東京でビジネスを展開する上で、オフィスの賃料は事業運営における最も大きな固定費の一つです。特に、日本の経済活動の中心地である東京では、エリアやビルのグレードによって賃料相場が大きく変動します。適切なオフィスを適切なコストで確保することは、企業の成長戦略、人材確保、そしてブランディングにおいて極めて重要な要素となります。
しかし、「東京のオフィス賃料は高い」という漠然としたイメージはあっても、「具体的にどのエリアがいくらくらいなのか」「自社の規模や予算に合ったオフィスはどこで見つかるのか」といった具体的な情報を持っている方は少ないかもしれません。また、賃料の相場は経済情勢や社会の変化によって常に変動しており、最新の市場動向を把握しておくことが不可欠です。
この記事では、東京でのオフィス移転や新規開設を検討している経営者や担当者の方に向けて、複雑で分かりにくい東京のオフィス賃料相場を徹底的に解説します。
まず、オフィス賃料の基本的な知識から、坪単価の計算方法、賃料と共益費の内訳といった基礎を固めます。次に、2024年最新のデータに基づき、東京23区および都心5区の平均賃料や空室率の推移を分析し、今後の市場予測についても触れます。
さらに、人気の都心5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)から、コストパフォーマンスに優れた準都心エリアまで、それぞれの特徴と具体的な賃料相場を詳しく比較。企業の規模に応じた坪数別の賃料目安も紹介します。
加えて、賃料が決まる4つの重要なポイント、賃料を賢く抑えるための6つの具体的な方法、そして見落としがちな賃料以外の初期費用まで、オフィス契約に関わるコストを網羅的に解説します。最後に、契約までの具体的なステップや、目的に合ったオフィス探しに役立つおすすめの方法も紹介します。
この記事を最後まで読めば、東京の複雑なオフィス市場を深く理解し、自社に最適なオフィスを戦略的に選ぶための知識と視点が得られるはずです。 ぜひ、貴社のオフィス戦略の羅針盤としてご活用ください。
目次
オフィス賃料の基本知識
東京でオフィスを探し始めると、まず目にするのが「賃料」や「坪単価」といった専門用語です。これらの言葉の意味を正確に理解することは、物件を正しく比較検討し、予算内で最適な選択をするための第一歩となります。ここでは、オフィス賃料を構成する基本的な要素と、物件比較の基準となる坪単価について詳しく解説します。
賃料の内訳(賃料と共益費)
オフィスビルの月額コストは、一般的に「賃料」と「共益費(管理費)」の二つの要素で構成されています。物件情報には、これらが合算された「グロス価格」で表示されることもあれば、それぞれが分けて記載されていることもあります。
賃料(ちんりょう)
賃料は、オフィススペース(専有部分)を使用するための対価として、貸主(オーナー)に支払う料金です。これはオフィス契約における最も基本的な費用であり、月額コストの大部分を占めます。賃料の金額は、後述する立地や築年数、ビルのグレードなど、様々な要因によって決定されます。
共益費(きょうえきひ)/ 管理費(かんりひ)
共益費、または管理費は、ビルの共用部分を維持・管理するために必要な費用を、入居テナントが分担して支払うものです。具体的には、以下のような費用が含まれます。
- 共用部分の光熱費: エントランス、廊下、エレベーター、共用トイレなどの照明や空調にかかる電気代。
- 清掃費: 共用部分の日常的な清掃や定期的なワックスがけなどの費用。
- 設備メンテナンス費: エレベーター、空調設備、消防設備、給排水設備などの定期点検や保守にかかる費用。
- 警備費: 機械警備システムの利用料や、警備員を配置している場合はその人件費。
- 管理スタッフの人件費: ビル管理人の人件費など。
重要なのは、共益費に何が含まれるかはビルによって異なるという点です。 例えば、専有部分の電気代や水道代が共益費に含まれているケースもあれば、別途実費で請求されるケースもあります。特に空調に関しては、セントラル空調(ビル全体で一括管理)の場合は共用部分の光熱費として共益費に含まれることが多いですが、個別空調の場合は各テナントが専有部分の電気代として負担するのが一般的です。
契約前には、必ず賃貸借契約書や重要事項説明書で、共益費の範囲と、それ以外に発生する可能性のある費用(専有部分の光熱費など)を詳細に確認することが不可欠です。
坪単価の計算方法と目安
複数のオフィス物件を比較検討する際に、最も重要な指標となるのが「坪単価」です。坪単価とは、1坪(約3.3平方メートル)あたりの月額賃料のことを指し、物件の賃料水準を客観的に比較するための共通の物差しとなります。
坪単価の計算方法
坪単価は以下の計算式で算出します。
坪単価 = 月額費用 ÷ 賃貸面積(坪)
ここで注意が必要なのが、「月額費用」に何を含めるかによって、2種類の坪単価が存在する点です。
種類 | 計算方法 | 特徴 |
---|---|---|
ネット坪単価 | 月額賃料 ÷ 賃貸面積(坪) | 純粋な賃料のみを基準にした単価。共益費が変動する場合や、物件ごとの賃料水準を厳密に比較したい場合に用いる。 |
グロス坪単価 | (月額賃料+月額共益費) ÷ 賃貸面積(坪) | 賃料と共益費を合算した、実際に支払う総額を基準にした単価。テナントが負担するランニングコスト全体を把握しやすい。 |
一般的に、オフィス物件の比較ではグロス坪単価を用いるのが主流です。なぜなら、ビルによっては賃料を安く設定し、その分共益費を高くしているケースもあるため、賃料(ネット)だけで比較すると、実際のコスト感を見誤る可能性があるからです。複数の物件を比較する際は、必ず同じ基準(グロス坪単価)で評価することが重要です。
坪単価の目安
東京のオフィス賃料の坪単価は、エリアによって大きく異なります。例えば、2024年時点での大まかな目安としては、以下のようになります。(詳細なエリア別相場は後述)
- 都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷): 20,000円~40,000円以上
- 準都心エリア(品川・目黒・豊島など): 15,000円~25,000円程度
- その他23区エリア: 10,000円~18,000円程度
例えば、渋谷エリアでグロス坪単価が25,000円の40坪のオフィスを借りる場合、月額のランニングコストは以下のようになります。
25,000円(グロス坪単価) × 40坪 = 1,000,000円(月額費用)
このように、坪単価を把握しておけば、希望するエリアと広さからおおよその月額費用をシミュレーションできます。オフィス探しを始める前に、まず自社の予算から支払可能な坪単価の上限を算出しておくことが、効率的な物件探しの鍵となります。
【2024年最新】東京のオフィス市場の動向
東京のオフィス市場は、経済の動きや働き方の変化を敏感に反映し、常に変動しています。オフィス移転を成功させるためには、過去のデータだけでなく、最新の市場動向を正確に把握し、将来を見据えた判断を下すことが不可欠です。ここでは、主要な不動産サービス企業が公表している最新データに基づき、2024年現在の東京のオフィス市場の動向と今後の見通しを解説します。
東京23区・都心5区の平均賃料
東京のオフィス市場を語る上で中心となるのが、都心5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)です。これらのエリアは、交通の利便性、ビジネスインフラの集積度、ブランドイメージの高さから、常に高い需要があります。
三幸エステート株式会社が公表している「オフィスマーケットレポート 2024年5月度」によると、東京23区および都心5区の平均賃料(坪単価)は以下のようになっています。
エリア | 平均賃料(円/坪) |
---|---|
東京23区 | 20,380円 |
都心5区 | 22,238円 |
(参照:三幸エステート株式会社「オフィスマーケットレポート 2024年5月度」)
