企業の成長や事業戦略の変化に伴い、オフィスの移転は多くの企業にとって重要な経営課題の一つです。しかし、数多くの物件の中から自社に最適なオフィスを見つけ出す作業は、膨大な時間と労力を要します。そこで近年、多くの企業が活用しているのが「オフィスビル検索サイト」です。これらのサイトは、インターネット上で手軽に膨大な物件情報を収集・比較できるため、効率的なオフィス探しに不可欠なツールとなっています。
本記事では、オフィスビル検索サイトの基本的な知識から、おすすめのサイト15選、失敗しない選び方のポイント、そしてサイトを最大限に活用するコツまで、網羅的に解説します。オフィス移転を検討している経営者や総務担当者の方は、ぜひ本記事を参考に、自社に最適なオフィス探しの第一歩を踏み出してください。
目次
オフィス検索サイトとは
オフィス検索サイトとは、賃貸オフィスビルや事務所用の物件情報を集約し、インターネット上で検索・閲覧できるようにしたウェブサイトのことです。従来の足で不動産会社を回る方法とは異なり、PCやスマートフォンさえあれば、いつでもどこでも膨大な物件情報にアクセスできるのが最大の特徴です.
企業のオフィス移転は、単なる場所の移動ではありません。従業員の働きやすさ、生産性の向上、企業ブランディング、コスト最適化など、多くの経営課題を解決するポテンシャルを秘めています。そのため、物件選びは慎重に行う必要があり、その第一歩となる情報収集の質と効率が、移転プロジェクト全体の成否を左右すると言っても過言ではありません。
オフィス検索サイトは、この重要な情報収集フェーズを強力にサポートするツールです。エリア、賃料、広さといった基本的な条件はもちろん、築年数、耐震基準、OAフロアの有無、特定の駅からの徒歩分数など、詳細な条件で物件を絞り込めます。これにより、自社の希望条件に合致する物件候補を効率的にリストアップすることが可能になります。
オフィス検索サイトでできること
オフィス検索サイトが提供する機能は多岐にわたりますが、主に以下の4つのことができます。これらを理解し、活用することで、オフィス探しを格段にスムーズに進められます。
- 賃貸オフィス物件の網羅的な検索
最も基本的な機能が、物件の検索です。ユーザーは、希望する条件を入力して、データベースに登録されている多数の物件から候補を絞り込むことができます。- 基本条件: エリア(都道府県、市区町村、駅名)、賃料(月額、坪単価)、面積(坪、平方メートル)
- こだわり条件: 新築・築浅、駅徒歩5分以内、1階、最上階、24時間利用可能、駐車場あり、OAフロア、光ファイバー、新耐震基準適合、フリーレント付き、セットアップオフィス、居抜きオフィスなど。
これらの詳細な検索条件を駆使することで、自社の「譲れない条件」と「できれば満たしたい条件」を整理しながら、理想に近い物件を効率的に見つけ出すことができます。
- 物件詳細情報の閲覧
検索結果で気になった物件については、詳細な情報を確認できます。多くのサイトでは、以下のような情報が掲載されています。- 物件概要: 所在地、交通アクセス、竣工年月、構造、規模(階数)、基準階面積
- 募集条件: 募集フロア、面積、賃料、共益費、保証金(敷金)、礼金、契約期間、更新料
- 写真・図面: 外観、エントランス、共用部、室内、眺望などの写真、フロアごとの間取り図
- 設備情報: エレベーターの基数、空調方式(個別空調、セントラル空調)、天井高、床荷重、セキュリティシステム
これらの情報を事前に確認することで、内見前に物件のイメージを具体的に掴み、無駄な内見を減らすことにも繋がります。
- 問い合わせ・内見予約
興味のある物件が見つかったら、サイト上のフォームや電話を通じて、運営会社(不動産仲介会社)に直接問い合わせができます。空室状況の確認や、賃料などの条件交渉の可否、さらに詳しい資料の請求などが可能です。
また、実際に物件を内覧したい場合の内見予約もサイト経由で行えます。複数の物件をリストアップし、まとめて内見の依頼をすることで、効率的にスケジュールを組むことができます。 - オフィス移転に関する情報収集
多くのオフィス検索サイトでは、単なる物件情報の提供に留まらず、オフィス移転に関するお役立ち情報も発信しています。- コラム・ブログ: オフィス選びのポイント、移転スケジュールの立て方、コスト削減のノウハウ、最新のオフィス市場動向、働き方改革とオフィスの関係性など。
- ガイド・マニュアル: オフィス移転のチェックリスト、用語集、各種手続きの解説など。
これらのコンテンツは、特に初めてオフィス移転を担当する方にとって、非常に心強い味方となります。 移転プロセス全体の流れを理解し、見落としがちなポイントを確認するのに役立ちます。
オフィス検索サイトの種類
