意欲を具体的に高めることができます。これは、口頭で企業の魅力を説明するよりもはるかに説得力のあるアピールとなります。

また、社員が自社のオフィスに誇りを持ち、SNSなどで「#オフィス」といったハッシュタグをつけて発信することも期待できます。これは、社員による自然な広報活動(リファラル採用やエンプロイヤーブランディング)につながり、採用コストを抑えながら企業の認知度を高める効果も生み出します。人材獲得競争が激化する現代において、デザイナーズオフィスは、優秀な人材を惹きつけ、採用競争力を高めるための戦略的投資と言えるでしょう。

③ 社員のモチベーションや生産性が向上する

毎日多くの時間を過ごすオフィス環境は、社員の心理状態やパフォーマンスに大きな影響を与えます。暗く、雑然としたオフィスでは気分も沈みがちですが、明るく、快適で、機能的なデザイナーズオフィスは、社員のエンゲージメント(仕事への熱意や貢献意欲)を高めます。

例えば、業務内容に応じて働く場所を選べる「ABW(Activity Based Working)」の考え方を取り入れたオフィスがその一例です。集中して企画書を作成したいときは防音性の高い個人ブースへ、チームで活発に議論したいときはホワイトボードのあるオープンなミーティングスペースへ、少し気分転換したいときは窓際のカフェスペースへ。このように、社員が自律的に最適な環境を選ぶことで、ストレスが軽減され、業務への集中力が高まります。

また、美しいデザインの空間は、そこで働くこと自体に誇りや愛着を抱かせ、モチベーションの維持・向上に貢献します。企業が「社員のためにこれだけ良い環境を用意してくれている」というメッセージは、社員のロイヤリティを高め、離職率の低下にもつながる可能性があります。快適なオフィス環境は、社員のウェルビーイング(心身の健康)を支え、結果として組織全体の生産性を向上させる基盤となるのです。

④ 社内コミュニケーションが活性化する

企業のイノベーションは、部署や役職の垣根を越えた偶発的な会話やアイデアの交換から生まれることが少なくありません。デザイナーズオフィスでは、こうした「セレンディピティ(偶然の幸運な出会い)」を誘発するような空間設計が意識的に取り入れられています。

例えば、社員の誰もが通る動線上にマグネットスペースとなるカフェカウンターやリフレッシュエリアを設けることで、普段は接点のない社員同士が自然と顔を合わせ、会話が生まれるきっかけを作ります。固定席を設けないフリーアドレス制を導入し、毎日違う席で仕事をすることで、新たな人間関係が構築されることもあります。

また、かしこまった会議室だけでなく、ソファ席のラウンジやファミレスのようなボックス席など、リラックスした雰囲気で気軽に打ち合わせができるスペースを複数用意することも有効です。こうしたインフォーマルなコミュニケーションの場が、 формаマルな会議では出てこないような斬新なアイデアや、部門間の連携をスムーズにする潤滑油としての役割を果たします。意図的に設計された「無駄」や「遊び」のある空間が、組織の創造性と結束力を高めるのです。

⑤ 移転コストや手間を削減できる場合がある

「デザイナーズオフィスは賃料が高い」というイメージがありますが、移転にかかるトータルコストで見ると、必ずしもそうとは限りません。特に、内装や什器が完備された「セットアップオフィス」を選択した場合、大幅なコスト削減と時間短縮が可能です。

一般的なスケルトンオフィスに移転する場合、内装のデザイン費、設計費、工事費、そしてデスクや椅子、会議テーブルなどの什器購入費で、坪単価20万円〜、総額で数千万円規模の初期投資が必要になることもあります。さらに、移転プロジェクトチームを組成し、デザイナーや工事業者と何度も打ち合わせを重ねるなど、膨大な時間と手間がかかります。

一方、セットアップオフィスであれば、これらの費用とプロセスがほぼ不要です。敷金や保証金、仲介手数料といった一般的な初期費用のみで、デザイン性の高いオフィスに即入居できます。 これにより、本来であれば内装費に消えていたはずの資金を、人材採用やマーケティング、研究開発といった、事業の成長に直結する分野に投資できます。特に、資金調達ラウンドの間のブリッジとしてオフィスを確保したいスタートアップなど、キャッシュフローを重視する企業にとって、このメリットは計り知れません。移転に伴う担当者の負担も大幅に軽減されるため、本業に集中できるという見えないコストメリットも大きいと言えるでしょう。