都心5区の平均賃料は、東京23区全体の平均よりも約1割高い水準にあり、依然として東京のオフィス市場を牽引していることがわかります。特に、大規模な再開発が進むエリアや、交通の要衝となる駅周辺では、高水準の賃料が維持されています。
一方で、コロナ禍以降、企業がオフィス戦略を見直す中で、賃料水準だけでなく、従業員の働きやすさや通勤のしやすさといった観点から、都心5区以外のエリアを選択する動きも出てきています。このため、一口に「東京のオフィス」と言っても、エリアによる賃料の差は大きく、自社の優先順位に応じて検討するエリアを広げることが、コスト最適化に繋がります。
空室率と平均賃料の推移
オフィスの賃料相場を左右するもう一つの重要な指標が「空室率」です。空室率は、市場に出ているオフィスビルのうち、空いている部屋の割合を示します。
- 空室率が低い(供給が少ない): 貸手市場となり、賃料は上昇傾向になる。
- 空室率が高い(供給が多い): 借手市場となり、賃料は下落傾向になる。
三鬼商事が発表した2024年5月時点の東京ビジネス地区(都心5区)のオフィスビル市況によると、都心5区の平均空室率は5.58%でした。これは、前月比で0.18ポイントの低下、前年同月比では0.63ポイントの低下となり、改善傾向が見られます。
(参照:三鬼商事株式会社「オフィスレポート 東京 2024年5月」)
コロナ禍でテレワークが急速に普及した2020年以降、企業のオフィス解約や縮小移転が相次ぎ、空室率は一時的に上昇しました。しかし、経済活動の正常化に伴い、出社回帰の動きや、より質の高いオフィス環境を求める「アップグレード移転」の需要が増加。特に、築年数が浅く、設備が充実した大規模ビルでは空室の消化が進んでいます。
一方で、平均賃料の推移を見ると、都心5区の平均賃料は2024年5月時点で19,635円/坪となり、22ヶ月連続で下落しています。ただし、下落幅は縮小しており、底打ち感が強まっています。
この「空室率は改善しているが、平均賃料は緩やかに下落している」という状況は、オフィス市場の二極化を示唆しています。つまり、好立地で高スペックなビルには需要が集中して空室が埋まる一方、築年数が古い、あるいは立地が劣るビルではテナント獲得のために賃料を下げざるを得ない状況が続いていると考えられます。
今後のオフィス市場の予測
最新のデータと市場の動きから、今後の東京オフィス市場は以下のようなトレンドで推移すると予測されます。
- 需要の二極化の進展:
前述の通り、「質」を求める動きは今後さらに加速すると見られます。企業は単なる執務スペースとしてだけでなく、コミュニケーションの活性化、企業文化の醸成、優秀な人材の獲得といった付加価値をオフィスに求めるようになっています。そのため、最新の設備を備え、環境性能が高く、アクセス良好な「プレミアムビル」や「Aグレードビル」への需要は底堅く、賃料も高値で推移するでしょう。一方で、差別化が難しい中小規模ビルや築古ビルは、賃料の引き下げやフリーレントの付与など、テナント誘致のためのインセンティブ競争が続くと予測されます。 - ハイブリッドワークに対応したオフィスへの需要増:
完全なリモートワークから、出社と在宅を組み合わせる「ハイブリッドワーク」へと移行する企業が増えています。これに伴い、オフィスの役割も変化しています。個人作業用のデスクスペースを減らし、代わりにWeb会議用の個室ブース、チームで集まるコラボレーションスペース、リフレッシュできるラウンジなどを充実させた、新しい働き方に最適化されたオフィスレイアウトが求められます。このようなニーズに対応できる柔軟性の高いビルが人気を集めるでしょう。 - ESG/SDGsへの意識の高まり:
環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)を重視するESG経営の観点から、省エネ性能の高いビルや、再生可能エネルギーを利用しているビルを選ぶ企業が増えています。ビルが「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」認証などを取得しているかどうかが、テナント選択の重要な基準の一つになりつつあります。こうした環境配慮型オフィスは、企業価値の向上にも繋がるため、今後ますます需要が高まると見込まれます。
まとめると、2024年以降の東京オフィス市場は、借手にとって選択肢が広がる一方で、物件の「質」を見極める目がより一層重要になります。 自社のオフィス戦略を明確にし、どのような価値をオフィスに求めるのかを定義した上で、市場の動向を注視しながら物件選びを進めることが成功の鍵となるでしょう。
【都心5区】エリア別オフィス賃料相場
東京のビジネスシーンをリードする都心5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)。これらのエリアはそれぞれ異なる特徴を持ち、集まる企業や街の雰囲気も様々です。自社の業種や企業文化、ターゲットとする顧客層などを考慮してエリアを選ぶことが、ビジネスの成功に繋がります。ここでは、各エリアの魅力と最新の賃料相場を詳しく見ていきましょう。
エリア | 平均賃料(円/坪) | 特徴 |
---|---|---|
千代田区 | 約25,000円~45,000円 | 日本の政治・経済の中心地。大企業、金融機関、士業が集積。圧倒的なステータス性。 |
中央区 | 約22,000円~38,000円 | 歴史ある商業・金融の街。老舗企業と新興企業が共存。交通の利便性が高い。 |
港区 | 約23,000円~40,000円 | 国際的で多様なビジネスエリア。外資系、IT、メディア、スタートアップが集まる。 |
新宿区 | 約18,000円~30,000円 | 超高層ビル群が象徴的な巨大ビジネス拠点。交通のハブであり、多様な業種に対応。 |
渋谷区 | 約22,000円~35,000円 | IT・スタートアップの聖地。クリエイティブな雰囲気。若者文化とビジネスが融合。 |
※賃料はビルグレードや駅からの距離により大きく変動します。上記はあくまで目安です。 |
千代田区(丸の内・大手町・番町など)の賃料相場と特徴
千代田区は、皇居を中心に、国会議事堂や官公庁、最高裁判所が集まる日本の政治の中枢です。同時に、丸の内・大手町エリアには日本を代表する大企業やメガバンクの本社が集中しており、名実ともに日本経済の心臓部と言えるでしょう。
特徴:
- 圧倒的なステータスと信頼性: 「千代田区丸の内」にオフィスを構えることは、それ自体が企業の信頼性やブランドイメージを大きく高めます。特に、金融、コンサルティング、法律事務所など、信頼性が重視される業種にとっては最高のロケーションです。
- 最高水準のオフィスビル: 丸の内・大手町エリアには、最新鋭の設備と最高水準のセキュリティ、優れた耐震性を備えた「プレミアムビル」「Aグレードビル」が林立しています。
- 優れた交通アクセス: 東京駅を擁し、JR各線、新幹線、多数の地下鉄路線が利用可能。国内・海外へのアクセスも抜群です。
賃料相場:
賃料は東京で最も高く、坪単価は30,000円台後半から40,000円を超える物件も珍しくありません。特に東京駅周辺の超一等地では、坪単価50,000円に迫るケースもあります。一方で、神田や秋葉原、九段下、番町といったエリアでは、比較的手頃な物件も見つかりますが、それでも都内では高水準です。
こんな企業におすすめ:
- 企業のブランドイメージや社会的信用を最大限に高めたい大企業、中堅企業
- メガバンクや大手証券会社など、金融機関との連携が重要な企業
- 国内外の重要なクライアントとの折衝が多い企業
中央区(銀座・日本橋・八重洲など)の賃料相場と特徴
中央区は、江戸時代から商業・金融の中心地として栄えた歴史を持つエリアです。日本橋には三越や髙島屋といった老舗百貨店や日本銀行本店が、銀座には高級ブランド店や画廊が軒を連ね、伝統と革新が共存しています。
特徴:
