毎日使うトイレは、暮らしの快適さを左右する重要な空間です。古くなったトイレを新しくしたい、掃除がしやすいトイレに変えたい、節水やバリアフリー化を検討したいなど、リフォームを考えるきっかけは様々でしょう。しかし、いざリフォームを検討し始めると「一体いくらかかるのだろう?」という費用の疑問が真っ先に浮かぶのではないでしょうか。
トイレリフォームの費用は、選ぶ便器の種類や工事の規模によって大きく変動します。単純な便器交換であれば10万円台で可能な場合もあれば、内装の一新や間取りの変更まで行うと50万円を超えるケースも少なくありません。
この記事では、トイレリフォームにかかる費用の全体像を掴んでいただくため、工事内容別・トイレのグレード別の費用相場を徹底的に解説します。さらに、費用の詳しい内訳や、コストを賢く抑えるための具体的なコツ、利用できる補助金制度、信頼できるリフォーム会社の選び方まで、トイレリフォームを成功させるために必要な情報を網羅的にお届けします。
この記事を読めば、ご自身の希望するリフォーム内容にどれくらいの費用がかかるのかが明確になり、納得のいく価格で満足度の高いトイレリフォームを実現するための具体的なステップが見えてくるはずです。
目次
トイレリフォームの費用相場
トイレリフォームを検討する上で、まず把握しておきたいのが全体的な費用相場です。どのくらいの予算を見込んでおけば、どのようなリフォームが可能なのか、その目安を知ることで、具体的な計画を立てやすくなります。
全体的な費用相場は10万円〜50万円
トイレリフォームにかかる費用は、工事の内容や選ぶ機器のグレードによって大きく異なりますが、一般的な費用相場は10万円から50万円の範囲に収まることがほとんどです。この価格帯が、リフォームを希望する多くの人々にとって現実的なボリュームゾーンとなっています。
なぜこれほど価格に幅があるのでしょうか。その理由は、リフォーム費用が主に以下の3つの要素の組み合わせで決まるからです。
- トイレ本体の価格: 最新の多機能タンクレストイレと、基本的な機能のみの組み合わせトイレでは、本体価格だけで20万円以上の差がつくこともあります。
- 工事の内容と範囲: 便器を交換するだけのシンプルな工事か、壁紙や床材の張り替えといった内装工事も同時に行うか、あるいは和式から洋式への変更やトイレの場所を移動するような大掛かりな工事かによって、工事費用は大きく変動します。
- 内装材のグレード: 壁紙や床材に、標準的なビニールクロスやクッションフロアを選ぶか、デザイン性の高いタイルや消臭・調湿効果のあるエコカラットなどの高機能な素材を選ぶかによっても費用は変わってきます。
最もシンプルな「便器・便座の交換のみ」であれば10万円~20万円程度で実現可能ですが、多くの人が希望する「便器交換と内装の一新」を伴うリフォームでは、20万円~50万円が中心的な価格帯となります。さらに、バリアフリー化やトイレの移設など、構造に関わる工事を行う場合は50万円を超えることも珍しくありません。
重要なのは、ご自身の希望するリフォームの優先順位を明確にすることです。「とにかく安く済ませたい」のか、「機能性やデザイン性にこだわりたい」のか、あるいは「将来を見据えてバリアフリー化したい」のか。目的をはっきりさせることで、適切な予算設定と満足のいくリフォームプランの選択が可能になります。
価格帯別にできるリフォーム内容の目安
予算に応じてどのようなリフォームが実現できるのか、具体的なイメージを持つことは非常に重要です。ここでは、価格帯別に可能なリフォーム内容の目安を詳しく解説します。
価格帯 | 主なリフォーム内容 | トイレの種類(目安) |
---|---|---|
10万円~20万円 | 便器・便座の交換(洋式→洋式) | 組み合わせトイレ(ローグレード) |
20万円~50万円 | 便器交換+内装リフォーム(壁・床)、手洗い器の設置 | 一体型トイレ、タンクレストイレ(ミドルグレード) |
50万円以上 | 和式→洋式への変更、バリアフリー化、トイレの移動・増設、内装デザインへのこだわり | ハイグレードなタンクレストイレ、デザイン性の高い内装材 |
10万円~20万円でできること
この価格帯は、トイレの基本的な機能を更新することに特化したリフォームが中心となります。主な工事内容は、既存の洋式トイレを新しい洋式トイレに交換する作業です。
- 工事内容:
- 古い便器・便座の撤去と処分
- 新しい便器・便座の設置
- 選べるトイレ:
- 便器、タンク、便座がそれぞれ独立した「組み合わせトイレ」が主流です。機能は暖房便座や基本的な温水洗浄機能に絞られますが、節水性能は近年のモデルであれば十分に期待できます。
- ポイント:
- 内装工事は基本的に含まれません。ただし、便器を外した際に床の設置跡が目立つ場合など、最低限の補修として床のクッションフロアのみを張り替える工事を加えても、20万円以内に収まるケースはあります。
- 「トイレが故障してしまった」「古くて汚れが落ちにくいので新しくしたい」といった、緊急性や機能回復を目的とする場合に最適な価格帯と言えるでしょう。
20万円~50万円でできること
この価格帯は、トイレリフォームで最も選択肢が広がり、満足度を大きく高めることができるボリュームゾーンです。単に便器を新しくするだけでなく、トイレ空間全体の快適性やデザイン性を向上させることが可能になります。
- 工事内容:
- 便器交換(高機能・デザイン性の高いモデルも選択可能)
- 壁紙(クロス)と床材(クッションフロア)の張り替え
- 手洗い器の新規設置
- 選べるトイレ:
- 便器とタンクが一体化した、すっきりとしたデザインの「一体型トイレ」や、タンクがなく空間を広く見せられる「タンクレストイレ」も十分に射程圏内に入ります。
- 自動洗浄や脱臭、節電機能など、ミドルグレードの便利な機能が搭載されたモデルを選べます。
- ポイント:
- 便器の交換と内装リフォームを同時に行うのがこの価格帯の大きな特徴です。便器を一度取り外してから床材を張り替えるため、継ぎ目がなく美しい仕上がりになります。また、壁紙も一新することで、トイレ空間全体の雰囲気をがらりと変えることができます。
- タンクレストイレを選ぶ場合は、新たに手洗い器を設置する必要があるため、その工事費もこの予算内で検討できます。
- 機能性、デザイン性、費用のバランスが最も取れたリフォームを実現したい方におすすめの価格帯です。