オフィス検索サイトは、その運営形態によって大きく2つの種類に分類されます。それぞれの特徴を理解し、自社の状況に合わせて使い分けることが、賢いオフィス探しの鍵となります。
ポータルサイト
ポータルサイトは、複数の不動産会社がそれぞれの取り扱い物件情報を掲載する、いわば「物件情報のプラットフォーム」です。新聞の折込チラシや住宅情報誌のウェブ版をイメージすると分かりやすいでしょう。
- メリット:
- 圧倒的な情報量: 多数の不動産会社が参加しているため、掲載されている物件数が非常に多く、幅広い選択肢から検討できます。
- 網羅性と比較のしやすさ: 特定のエリアや沿線で探す際に、様々な不動産会社が扱う物件を一度に比較検討できるため、市場の相場観を掴みやすいのが利点です。
- 中立的な立場: サイト運営者自体は直接仲介を行わないケースが多く(サイト経由で各不動産会社に繋ぐ)、比較的フラットな視点で物件を探せます。
- デメリット:
- 情報の重複: 同じ物件が複数の不動産会社によって掲載されていることがあり、検索結果が煩雑になる場合があります。
- 情報の鮮度のばらつき: 各不動産会社が情報を更新するため、サイト全体で情報の鮮度が統一されていないことがあります。成約済みの物件が掲載され続ける「おとり物件」のリスクも相対的に高まる可能性があります。
- 専門性の欠如: 幅広い物件を扱う反面、特定のビルやエリアに関する深い情報、あるいは非公開の情報は得にくい傾向があります。
不動産仲介会社のサイト
不動産仲介会社が自社で運営しているサイトです。主に自社が専任で媒介契約を結んでいる物件や、直接オーナーから依頼を受けている物件を中心に掲載しています。
- メリット:
- 情報の専門性と質: サイトを運営する不動産会社が直接管理・把握している物件が多いため、情報の正確性や鮮度が高い傾向にあります。担当者しか知らないような、より詳細で専門的な情報(ビルの管理状況や過去のトラブル履歴など)を得られる可能性もあります。
- 未公開物件: 一般のポータルサイトには掲載されていない「未公開物件」や「非公開物件」に出会えるチャンスがあります。 良好な条件の物件は、情報が公開される前に既存の顧客へ紹介されることが多いため、こうしたサイトに登録しておく価値は大きいです。
- 一貫したサポート: 問い合わせから内見、条件交渉、契約まで、同じ会社の担当者が一貫してサポートしてくれるため、スムーズなコミュニケーションが期待できます。
- デメリット:
- 掲載物件数の限界: ポータルサイトに比べると、掲載されている物件数は当然少なくなります。選択肢がその会社の取り扱い物件に限定されがちです。
- 情報の偏り: 自社の取り扱い物件を優先的に紹介される可能性があるため、客観的な視点での物件比較がしにくい側面もあります。
結論として、オフィス探しを始める初期段階では、まずポータルサイトで広く情報を集めて市場の動向や相場観を掴み、その上で気になるエリアや物件種別に強みを持つ不動産仲介会社のサイトを併用して、より専門的な情報や未公開物件を探す、という使い分けが最も効率的でおすすめです。
おすすめのオフィスビル検索サイト15選
ここからは、数あるオフィス検索サイトの中から、特におすすめのサイトを15個厳選してご紹介します。それぞれに特徴や強みがあるため、自社のニーズに合ったサイトを見つける参考にしてください。なお、各サイトの情報は記事執筆時点のものですので、最新の詳細は各公式サイトをご確認ください。
サイト名 | 運営会社 | 特徴 |
---|---|---|
① officee (オフィシー) | 47株式会社 | 仲介手数料無料、掲載物件数国内最大級、全国対応 |
② アットオフィス | 株式会社アットオフィス | 移転のトータルサポート、セットアップオフィスに強み |
③ オフィスター | 株式会社abunch | 東京23区特化、スタートアップ・ベンチャー向け物件が豊富 |
④ OFFICE WITH | 株式会社ソーシャルインテリア | デザイン性の高いオフィス、家具付きプランも提供 |
⑤ CBRE (シービーアールイー) | シービーアールイー株式会社 | 世界最大級の事業用不動産サービス会社、大規模オフィスに強み |
⑥ 三鬼商事 | 三鬼商事株式会社 | 創業100年以上の老舗、オフィス専門仲介のパイオニア |
⑦ ビルディンググループ | 株式会社ビルディング企画 | 首都圏中心、エリアごとの専門チームによる手厚いサポート |
⑧ HATARABA (ハタラバ) | 株式会社アイ・エージェンシー | 居抜きオフィス・セットアップオフィスに特化 |
⑨ 47OFFICE (ヨンナナオフィス) | 47株式会社 | officeeの姉妹サイト、全国のレンタルオフィス・コワーキングスペース検索 |