- 歴史と風格のあるビジネス街: 日本橋・京橋エリアは、製薬会社や証券会社などが古くから拠点を構える伝統的なオフィス街です。近年は「コレド室町」などの再開発により、新たな賑わいも生まれています。
- 交通の要衝: 東京駅八重洲口に隣接し、日本橋駅や銀座駅を中心に多数の地下鉄が乗り入れているため、都内各所へのアクセスが非常に便利です。
- 多様なオフィスストック: 最新鋭の超高層ビルから、歴史を感じさせる中小規模のビルまで、多種多様なオフィス物件が存在します。
賃料相場:
銀座エリアは商業地としての価値が非常に高く、オフィス賃料も高騰しています。日本橋や八重洲エリアも千代田区に次ぐ高水準で、坪単価は25,000円~38,000円程度が目安となります。人形町や茅場町、月島といったエリアでは、比較的リーズナブルな物件も見つけやすいです。
こんな企業におすすめ:
- 金融、証券、製薬など、歴史と信頼性を重んじる業種の企業
- 地方や海外からのアクセスを重視する企業の東京本社・支社
- 伝統的なビジネスと新しいカルチャーの融合を目指す企業
港区(新橋・虎ノ門・赤坂・品川など)の賃料相場と特徴
港区は、都心5区の中で最も多様な顔を持つエリアです。新橋・虎ノ門は官公庁に近く、赤坂・六本木は華やかな商業・エンターテインメントの街、麻布・広尾は高級住宅街、そして品川は交通のハブとして、それぞれ異なる特徴を持っています。
特徴:
- 国際的で多様な企業が集積: 大使館が多く、外資系企業の日本法人が数多く拠点を構えています。また、六本木ヒルズや東京ミッドタウンには大手IT企業やメディア関連企業が集まり、虎ノ門エリアはスタートアップの支援拠点も充実しています。
- 活発な再開発: 虎ノ門ヒルズ、麻布台ヒルズ、品川駅周辺など、エリアの価値をさらに高める大規模な再開発が継続的に行われています。
- 職住近接の実現: 青山・麻布・白金台といった高級住宅街も区内にあり、職住近接のライフスタイルを重視する経営者や従業員にとって魅力的です。
賃料相場:
虎ノ門や赤坂、六本木といった人気エリアでは、坪単価は25,000円~40,000円と高水準です。特に新築の大規模ビルでは、千代田区に匹敵する賃料となることもあります。一方で、新橋や浜松町、田町エリアでは、築年数が経過したビルを中心に、比較的交渉の余地がある物件も存在します。
こんな企業におすすめ:
- 外資系企業、IT・Webサービス企業、広告・メディア関連企業
- グローバルなビジネス展開を目指すスタートアップ・ベンチャー企業
- クリエイティブな発想や多様性を重視する企業
新宿区(西新宿など)の賃料相場と特徴
新宿区は、東京都庁を擁する西新宿の超高層ビル群が象徴的な、日本有数のビジネス拠点です。世界一の乗降客数を誇る新宿駅を中心に、交通網が四方八方に広がり、ビジネスと商業がダイナミックに融合しています。
特徴:
- 抜群の交通利便性: JR、私鉄、地下鉄が多数乗り入れ、都内はもちろん、関東近郊のどこからでもアクセスしやすいのが最大の強みです。従業員の通勤利便性を重視する企業にとっては最適な立地です。
- 多様な業種の集積: 西新宿の超高層ビルには大手企業や金融機関が入居する一方、新宿三丁目や四谷周辺には中小企業やクリエイティブ系のオフィスも多く、多様な業種を受け入れる懐の深さがあります。
- 豊富なオフィス供給量: 超高層ビルから中小規模のビルまで、オフィスストックが豊富で、企業の規模や予算に応じた物件を見つけやすいエリアです。
賃料相場:
西新宿の超高層ビルは、グレードが高く賃料も高水準ですが、都心3区(千代田・中央・港)と比較すると、坪単価は18,000円~30,000円程度と、コストパフォーマンスに優れています。新宿駅東口や南口、あるいは四谷、高田馬場といったエリアでは、さらに手頃な賃料の物件も探せます。
こんな企業におすすめ:
- 幅広いエリアから人材を確保したい企業
- 営業拠点として、顧客へのアクセス性を重視する企業
- コストとステータスのバランスを重視する中堅・中小企業
渋谷区(渋谷・恵比寿など)の賃料相場と特徴
渋谷区は、長らく若者文化の発信地として知られてきましたが、近年の大規模再開発を経て、IT・スタートアップの一大集積地へと変貌を遂げました。「ビットバレー」の愛称で親しまれ、多くのメガベンチャーや成長企業がこの地に本社を構えています。
特徴:
- IT・スタートアップの聖地: 革新的なテクノロジー企業やクリエイティブなベンチャー企業が数多く集まり、優秀なエンジニアやクリエイターを惹きつけています。企業間の交流や情報交換も活発です。
- クリエイティブで先進的なイメージ: 「渋谷」という地名自体が持つ、先進的でクリエイティブなイメージは、採用活動や企業のブランディングにおいて強力な武器となります。
- 進化し続ける街: 渋谷駅周辺では、渋谷ヒカリエ、渋谷ストリーム、渋谷スクランブルスクエアなどが次々と開業。今後も新たな開発計画が目白押しで、街全体が常に進化し続けています。
賃料相場:
IT企業の旺盛な需要を背景に、賃料は上昇傾向にあります。特に駅周辺の新しい大規模ビルは港区に匹敵する水準です。坪単価の目安は22,000円~35,000円程度。恵比寿や代官山も人気のエリアで賃料は高めですが、初台や幡ヶ谷、笹塚といったエリアまで範囲を広げると、比較的リーズナブルな物件も見つかります。
こんな企業におすすめ:
- IT・Webサービス、ゲーム、アプリ開発などのテクノロジー企業
- 優秀な若手人材やクリエイターの採用を強化したい企業
- 先進性やイノベーションを企業文化とするスタートアップ・ベンチャー企業
【都心5区以外】主要エリア別オフィス賃料相場
東京でのオフィス選びは、必ずしも都心5区にこだわる必要はありません。予算を抑えつつ、優れたアクセスや独自の魅力を持つエリアは数多く存在します。ここでは、都心5区以外の主要エリアに焦点を当て、その特徴と賃料相場を紹介します。これらのエリアは、特にコストパフォーマンスを重視する企業や、特定の産業クラスターに関心のある企業にとって魅力的な選択肢となるでしょう。
品川区・目黒区(五反田・大崎など)の賃料相場
品川区と目黒区、特に五反田・大崎エリアは、近年「五反田バレー」として知られ、多くのITスタートアップが集まる新たなビジネスハブとして急速に注目度を高めています。渋谷に比べて賃料が手頃でありながら、都心へのアクセスも良好な点が大きな魅力です。
エリアの特徴:
- スタートアップの集積地: 五反田駅周辺には、著名なベンチャーキャピタルやコワーキングスペースも多く、スタートアップが成長しやすいエコシステムが形成されています。家賃補助などの行政支援も充実しています。
- 交通の利便性: 五反田駅はJR山手線、都営浅草線、東急池上線が利用でき、渋谷や新宿、品川、新橋へ乗り換えなしでアクセス可能です。大崎駅は山手線に加え、埼京線やりんかい線も利用でき、埼玉方面や臨海副都心へのアクセスにも優れています。
- 再開発による近代的なオフィス街: 大崎駅周辺は、ゲートシティ大崎やアートヴィレッジ大崎セントラルタワーなど、再開発によって生まれた大規模で近代的なオフィスビルが立ち並び、快適なビジネス環境が整っています。
- 落ち着いた住環境: 目黒区は、中目黒や自由が丘など、おしゃれで落ち着いた住宅街が広がり、職住近接を求める従業員にとっても魅力的なエリアです。
賃料相場:
都心5区と比較すると、賃料はかなりリーズナブルになります。坪単価の目安は、五反田・大崎エリアで16,000円~25,000円程度です。特に五反田では、築年数が比較的新しい中小規模のビルも多く、コストを抑えながら質の良いオフィスを見つけやすい環境です。目黒駅周辺も人気が高く、同程度の賃料水準となっています。
コストを抑えつつ、優秀なIT人材が集まる活気ある環境に身を置きたい企業にとって、品川区・目黒区は非常に有力な候補地と言えるでしょう。
豊島区(池袋・高田馬場など)の賃料相場
豊島区の中心である池袋は、新宿、渋谷と並ぶ3大副都心の一つであり、世界有数の巨大ターミナル駅を擁する交通の要衝です。商業施設や文化施設が充実しており、ビジネスとプライベートの両面で利便性の高いエリアです。