50万円以上でできること
50万円以上の予算をかけるリフォームは、機能性やデザイン性への強いこだわりを反映させたり、構造的な変更を伴う大掛かりな工事が中心となります。
- 工事内容:
- ハイグレードなトイレ本体への交換
- タイルやエコカラットなど、高価な内装材を使用したデザイン性の高い空間づくり
- 和式トイレから洋式トイレへの全面的な改修(床の解体・段差解消など)
- 本格的なバリアフリーリフォーム(手すり設置、ドアを引き戸に変更、スペースの拡張など)
- トイレの場所を移動したり、新たに増設する工事
- 選べるトイレ:
- 便ふたの自動開閉、スマートフォン連携、自動除菌機能といった最新技術を搭載したハイグレードモデルが選択肢となります。
- ポイント:
- 和式から洋式へのリフォームは、床の解体や給排水管の移設、電気工事などが必要になるため、費用が高額になりがちです。
- トイレの場所を移動・増設する工事は、間取りの変更や大工工事、大規模な配管・電気工事を伴うため、最も費用がかかります。建物の構造によっては100万円を超えるケースもあります。
- 将来の生活を見据えた投資や、理想の空間を徹底的に追求したい場合に適した価格帯と言えるでしょう。
【工事内容別】トイレリフォームの費用相場
トイレリフォームの費用は、具体的にどのような工事を行うかによって大きく変動します。ここでは、代表的な工事内容ごとに、費用相場、工事期間の目安、そして工事のポイントを詳しく解説します。ご自身の希望するリフォームがどのケースに当てはまるかを確認し、予算計画の参考にしてください。
工事内容 | 費用相場(目安) | 工事期間(目安) |
---|---|---|
便器・便座のみを交換 | 5万円 ~ 20万円 | 半日 ~ 1日 |
便器交換+内装リフォーム | 15万円 ~ 40万円 | 1日 ~ 2日 |
和式トイレから洋式トイレへ | 20万円 ~ 60万円 | 2日 ~ 4日 |
手洗い器を新しく設置 | 10万円 ~ 30万円 | 1日 ~ 2日 |
バリアフリー対応リフォーム | 20万円 ~ 70万円以上 | 2日 ~ 5日 |
トイレの場所を移動・増設 | 50万円 ~ 100万円以上 | 4日 ~ 1週間以上 |
便器・便座のみを交換する場合
最も手軽で基本的なトイレリフォームが、既存の洋式トイレの便器・便座を新しいものに交換する工事です。
費用相場は5万円~20万円程度で、工事は半日から1日で完了します。
- 費用の内訳: この費用の大部分は「トイレ本体の価格」です。残りが「既存便器の撤去・処分費用」と「新便器の設置工事費」となります。
- 価格を左右する要因:
- トイレのグレード: シンプルな機能の組み合わせトイレであれば総額10万円以下に収まることもありますが、節水・脱臭機能などが付いた一体型トイレなどを選ぶと20万円に近くなります。
- 便器のタイプ: 現在と同じ排水方式(床排水・壁排水)の便器に交換する場合は、追加工事が不要なため費用を抑えられます。
- 注意点:
- 内装はそのままなので、新しい便器のサイズや形状によっては、古い便器の設置跡(日焼けや汚れの差)が床に見えてしまう可能性があります。事前にリフォーム会社に確認し、跡が目立ちそうな場合は、床材の張り替えも併せて検討することをおすすめします。
- 温水洗浄便座を新たに取り付ける場合、トイレ内に電源コンセントがなければ増設工事が必要となり、別途1.5万円~3万円程度の費用がかかります。
便器交換と内装リフォームを同時に行う場合
トイレ空間全体の印象を刷新したい場合に最適なのが、便器交換と内装リフォームをセットで行うプランです。
費用相場は15万円~40万円程度、工事期間は1日~2日が目安です。
- 工事内容: 便器・便座の交換に加えて、壁紙(クロス)と床材(クッションフロアなど)の張り替えを行います。天井の壁紙も同時に張り替えるのが一般的です。
- メリット:
- 美しい仕上がり: 便器を一度取り外した状態で床材を施工するため、便器の根元まで隙間なく綺麗に張り替えることができます。
- コストパフォーマンス: 内装工事を便器交換と別々に行うよりも、人件費や作業効率の面でトータルの費用を抑えられる傾向があります。
- 清潔感の向上: 古いトイレは、見た目以上に壁や床に臭いや汚れが染み付いていることがあります。内装を一新することで、清潔で快適な空間へと生まれ変わります。
- 価格を左右する要因:
- トイレ本体のグレード: タンクレストイレなど高価なモデルを選ぶと、総額は40万円に近づきます。
- 内装材の種類: 標準的なビニールクロスやクッションフロアであれば費用を抑えられますが、消臭・調湿機能のあるエコカラットやデザイン性の高いタイル、掃除がしやすいフローリングなどを選ぶと、材料費と施工費が加算されます。
和式トイレから洋式トイレへリフォームする場合
和式トイレの使いづらさや衛生面の問題を解決するため、洋式トイレへのリフォームを希望するケースは非常に多いです。この工事は単純な交換作業ではなく、大掛かりな改修が必要となります。
費用相場は20万円~60万円程度と幅広く、工事期間も2日~4日ほどかかります。
- 主な工事内容:
- 和式便器の解体・撤去: 埋め込まれている便器をコンクリートごと取り壊します。
- 床の解体と造作: 段差がある場合はそれを解消し、床をフラットにするための大工工事が必要です。
- 給排水管の移設: 和式と洋式では配管の位置が異なるため、適切な位置に移動させる工事が発生します。
- 電気工事: 温水洗浄便座を使用するために、電源コンセントを新設します。
- 内装工事: 床、壁、天井を全面的にやり直します。
- 洋式便器の設置
- 価格を左右する要因:
- 床の構造: 床がコンクリートか木造か、段差の有無やその大きさによって解体・造作の手間が大きく変わります。
- 配管の状態: 給排水管の劣化が激しい場合は、交換が必要となり追加費用がかかることがあります。
- トイレの広さ: トイレが狭い場合、よりコンパクトなトイレを選んだり、場合によっては壁を移動してスペースを拡張する工事が必要になることもあります。
手洗い器を新しく設置する場合
タンクレストイレを設置する場合や、トイレ内で手を洗えるようにしたい場合に、手洗い器の新設工事を行います。便器交換と同時に行うのが一般的です。