デザイナーズオフィスの3つのデメリット

賃料が高い傾向にある、物件数が限られている、レイアウトの自由度が低い場合がある

多くのメリットがある一方で、デザイナーズオフィスにはいくつかのデメリットや注意点も存在します。これらを事前に理解し、対策を講じることが、オフィス移転を成功させるための鍵となります。

① 賃料が高い傾向にある

最も多くの人が懸念するのがコスト面でしょう。事実として、デザイナーズオフィスの月額賃料(坪単価)は、同エリア・同規模の一般的なオフィスに比べて高めに設定されていることがほとんどです。

この理由は、賃料に内装のデザイン費用、工事費用、そして備え付けの什器の費用などが付加価値として上乗せされているためです。貸主側は、先行投資したこれらの費用を、月々の賃料を通じて回収するビジネスモデルとなっています。そのため、単純に坪単価だけを比較すると、割高に感じられるのは当然です。

しかし、前述のメリットでも触れたように、このデメリットは一面的な見方である可能性もあります。重要なのは、「TCO(総所有コスト)」の視点で比較検討することです。一般的なオフィスを借りて内装工事を行う場合の初期投資額(数百万円~数千万円)と、デザイナーズオフィスの初期費用の差額を計算してみましょう。さらに、移転プロジェクトにかかる人件費や時間的コスト、そして退去時の原状回復費用(デザイナーズオフィスの方が安く済む場合がある)まで含めてシミュレーションすると、数年間の利用期間で考えれば、トータルコストではデザイナーズオフィスの方が安くなるというケースも十分にあり得ます。表面的な賃料の高さだけで判断せず、総合的なコストパフォーマンスを冷静に評価することが重要です。

② 物件数が限られている

デザイナーズオフィスは、その付加価値の高さから人気がありますが、一般的なオフィスビルに比べて、市場に出回っている物件の総数はまだまだ少ないのが現状です。特に、都心の一等地や人気のエリアでは、空きが出るとすぐに申し込みが入ってしまうことも珍しくありません。

そのため、希望のエリア、広さ、デザインテイストといった条件をすべて満たす理想の物件に巡り会うまでには、ある程度の時間と根気が必要になる場合があります。移転時期が差し迫ってから探し始めると、妥協して物件を選ばざるを得ない状況に陥りかねません。

このデメリットへの対策は、とにかく早めに情報収集を開始することです。理想としては、移転希望時期の半年前、できれば1年前から市場の動向をチェックし始めると良いでしょう。また、デザイナーズオフィスのような特殊な物件は、インターネット上に公開されていない「非公開物件」であることも多いです。後述するオフィス専門の不動産会社に相談し、希望条件を伝えておくことで、条件に合う物件が出た際にいち早く情報を得られる可能性が高まります。限られた選択肢の中から最良の選択をするためには、情報戦を制することが不可欠です。

③ レイアウトの自由度が低い場合がある

完成されたデザインが魅力のデザイナーズオフィスですが、それは裏を返せば「レイアウトの自由度が低い」というデメリットにもなり得ます。特に、内装や什器がすべて作り付けになっているセットアップオフィスでは、自社の働き方や組織構造に合わない可能性があります。

例えば、「会議室の数が足りない」「逆に、使わない個室が多すぎる」「部署の人数に対して割り当てられたスペースが狭い」といったミスマッチが生じるかもしれません。また、デザイン性を重視するあまり、固定の造作壁やカウンターが多く、将来的な人員増減や組織変更に対応しづらいケースもあります。無理にレイアウトを変更しようとすると、追加の工事費用が発生したり、そもそも工事が許可されなかったりすることも考えられます。

この問題を避けるためには、内見時にデザインの美しさだけでなく、機能面を徹底的にチェックすることが重要です。自社の現在の働き方はもちろん、将来の事業計画(3~5年後)を見据えて、人員の増減や組織変更に柔軟に対応できる構造かをシミュレーションしてみましょう。例えば、可動式の間仕切りで部屋の広さを変えられるか、フリーアドレスに対応できる十分なスペースと電源が確保されているか、といった視点で確認することをおすすめします。もし懸念点があれば、契約前に貸主側にレイアウト変更の可否やその際の条件などを詳しく確認しておくことが不可欠です。