エリアの特徴:
- 圧倒的な交通アクセス: 池袋駅にはJR(山手線、埼京線、湘南新宿ライン)、西武池袋線、東武東上線、東京メトロ(丸ノ内線、有楽町線、副都心線)の8路線が乗り入れており、都内各所はもちろん、埼玉方面からのアクセスが抜群です。
- 多様なオフィスストック: サンシャイン60のようなランドマーク的な超高層ビルから、駅周辺の中小規模ビル、少し離れたエリアのリーズナブルな物件まで、オフィスの選択肢が非常に豊富です。
- カルチャーとビジネスの融合: アニメや漫画といったサブカルチャーの聖地としての一面も持ち、クリエイティブ系の企業やエンターテインメント関連の企業も多く集まっています。近年は、国際アート・カルチャー都市構想を掲げ、劇場や公園の再整備が進み、街の魅力がさらに高まっています。
- コストパフォーマンスの高さ: 都心5区に比べて賃料が割安でありながら、ターミナル駅としての利便性を享受できる点が最大のメリットです。
賃料相場:
池袋駅周辺の比較的新しいビルでも、坪単価は15,000円~23,000円程度が相場です。駅から少し離れたり、築年数が古いビルを選んだりすれば、さらにコストを抑えることが可能です。高田馬場エリアは、大学が多く学生街の活気があり、より手頃な物件が見つかりやすい傾向にあります。
幅広いエリアからの通勤利便性を確保しつつ、オフィス賃料をできるだけ抑えたい企業にとって、豊島区は非常にバランスの取れた選択肢となります。
台東区・江東区・墨田区の賃料相場
東京の東エリアに位置する台東区、江東区、墨田区は、それぞれ異なる魅力を持つエリアです。伝統的なものづくりの街、ウォーターフロントの開放的なオフィス街、そして下町情緒あふれる街並みが共存しており、独自のビジネス環境を求める企業にとって興味深い選択肢を提供します。
エリアの特徴:
- 台東区(上野・浅草など): 上野駅は新幹線も停車する北の玄関口であり、交通の利便性が高いエリアです。美術館や博物館が集まる文化的な側面と、アメ横に代表される活気ある商業地としての顔を併せ持ちます。賃料は比較的安価で、伝統産業や観光関連の企業に適しています。
- 江東区(豊洲・有明・青海など): 臨海副都心エリアとして開発が進み、近代的な大規模オフィスビルが立ち並びます。開放的な景観とゆとりあるオフィス環境が魅力で、賃料も都心に比べて割安です。一方で、都心部へのアクセスが電車に限られる点が考慮すべきポイントです。門前仲町や木場など、東西線沿線は都心へのアクセスも良好です。
- 墨田区(錦糸町・両国など): 東京スカイツリーの開業により、注目度が上がったエリアです。JR総武線や半蔵門線が利用できる錦糸町は、商業施設も充実した東東京の拠点の一つです。ものづくりの歴史が根付いており、製造業や地域密着型のビジネスに適しています。
賃料相場:
これらの東エリアは、都心部に比べて賃料が大幅に安くなるのが最大のメリットです。
- 台東区(上野周辺): 坪単価13,000円~20,000円程度
- 江東区(豊洲・臨海部): 坪単価14,000円~22,000円程度
- 墨田区(錦糸町周辺): 坪単価12,000円~18,000円程度
ランニングコストを最優先に考え、都心の喧騒から離れて落ち着いた環境でビジネスに取り組みたい企業や、エリア独自の特性を活かした事業を展開する企業にとって、これらのエリアは非常に魅力的な選択肢となるでしょう。
【坪数別】東京のオフィス賃料相場
オフィスの賃料は、エリアだけでなく、その広さ(坪数)によっても総額が大きく変動します。企業の成長フェーズや従業員数に合わせて、適切な広さのオフィスを選ぶことが重要です。ここでは、一般的な従業員数に対応する坪数ごとに、東京における賃料の相場観を解説します。
一般的に、オフィスで必要な一人当たりの面積は、2坪~3坪が目安とされています。これを基に、各規模での賃料相場を見ていきましょう。
※以下の賃料は、都心5区(平均坪単価22,000円/坪)と準都心エリア(平均坪単価18,000円/坪)を想定した、あくまで大まかな目安です。実際の賃料は、ビルのグレードや立地条件によって大きく異なります。
坪数(目安従業員数) | 都心5区の月額賃料相場 | 準都心エリアの月額賃料相場 |
---|---|---|
~20坪(1~10名) | 約20万円~44万円 | 約16万円~36万円 |
20~40坪(10~20名) | 約44万円~88万円 | 約36万円~72万円 |
40~60坪(20~30名) | 約88万円~132万円 | 約72万円~108万円 |
60~100坪(30~50名) | 約132万円~220万円 | 約108万円~180万円 |
100坪以上(50名~) | 220万円以上 | 180万円以上 |
~20坪(1~10名程度)の賃料相場
この規模は、創業期のスタートアップや、士業の事務所、少人数のプロジェクトチームなどが主な対象となります。賃貸オフィスビルでは比較的小さな区画にあたり、物件数も限られることがあります。
- 都心5区: 月額20万円~44万円程度。渋谷や港区のスタートアップ向け小規模オフィスや、新宿、中央区のマルチテナントビルの一区画などが考えられます。
- 準都心エリア: 月額16万円~36万円程度。五反田や池袋などで、よりコストを抑えてオフィスを構えることが可能です。
- 検討のポイント: この規模では、後述するサービスオフィスやレンタルオフィスも非常に有力な選択肢となります。初期費用を抑えられ、契約期間も柔軟なため、事業の先行きが不透明な創業期には特に適しています。
20~40坪(10~20名程度)の賃料相場
従業員が10名を超え、事業が軌道に乗ってきた成長期のベンチャー企業や、中小企業の支店・営業所などがこの規模に該当します。会議室やちょっとしたリフレッシュスペースを設ける余裕も出てきます。
- 都心5区: 月額44万円~88万円程度。この価格帯になると、エリアやビルの選択肢が広がります。ただし、丸の内や大手町といった超一等地では、この規模の募集は少ないか、より高額になります。
- 準都心エリア: 月額36万円~72万円程度。同じ予算であれば、都心5区よりも広く、築年数が浅い物件を選べる可能性があります。
- 検討のポイント: 企業のブランディングを意識し始める時期でもあります。どのエリアにオフィスを構えるかが、採用活動や取引先からの見え方に影響を与え始めます。
40~60坪(20~30名程度)の賃料相場
中小企業の本社機能や、ある程度の規模を持つ部門がオフィスを構える際の一般的なサイズです。複数の会議室や役員室、しっかりとした執務スペースを確保できます。
- 都心5区: 月額88万円~132万円程度。月額100万円を超えてくると、ビルのグレードや管理体制も良好な物件が視野に入ってきます。
- 準都心エリア: 月額72万円~108万円程度。コストを抑えつつ、従業員が快適に働ける十分な広さと設備を確保しやすい価格帯です。
- 検討のポイント: オフィスレイアウトの自由度が高まります。コミュニケーションの活性化や生産性向上を意識したオフィスデザインを取り入れることで、企業の成長をさらに後押しできます。
60~100坪(30~50名程度)の賃料相場
中堅企業のフロアや、大企業の主要な支店などがこの規模に該当します。オフィスビルの中でも、比較的人気の高いサイズであり、市場での供給も安定しています。
- 都心5区: 月額132万円~220万円程度。この規模になると、エリアによっては1フロアをまるごと借りる「ワンフロア・ワンテナント」の物件も見つかりやすくなり、セキュリティやプライバシーの面でメリットが大きくなります。
- 準都心エリア: 月額108万円~180万円程度。都心へのアクセスが良いエリアで、広々とした快適なオフィス環境を実現できます。
- 検討のポイント: 月々のランニングコストが大きくなるため、フリーレントの交渉や、契約期間など、より戦略的な賃貸借契約が求められます。専門の不動産仲介会社と連携して、最適な物件を探すのが一般的です。