費用相場は、工事費込みで10万円~30万円程度が目安です。
- 工事内容: 手洗い器本体の設置に加え、給水管と排水管を新たに分岐・延長する配管工事が必要になります。これが費用の大部分を占めます。
- 価格を左右する要因:
- 手洗い器の種類:
- 壁付けタイプ: 省スペースで設置でき、比較的安価です。
- カウンタータイプ: 物を置くスペースも確保でき、デザイン性が高いですが、価格は高めになります。キャビネット付きのものを選べば収納力もアップします。
- 配管工事の難易度: 壁の中や床下に配管を通す作業の複雑さによって、工事費が変動します。
- 手洗い器の種類:
- ポイント: タンクレストイレはタンクがないため、手洗い機能がありません。そのため、タンクレストイレへのリフォームと手洗い器の新設は、基本的にセットで考える必要があります。
バリアフリー対応のリフォームをする場合
高齢のご家族がいる場合や、将来に備えて誰にとっても使いやすいトイレにするためのリフォームです。
費用相場は20万円~70万円以上と、工事内容によって大きく異なります。
- 主な工事内容:
- 手すりの設置: 立ち座りや移動を補助します。壁の補強が必要な場合もあります。(費用目安:2万円~5万円)
- 段差の解消: トイレの出入り口の敷居などをなくし、つまずきを防止します。(費用目安:3万円~10万円)
- ドアの交換: 開き戸から、開閉スペースを取らない引き戸や折れ戸に交換します。(費用目安:10万円~25万円)
- トイレ空間の拡張: 車椅子でも利用できるよう、壁を移動してスペースを広げます。大規模な間取り変更となり、費用も高額になります。(費用目安:30万円以上)
- ポイント: バリアフリーリフォームは、介護保険の住宅改修費や自治体の補助金制度の対象となる場合が多いです。これらの制度をうまく活用することで、費用負担を大幅に軽減できる可能性があります。詳しくは後述の章で解説します。
トイレの場所を移動・増設する場合
家族が増えた、生活動線を変えたいといった理由で、トイレの場所を移動したり、2階に新たにトイレを増設するリフォームです。これは最も大掛かりで専門的な工事となります。
費用相場は50万円~100万円以上、工事期間も4日~1週間以上かかるのが一般的です。
- 主な工事内容:
- 間取り変更・構造工事: 新たにトイレを設置するための壁や床の造作。
- 給排水管工事: 最も重要な工事で、既存の配管から新しい設置場所まで延長・移設します。勾配を確保する必要があるなど、専門的な知識と技術が求められます。
- 電気・換気工事: 照明やコンセントの配線、換気扇の設置とダクトの配管工事。
- 価格を左右する要因:
- 移動距離と建物の構造: 配管を延長する距離が長くなるほど、また、コンクリートの床や壁を貫通させる必要がある場合などは、費用が大幅に上がります。
- 設置場所: 2階に増設する場合、1階の天井裏での配管作業や、排水音を軽減するための防音対策などが必要になり、コストが増加します。
- 注意点: 大規模な間取り変更を伴う場合、建築確認申請が必要になるケースがあります。信頼できるリフォーム会社に、法的な手続きも含めて相談することが不可欠です。
トイレリフォーム費用の詳しい内訳
リフォーム会社から提示される見積書を正しく理解し、適正な価格か判断するためには、費用がどのような項目で構成されているかを知っておくことが重要です。トイレリフォームの費用は、大きく分けて「トイレ本体の費用」「工事費用」「内装材の費用」「古いトイレの処分費用」「その他の費用」の5つで構成されています。
トイレ本体の費用
リフォーム費用全体の中で最も大きな割合を占めるのが、便器や便座といったトイレ本体の価格です。トイレは大きく分けて「組み合わせトイレ」「一体型トイレ」「タンクレストイレ」の3種類があり、それぞれに特徴と価格帯があります。
トイレの種類 | 特徴 | メリット | デメリット | 本体価格の目安 |
---|---|---|---|---|
組み合わせトイレ | 便器・タンク・便座が独立 | ・価格が安い ・部分的な交換が可能 ・便座の選択肢が豊富 |
・凹凸が多く掃除がしにくい ・デザインの選択肢が少ない |
5万円~15万円 |
一体型トイレ | 便器・タンク・便座が一体化 | ・凹凸が少なく掃除がしやすい ・デザイン性が高い |
・便座のみの交換ができない ・故障時の修理費が高くなりがち |
10万円~25万円 |
タンクレストイレ | タンクがなく水道直結 | ・コンパクトで空間が広く見える ・デザイン性が非常に高い ・連続で水を流せる |
・価格が高い ・水圧が低いと設置不可 ・手洗い器の別途設置が必要 |
15万円~40万円 |
組み合わせトイレ
便器、水を溜めるタンク、そして便座がそれぞれ別々の部品として組み合わされている、最もオーソドックスなタイプのトイレです。
最大のメリットは価格の安さです。機能を絞ったシンプルなモデルであれば、5万円程度から見つけることができます。また、将来的に温水洗浄便座だけが故障した場合でも、便座部分のみを交換できるため、メンテナンスコストを抑えやすいという利点もあります。一方で、各パーツの接合部やタンク周りに凹凸が多いため、掃除に手間がかかる点がデメリットと言えます。
一体型トイレ
便器、タンク、温水洗浄便座が一体となってデザインされているトイレです。
凹凸や隙間が少ないため、掃除がしやすいのが大きなメリットです。タンク部分もカバーで覆われているなど、すっきりとした見た目でデザイン性にも優れています。組み合わせトイレとタンクレストイレの中間的な価格帯で、機能とデザイン、コストのバランスが取れたタイプと言えるでしょう。ただし、便座部分が故障した場合、原則として便器全体を交換する必要があり、修理費用が高額になる可能性がある点は注意が必要です。
タンクレストイレ
その名の通り、水を溜めるタンクがなく、水道管から直接水を流すタイプのトイレです。
タンクがない分、非常にコンパクトで、トイレ空間を広く見せることができます。洗練されたデザインのモデルが多く、見た目にこだわりたい方に人気があります。また、タンクに水が溜まるのを待つ必要がなく、連続で水を流せるのもメリットです。一方で、価格帯が最も高く、設置するには一定以上の水圧が必要という条件があります。水圧が低いご家庭では、加圧ポンプの設置が別途必要になる場合があります。また、手洗い機能がないため、手洗い器を新たに設置する必要があることも忘れてはならないポイントです。