デザイナーズオフィスが向いている企業の特徴

ブランディングを強化したい企業、採用に力を入れている企業、クリエイティブな発想が求められる企業

デザイナーズオフィスは、すべての企業にとって最適な選択肢というわけではありません。その特性を最大限に活かせるのは、特定の目的や課題を持つ企業です。ここでは、どのような企業がデザイナーズオフィスから特に大きな恩恵を受けられるのか、その特徴を3つのタイプに分けて解説します。

ブランディングを強化したい企業

企業のブランドイメージが事業の成功に直結する業種の企業にとって、デザイナーズオフィスは極めて有効な戦略ツールとなります。

  • クリエイティブ・広告業界: 広告代理店、デザイン事務所、制作会社など。オフィスのデザイン性そのものが、自社のクリエイティビティを証明するショーケースとなります。クライアントに対して、斬新なアイデアを生み出す能力を視覚的にアピールできます。
  • アパレル・ラグジュアリーブランド: ブランドの世界観を体現したオフィスは、社員のブランドへの帰属意識を高めると同時に、訪れるバイヤーやメディア関係者にも強い印象を残します。
  • コンサルティングファーム・士業: 知的サービスを提供する企業にとって、洗練された信頼感のあるオフィス空間は、サービスの品質を裏付ける重要な要素となります。顧客に安心感と期待感を与えることができます。
  • BtoCサービスを展開する企業: 一般消費者に向けたサービスを提供する企業は、オフィスの様子をSNSやメディアで発信することで、企業のファンを増やし、親近感を醸成することにつながります。

これらの企業にとって、オフィスは単なる仕事場ではなく、「体験型の広告塔」です。投資する価値は十分にあると言えるでしょう。

採用に力を入れている企業

人材の獲得と定着が経営の最重要課題となっている企業にとって、デザイナーズオフィスは強力な武器となります。

  • IT・Web業界: エンジニアやデザイナーの獲得競争が激しいこの業界では、働く環境の魅力が他社との差別化における決定的な要因となり得ます。自由で快適なオフィス環境は、優秀な人材を惹きつけるための磁石のような役割を果たします。
  • 急成長中のスタートアップ・ベンチャー企業: 限られた知名度の中で優秀な人材を獲得するためには、「この会社で働くと面白そうだ」という期待感を抱かせることが重要です。ユニークなオフィスは、企業のビジョンや将来性を象徴し、求職者の心を動かします。
  • 第二新卒や若手人材を積極的に採用したい企業: 価値観が多様化する若い世代は、金銭的な報酬だけでなく、自己成長や働きがい、快適な環境を重視します。彼らにとって魅力的なオフィスは、応募の動機付けとして非常に効果的です。

これらの企業にとって、オフィスへの投資は、採用広告費や人材紹介手数料と同様、「未来への人的投資」と捉えることができます。働きやすい環境をアピールすることで、採用のミスマッチを減らし、入社後の定着率向上にも貢献します。

クリエイティブな発想が求められる企業

イノベーションの創出や、新しいアイデアを生み出すことが事業の核となる企業にとって、デザイナーズオフィスは創造性を刺激する触媒となります。

  • ゲーム開発・コンテンツ制作会社: 斬新なアイデアや世界観を構築するためには、遊び心のある刺激的な環境が不可欠です。社員がリラックスしたり、気軽に意見交換したりできる空間は、創造的な思考を促進します。
  • 研究開発(R&D)部門を持つメーカー: 異なる専門分野を持つ研究者同士の偶発的なコミュニケーションが、画期的な新技術や新製品のヒントになることがあります。オープンなコラボレーションスペースは、そうした化学反応を促します。
  • 新規事業開発部門: 既存の枠組みにとらわれない発想が求められる部署では、従来の画一的なオフィス環境が思考の妨げになることがあります。非日常的で変化に富んだ空間が、自由な発想を後押しします。

これらの企業にとって、オフィスは「アイデアを生み出すための装置」です。静かに集中する場所、活発に議論する場所、リラックスして思索にふける場所など、多様なモードに対応できる空間を用意することで、社員一人ひとりのクリエイティビティを最大限に引き出すことが可能になります。