⑩ 東京オフィス検索 | 株式会社ボルテックス | 東京23区中心、区分所有オフィスにも強み |
⑪ ケン・コーポレーション | 株式会社ケン・コーポレーション | 都心部の高級賃貸に強み、ハイグレードオフィスも多数 |
⑫ JLL (ジョーンズ ラング ラサール) | ジョーンズ ラング ラサール株式会社 | CBREと並ぶ外資系大手、グローバルな知見とネットワーク |
⑬ 理想のオフィス | 株式会社 ideal office | スタートアップ・ベンチャー企業支援に特化、移転コンサルティング |
⑭ スイッチオフィス | 株式会社NENGO | 居抜きオフィス専門、マッチングプラットフォーム |
⑮ ミツモア | 株式会社ミツモア | 見積もりプラットフォーム、複数の不動産仲介会社から提案を受けられる |
① officee (オフィシー)
「officee」は、47株式会社が運営する、仲介手数料無料で利用できるオフィス検索サイトです。 全国47都道府県をカバーし、掲載物件数は国内最大級を誇ります。最大の魅力である仲介手数料無料は、通常賃料の1ヶ月分かかるコストを削減できるため、特に初期費用を抑えたい企業にとっては大きなメリットです。使いやすい検索機能と豊富な物件情報で、オフィス探しの初心者から経験者まで幅広く支持されています。(参照:officee 公式サイト)
② アットオフィス
株式会社アットオフィスが運営するサイトです。単なる物件仲介に留まらず、オフィス移転に関わるあらゆる業務をワンストップでサポートする「トータルソリューション」を強みとしています。物件探しはもちろん、内装デザイン・工事、オフィス家具の選定、電話・ネット回線の手配、引越しまで一貫して相談できます。特に、内装が完成した状態で入居できる「セットアップオフィス」の取り扱いが豊富です。(参照:アットオフィス 公式サイト)
③ オフィスター
株式会社abunchが運営する、東京23区の賃貸オフィスに特化した検索サイトです。特に、渋谷、新宿、港区といったIT企業やベンチャー企業が集まるエリアの物件情報が充実しています。サイトのデザインも洗練されており、スタートアップや成長企業が求めるクリエイティブなオフィスを見つけやすいのが特徴です。独自の物件情報や、きめ細やかなコンサルティングに定評があります。(参照:オフィスター 公式サイト)
④ OFFICE WITH
株式会社ソーシャルインテリア(旧:株式会社subsclife)が運営する、新しい形のオフィス探しを提案するサイトです。デザイン性の高いオフィス物件の紹介に加え、同社が提供するオフィス家具のサブスクリプションサービスと連携できるのが最大の特徴。 初期費用を抑えながら、おしゃれで機能的なオフィス空間をスピーディに実現できます。リモートワークと出社を組み合わせるハイブリッドワークに対応したオフィスレイアウトの提案も行っています。(参照:OFFICE WITH 公式サイト)
⑤ CBRE (シービーアールイー)
シービーアールイー株式会社は、世界最大級の事業用不動産サービス会社であり、その日本法人が運営するサイトです。グローバルなネットワークと豊富なデータを活かし、主に中規模から大規模なオフィスビルの仲介を得意としています。マーケットレポートや調査データも充実しており、不動産市況を深く理解した上で戦略的な移転を検討したい大手企業や外資系企業におすすめです。(参照:CBRE 公式サイト)
⑥ 三鬼商事
三鬼商事株式会社は、1921年創業という長い歴史を持つ、オフィス専門の不動産仲介会社です。オフィス仲介のパイオニアとして、長年にわたり蓄積されたノウハウと、ビルオーナーとの強固な信頼関係が強みです。特に都心5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)のオフィス市場に精通しており、信頼性と実績を重視する企業から高い評価を得ています。毎月発表されるオフィスマーケットデータは、業界の重要な指標として広く活用されています。(参照:三鬼商事 公式サイト)
⑦ ビルディンググループ
株式会社ビルディング企画が運営する、首都圏の賃貸オフィス・事務所に特化した検索サイトです。エリアごとに専門チームを配置し、地域に密着したきめ細やかな情報提供とサポート体制が特徴です。物件情報だけでなく、担当者の顔が見える安心感や、地域ごとの特性を踏まえた提案力に定評があり、顧客満足度の高いサービスを提供しています。(参照:ビルディンググループ 公式サイト)
⑧ HATARABA (ハタラバ)
株式会社アイ・エージェンシーが運営する、「居抜きオフィス」と「セットアップオフィス」に特化した専門サイトです。初期費用を抑え、短期間での移転を実現したい企業のニーズに応えます。サイトでは、内装の写真が豊富に掲載されており、入居後のイメージを具体的に掴みやすいのが魅力です。退去するテナントと入居するテナントを直接マッチングさせることで、効率的な取引を実現しています。(参照:HATARABA 公式サイト)