工事費用
工事費用は、リフォームの規模や内容によって大きく変動する項目です。見積書では「〇〇工事費」といった形で記載されます。
- 標準的な交換工事: 既存の洋式トイレを撤去し、新しい洋式トイレを設置する基本的な工事です。費用は3万円~6万円程度が相場です。これには、給排水管の接続作業も含まれます。
- 電気工事: トイレ内にコンセントがない場合に、温水洗浄便座用に増設する工事です。費用は1.5万円~3万円程度が目安です。
- 内装工事: 壁紙や床材を張り替える工事です。トイレ1室(約1畳)の場合、壁と天井のクロス張り替えで3万円~5万円、床のクッションフロア張り替えで2万円~4万円程度が相場です。
- 配管工事: 和式から洋式への変更やトイレの移設、手洗い器の新設などで給排水管の移動や延長が必要な場合の工事です。難易度によって費用は大きく異なり、数万円から20万円以上かかることもあります。
- 解体・造作工事: 和式トイレの解体や、段差解消、間取り変更のための壁の造作など、大工工事が必要な場合の費用です。これも工事規模に応じて数万円から数十万円単位で変動します。
内装材の費用
便器だけでなく内装も一新する場合、使用する材料によって費用が変わります。
- 床材:
- クッションフロア(CF): ビニール製で耐水性が高く、掃除がしやすいのが特徴。価格も安価で、トイレの床材として最も一般的に使用されます。材料費は1㎡あたり2,000円~4,000円程度。
- フロアタイル: 塩ビ素材のタイル状の床材。クッションフロアより硬く、石目調や木目調などデザインが豊富で高級感があります。材料費は1㎡あたり4,000円~8,000円程度。
- 壁材:
- ビニールクロス: 価格が安く、デザインやカラーが豊富。防カビ、防臭、防水などの機能性を持つタイプもあります。最も一般的な壁材です。材料費は1㎡あたり1,000円~2,000円程度。
- 機能性壁紙(エコカラットなど): LIXILが販売するエコカラットなどが代表的。調湿機能や脱臭効果に優れ、デザイン性も高いですが、価格は高価です。材料費・施工費ともにビニールクロスより数倍高くなります。
古いトイレの処分費用
リフォームに伴って不要になった古い便器や便座、タンクなどを廃棄するための費用です。見積書では「廃材処分費」「産業廃棄物処理費」などと記載されます。
費用相場は5,000円~10,000円程度です。通常は工事費用や諸経費の中に含まれていることが多いですが、項目として明記されているか確認しておくと安心です。
その他の費用(諸経費など)
見積書には、上記以外の費用として「諸経費」や「現場管理費」といった項目が含まれるのが一般的です。これは、工事を円滑に進めるために必要な間接的なコストを指します。
- 内容: 現場への交通費、ガソリン代、駐車料金、書類作成費、現場管理の人件費、工事保険料などが含まれます。
- 相場: 工事費全体の5%~15%程度が目安とされています。
- ポイント: 「諸経費一式」としか書かれていない場合、何が含まれているのかが不透明です。内訳について質問し、納得のいく説明をしてもらえるかどうかも、信頼できる会社を見極めるポイントの一つになります。
トイレのグレード・種類別の費用相場
トイレ本体の価格は、リフォーム総額を左右する大きな要素です。そして、その価格は搭載されている機能、つまり「グレード」によって決まります。ここでは、トイレのグレードを「ロー」「ミドル」「ハイ」の3段階に分け、それぞれの特徴と工事費込みの費用相場を解説します。ご自身のライフスタイルや予算に合わせて、どのグレードが最適か考えてみましょう。
グレード | 搭載機能の目安 | トイレの種類(主流) | 費用相場(工事費込) |
---|---|---|---|
ローグレード | ・暖房便座 ・基本的な温水洗浄 |
組み合わせトイレ | 10万円 ~ 20万円 |
ミドルグレード | ・自動洗浄 ・脱臭機能 ・節水機能 ・フチなし形状 |
組み合わせトイレ、一体型トイレ | 20万円 ~ 35万円 |
ハイグレード | ・便ふた自動開閉 ・自動除菌 ・スマートフォン連携 ・温風乾燥 |
一体型トイレ、タンクレストイレ | 35万円 ~ 50万円以上 |
ローグレード(基本的な機能のみ)
ローグレードのトイレは、機能を必要最低限に絞ることで、価格を徹底的に抑えているのが特徴です。とにかく安くリフォームを済ませたい、あるいは別荘や賃貸物件など、使用頻度が低い場所に設置する場合に適しています。
- 費用相場(工事費込): 10万円~20万円
- 主な機能:
- 暖房便座
- おしり・ビデの基本的な温水洗浄機能
- 特徴:
- 主流は便器・タンク・便座が分かれた「組み合わせトイレ」です。
- デザインはシンプルで、機能も限定的ですが、近年のモデルであれば基本的な節水性能は備わっています。
- 温水洗浄便座がついていない、便座のみのモデルを選ぶとさらに費用を抑えることが可能です。
- 「トイレが壊れたので、とにかく早く安く交換したい」というニーズに最も応えやすいグレードと言えるでしょう。
ミドルグレード(標準的な機能)
ミドルグレードは、多くの人が求める便利な機能をバランス良く搭載しており、コストパフォーマンスに最も優れた価格帯です。どのグレードを選べば良いか迷ったら、まずこのミドルグレードを基準に検討するのがおすすめです。
- 費用相場(工事費込): 20万円~35万円
- 主な機能:
- 自動洗浄: 便座から立ち上がると自動で水を流してくれる機能。流し忘れを防ぎ、衛生的です。
- 脱臭機能: 使用中や使用後に、トイレ内の気になる臭いを自動で吸引・脱臭します。
- 節水機能: ローグレードよりもさらに少ない水量でパワフルに洗浄できる、優れた節水技術が搭載されています。
- フチなし形状: 便器のフチ裏の返しをなくすことで、汚れが溜まりにくく、サッとひと拭きで掃除が完了します。
- 節電機能: 使用しない時間帯の便座温度を自動で下げるなど、賢く電気代を節約します。
- 特徴:
- 掃除のしやすい「一体型トイレ」がこのグレードの主流ですが、高機能な「組み合わせトイレ」も選択肢に入ります。
- 基本的な機能に加えて、日々の使い勝手や掃除のしやすさを格段に向上させる機能が揃っています。
- 機能と価格のバランスを重視する、最も多くの家庭にとって満足度の高い選択肢となるグレードです。