失敗しないデザイナーズオフィスの探し方・選び方5ステップ

オフィスのコンセプトや移転目的を明確にする、希望のエリアと予算を決める、レイアウトの自由度や拡張性を確認する、従業員の意見を取り入れる、オフィス専門の不動産会社に相談する

魅力的なデザイナーズオフィスですが、見栄えだけで選んでしまうと、入居後に「こんなはずではなかった」と後悔することになりかねません。ここでは、自社にとって本当に価値のあるオフィスを見つけるための、具体的で実践的な5つのステップを紹介します。

① オフィスのコンセプトや移転目的を明確にする

物件探しを始める前に、まず立ち止まって考えるべき最も重要なことがあります。それは「なぜオフィスを移転するのか?」そして「新しいオフィスで何を実現したいのか?」という根本的な問いです。この目的が曖昧なままでは、数多ある物件情報に振り回され、判断軸がブレてしまいます。

具体的には、経営層やプロジェクトメンバーで以下のような項目について議論し、言語化しておくことをお勧めします。

  • 解決したい経営課題は何か?
    • 例:「採用競争で他社に負けている」「部署間の連携が悪く、新しいアイデアが生まれない」「来客時の印象が悪く、商談に影響が出ている」
  • 新しいオフィスで実現したい状態は?
    • 例:「社員が誇りを持ち、友人に自慢したくなるようなオフィスにしたい」「誰もが気軽に集まり、雑談からイノベーションが生まれる場所にしたい」「企業のブランド価値を体現し、訪れる人すべてを魅了する空間にしたい」
  • 優先順位をつける:
    • 「ブランディング効果」「採用力強化」「コスト削減」「コミュニケーション活性化」「生産性向上」など、移転によって得たい効果に優先順位をつけます。

この「移転の軸」が明確になっていれば、物件を内見した際にも、「このオフィスは我々の目的達成に貢献してくれるか?」という一貫した視点で評価できます。 これが、失敗しないオフィス選びの第一歩です。

② 希望のエリアと予算を決める

コンセプトが固まったら、次は具体的な条件を詰めていきます。特にエリアと予算は、物件の選択肢を絞り込む上で重要な要素です。

  • エリア選定のポイント:
    • 従業員の通勤利便性: 全従業員の通勤時間をシミュレーションし、大半の社員にとってアクセスしやすいエリアを選定します。通勤のストレスは生産性や満足度に直結します。
    • 取引先へのアクセス: 主要なクライアントやパートナー企業への訪問のしやすさも考慮しましょう。
    • エリアのブランドイメージ: 渋谷はIT・ベンチャー、丸の内は金融・大手企業、青山はクリエイティブ・アパレルなど、エリアが持つイメージが自社のブランディングと合致しているかも重要です。
    • 採用への影響: ターゲットとする人材が集まりやすいエリアかどうかも検討項目です。
  • 予算設定のポイント:
    • 月額コスト: 賃料だけでなく、共益費(管理費)も忘れずに含めて計算します。
    • 初期費用: 敷金(保証金)、礼金、仲介手数料、前払賃料、火災保険料などが必要です。一般的に賃料の6ヶ月~12ヶ月分が目安となります。
    • トータルコストで考える: 前述の通り、デザイナーズオフィスは月額賃料が高くても初期費用が安い場合があります。目先の賃料だけでなく、移転にかかる総額と、それによって得られるリターン(ブランディング効果や採用力向上など)を総合的に判断しましょう。

③ レイアウトの自由度や拡張性を確認する

気に入った物件が見つかったら、内見で細部をチェックします。デザインの素晴らしさに目を奪われがちですが、自社の働き方に本当にフィットするか、冷静に評価する必要があります。

  • 現在の働き方との適合性:
    • 執務スペースは十分か? 必要な会議室の数とサイズは確保されているか?
    • 固定席、フリーアドレス、ABWなど、自社が目指す働き方を実現できるレイアウトか?
    • Web会議用の個室ブースなど、現代の働き方に必要な設備は整っているか?
  • 将来の拡張性(スケーラビリティ):
    • 3~5年後の人員計画を考慮しましょう。増員した場合、手狭にならないか? 逆に事業を縮小した場合、無駄なスペースが多すぎないか?
    • 間仕切り壁は可動式か、あるいは増設・撤去は可能か? レイアウト変更の工事に関する制約を事前に確認することが重要です。
    • 同じビル内に、より広い(あるいは狭い)区画へ移転できるオプションがあるかも確認しておくと、将来の柔軟性が高まります。