⑨ 47OFFICE (ヨンナナオフィス)
「officee」と同じ47株式会社が運営する姉妹サイトで、こちらは全国のレンタルオフィス、サービスオフィス、コワーキングスペースの検索に特化しています。1名から利用できる小規模なオフィスを探しているスタートアップ、フリーランス、企業のサテライトオフィス開設などに最適です。保証金や内装工事が不要な物件が多く、手軽に事業を開始できます。(参照:47OFFICE 公式サイト)
⑩ 東京オフィス検索
その名の通り、東京のオフィス物件に特化した検索サイトで、株式会社ボルテックスが運営しています。特に、同社が強みとする「区分所有オフィス」の売買・賃貸情報を探すことができるのがユニークな点です。賃貸だけでなく、将来的な資産としてオフィスの所有を検討している企業にとっても有益な情報源となります。(参照:東京オフィス検索 公式サイト)
⑪ ケン・コーポレーション
株式会社ケン・コーポレーションは、都心部の高級賃貸住宅の仲介で広く知られていますが、オフィスビルの仲介事業も展開しています。富裕層や外資系企業を主な顧客としているため、ハイグレードでステータス性の高いオフィス物件を数多く取り扱っています。 質の高いサービスと、高級物件に関する豊富な情報が魅力です。(参照:ケン・コーポレーション 公式サイト)
⑫ JLL (ジョーンズ ラング ラサール)
JLL(ジョーンズ ラング ラサール株式会社)は、CBREと並び称される世界的な総合不動産サービス会社です。グローバルな視点と豊富なデータに基づいたコンサルティング力が強みで、企業の不動産戦略(CRE戦略)をサポートします。大規模な本社移転や、グローバル企業の日本拠点探しなど、複雑で専門性の高いニーズに対応できる体制が整っています。(参照:JLL 公式サイト)
⑬ 理想のオフィス
株式会社ideal officeが運営する、スタートアップやベンチャー企業のオフィス移転支援に特化したサービスです。企業の成長フェーズに合わせたオフィス戦略の立案からサポートしてくれるのが特徴で、資金調達の状況や人員計画などを踏まえた、きめ細やかなコンサルティングを提供しています。急成長中の企業にとって心強いパートナーとなるでしょう。(参照:理想のオフィス 公式サイト)
⑭ スイッチオフィス
株式会社NENGOが運営する、居抜きオフィス専門のマッチングプラットフォームです。「退去費用を抑えたい」テナントと、「入居費用を抑えたい」テナントを直接繋ぐことで、双方にメリットのある取引を目指します。ウェブ上で退去・入居のマッチングを完結できる手軽さが特徴で、スピーディーな移転を求める企業に適しています。(参照:スイッチオフィス 公式サイト)
⑮ ミツモア
株式会社ミツモアが運営する、様々なプロフェッショナルが見つかる見積もりプラットフォームです。オフィス移転もカテゴリの一つとして扱われており、一度希望条件を入力するだけで、複数の不動産仲介会社から提案や見積もりを受け取ることができます。 どの会社に相談すれば良いかわからない場合や、複数の会社の提案を比較検討したい場合に便利なサービスです。(参照:ミツモア 公式サイト)
失敗しないオフィス検索サイトの選び方5つのポイント
数多くのオフィス検索サイトの中から、自社に最適な一つ(あるいは複数)を見つけ出すためには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。ここでは、サイト選びで失敗しないための5つの視点を詳しく解説します。
① 掲載物件の数と対応エリア
まず最初に確認すべきは、サイトがカバーしているエリアと、そのエリア内の掲載物件数です。
自社の現在の所在地や、移転を希望するエリアの物件情報が豊富に掲載されていなければ、そのサイトを利用する意味がありません。特に、地方都市への移転や支店の開設を検討している場合は、全国対応を謳っているサイトや、その地域に強みを持つ地元の不動産会社のサイトを重点的にチェックする必要があります。
一方で、東京都心部への移転を考えているのであれば、都心特化型のサイトの方が、より専門的で質の高い情報を提供している場合があります。例えば、「渋谷区でIT系のベンチャーに人気のビルを探したい」といった具体的なニーズがあるなら、そのエリアや物件タイプに特化したサイトが有力な候補となります。
物件数については、「多ければ多いほど良い」と一概には言えません。しかし、ある程度の物件数がなければ、比較検討の幅が狭まり、より良い条件の物件を見逃してしまう可能性があります。複数のサイトを比較し、自社の希望エリアにおいて十分な選択肢を提供してくれるサイトを選ぶことが重要です。