ハイグレード(多機能・高デザイン性)
ハイグレードのトイレは、最新のテクノロジーを駆使した高度な機能と、洗練されたデザイン性を兼ね備えた最上位モデルです。日々のトイレ体験をより快適で贅沢なものにしたい、という強いこだわりを持つ方に適しています。
- 費用相場(工事費込): 35万円~50万円以上
- 主な機能:
- 便ふた自動開閉: センサーが人の動きを検知し、便ふたが自動で開閉します。手を触れる必要がなく衛生的です。
- 自動除菌機能: 使用後に便器内やノズルに除菌水を吹きかけ、黒ずみや雑菌の繁殖を抑制します。
- 温風乾燥: 温水洗浄の後、温かい風でおしりを乾かします。
- スマートフォン連携: スマートフォンアプリで洗浄の強さや位置を細かく設定したり、日々の使用状況(水道・電気代)を確認できる機能です。
- 夜間ライト(ほのかライト): 夜中にトイレに入った際に、便器周りがほのかに光り、足元を優しく照らします。
- 特徴:
- タンクがなくスタイリッシュな「タンクレストイレ」や、高級感のあるデザインの「一体型トイレ」がこのグレードの製品です。
- 価格は高くなりますが、それに見合うだけの圧倒的な快適性、清掃性、そして所有する満足感を得ることができます。
- トイレを単なる「用を足す場所」ではなく、「リラックスできる上質な空間」として捉えたい方におすすめです。
トイレリフォームの費用を安く抑える7つのコツ
トイレリフォームは決して安い買い物ではありません。だからこそ、少しでも費用を抑えたいと考えるのは当然のことです。ここでは、品質を落とさずにリフォーム費用を賢く節約するための、具体的で実践的な7つのコツをご紹介します。
① 複数のリフォーム会社から相見積もりを取る
これは、費用を抑える上で最も重要かつ効果的な方法です。面倒に感じるかもしれませんが、この一手間をかけるかどうかで、最終的な支払額が数万円、場合によっては10万円以上変わることもあります。
- なぜ重要か?:
- 適正価格の把握: 1社だけの見積もりでは、その金額が高いのか安いのか判断できません。最低でも3社から見積もりを取ることで、ご自身の希望するリフォーム内容の適正な相場が見えてきます。
- 価格競争の促進: 他社の見積もりがあることを伝えることで、リフォーム会社側も価格を意識せざるを得なくなり、自然と価格競争が働き、値引き交渉の材料にもなります。
- 提案内容の比較: 価格だけでなく、各社が提案するトイレの機種や工事内容、保証内容を比較検討できます。A社では気づかなかった点をB社が提案してくれるなど、より良いリフォームプランを見つけるきっかけにもなります。
- 注意点:
- 単に総額が安い会社を選ぶのではなく、見積書の内訳をしっかり確認しましょう。「一式」という項目が多い大雑把な見積もりを出す会社は注意が必要です。
- 安すぎる見積もりには裏がある可能性も考えられます。必要な工事が抜けていて後から追加費用を請求されたり、質の低い材料を使われたりするリスクがないか、慎重に見極める必要があります。
② トイレ本体のグレードや機能を見直す
リフォーム費用の中で大きな割合を占めるトイレ本体。ここの選び方次第で、費用は大きく変わります。
- 「本当に必要な機能か」を自問する: 便ふたの自動開閉や温風乾燥など、最新の機能は魅力的ですが、本当に自分たちの生活に必要不可欠でしょうか。「あれば便利」程度の機能であれば、思い切って削ることで数万円のコストダウンが可能です。家族で話し合い、必要な機能の優先順位を決めましょう。
- ミドルグレードを検討する: ハイグレードモデルでなくても、現在主流のミドルグレードのトイレには、節水、自動洗浄、脱臭といった十分快適な機能が標準装備されています。コストと機能のバランスが最も良いミドルグレードを中心に検討するのが賢い選択です。
- 型落ちモデルやアウトレット品を狙う: 新製品が出ると、旧モデル(型落ち品)が割引価格で販売されることがあります。機能的にほとんど遜色ない場合も多いため、リフォーム会社に在庫がないか尋ねてみるのも一つの手です。
③ 内装リフォームの範囲を限定する
トイレ空間全体を新しくしたい気持ちは分かりますが、内装工事の範囲を絞ることも有効な節約術です。
- 工事箇所を絞る: 壁紙はまだ綺麗だけれど、床の汚れが気になるという場合、工事を「床のクッションフロア張り替えのみ」に限定します。逆に床は問題なければ「壁紙の張り替えのみ」にするなど、気になる部分だけをリフォームすることで、数万円の費用を削減できます。
- 安価な内装材を選ぶ: 例えば、壁材を高機能なエコカラットから標準的なビニールクロスに、床材をフロアタイルからクッションフロアに変更するだけで、材料費と施工費を大幅に抑えることができます。
④ 補助金・助成金制度を活用する
国や地方自治体は、特定の条件を満たすリフォームに対して費用の一部を補助する制度を実施しています。これを使わない手はありません。
- 対象となる工事: 節水型トイレへの交換、バリアフリー改修(手すり設置など)が補助金の対象となることが多いです。
- 情報収集の方法: 後述する「トイレリフォームで使える補助金・助成金制度」の章で詳しく解説しますが、まずはリフォーム会社に「使える補助金はありますか?」と相談してみましょう。また、お住まいの市区町村のウェブサイトで「住宅リフォーム 補助金」などと検索するのも有効です。
- 注意点: 補助金制度には申請期間や予算の上限が定められています。リフォームを計画する早い段階で情報を集め、準備を進めることが重要です。
⑤ 介護保険の住宅改修費を利用する
ご家族に要支援または要介護認定を受けている方がいる場合、介護保険制度の「住宅改修費」を利用できる可能性があります。
- 対象工事: 手すりの設置、段差の解消、滑りにくい床材への変更、そして和式トイレから洋式トイレへの交換などが対象です。
- 支給額: 支給限度基準額20万円の範囲内で、かかった費用の7割~9割(所得に応じて自己負担は1割~3割)が支給されます。つまり、最大18万円の補助が受けられる可能性があります。
- 手続き: まずは担当のケアマネジャーに相談することが必須です。工事着工前の申請が必要なので、絶対に工事を始めてから相談しないように注意しましょう。
⑥ リフォーム会社のキャンペーンを利用する
リフォーム会社によっては、特定の時期や製品を対象としたお得なキャンペーンを実施していることがあります。