100坪以上(50名~)の賃料相場
50名を超える従業員を抱える企業、中堅企業以上の本社機能を想定した規模です。このクラスになると、ビルの選定が企業の経営戦略そのものと直結します。
- 都心5区: 月額220万円以上。賃料は青天井となり、ビルのグレードや立地によっては月額500万円、1,000万円を超えることも珍しくありません。Aグレードビルやプレミアムビルが主な選択肢となります。
- 準都心エリア: 月額180万円以上。大崎や品川などの再開発エリアにある大規模ビルが候補となります。
- 検討のポイント: BCP(事業継続計画)の観点から、ビルの耐震性、非常用電源の有無、防災センターの機能などが極めて重要な選定基準となります。また、大規模な移転となるため、数年前から計画的にプロジェクトを進める必要があります。
オフィス賃料が決まる4つのポイント
オフィスの賃料は、単に「都心だから高い」「郊外だから安い」といった単純な理由だけで決まるわけではありません。様々な要素が複雑に絡み合い、最終的な坪単価が設定されます。物件を比較検討する際には、なぜその賃料になっているのか、その背景にある要因を理解することが重要です。ここでは、オフィス賃料を決定づける4つの主要なポイントを解説します。
① 立地・エリア
オフィス賃料に最も大きな影響を与えるのが、言うまでもなく「立地」です。 これは、単に住所がどこかということだけではありません。
- 最寄り駅からの距離: 駅からの距離は賃料に直結します。「駅直結」「徒歩1分」の物件は最も高く、徒歩5分、10分と離れるにつれて賃料は下がっていくのが一般的です。特に雨の日の通勤や、顧客の来訪しやすさを考えると、駅からの近さは大きな付加価値となります。
- 利用可能な路線の数: 複数の路線が利用できるターミナル駅の周辺は、アクセス性が高く評価され、賃料も高くなります。例えば、新宿駅や渋谷駅、東京駅のように、JR、私鉄、地下鉄が集中する駅は、従業員の通勤範囲が広がり、人材確保の面でも有利になるため、人気が集中します。
- エリアのブランドイメージ: 丸の内・大手町の「金融・大企業」、渋谷の「IT・スタートアップ」、銀座の「高級・商業」といったように、エリアが持つブランドイメージも賃料に反映されます。自社の業種やカルチャーに合ったエリアにオフィスを構えることは、企業のブランディング戦略の一環となります。
- 周辺環境の利便性: 銀行、郵便局、コンビニ、飲食店、クリニックなどが周辺に充実しているかどうかも、オフィスの利便性を左右し、賃料に影響します。従業員のランチ環境や、業務で必要な用事をすぐに済ませられる環境は、働きやすさに直結します。
② 築年数
建物の「築年数」も、賃料を左右する重要な要素です。
- 新築・築浅物件: 当然ながら、新築や築年数の浅い(一般的に築5年以内)物件は、デザインがモダンで設備も最新であるため、賃料は最も高く設定されます。外観やエントランスが綺麗なビルは、企業のイメージアップにも繋がります。
- 築古物件: 築年数が経過した物件(築20年以上など)は、一般的に賃料が安くなる傾向があります。しかし、注意が必要です。単に古いだけでなく、大規模なリノベーションやリニューアルが行われているかがポイントになります。外観は古くても、エントランスや水回り、空調設備などが一新されていれば、快適なオフィス環境を低コストで実現できる可能性があります。
- 耐震基準: 特に重要なのが「新耐震基準」です。1981年6月1日以降に建築確認を受けた建物は新耐震基準に基づいて設計されており、震度6強~7程度の大地震でも倒壊しないことが求められています。それ以前の「旧耐震基準」の建物は、耐震補強工事が施されているかを確認することが不可欠です。BCP(事業継続計画)の観点からも、耐震性は絶対に軽視できないポイントです。
築年数が古くても、適切なメンテナンスとリノベーションが施されていれば、コストパフォーマンスの高い優良物件となり得ます。
③ ビルのグレードと広さ
オフィスビルは、その規模や設備、管理体制などによって格付け(グレード分け)されることがあります。これが賃料に大きく影響します。
- ビルのグレード:
- プレミアム/Aグレードビル: 延床面積が10,000坪以上、基準階面積300坪以上といった大規模ビルで、最新の設備、高い耐震性、優れた環境性能、ホテルライクなエントランス、手厚い管理・警備体制などを備えています。賃料は最も高いですが、最高のオフィス環境とステータスを提供します。
- Bグレードビル: 延床面積5,000坪~10,000坪程度の中規模から大規模ビルで、設備や管理体制も比較的良好です。Aグレードに次ぐ賃料水準で、多くの企業にとって現実的な選択肢となります。
- Cグレードビル: それらより小規模なビルで、築年数が経過しているものが多いですが、都心部にも数多く存在します。賃料は手頃ですが、設備や管理体制はビルによって差が大きいため、内覧時にしっかり確認する必要があります。
- オフィスの広さと形状:
- 募集区画の広さ: 一般的に、同じビル内でも広い区画の方が坪単価は高くなる傾向があります。
- ワンフロア・ワンテナント: 1つのフロアを1社で独占できる物件は、他のテナントを気にすることなく利用でき、セキュリティも高めやすいため人気があり、分割されたフロアよりも坪単価が高くなることがあります。
- 部屋の形状: オフィススペースの形も重要です。「整形無柱空間」と呼ばれる、正方形や長方形で、室内に柱がないレイアウトしやすい部屋は、デッドスペースが生まれにくく効率的に使えるため、不整形な部屋や柱が多い部屋に比べて価値が高くなります。
④ 設備・仕様
最後に、オフィス内の具体的な設備や仕様も賃料を決定する要素となります。これらの設備は、従業員の快適性や業務効率に直接影響します。
- 空調システム:
- 個別空調: 各テナントが部屋ごと、あるいはゾーンごとに自由に温度設定やON/OFFを管理できる方式。残業や休日出勤が多い企業にとっては必須の設備です。
- セントラル空調: ビル全体で一括して空調を管理する方式。コアタイム以外は空調が止まることが多く、延長料金が発生する場合もあります。賃料が安めでも、この点で不便が生じないか確認が必要です。
- OAフロア: 床下に配線用の空間が設けられている床のことです。電話線やLANケーブルなどを床下に隠せるため、レイアウト変更が容易で、見た目もすっきりします。今や多くのオフィスビルで標準的な設備ですが、床下の高さ(50mm~100mm)も確認ポイントです。
- 天井高: 天井が高い(2.7m~2.8m以上)と、空間に開放感が生まれ、従業員の心理的なストレスを軽減する効果があると言われています。これも付加価値として賃料に反映されます。
- 電気容量: 使用できる電気の容量が少ないと、PCや複合機などを多数使用する際にブレーカーが落ちる可能性があります。特にIT企業など、電力消費が多い業種は事前に十分な容量があるか、増設が可能かを確認する必要があります。
- セキュリティ: 機械警備システムの有無、24時間有人管理、ICカードによる入退室管理システムなど、セキュリティレベルが高いほどビルの価値も高まります。
- 共用部(トイレ・給湯室など): トイレが男女別になっているか、清潔に保たれているか、ウォシュレットが付いているか、給湯室の設備が整っているかなどは、従業員の満足度に直結する重要なポイントです。
これらの4つのポイントを総合的に評価し、自社の予算と優先順位に照らし合わせることで、表面的な賃料の安さだけに惑わされず、真に価値のあるオフィスを見つけることができます。
東京でオフィスの賃料を抑える6つの方法
東京の高いオフィス賃料は、多くの企業にとって悩みの種です。しかし、少し視点を変えたり、新しいオフィスの形態を検討したりすることで、ランニングコストを賢く抑えることが可能です。ここでは、東京でオフィスの賃料を効果的に削減するための6つの具体的な方法を紹介します。