② 検索機能の使いやすさ
オフィス探しは、多くの条件を組み合わせて理想の物件を絞り込んでいく作業です。そのため、検索機能の使いやすさ(UI/UX)は、サイト選びにおいて非常に重要な要素となります。
チェックすべきポイントは以下の通りです。
- 条件指定の細かさ: 賃料や面積といった基本的な項目だけでなく、「新耐震基準」「OAフロア対応」「天井高2.8m以上」「個別空調」「フリーレント付き」など、自社が重視するこだわり条件で絞り込みができるかを確認しましょう。条件が細かく設定できるほど、効率的に候補を絞れます。
- 直感的な操作性: サイトのレイアウトが見やすく、誰でも直感的に操作できるデザインかどうかも大切です。ストレスなくサクサクと検索できるサイトは、情報収集のモチベーションを維持する上でも役立ちます。
- 多様な検索方法: エリアや駅名での検索だけでなく、地図上から物件を探せる「マップ検索」や、複数の路線・駅を指定して検索できる機能があると非常に便利です。通勤の利便性を重視する場合、これらの機能は必須と言えるでしょう。
- お気に入り・比較機能: 気になった物件をリストアップしておく「お気に入り機能」や、複数の物件のスペックを一覧で比較できる「比較機能」があると、検討作業が格段にはかどります。
実際にいくつかのサイトを触ってみて、自分にとって最も使いやすいと感じるサイトを見つけることをお勧めします。
③ サポート体制の充実度
オフィス検索サイトは単なる物件情報のデータベースではありません。その多くは、不動産仲介会社が運営しており、専門のコンサルタントによるサポートが受けられます。特にオフィス移転に不慣れな場合、このサポート体制の充実度はサイト選びの決定的な要因になり得ます。
確認すべきは、以下のような点です。
- 問い合わせへの対応: サイト経由で問い合わせをした際のレスポンスの速さや、対応の丁寧さは、その会社の信頼性を測る一つの指標になります。
- 専任担当者の有無: 一人の担当者が最初から最後まで一貫してサポートしてくれる体制だと、話がスムーズに進み、自社の状況や要望を深く理解してもらった上で最適な提案を受けやすくなります。
- 提案の質: こちらが伝えた条件の物件をただリストアップするだけでなく、プロの視点から「こちらの物件の方が、御社の将来的な成長を見据えると良いかもしれません」といった付加価値のある提案をしてくれるかどうかが重要です。
- トータルサポートの範囲: 物件探しだけでなく、内装レイアウトの相談、工事業者の紹介、インフラ整備、引越し、原状回復工事の交渉まで、オフィス移転に関わる一連のプロセスをどこまでサポートしてくれるのかを確認しましょう。ワンストップで任せられる会社は、担当者の負担を大幅に軽減してくれます。
④ 運営会社の信頼性と実績
大切なオフィスの移転を任せるわけですから、サイトの運営会社が信頼できる企業であることは大前提です。会社のウェブサイトなどを確認し、その信頼性や実績をしっかりと見極めましょう。
- 宅地建物取引業免許: 不動産の仲介を行うには、国土交通大臣または都道府県知事からの免許が必要です。サイトの会社概要ページなどに免許番号が記載されているか必ず確認しましょう。(例:「国土交通大臣(〇)第〇〇〇〇号」)括弧内の数字が大きいほど、更新回数が多く、業歴が長いことを示します。
- 創業年数や取引実績: 長年の実績がある会社は、それだけ多くの企業から信頼され、選ばれ続けてきた証です。ビルオーナーとの強固な関係性を築いていることも多く、有利な条件交渉や未公開物件の紹介に繋がる可能性があります。
- 専門性: 住宅も商業施設も扱う総合不動産会社よりも、「オフィス専門」を謳っている会社の方が、オフィス市場に関する深い知見やノウハウを持っている可能性が高いです。自社のニーズに合わせて、適切な専門性を持つ会社を選びましょう。
⑤ 情報の鮮度と正確性
オフィス物件の情報は、日々刻々と変化します。好条件の物件はすぐに借り手が見つかりますし、賃料などの条件が変更されることも日常茶飯事です。そのため、サイトに掲載されている情報の「鮮度」と「正確性」は極めて重要です。
- 情報更新の頻度: サイト上で「最終更新日」などが表示されているかを確認しましょう。頻繁に情報が更新されているサイトは、それだけ情報の鮮度を保つ努力をしていると言えます。
- 成約済み物件の扱い: いつまでも成約済みの物件が掲載されているサイトは、管理体制がずさんであるか、意図的に客寄せ(おとり物件)に使っている可能性があります。注意が必要です。
- 情報の質: 掲載されている写真の枚数や画質、間取り図の見やすさ、物件コメントの具体性なども、情報の質を判断する材料になります。詳細で分かりやすい情報を提供しているサイトは、利用者にとって親切であり、信頼性が高いと言えるでしょう。