- キャンペーンの例:
- 「特定メーカーのトイレ〇〇%オフ!」
- 「便器交換+内装工事セットで〇〇万円ポッキリ」
- 「期間限定で工事費無料!」
- 狙い目の時期: 企業の決算期にあたる3月や9月、または需要が落ち着く夏場や冬場などは、受注を増やすためにキャンペーンが行われやすい傾向があります。
- 情報収集: リフォーム会社のウェブサイトや、新聞の折り込みチラシなどをこまめにチェックしてみましょう。
⑦ 地元の工務店に依頼する
テレビCMを放映しているような大手リフォーム会社だけでなく、地域に根差した地元の工務店に依頼することも検討してみましょう。
- メリット: 大手と比べて広告宣伝費や人件費、モデルハウスの維持費などがかからない分、工事費用が比較的安価な傾向にあります。また、地域での評判を大切にしているため、親身で丁寧な対応が期待できる場合も多いです。
- デメリット: 会社によって技術力やデザイン提案力、保証体制にばらつきがあります。依頼する前には、施工実績や口コミをしっかりと確認し、信頼できる会社かどうかを見極める必要があります。
トイレリフォームで使える補助金・助成金制度
トイレリフォームは、一定の条件を満たすことで国や自治体の補助金・助成金制度を利用できる場合があります。これらの制度をうまく活用すれば、リフォーム費用を大幅に軽減することが可能です。申請には期限や条件があるため、計画の早い段階で情報を集め、準備を進めることが重要です。
国が実施する補助金制度
国が主導する大規模な補助金制度は、省エネ性能の向上や子育て支援などを目的としています。
子育てエコホーム支援事業
「こどもエコすまい支援事業」の後継事業として、2024年に開始された制度です。省エネ改修を促進することを目的としており、トイレリフォームも対象に含まれる場合があります。
- 主な対象者: 子育て世帯(18歳未満の子を有する世帯)や若者夫婦世帯(夫婦いずれかが39歳以下の世帯)が中心ですが、これらの世帯に該当しない一般世帯もリフォームでの利用が可能です。
- 対象となるトイレ工事:
- 節水型トイレの設置: 1台あたり 22,000円 の補助。
- 手すりの設置: 1箇所あたり 5,000円 の補助。
- 申請のポイント:
- この事業に登録された「子育てエコホーム支援事業者」(多くのリフォーム会社が登録しています)を通じて申請する必要があります。個人での申請はできません。
- 補助額の合計が5万円以上になるリフォームが対象です。トイレリフォームだけでは5万円に満たない場合でも、断熱改修や高効率給湯器の設置など、他の対象工事と組み合わせることで申請が可能になります。
- 注意点: 予算が上限に達し次第、受付終了となります。利用を検討する場合は、早めにリフォーム会社に相談しましょう。
参照:国土交通省 子育てエコホーム支援事業 公式サイト
長期優良住宅化リフォーム推進事業
既存住宅の寿命を延ばし、性能を向上させるためのリフォームを支援する制度です。
- 対象となる工事: 耐震改修や省エネ改修(断熱工事など)といった、住宅全体の性能を向上させる大規模なリフォームが主対象です。
- トイレリフォームとの関連: トイレリフォーム単体での申請は難しいですが、上記のような大規模リフォームと併せて、バリアフリー改修(手すり設置、段差解消、和式から洋式への変更など)や節水型トイレの設置を行う場合に、補助の対象となる可能性があります。
- 補助額: 工事費用の一部(例:1/3など)が補助され、補助上限額も高いですが、その分、住宅性能に関する専門的な要件を満たす必要があります。
- ポイント: この制度の利用を検討する場合は、専門知識を持ち、申請実績のあるリフォーム会社に相談することが不可欠です。
参照:国土交通省 長期優良住宅化リフォーム推進事業 公式サイト
地方自治体が実施する補助金・助成金制度
国だけでなく、お住まいの都道府県や市区町村が独自にリフォーム補助制度を実施している場合があります。
- 制度の例:
- 高齢者住宅リフォーム助成: 高齢者の安全な暮らしを支援するため、バリアフリー改修費用の一部を助成。
- 省エネ設備導入補助: 節水型トイレなどの省エネ機器の設置に対して補助。
- 三世代同居・近居支援: 親世帯と子世帯が同居・近居するための住宅リフォーム費用を補助。
- 地元業者利用促進: 市内のリフォーム業者を利用して工事を行う場合に商品券などを交付。
- 情報収集の方法:
- 「〇〇市 住宅リフォーム 補助金」「△△区 トイレ 助成金」 のように、お住まいの自治体名と関連キーワードで検索するのが最も手軽で確実です。
- 自治体のウェブサイトや広報誌を確認したり、役所の担当窓口(建築指導課、高齢者福祉課など)に直接問い合わせるのも良いでしょう。
- ポイント: 自治体の制度は、国の制度と併用できる場合もあります。 また、受付期間が短かったり、年度初めに募集が開始されてすぐに予算上限に達してしまうことも多いため、こまめな情報チェックが成功のカギとなります。
介護保険の住宅改修
要支援・要介護認定を受けている方が、自宅での生活を安全・快適に送れるようにするための住宅改修に対して、費用の一部が支給される制度です。
- 対象者: 要支援1・2、または要介護1~5の認定を受けている方で、その方が実際に居住する住宅の改修が対象です。
- 対象となるトイレ関連工事:
- 手すりの取付け
- 段差の解消
- 滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更(例:滑りにくい床材への変更)
- 引き戸等への扉の取替え
- 洋式便器等への便器の取替え(和式から洋式への変更など)
- 支給額:
- 改修費用の上限は20万円です。
- そのうち、所得に応じて費用の7割、8割、または9割が支給されます(自己負担は1割~3割)。例えば、20万円の工事を行った場合、自己負担1割の方であれば18万円が支給され、実質負担は2万円で済みます。
- 手続きの重要ポイント:
- 必ず工事着工前に、市区町村への事前申請が必要です。 工事後の申請は認められません。
- まずは担当のケアマネジャー(または地域包括支援センター)に相談し、「住宅改修が必要な理由書」を作成してもらうことから始まります。
- ケアマネジャー、リフォーム会社と連携しながら手続きを進めることが不可欠です。