見た目のデザインと、実際にビジネスを運営していく上での機能性・柔軟性のバランスを見極めることが、長期的に満足できるオフィス選びの鍵です。

④ 従業員の意見を取り入れる

オフィス移転は経営陣だけで進めるべきではありません。なぜなら、その空間で最も長い時間を過ごし、パフォーマンスを発揮するのは従業員だからです。従業員の意見を無視した移転は、モチベーションの低下や離職につながるリスクさえあります。

  • アンケートの実施: 全従業員を対象に、現在のオフィスの問題点や、新しいオフィスに期待すること(例:集中ブースが欲しい、リフレッシュスペースを充実させてほしい、もっと広いカフェが欲しいなど)についてアンケートを取ります。
  • ワークショップの開催: 各部署から代表者を集め、理想の働き方やオフィスのあり方についてディスカッションする場を設けます。多様な意見を吸い上げることで、より多くの従業員が満足できるオフィス像が見えてきます。
  • 移転プロジェクトへの参加: プロジェクトチームに若手や現場の意見を代弁するメンバーを加えることで、計画がより現実的で実用的なものになります。

従業員を巻き込むプロセスは、時間と手間がかかるかもしれません。しかし、自分たちの意見が反映されたオフィスへの移転は、従業員の当事者意識とエンゲージメントを高め、移転を「自分ごと」としてポジティブに捉えてもらうための最良の方法です。

⑤ オフィス専門の不動産会社に相談する

デザイナーズオフィスのような専門性の高い物件を探す場合、一般的な賃貸住宅を扱う不動産会社ではなく、オフィス移転を専門に扱う不動産会社に相談することを強くお勧めします。

  • 豊富な情報量: オフィス専門の仲介会社は、Webサイトには掲載されていない「非公開物件」の情報を多数保有しています。自社のコンセプトや条件を伝えることで、市場に出る前の貴重な物件情報を紹介してもらえる可能性があります。
  • 専門的な知見: 各エリアの賃料相場、ビルの特性、貸主の傾向など、専門家ならではの深い知識を持っています。物件のメリットだけでなく、潜在的なデメリットや注意点についても的確なアドバイスをもらえます。
  • 交渉力とサポート: 賃料や契約条件の交渉を代行してくれたり、複雑な契約手続きをサポートしてくれたりするため、移転担当者の負担を大幅に軽減できます。

信頼できるパートナーを見つけることが、理想のオフィスへの近道です。複数の会社に声をかけ、提案内容や担当者の対応を比較検討して、自社に最も合った一社を選ぶと良いでしょう。

東京主要エリアのデザイナーズオフィス賃料相場

デザイナーズオフィスの賃料は、エリアによって大きく異なります。ここでは、特にオフィス需要が高い東京の主要エリアにおける賃料相場(共益費込・坪単価)の目安と、各エリアの特徴を解説します。実際の賃料はビルのグレード、築年数、駅からの距離、そしてデザインの付加価値によって変動するため、あくまで参考値として捉えてください。

エリア 坪単価相場(目安) エリアの特徴
港区エリア 30,000円~50,000円 青山・表参道はアパレルやクリエイティブ系、六本木はITや外資系、新橋・田町は大手企業が集積。ステータス性が高く、多様なデザインの物件が見つかる。
渋谷区エリア 28,000円~45,000円 IT・スタートアップの聖地。特に渋谷駅周辺や恵比寿・代官山は人気が高い。先進的でカジュアルなデザインのオフィスが多い。
新宿区エリア 25,000円~40,000円 西新宿は超高層ビル群、東口は商業・エンタメ系と多様な顔を持つ。交通の便が非常に良く、様々な業種の企業が集まる。比較的大規模な物件も見つけやすい。
中央区・千代田区エリア 29,000円~50,000円 日本橋・銀座は伝統と革新が共存。丸の内・大手町は日本のビジネスの中枢。金融、大手企業、コンサルティングファームに人気。格式高いデザインが特徴。