これらの5つのポイントを総合的に評価し、自社の移転プロジェクトのパートナーとして最もふさわしいオフィス検索サイトを選び出すことが、移転成功への第一歩となります。
オフィス検索サイトを上手に活用するコツ
優れたオフィス検索サイトを選んだとしても、ただ漠然と眺めているだけでは、宝の持ち腐れになってしまいます。サイトの機能を最大限に引き出し、効率的かつ効果的にオフィス探しを進めるための4つのコツをご紹介します。
移転の目的と希望条件を明確にする
検索を始める前に、まず「なぜオフィスを移転するのか」という目的を明確にすることが最も重要です。目的が曖昧なままでは、数多ある物件情報の中から自社にとって本当に必要な物件を見極めることはできません。
移転の目的を具体的に言語化しましょう。
- 事業拡大: 従業員が増えて現オフィスが手狭になったため、より広いスペースが必要。
- コスト削減: 現在の賃料負担が重いため、よりコストパフォーマンスの高いエリア・物件に移りたい。
- 人材採用・ブランディング: 優秀な人材を獲得するため、交通の便が良く、企業のイメージ向上に繋がる魅力的なビルに移りたい。
- 働き方の変革: リモートワークを導入し、出社率が下がったため、オフィスを縮小して固定費を削減し、コミュニケーション活性化のためのコラボレーションスペースを充実させたい。
目的が明確になったら、次はその目的を達成するための具体的な希望条件を「Must(必須条件)」と「Want(希望条件)」に分けて整理します。
条件の分類 | 内容例 |
---|---|
Must(必須条件) | ・予算(賃料・共益費)の上限は月額〇〇万円以内 ・面積は最低でも〇〇坪必要 ・〇〇線〇〇駅から徒歩10分以内 ・新耐震基準を満たしていること |
Want(希望条件) | ・できれば駅直結か、徒歩5分以内が良い ・眺望が良い高層階 ・リフレッシュスペースを設置できる余裕がある ・フリーレントが2ヶ月以上つくと嬉しい |
このように条件に優先順位をつけておくことで、検索サイトで条件を入力する際に迷いがなくなり、数多くの物件の中から効率的に候補を絞り込めます。また、不動産会社の担当者に相談する際にも、自社の要望を的確に伝えることができ、より精度の高い提案を受けられるようになります。
複数のサイトを比較検討する
「おすすめのオフィスビル検索サイト15選」でも触れたように、オフィス検索サイトにはそれぞれ特徴や強みがあります。一つのサイトだけに固執せず、複数のサイトを併用することで、より広く、深く情報を収集できます。
特におすすめなのが、「ポータルサイト」と「不動産仲介会社のサイト」を組み合わせて利用する方法です。
- ステップ1:ポータルサイトで市場調査
まずは「officee」のような掲載物件数の多いポータルサイトで、希望エリアの物件を広く検索します。これにより、そのエリアの賃料相場や、どのような物件が多いのかといった市場の全体像を掴むことができます。 - ステップ2:仲介会社サイトで深掘り
市場の相場観が掴めたら、次にそのエリアに強みを持つ仲介会社のサイトや、「CBRE」「三鬼商事」のような専門性の高い会社のサイトをチェックします。ポータルサイトには掲載されていない「未公開物件」や、より詳細な情報が見つかる可能性があります。 - ステップ3:専門特化サイトで補完
もし、「居抜きでコストを抑えたい」「デザイン性の高いオフィスが良い」といった明確な要望があれば、「HATARABA」や「OFFICE WITH」のような専門特化サイトも見てみましょう。ニッチなニーズに応える物件が見つかるかもしれません。
同じ物件が複数のサイトに掲載されている場合でも、写真の角度やコメントの内容が異なることがあります。多角的に情報をチェックすることで、物件に対する理解を深めることができます。
気になる物件は必ず内見する
ウェブサイト上の情報だけで物件を判断するのは絶対に避けるべきです。 写真や図面は非常に有益な情報ですが、それだけでは分からないことがたくさんあります。気になる物件をいくつか絞り込んだら、必ず現地に足を運んで内見しましょう。
内見でチェックすべきポイントは多岐にわたります。
- 室内の雰囲気:
- 天井高と開放感: 図面では分からない天井の高さや、柱の位置による圧迫感を確認します。
- 日当たりと眺望: 時間帯による日の入り方や、窓からの景色が業務に与える影響をチェックします。
- 騒音・振動: 周辺道路の交通量や、隣接するテナントからの音が気にならないか確認します。
- 共用部:
- エントランス: 企業の「顔」となる部分です。デザインや清潔感が自社のイメージに合っているか確認します。