参照:厚生労働省 介護保険における住宅改修
失敗しないリフォーム会社の選び方
満足のいくトイレリフォームを実現するためには、費用だけでなく、信頼できるリフォーム会社を選ぶことが極めて重要です。価格の安さだけで選んでしまうと、「仕上がりが雑だった」「すぐに不具合が出たのに対応してくれない」といったトラブルにつながりかねません。ここでは、失敗しないためのリフォーム会社の選び方のポイントを4つご紹介します。
水回りのリフォーム実績が豊富か
トイレリフォームは、単に便器を置くだけの簡単な作業ではありません。給水管や排水管を扱う専門的な知識と技術が不可欠な「水回り工事」です。
- なぜ実績が重要か:
- トラブル対応力: 水漏れは、住宅に深刻なダメージを与える重大なトラブルです。水回り工事の実績が豊富な会社は、様々な現場を経験しているため、予期せぬ事態にも適切に対応できるノウハウを持っています。
- 専門知識: 最適な配管の取り回しや、水圧の問題、排水の勾配など、目に見えない部分での専門的な判断が、リフォーム後の快適さや長期的な安心につながります。
- 確認方法:
- 会社のウェブサイト: 施工事例のページを見て、トイレやキッチン、浴室などの水回り工事の事例がどれくらい掲載されているかを確認しましょう。
- 担当者に直接質問: 「これまでどのようなトイレリフォームを手がけてきましたか?」と具体的に尋ねてみましょう。その際の回答の的確さや自信も判断材料になります。
- 保有資格の確認: 「給水装置工事主任技術者」や「排水設備工事責任技術者」といった水回り関連の国家資格を持つスタッフが在籍しているかどうかも、技術力を測る一つの指標です。
見積書の内容が詳細で明確か
提出された見積書は、その会社の仕事に対する姿勢を映す鏡です。信頼できる会社は、顧客が納得できるよう、丁寧で分かりやすい見積書を作成します。
- 良い見積書の特徴:
- 項目が細かい: 「トイレリフォーム一式 〇〇円」といった大雑把なものではなく、「商品名(メーカー・型番)」「解体撤去費」「設置工事費」「内装工事費(壁・床)」「廃材処分費」「諸経費」など、項目ごとに単価と数量が明記されている。
- 使用する製品が明確: 交換する便器や使用する壁紙・床材のメーカー名、製品名、型番がきちんと記載されている。これにより、意図しない製品を使われるのを防げます。
- 避けるべき見積書:
- 「〇〇工事 一式」という表記が多い。
- 諸経費の内訳が不明瞭。
- 備考欄に「追加工事費は別途」など、後から費用が発生する可能性を曖昧に示唆している。
- ポイント: 見積書に少しでも不明な点があれば、遠慮なく担当者に質問しましょう。その際に、面倒くさがらずに丁寧に説明してくれるかどうかが、その会社の誠実さを見極める重要なポイントです。
保証やアフターサービスが充実しているか
リフォームは工事が終われば完了ではありません。万が一の不具合に備えて、どのような保証があるかを確認することは非常に重要です。
- 確認すべき2種類の保証:
- 製品保証: トイレ本体など、設置した機器に対するメーカーの保証です。通常1~2年程度が一般的です。
- 工事保証: リフォーム会社が、自社が行った工事部分(例:配管の接続ミスによる水漏れなど)に対して独自に設けている保証です。期間は会社によって様々で、1年~10年と幅があります。
- チェックポイント:
- 保証内容と期間: 「何を」「どれくらいの期間」保証してくれるのかを、必ず書面(保証書)で確認しましょう。口約束はトラブルのもとです。
- アフターサービスの有無: 「工事後に不具合があった場合、すぐに駆けつけてくれますか?」「定期的な点検サービスはありますか?」といった、工事後のサポート体制についても確認しておくと、より安心です。
口コミや評判が良いか
実際にその会社でリフォームをした人の声は、非常に参考になる情報源です。
- 情報収集の方法:
- インターネット: Googleマップの口コミや、リフォーム関連の比較サイト、SNSなどで、会社の評判を調べてみましょう。
- 知人・友人: もし身近にリフォーム経験者がいれば、利用した会社の感想を聞くのが最も信頼できる方法です。
- 口コミを見るときの注意点:
- 良い口コミだけでなく、悪い口コミの内容にも目を通しましょう。どのような点に不満が出やすいのか、そしてその不満に対して会社がどのような対応をしたのか(またはしていないのか)を見ることで、その会社の体質が垣間見えます。
- 最終的な決め手:
- 様々な情報を集めた上で、最終的に重要になるのは担当者との相性です。こちらの要望を親身に聞いてくれるか、説明は分かりやすいか、質問へのレスポンスは速いかなど、コミュニケーションの取りやすさも大切にしましょう。「この人になら安心して任せられる」と心から思える会社を選ぶことが、後悔しないリフォームにつながります。
トイレリフォームの流れと工事期間
リフォームを考え始めてから、実際に新しいトイレが完成するまで、どのようなステップを踏むのでしょうか。ここでは、トイレリフォームの一般的な流れと、工事内容別の所要期間の目安を解説します。全体像を把握しておくことで、スムーズに計画を進めることができます。
リフォームの相談・現地調査
すべてはここから始まります。インターネットや知人の紹介などで気になったリフォーム会社に連絡を取り、リフォームの相談をします。
この段階では、「古くなったトイレを新しくしたい」「掃除しやすいタンクレストイレに興味がある」といった大まかな要望と、考えている予算を伝えます。その後、担当者が実際に自宅を訪問し、現地調査を行います。
- 現地調査で確認すること:
- 現在のトイレの寸法(幅、奥行き、高さ)
- ドアの位置や開き方
- 排水管の位置と種類(床排水か壁排水か)
- 電源コンセントの有無
- 床や壁の状態
見積もり・プランの提案
現地調査の結果とヒアリングした要望をもとに、リフォーム会社が具体的なリフォームプランと見積書を作成します。通常、現地調査から1週間~10日ほどで提示されます。
この段階で、使用するトイレの機種や内装材のサンプル(カタログや実物見本)を見ながら、詳細な仕様を決めていきます。複数の会社から見積もりを取っている場合は、各社のプランと金額をじっくり比較検討しましょう。
契約