※参照:三幸エステート株式会社「東京23区 大規模ビル 市況データ 2024年4月度」等の公開データを基に、デザイナーズオフィスの付加価値を考慮した相場観を記載。

港区エリア

青山、表参道、六本木、麻布、赤坂、新橋、田町など、多岐にわたる個性的な街を含む港区は、デザイナーズオフィスの宝庫です。特に青山・表参道エリアは、ファッションやデザイン関連の企業に絶大な人気を誇り、洗練されたブティックのようなオフィスが点在します。六本木エリアは、ITジャイアントや外資系企業が集まり、先進的でグローバルな雰囲気を持つ物件が多いのが特徴です。賃料は都内でもトップクラスですが、その分、企業のブランドイメージを大きく向上させる効果が期待できます。

渋谷区エリア

「ビットバレー」の愛称で知られる渋谷区は、IT・Web系のスタートアップやベンチャー企業にとって最も魅力的なエリアの一つです。特に渋谷駅周辺の再開発により、最新鋭のデザイナーズオフィスが次々と誕生しています。恵比寿や代官山に範囲を広げると、より落ち着いた雰囲気で、隠れ家的なリノベーションオフィスなども見つかります。自由でクリエイティブな社風を表現したい企業に最適なエリアと言えるでしょう。

新宿区エリア

世界一の乗降客数を誇る新宿駅を擁する新宿区は、交通アクセスの利便性が最大の魅力です。西新宿の超高層ビル群には、眺望の良いハイクラスなデザイナーズオフィスが入居しており、信頼性を重視する企業に適しています。一方、新宿三丁目や四谷方面には、中小規模で個性的な物件も存在します。多様な業種と人材が集まるダイナミックな環境が、ビジネスに新たな刺激をもたらすでしょう。

中央区・千代田区エリア

日本橋、銀座、京橋といった商業の中心地を抱える中央区と、丸の内、大手町、番町といった日本のビジネスと政治の中枢を担う千代田区。このエリアは、歴史と格式を重んじる企業に選ばれる傾向があります。重厚感のある石造りのビルをリノベーションしたオフィスや、最新の設備を備えた超高層ビル内のセットアップオフィスなど、クオリティを追求した物件が豊富です。信頼性やステータスを最優先する企業にとって、最高のロケーションと言えます。

東京エリアのおすすめデザイナーズオフィス10選

ここでは、東京で人気の代表的なデザイナーズオフィス(ブランドやビル)を10件紹介します。それぞれに独自の特徴やコンセプトがあり、多様な企業のニーズに応えています。
(※各物件・サービスの最新情報や空室状況は、公式サイトまたはオフィス専門の不動産会社にご確認ください。)

① a-office

サンフロンティア不動産が展開するセットアップオフィスブランドです。「all in one」をコンセプトに、デザイン性の高い内装、オフィス家具、Wi-Fi環境、受付システムまでをワンストップで提供しています。入居企業はPCを持ち込むだけで業務を開始できる手軽さが魅力です。デザインテイストも複数用意されており、自社の雰囲気に合った空間を選べます。初期費用を抑え、スピーディーな移転を実現したい成長企業におすすめです。(参照:a-office 公式サイト)

② officee

officeeは特定のビル名ではなく、オフィス探しをサポートする賃貸オフィス専門の検索・仲介サービスです。デザイナーズオフィスやセットアップオフィスの物件情報も豊富に取り扱っており、Webサイト上で様々な物件を比較検討できます。専任のコンサルタントが、希望条件のヒアリングから内見の手配、契約交渉までを無料でサポートしてくれるため、初めてオフィス移転を行う企業でも安心して相談できます。(参照:officee 公式サイト)

③ G-BASE 田町

野村不動産が手がける、都市型小規模オフィスビルのブランドです。「BASE(拠点)」をコンセプトに、1フロア約30坪~60坪の使いやすいサイズ感で設計されています。ガラス張りのスタイリッシュな外観と、無駄を削ぎ落とした機能的な室内空間が特徴。小規模ながらも、デザイン性とグレード感を両立させたい企業に適しています。(参照:野村不動産 G-BASEシリーズ公式サイト)