- エレベーター: 基数や待ち時間、混雑具合は、従業員の毎日のストレスに直結します。
- トイレ・給湯室: 清潔さや設備の新しさは、従業員満足度に大きく影響します。
- 周辺環境:
- 最寄り駅からの道のり: 実際に歩いてみて、信号の数、坂道の有無、夜道の明るさなどを確認します。
- ランチ環境: 周辺に飲食店やコンビニ、弁当屋が充実しているかは、従業員にとって重要なポイントです。
- その他施設: 銀行、郵便局、役所などが近くにあると便利です。
内見には、できるだけ複数の部署の担当者(経営層、総務、現場の従業員代表など)が参加し、それぞれの視点から意見を出し合うことが理想です。
専門家のアドバイスも参考にする
オフィス検索サイトは強力なツールですが、最終的な契約や交渉には専門的な知識が必要です。サイトを通じて問い合わせた不動産会社のコンサルタントは、オフィス移転のプロフェッショナルです。彼らの知識や経験を積極的に活用しましょう。
- 非公開情報の提供: サイトには掲載されていない、条件の良い未公開物件を紹介してくれることがあります。
- 客観的なアドバイス: 自社の希望条件を伝えた上で、「その予算なら、こちらのエリアの方がより広い物件が見つかりますよ」「そのビルは管理状態が非常に良いのでおすすめです」といった、プロならではの客観的なアドバイスがもらえます。
- 条件交渉: 賃料、フリーレント期間、敷金の減額など、素人では難しいビルオーナーとの条件交渉を代行してくれます。
- 契約内容の確認: 賃貸借契約書には専門的な用語が多く含まれます。不利な条項がないかなどをチェックしてもらうことで、将来的なトラブルを防ぐことができます。
信頼できるコンサルタントを味方につけることが、オフィス移転を成功させるための最大の近道と言えるかもしれません。
オフィス検索サイトを利用するメリット
なぜ今、多くの企業がオフィス検索サイトを利用するのでしょうか。その背景には、従来のオフィス探しにはなかった、明確なメリットが存在します。ここでは、サイト利用がもたらす3つの大きな利点について解説します。
いつでもどこでも物件を探せる
最大のメリットは、時間と場所に縛られずにオフィス探しができる点です。 従来の方法では、不動産会社の営業時間内に店舗を訪れ、担当者と対面で話を聞きながら物件資料を見せてもらうのが一般的でした。これでは、日中の業務が忙しい担当者にとっては大きな負担となります。
しかし、オフィス検索サイトであれば、PCやスマートフォン、タブレットがあれば24時間365日、いつでもどこでもアクセス可能です。早朝や深夜、休日はもちろん、通勤中の電車の中や、会議の合間のちょっとした空き時間でも、気軽に物件情報をチェックできます。
この利便性は、多忙な経営者や担当者の時間的制約を解消し、オフィス探しをより柔軟かつ効率的に進めることを可能にします。思い立った時にすぐ検索できるため、良い物件を見逃す機会も減るでしょう。また、複数の関係者がいる場合でも、各自が都合の良い時間にサイトを閲覧し、気になる物件のURLを共有して意見交換するといった、スムーズな情報共有が実現します。
多くの物件情報を効率的に比較できる
不動産会社を一軒一軒訪ねて回る方法では、一日に得られる情報量には限界があります。また、それぞれの会社が提供する資料のフォーマットも異なるため、物件同士を客観的に比較するのは容易ではありませんでした。
オフィス検索サイトは、この課題を劇的に解決します。一つのサイトにアクセスするだけで、何百、何千という膨大な物件情報を一度に閲覧できます。 さらに、ほとんどのサイトでは、検索結果が統一されたフォーマットで一覧表示されるため、各物件の賃料、面積、所在地、築年数といった基本スペックを横並びで比較することが非常に簡単です。
例えば、「渋谷駅徒歩5分以内、50〜60坪、坪単価3万円以下」といった条件で検索すれば、該当する物件だけがリストアップされ、無駄な情報に目を通す必要がありません。さらに、多くのサイトに搭載されている「お気に入り機能」や「比較リスト機能」を使えば、気になる物件をいくつかピックアップし、それらの詳細なスペックを一覧表でじっくりと見比べることができます。
このように、膨大な選択肢の中から、自社の希望条件に合致する物件候補を短時間で、かつ効率的に絞り込めることこそ、オフィス検索サイトがもたらす大きな価値の一つです。 これにより、担当者は情報収集にかかる時間を大幅に短縮し、内見や条件交渉といった、より重要度の高い業務に集中できます。
未公開物件に出会える可能性がある
不動産市場には、一般の市場には出回らない「未公開物件」や「非公開物件」と呼ばれるものが存在します。これらは、以下のような理由で公開されていません。
- 人気物件: 空室が出るとすぐに次のテナントが決まってしまうため、わざわざ広く広告する必要がない。