提案されたプランと見積金額に納得したら、リフォーム会社と工事請負契約を結びます。契約は非常に重要なステップですので、契約書の内容を隅々まで確認し、不明な点は必ず解消してから署名・捺印するようにしましょう。
- 契約書で確認すべき主な項目:
- 工事内容の詳細
- 最終的な金額と支払い条件(着手金、完了金など)
- 工事期間(着工日と完了予定日)
- 使用する製品のメーカー名・型番
- 保証内容
- 遅延や事故発生時の対応(クーリング・オフに関する記載も含む)
工事着工
契約後、トイレの製品や内装材の発注が行われ、納品に合わせて工事日が決まります。
工事当日は、まず作業スペース周辺の床や壁が傷つかないように、シートやパネルで養生を行います。また、マンションの場合は、事前に管理組合に届け出をし、工事当日は近隣の住戸へ挨拶回りを行うのがマナーです。その後、古いトイレの撤去から工事が始まります。
完成・引き渡し
工事が完了したら、リフォーム会社の担当者と一緒に仕上がりを確認します。
- チェックポイント:
- 便器や壁、床に傷や汚れがないか
- トイレが正常に流れるか、温水洗浄便座などの機能は正しく作動するか
- 水漏れがないか
- ドアの開閉はスムーズか
問題がなければ、新しいトイレの操作方法や手入れの仕方についての説明を受け、引き渡しとなります。この時点で工事代金の残金を支払い、保証書を受け取ってすべて完了です。
工事期間の目安
トイレリフォームの工事期間は、その内容によって大きく異なります。工事中はトイレが使えなくなるため、期間を事前に把握しておくことが重要です。
工事内容 | 工事期間の目安 | トイレが使えない時間 |
---|---|---|
便器・便座の交換のみ | 半日 ~ 1日 | 3~5時間程度 |
便器交換+内装リフォーム | 1日 ~ 2日 | 1日目はずっと使えないことが多い |
和式から洋式へのリフォーム | 2日 ~ 4日 | 全期間中、基本的に使用不可 |
トイレの場所を移動・増設 | 4日 ~ 1週間以上 | (既存トイレは使える場合が多い) |
便器の交換だけであれば、朝から作業を始めれば夕方には使えるようになることがほとんどです。しかし、内装工事や和式からのリフォームなど、工事が2日以上にわたる場合は、その間トイレが使えなくなります。その間の対策として、近隣の商業施設や公園のトイレを利用したり、リフォーム会社によっては仮設トイレを設置(有料の場合あり)してくれたりするので、事前に相談しておきましょう。
トイレリフォームに関するよくある質問
最後に、トイレリフォームを検討している多くの方が抱く疑問について、Q&A形式でお答えします。
マンションでもトイレリフォームはできますか?
A: はい、ほとんどの場合で可能です。
ただし、戸建て住宅と異なり、マンションには「管理規約」という独自のルールがあります。リフォームを行う前には、必ず管理規約を確認し、管理組合に申請する必要があります。
- 管理規約で定められている主な内容:
- 工事可能な曜日や時間帯の制限
- 床材の遮音等級の規定(階下への音漏れを防ぐため)
- 資材搬入・搬出のルール
- 注意点:
- マンションの構造上、トイレの壁(コンクリートの構造壁など)の撤去や、排水管(共用部分である縦管)の位置を動かすような大幅な移動・増設は基本的にできません。
- リフォーム会社を選ぶ際には、マンションリフォームの実績が豊富な会社を選ぶと、規約の確認や管理組合への手続きなどもスムーズに進めてくれるため安心です。
工事中はトイレが使えなくなりますか?
A: はい、工事を行っている間は基本的に使えなくなります。
トイレリフォームでは、既存の便器を取り外し、給水管を止めて作業を行うため、工事中のトイレ使用はできません。
- 工事期間と対策:
- 半日~1日で終わる工事の場合: 事前に近所のコンビニやスーパー、公園などの公共トイレの場所を確認しておくと安心です。
- 2日以上かかる工事の場合: 2階にもトイレがある場合は問題ありませんが、トイレが1つしかない場合は対策が必要です。リフォーム会社に相談すれば、有料で仮設トイレをレンタル・設置してくれる場合があります。また、携帯トイレ(非常用トイレ)を準備しておくのも一つの手です。工事のスケジュールを事前にしっかりと確認し、対策を立てておきましょう。
リフォーム費用にローンは使えますか?
A: はい、利用できます。
トイレリフォームでも、各種リフォームローンを利用することが可能です。手元の資金に余裕がない場合でも、ローンを活用することで希望のリフォームを実現できます。
- 主なリフォームローンの種類:
- 銀行のリフォームローン: 比較的金利が低い傾向にありますが、審査が厳しい場合があります。
- 信販会社のリフォームローン: リフォーム会社が提携している場合が多く、手続きが比較的簡単でスピーディーなのが特徴です。金利は銀行よりやや高めになる傾向があります。
- ポイント:
- ローンを利用する場合は、金利や返済期間、手数料などを複数の金融機関で比較検討することが重要です。
- リフォーム会社によっては、ローンに関する相談にも乗ってくれるので、まずは担当者に尋ねてみると良いでしょう。
トイレ本体を自分で購入して設置だけを依頼できますか?
A: 対応してくれる会社もありますが、一般的には推奨されません。これを「施主支給」と呼びます。
インターネット通販などでトイレ本体を安く購入し、工事だけをプロに依頼して費用を抑えたいと考える方もいるでしょう。しかし、この方法にはいくつかのデメリットとリスクが伴います。
- 施主支給のデメリット:
- 工事を断られる・割高になる: 会社によっては施主支給の工事を一切受け付けていなかったり、受け付けても工事費を通常より高く設定している場合があります。
- 保証の問題: 万が一、設置後に水漏れなどの不具合が発生した場合、その原因が「製品の初期不良」なのか「工事のミス」なのかの切り分けが難しく、メーカーとリフォーム会社の間で責任の所在が曖昧になるリスクがあります。
- 適合しないリスク: ご自身で購入したトイレが、自宅の排水管の位置や水圧に適合せず、設置できないという最悪のケースも考えられます。
- 結論:
- 一時的に数千円~数万円安くなる可能性はありますが、上記のようなリスクを考慮すると、基本的にはトイレ本体の購入から設置工事までを、一括でリフォーム会社に依頼するのが最も安全で安心です。製品と工事の両方に責任を持ってもらえるため、長期的に見て賢明な選択と言えるでしょう。