④ CIRCLES 渋谷

gooddaysホールディングスが展開するリノベーションオフィスブランドです。渋谷エリアを中心に、既存のビルを独自のコンセプトで再生しています。「働く(WORK)」と「暮らす(LIFE)」の境界をなくし、クリエイティビティを刺激する空間が特徴。共用ラウンジやルーフトップテラスなどが充実しており、入居者同士のコミュニティ形成も促進します。(参照:CIRCLES 公式サイト)

⑤ the SOHO

東京・お台場エリアに位置する、日本最大級のクリエイター向けSOHO(スモールオフィス・ホームオフィス)です。カラフルな外観が目を引く建物内には、小規模なオフィス区画が多数入居しています。フィットネスジム、カフェ、バーラウンジ、貸し会議室、屋上テラスといった共用施設が非常に充実しており、仕事とプライベートを融合させたライフスタイルを実現できます。(参照:the SOHO 公式サイト)

⑥ H¹O 日本橋室町

野村不動産が展開するサービス付き小規模オフィスブランド「H¹O(エイチワンオー)」の一つです。個室タイプの専有部に加え、有人レセプション、ラウンジ、会議室などの充実した共用サービスが利用できます。1名から利用可能なコンパクトな区画が多く、スタートアップの最初のオフィスや、大企業のプロジェクトルームとして人気です。生体認証による高いセキュリティも特徴です。(参照:H¹O 公式サイト)

⑦ PORTAL POINT -Ebisu-

リアルゲイトが運営する、恵寿にあるリノベーション型のクリエイティブオフィスです。元々工場や倉庫だった建物のインダストリアルな雰囲気を活かしたデザインが特徴。プライベートオフィスに加え、フリーデスクのシェアオフィスやイベントスペースも併設しており、多様な働き方と交流をサポートします。スタートアップやフリーランスが多く集まる活気あるコミュニティが魅力です。(参照:PORTAL POINT 公式サイト)

⑧ Pegasus Aoyama

青山一丁目駅直結という抜群のロケーションを誇るデザイナーズオフィスビルです。ガラスカーテンウォールのシャープな外観と、吹き抜けのある開放的なエントランスが特徴。小規模から中規模の区画が多く、IT企業やデザイン事務所、外資系の日本支社などが入居しています。青山というエリアブランドと利便性を両立させたい企業に最適です。

⑨ KDX南青山ビル

ケネディクスが保有・運営するオフィスビルの一つで、南青山の閑静なエリアに位置します。このビルの特徴は、通常のオフィス区画に加えて、デザイン性の高いセットアップオフィス区画が提供されることがある点です。周辺にはアパレルブランドのプレスルームやデザイン事務所が多く、クリエイティブな環境を求める企業に適しています。

⑩ 新宿マインズタワー

新宿駅南口からデッキで直結する、34階建ての超高層オフィスビルです。主に大企業が入居していますが、一部のフロアでは、眺望の良いセットアップオフィス区画が提供されることがあります。新宿という交通の要衝に、初期投資を抑えてグレードの高いオフィスを構えられる点が大きな魅力です。企業の信頼性を高めたい場合に有力な選択肢となります。

契約前に確認すべき注意点

デザイン性だけでなく機能性も確認する、将来の人員計画を考慮に入れる、周辺環境やアクセスを忘れずにチェックする

理想の物件を見つけ、いよいよ契約へ。しかし、その前に最終確認すべき重要な点がいくつかあります。デザインの魅力に浮き足立つことなく、冷静にチェックすることで、入居後の後悔を防ぎましょう。

デザイン性だけでなく機能性も確認する

内見時には、ついデザインの美しさや空間の雰囲気に目が行きがちですが、実際に日々の業務を快適に行えるかという「機能性」のチェックを忘れてはいけません。

  • 空調設備: 個別空調か、ビル一括管理のセントラル空調かを確認しましょう。個別空調の方が、部署ごとや時間帯に応じて柔軟に温度設定ができて快適です。また、空調の吹き出し口が執務席の真上にないかなどもチェックポイントです。
  • コンセント・電源容量: デスクの配置を想定し、必要な場所に十分な数のコンセントがあるか確認します。PC、モニター、スマートフォン充電器など、一人あたりに必要な口数は意外と多いものです。ビル全体の電源容量が、自社の使用量(サーバーや特殊な機器を含む)に対して十分かも確認が必要です。
  • ネットワーク環境: 光回線の引き込みは可能か、どの通信キャリアが利用できるかを確認します。業務の生命線であるインターネット環境は、速度や安定性が非常に重要です。
  • セキュリティ: ビルのエントランスやエレベーター、自社の区画への入退室管理システムはどうなっているか。24時間入退館が可能か。来客時の受付フローなども含めて、自社のセキュリティポリシーに合致しているかを確認しましょう。