① 都心から少し離れたエリアを検討する
最も直接的で効果的な方法は、オフィスの所在地を都心5区から少しずらしてみることです。前述の通り、都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)は賃料が突出して高いですが、電車で1駅、2駅離れるだけで坪単価は大きく下がります。
- 準都心・郊外エリアのメリット:
- コスト削減: 同じ予算であれば、都心よりもはるかに広く、築年数の浅いオフィスを借りることが可能です。
- 優秀な人材の確保: 埼玉、千葉、神奈川方面に住む従業員にとっては、都心を通過せずに通勤できるため、かえって利便性が高まる場合があります。
- 落ち着いた環境: 都心の喧騒から離れ、静かで落ち着いた環境で業務に集中できます。
- 具体的な検討エリア例:
- 城南エリア: 品川区(五反田、大崎)、目黒区など。スタートアップの集積地としても人気があります。
- 城北エリア: 豊島区(池袋)、文京区など。交通の便が良く、コストパフォーマンスに優れています。
- 城東エリア: 墨田区(錦糸町)、江東区(豊洲)など。賃料が比較的安価で、大規模なオフィスも見つけやすいです。
- 多摩エリア: 立川、町田、八王子など。職住近接を重視し、地域に根差したビジネスを展開する企業に適しています。
自社のビジネスにとって、本当に都心5区でなければならないのかを再検討し、エリアの選択肢を広げることがコスト削減の第一歩です。
② 築年数が古い物件も視野に入れる
新築や築浅のビルは魅力的ですが、賃料は当然高くなります。そこで、あえて築年数が経過したビルに目を向けるのも賢い選択です。
- 築古物件のメリット:
- 賃料の安さ: 新築物件に比べて賃料が大幅に安く設定されています。
- 好立地の可能性: 都心の一等地でも、築古のビルであれば手頃な賃料で見つかることがあります。
- リノベーションによる価値向上: 近年、築古ビルを現代的なデザインや設備にフルリノベーションした「再生ビル」が増えています。こうした物件は、ヴィンテージ感のある独特の雰囲気を持ちながら、内装は新築同様の快適性を備えており、コストを抑えつつお洒落なオフィス空間を実現できます。
- 注意点:
- 耐震性: 1981年以前の旧耐震基準の建物の場合は、耐震補強工事が完了しているかを必ず確認しましょう。
- 設備: 空調、水回り、電気容量、インターネット回線などのインフラが現代のビジネス要件を満たしているかを内覧時に詳細にチェックする必要があります。
③ 居抜きオフィスを探す
居抜きオフィスとは、前のテナントが使用していた内装やオフィス家具、什器などをそのまま引き継いで入居できる物件のことです。
- 居抜きオフィスのメリット:
- 初期費用の大幅削減: 通常、数百万円から数千万円かかることもある内装工事費やオフィス家具の購入費用をほぼゼロに抑えることができます。これは特に、資金体力に乏しいスタートアップや中小企業にとって非常に大きなメリットです。
- 入居までの期間短縮: 内装工事が不要なため、契約から業務開始までの期間を大幅に短縮できます。
- デメリットと注意点:
- レイアウトの制約: 前のテナントのレイアウトをそのまま使うため、自社の組織構成や働き方に合わない可能性があります。
- 設備の劣化: 引き継ぐ家具や設備が劣化している場合、修理や買い替えでかえってコストがかかることもあります。
- 原状回復義務: 退去時には、引き継いだ内装を含めて全てをスケルトン(何もない状態)に戻すのか、あるいは次のテナントに引き継げる「居抜き退去」が可能なのか、契約内容をよく確認する必要があります。
④ セットアップオフィスを活用する
セットアップオフィスは、貸主側(ビルオーナー)があらかじめ基本的な内装や什器(デスク、チェア、会議室など)を設置した状態で貸し出すオフィスです。
- セットアップオフィスのメリット:
- 初期費用と手間を削減: 居抜きと同様に、内装工事や家具購入の手間とコストを削減できます。
- デザイン性の高さ: プロがデザインしたお洒落で機能的な内装が多く、企業のブランディングにも貢献します。
- 新品の設備: 居抜きと違い、家具や設備は新品またはそれに近い状態で提供されるため、気持ちよく利用を開始できます。
- デメリット:
- 賃料が割高: 内装や家具の費用が賃料に上乗せされているため、周辺の同規模のスケルトン物件に比べて坪単価は高くなる傾向があります。
- カスタマイズの制限: レイアウトの自由度は居抜きオフィスよりもさらに低くなります。
初期投資を抑えたいが、デザイン性も妥協したくない、という企業に適した選択肢です。
⑤ サービスオフィスやレンタルオフィスを検討する
特に少人数の企業や、プロジェクト単位での短期利用の場合、一般的な賃貸オフィスではなく、サービスオフィスやレンタルオフィスを検討するのが非常に有効です。
- サービスオフィスの特徴とメリット:
- オールインワン: 賃料に光熱費、インターネット利用料、清掃費などが含まれていることが多いです。
- 家具・設備完備: デスク、チェア、複合機、会議室などが完備されており、PC一台ですぐに業務を開始できます。
- 柔軟な契約: 1ヶ月単位など、短期間での契約が可能です。
- 初期費用の安さ: 敷金・礼金が不要な場合が多く、入会金程度で入居できます。
- デメリット:
- 坪単価の割高さ: 一般的な賃貸オフィスに比べて、一人当たりの単価は割高になります。
- 拡張性の限界: 企業の成長に合わせてスペースを拡張するのが難しい場合があります。
事業の立ち上げ期や、東京進出の足掛かりとして、まずはサービスオフィスからスタートし、事業規模が拡大した段階で賃貸オフィスへの移転を検討する、というステップを踏むのも賢い戦略です。
⑥ フリーレント付きの物件を選ぶ
フリーレントとは、契約開始後の一定期間(1ヶ月~半年、場合によっては1年以上)、賃料が無料になるという契約条件です。
- フリーレントのメリット:
- 初期のキャッシュフロー改善: 入居直後は、移転費用や内装工事費など多額の出費が重なります。その期間の賃料負担がなくなることで、資金繰りが大幅に楽になります。
- 移転準備期間のコスト削減: 新旧オフィスの賃料が二重で発生する「二重家賃」の期間を、フリーレントで相殺することができます。
- 交渉のポイント:
- フリーレントは、空室期間が長引いているビルや、新規供給が多いエリアで獲得しやすい傾向があります。
- 交渉の際は、長期契約を約束するなど、貸主側にもメリットを提示することが成功の鍵です。
- 注意点として、フリーレント期間中に解約した場合、違約金として免除された賃料の支払いを求められる「短期解約違約金」の特約が付くことがほとんどです。契約内容をよく確認しましょう。
これらの方法を組み合わせることで、企業の状況に合わせた最適なコスト削減策を見つけることができます。
賃料以外も重要!オフィス契約にかかる初期費用一覧
オフィスの移転には、月々の賃料以外にも、契約時にまとまった「初期費用」が必要になります。この初期費用を見落としていると、資金計画が大きく狂ってしまう可能性があります。一般的に、オフィス契約の初期費用は、月額賃料の6ヶ月~12ヶ月分が目安と言われていますが、内装工事の規模によってはそれ以上になることも珍しくありません。ここでは、オフィス契約にかかる主要な初期費用を一覧で解説します。
費用項目 | 費用の目安 | 概要 |
---|---|---|
敷金・保証金 | 月額賃料の6~12ヶ月分 | 賃料滞納や原状回復費用のための担保金。退去時に一部返還される。 |
礼金 | 月額賃料の0~2ヶ月分 | 貸主に対する謝礼金。返還されない。 |
仲介手数料 | 月額賃料の1ヶ月分+消費税 | 不動産会社に支払う手数料。 |
前払い賃料・共益費 | 当月日割り分+翌月分 | 契約時に支払う初月と翌月分の家賃。 |
火災保険料 | 2~5万円程度(2年間) | 万が一の火災などに備える保険。加入が義務付けられることが多い。 |
保証委託料 | 月額賃料の0.5~1ヶ月分 | 保証会社を利用する場合の費用。 |
内装・インフラ工事費 | 数十万円~数千万円 | レイアウト設計、パーテーション設置、電気・通信工事などの費用。 |
引っ越し・オフィス家具購入費用 | 従業員数や物量による | 移転作業費、新しいデスクやチェアなどの購入費。 |
旧オフィスの原状回復費用 | 数十万円~数百万円 | 退去するオフィスを入居時の状態に戻すための工事費用。 |
敷金・保証金
敷金・保証金は、オフィス賃貸契約で最も大きな割合を占める初期費用です。 これは、テナントが賃料を滞納した場合や、退去時の原状回復費用が支払われなかった場合に備えて、貸主が預かる担保金です。住居用の賃貸契約では賃料の1~2ヶ月分が一般的ですが、オフィス(事業用)の場合は月額賃料の6ヶ月~12ヶ月分と高額になるのが通常です。
この敷金・保証金は、退去時に原状回復費用などを差し引いた上で返還されます。ただし、契約によっては「償却費」として、預けた保証金の一部(例:10%や1年ごとに2%など)が返還されない特約が付いている場合があるので、契約書をよく確認する必要があります。
礼金
礼金は、物件を貸してもらうことに対する謝礼として貸主に支払うお金です。敷金とは異なり、退去時に返還されることはありません。 相場は月額賃料の0~2ヶ月分で、近年は礼金なし(ゼロ)の物件も増えています。
仲介手数料
仲介手数料は、物件の紹介や契約手続きのサポートをしてくれた不動産会社に支払う成功報酬です。宅地建物取引業法により、上限は「月額賃料の1ヶ月分+消費税」と定められています。
前払い賃料・共益費
契約時には、入居する月の賃料(月の途中から入居する場合は日割り計算)と、その翌月分の賃料・共益費を前払いで支払うのが一般的です。これを「前家賃」と呼びます。
火災保険料・保証委託料
- 火災保険料: 万が一の火災や水漏れなどで、ビルや他のテナントに損害を与えてしまった場合に備えるための保険です。通常、貸主から指定された火災保険(借家人賠償責任保険付き)への加入が契約の条件となります。
- 保証委託料: 連帯保証人がいない場合や、貸主が必須としている場合に、家賃保証会社のサービスを利用するための費用です。保証会社が連帯保証人の役割を担ってくれます。
内装・インフラ工事費
オフィス移転の総コストを大きく左右するのが、この内装・インフラ工事費です。 スケルトン(何もない状態)の物件を借りる場合、以下のような費用が発生します。
- 設計・デザイン費: オフィスレイアウトの設計をデザイナーに依頼する場合の費用。
- 内装工事費: 壁、床、天井の仕上げ、パーテーションの設置、会議室や役員室の造作など。
- 電気・照明工事費: コンセントの増設、照明器具の設置など。
- 空調・換気設備工事費: 個別空調の設置やダクトの移設など。
- 通信・LAN工事費: 電話線やLANケーブルの配線、サーバーラックの設置など。
- 防災設備工事費: スプリンクラーや火災報知器の増設など。
これらの費用は、工事の規模や内容によって数十万円から数千万円まで大きく変動します。複数の業者から見積もりを取り、比較検討することが重要です。
引っ越し・オフィス家具購入費用
現在のオフィスからの引っ越し費用と、新しいオフィスで使う家具の購入費用も必要です。
- 引っ越し費用: PCやサーバーなどの精密機器の運搬、什器の量、移動距離によって変動します。
- オフィス家具購入費用: デスク、チェア、キャビネット、会議テーブル、応接セットなど。従業員一人当たり10万円~20万円程度が目安とされます。
旧オフィスの原状回復費用
忘れてはならないのが、現在入居しているオフィスの「原状回復費用」です。 これは、退去する際に、入居時の状態に戻すための工事費用で、旧オフィスの貸主に支払います。自社で設置したパーテーションの撤去、壁や床の補修、クリーニングなどが含まれます。この費用も、敷金・保証金から差し引かれるのが一般的ですが、不足分は追加で支払う必要があります。
これらの初期費用をすべて洗い出し、事前に詳細な資金計画を立てることが、スムーズなオフィス移転の鍵となります。
オフィス契約までの8ステップ
オフィス移転は、単に新しい場所を探して引っ越すだけではありません。企業の将来を左右する重要な経営プロジェクトであり、計画的に進める必要があります。一般的に、移転計画の開始から入居までには、少なくとも6ヶ月から1年程度の期間を見ておくのが賢明です。ここでは、オフィス移転を成功させるための具体的な8つのステップを解説します。
① 移転計画の策定
すべての始まりは、周到な計画から。 まず、なぜオフィスを移転するのか、その目的を明確にします。
- 移転目的の明確化: 人員増加によるスペース不足の解消か、コスト削減か、ブランディング向上か、優秀な人材の採用強化か。目的によって、選ぶべきエリアやビルの種類が変わってきます。
- 要件定義:
- 予算: 賃料や共益費の月額上限、初期費用にかけられる総額を決定します。
- エリア: 交通の利便性、取引先へのアクセス、従業員の通勤などを考慮し、希望エリアを絞り込みます。
- 広さ・レイアウト: 必要な坪数、会議室の数、執務スペースの配置、リフレッシュスペースの有無など、具体的な希望をまとめます。
- スケジュール: いつまでに入居を完了したいのか、逆算して各ステップの期限を設定します。
- プロジェクトチームの発足: 経営層、総務、人事、情報システムなど、関連部署のメンバーでプロジェクトチームを編成し、責任者を明確にします。
この最初のステップで方向性を固めることが、後のプロセスをスムーズに進める上で最も重要です。
② 物件探しと情報収集
移転計画が固まったら、具体的な物件探しを開始します。
- 情報収集: 賃貸オフィス検索サイトで相場観を掴んだり、オフィス専門の不動産仲介会社に相談したりします。
- 仲介会社の選定: 専門の仲介会社は、公開されていない「未公開物件」の情報を持っていることもあります。複数の会社とコンタクトを取り、自社の要望を的確に理解し、親身にサポートしてくれるパートナーを選びましょう。
- 候補物件のリストアップ: 仲介会社から提案された物件や、自ら探した物件の中から、希望条件に合うものを10~20件程度リストアップします。
③ 内覧と物件の比較検討
リストアップした物件の中から、有望なものを3~5件程度に絞り込み、実際に内覧(内見)に行きます。
- 内覧時のチェックポイント:
- 共用部: エントランスの雰囲気、エレベーターの数や待ち時間、トイレの清潔さ、管理人の対応。
- 専有部: 日当たりや眺望、天井高、OAフロアの仕様、コンセントの位置と数、空調の効き具合。
- 周辺環境: 最寄り駅からの実際の道のり、周辺の飲食店の充実度、銀行や郵便局の場所。
- 比較検討: 内覧した物件を、あらかじめ作成したチェックリストに基づいて点数化するなど、客観的な基準で比較検討します。写真だけではわからない現地の雰囲気や、ビルの管理状態を肌で感じることが重要です。
④ 申し込みと入居審査
移転したい物件が決まったら、貸主に対して「入居申込書」を提出します。これは「この物件を借りたい」という意思表示であり、この段階で他の希望者への紹介が一時的にストップされるのが一般的です(申し込み止め)。
- 提出書類: 入居申込書とともに、会社謄本(履歴事項全部証明書)、会社案内、決算書(通常2~3期分)などを求められます。
- 入居審査: 貸主と保証会社が、提出された書類を基に、テナントの支払い能力や事業の継続性などを審査します。審査期間は通常1週間~2週間程度です。
⑤ 賃貸借契約の締結
無事に入居審査を通過したら、いよいよ賃貸借契約の締結です。
- 重要事項説明: 契約に先立ち、宅地建物取引士から物件や契約条件に関する「重要事項説明」を受けます。専門用語も多いですが、不明な点は必ずその場で質問し、納得するまで確認しましょう。
- 契約書の確認: 契約書の内容を隅々まで確認します。特に、契約期間、賃料、敷金・保証金の償却条件、禁止事項、解約予告期間、原状回復の範囲といった項目は重要です。