将来の人員計画を考慮に入れる

オフィス契約は通常2~3年単位の長期にわたるものです。契約時点での状況だけでなく、中期的な事業計画とそれに伴う人員の増減を必ず考慮に入れましょう。

  • 拡張性(増員対応): 今はジャストサイズでも、1年後に増員したら手狭になる可能性があります。契約期間中に人員が増えた場合、レイアウト変更で対応できるか、あるいは同じビル内でより広い区画に移動できる可能性があるかを事前に確認しておくと安心です。
  • 柔軟性(減員・働き方の変化対応): 逆に、リモートワークの推進などで出社率が下がった場合に、スペースを持て余さないかも考えておく必要があります。固定の造作が多いオフィスよりも、オープンなスペースを柔軟に活用できるオフィスの方が、将来の変化に対応しやすいでしょう。

短期的な視点だけでオフィスを決めると、すぐに次の移転を考えなければならなくなり、結果的に余計なコストと手間がかかってしまいます。

周辺環境やアクセスを忘れずにチェックする

物件そのものだけでなく、その周辺環境も、従業員の満足度や働きやすさを左右する重要な要素です。

  • 最寄り駅からの道のり: Webサイトの「徒歩○分」という表示を鵜呑みにせず、実際に自分の足で歩いてみましょう。 坂道や信号の多さ、夜道の明るさや安全性なども確認します。複数の路線が使える場合は、それぞれのルートを試してみることをお勧めします。
  • ランチ環境: 周辺に飲食店やコンビニ、お弁当屋などが充実しているかは、従業員のランチタイムの満足度に直結します。選択肢が少ないと、毎日のことなので不満が溜まりやすくなります。
  • 利便施設: 銀行のATM、郵便局、役所の出張所などが近くにあると、総務担当者などの業務効率が上がります。
  • 時間帯による変化: 可能であれば、朝の通勤時間帯、昼休み、そして夜間と、異なる時間帯に周辺を訪れてみると、街の雰囲気や人の流れがよくわかります。クライアントが訪問する時間帯の状況も確認しておくと良いでしょう。

これらの地道な確認作業が、入居後の「こんなはずではなかった」を防ぎ、全社員が満足できるオフィス移転の成功につながります。

まとめ

デザイナーズオフィスは、もはや一部のクリエイティブ企業だけのものではありません。企業のブランド価値を高め、優秀な人材を惹きつけ、社員の生産性と創造性を引き出すための、極めて有効な経営戦略の一つとなっています。

この記事で解説したように、デザイナーズオフィスには多くのメリットがあります。

  • 企業のブランディング向上
  • 採用活動における競争力強化
  • 社員のモチベーションと生産性の向上
  • 社内コミュニケーションの活性化
  • 移転コスト・手間の削減(セットアップオフィスの場合)

一方で、賃料の高さや物件数の少なさ、レイアウトの自由度の低さといったデメリットも存在します。しかし、これらの課題は、移転の目的を明確にし、TCO(総所有コスト)の視点を持ち、専門家の力を借りながら計画的に進めることで、十分に乗り越えることが可能です。

失敗しないオフィス選びの鍵は、「①目的の明確化 → ②エリア・予算決定 → ③レイアウト・拡張性の確認 → ④従業員の意見聴取 → ⑤専門家への相談」という5つのステップを着実に踏むことです。そして契約前には、デザイン性だけでなく機能性や周辺環境といった現実的な側面もしっかりと確認することが不可欠です。

理想のオフィスは、企業の成長を加速させる強力なエンジンとなります。本記事で得た知識を活用し、ぜひ貴社にとって最高のビジネスの拠点を見つけてください。