- 署名・捺印: 内容に問題がなければ、契約書に署名・捺印します。
- 初期費用の支払い: 契約締結後、定められた期日までに敷金・保証金や前家賃などの初期費用を支払います。
⑥ 内装工事とインフラ整備
契約が完了し、物件の引き渡しを受けたら、新しいオフィスの内装工事とインフラ整備に着手します。
- 業者選定: 設計会社や内装工事業者、通信工事業者などを選定し、見積もりを取得・比較します。
- レイアウト確定と工事: 確定したレイアウトに基づいて、内装工事を進めます。
- インフラ手配: 電話回線、インターネット回線、複合機、ビジネスフォンなどの手配を行います。回線の引き込みには時間がかかる場合があるため、早めに申し込みましょう。
⑦ 移転作業と各種手続き
オフィスが完成に近づいたら、移転作業とそれに伴う各種手続きを進めます。
- 引っ越し: 引っ越し業者に依頼し、スケジュールを調整します。従業員への周知や荷造りも計画的に行います。
- 各種届出:
- 行政手続き: 法務局(本店移転登記)、税務署、都道府県税事務所、社会保険事務所、労働基準監督署、ハローワークなどへの住所変更届。
- その他: 郵便局への転居届、銀行、取引先、顧客への移転案内状の送付。
⑧ 入居と業務開始
すべての準備が整ったら、いよいよ新オフィスでの業務開始です。
- 移転完了: 引っ越しが完了し、荷解きやPCのセッティングなどを行います。
- 業務開始: 新しい環境での業務をスタートします。移転後も、レイアウトの微調整や運用ルールの策定など、やるべきことは続きます。
これらのステップを一つひとつ着実にクリアしていくことが、オフィス移転という大きなプロジェクトを成功に導きます。
東京のオフィス探しにおすすめの方法3選
多様な選択肢がある東京で、自社に最適なオフィスを見つけるためには、どのような方法で情報を集め、物件を探せばよいのでしょうか。ここでは、目的や企業のフェーズに応じて活用できる、代表的な3つのオフィス探しの方法と、それぞれの特徴を持つ具体的なサービスを紹介します。
① 大手の賃貸オフィス検索サイトで探す
まずは自分たちで市場の相場観を掴んだり、どのような物件があるのかを広く知りたい場合に最適なのが、オンラインの賃貸オフィス検索サイトです。膨大な物件情報から、エリア、賃料、広さなどの条件で絞り込み検索ができます。
at home PRO(アットホーム プロ)
「at home PRO」は、不動産情報サービス大手のアットホームが運営する、不動産会社向けの物件情報サイトです。プロ向けではありますが、一般のユーザーも物件情報の閲覧は可能です。
- 特徴:
- 圧倒的な情報量: 全国を網羅する膨大な物件データベースが強み。東京のオフィス物件も数多く掲載されています。
- 詳細な検索条件: 坪数や賃料はもちろん、「新耐震基準」「OAフロア」「ワンフロア」など、こだわりの条件で詳細な絞り込みが可能です。
- 信頼性: 長年の実績があるアットホームが運営しているため、情報の信頼性が高いのが特徴です。
まずは市場にどのような物件が出ているのかを幅広くリサーチしたい場合に、非常に役立つサイトです。(参照:at home PRO 公式サイト)
CBRE(シービーアールイー)
「CBRE」は、世界最大級の事業用不動産サービス企業です。同社が運営する物件検索サイトは、特に中規模から大規模なオフィスを探している企業に適しています。
- 特徴:
- 大規模・高グレード物件に強い: 世界的なネットワークを活かし、Aグレードビルやプレミアムビルなど、質の高い物件情報を豊富に保有しています。
- 質の高いマーケットレポート: 定期的に発行される市場分析レポートは、賃料相場や空室率の動向を把握する上で非常に参考になります。
- グローバルな視点: 外資系企業や、グローバルな視点でオフィス戦略を考える企業にとって、頼りになる存在です。
企業の成長戦略の一環として、質の高いオフィスへの移転を検討している場合には、CBREのサイトやレポートが有力な情報源となります。(参照:CBRE Japan 公式サイト)
② オフィス専門の不動産仲介会社に相談する
検索サイトで相場観を掴んだら、より具体的で専門的なサポートを受けるために、オフィス専門の不動産仲介会社に相談するのが王道の進め方です。プロの視点から、自社のニーズに合った最適な物件を提案してくれます。
東京オフィス検索
その名の通り、東京23区の賃貸オフィス・事務所探しに特化した仲介サービスです。地域に密着したきめ細やかなサポートが期待できます。
- 特徴:
- 東京特化の専門性: 東京のオフィス市場に関する深い知識と情報網を持っています。
- 未公開物件の紹介: Webサイトには掲載されていない、非公開の物件情報を紹介してもらえる可能性があります。
- 丁寧なコンサルティング: 企業の移転目的や課題をヒアリングし、物件探しから契約、移転完了まで一気通貫でサポートしてくれます。
初めて東京でオフィスを借りる企業や、手厚いサポートを受けながら物件を探したい企業におすすめです。(参照:東京オフィス検索 公式サイト)
OFFICE NAVI(オフィスナビ)
東京本社をはじめ、全国の主要都市に拠点を持ち、日本全国の賃貸オフィス物件を扱う仲介会社です。
- 特徴:
- 全国対応: 東京だけでなく、大阪、名古屋、福岡など、複数の都市でオフィス展開を考えている企業にも対応可能です。
- 多様なニーズに対応: 一般的な賃貸オフィスに加え、「居抜きオフィス」や「セットアップオフィス」といった、初期費用を抑えられる物件の紹介にも力を入れています。
- 豊富な実績: これまで多くの企業のオフィス移転をサポートしてきた実績があり、様々な業種・規模のニーズに対応できるノウハウを持っています。
コスト削減を重視し、居抜きやセットアップといった選択肢も視野に入れたい企業にとって、心強いパートナーとなるでしょう。(参照:オフィスナビ 公式サイト)
③ サービスオフィスやレンタルオフィスから探す
創業期のスタートアップや、少人数のチーム、期間限定のプロジェクトなど、柔軟性とスピードが求められる場合には、サービスオフィスやレンタルオフィスという選択肢が非常に有効です。
JUST FIT OFFICE(ジャストフィットオフィス)
様々なブランドのサービスオフィス、コワーキングスペース、レンタルオフィスなどを横断的に検索・比較できるポータルサイトです。
- 特徴:
- 網羅的な情報: 都内にある多種多様なフレキシブルオフィスを、エリアや利用人数、こだわりの条件で一括検索できます。
- 客観的な比較検討: 特定の運営会社に偏らず、様々な選択肢をフラットに比較検討できるのがメリットです。
- 多様なワークスペース: 個室タイプだけでなく、固定デスク、フリーアドレスのコワーキングスペースなど、働き方に合わせた多様なプランを探せます。
自社に最適なサービスオフィスがどこなのか、まずは幅広く比較検討したい場合に最適なプラットフォームです。(参照:JUST FIT OFFICE 公式サイト)
WeWork(ウィーワーク)
世界中に拠点を持つ、フレキシブルオフィス業界のリーディングカンパニーです。デザイン性の高い空間と、活発なコミュニティが特徴です。
- 特徴:
- デザイン性とコミュニティ: 洗練されたデザインのワークスペースは、従業員のモチベーションや創造性を高めます。また、入居者同士の交流を促すイベントが頻繁に開催され、新たなビジネスチャンスに繋がることもあります。
- 柔軟なプラン: 1名用の専用デスクから、数十名規模のプライベートオフィスまで、企業の成長に合わせて柔軟に契約プランを変更できます。
- グローバルネットワーク: 国内外のWeWork拠点を相互利用できるプランもあり、出張が多い企業やグローバルに展開する企業に便利です。
クリエイティブな環境や、他社とのネットワークを重視するスタートアップやベンチャー企業に特に人気の高い選択肢です。(参照:WeWork Japan 公式サイト)