- オーナーの意向: ビルのブランドイメージを保つためや、既存テナントへの配慮から、大々的な募集を控えている。
- 戦略的な理由: 新築ビルなどで、特定の優良テナントを誘致するために、情報を限定的に公開している。
こうした優良物件は、通常、ビルオーナーと強固な信頼関係を築いている一部の不動産会社だけが情報を握っており、既存の優良顧客へ優先的に紹介されます。
オフィス検索サイト、特に不動産仲介会社が直接運営しているサイトに会員登録などをすることで、こうした未公開物件の情報にアクセスできる可能性があります。 サイト運営会社は、登録されたユーザーの希望条件を把握しており、条件にマッチする未公開物件が出た際に、メールなどで個別に情報を送ってくれることがあります。
ポータルサイトで希望の物件が見つからなかった場合でも、諦めずに専門性の高い仲介会社のサイトに登録し、コンタクトを取っておくことで、思わぬ掘り出し物に出会えるチャンスが広がります。これは、自力で情報を探すだけでは決して得られない、オフィス検索サイトを利用するからこその大きなメリットと言えるでしょう。
オフィス検索サイトを利用する際の注意点
オフィス検索サイトは非常に便利なツールですが、その手軽さゆえに注意すべき点もいくつか存在します。これらの注意点を理解し、賢く利用することが、トラブルを避けて満足のいくオフィス移転を実現するための鍵となります。
「おとり物件」に注意する
「おとり物件」とは、実際には契約できないにもかかわらず、顧客を呼び込む目的で掲載され続けている物件のことです。 具体的には、すでに契約済みになった人気物件や、存在しない架空の好条件物件などがこれにあたります。
おとり物件は、宅地建物取引業法で禁止されている不当な顧客誘引行為ですが、残念ながら一部のサイトや業者ではいまだに存在するのが実情です。
【おとり物件の手口と見分け方】
- 問い合わせると…: 物件について問い合わせると、「タッチの差でちょうど決まってしまいました」「実はその物件、事故物件でして…」などと言われ、別の物件をしきりに勧められる。これが典型的な手口です。
- 相場からかけ離れた好条件: 周辺の同じようなグレードの物件と比較して、賃料が異常に安い、礼金・敷金がゼロなど、条件が良すぎる物件は注意が必要です。うまい話には裏がある可能性を疑いましょう。
- 情報の具体性がない: 写真が外観のみで室内が一切ない、住所の番地が曖昧など、情報が不自然に少ない物件も要注意です。
おとり物件に引っかかると、問い合わせや店舗訪問の時間を無駄にするだけでなく、不誠実な業者と関わってしまうリスクもあります。怪しいと感じたら深追いせず、運営会社の信頼性が高いサイトを利用したり、複数のサイトで同じ物件が掲載されているかを確認したりするなどの対策が有効です。
掲載情報が古い場合がある
オフィス物件の市場は流動的で、空室状況や賃料などの条件は日々変動します。多くのサイトでは情報の更新に努めていますが、全ての情報がリアルタイムで反映されているとは限りません。
サイトに掲載されている情報が、必ずしも最新の状態ではない可能性を常に念頭に置いておく必要があります。
- 賃料・条件の変動: 募集開始時から賃料が変更されていたり、フリーレントの条件が変わっていたりすることがあります。サイト上の情報はあくまで「参考情報」と捉えましょう。
- 成約済みの可能性: 問い合わせた時点ですでに申し込みが入っている、あるいは契約済みになっているケースは頻繁に起こります。特に人気物件の場合はスピード勝負になるため、気になる物件を見つけたらすぐに問い合わせることが重要です。
対策として、サイト上の情報更新日をチェックする癖をつけること、そして最終的な条件は必ず問い合わせを通じて不動産会社の担当者に直接確認することが不可欠です。 「サイトにこう書いてあった」という主張は、実際の交渉の場では通用しないことを理解しておきましょう。
サイトの情報だけで判断しない
これが最も重要な注意点です。オフィス検索サイトはあくまで「情報収集と比較検討のためのツール」であり、最終的な意思決定の材料ではありません。
ウェブサイトに掲載されている写真や図面、データには限界があります。
- 写真のトリック: プロが撮影した写真は、広角レンズの使用や画像加工によって、実際よりも広く、明るく、綺麗に見えていることがよくあります。
- 図面から読み取れないこと: 間取り図だけでは、天井の高さ、柱の太さや位置がもたらす圧迫感、コンセントの数や位置、窓の大きさなどは正確に把握できません。
- 数値化できない要素: ビルの格式、エントランスの雰囲気、エレベーターの待ち時間、管理人の人柄、周辺の騒音、日当たりや風通しといった要素は、現地に行かなければ絶対に分かりません。
これらの要素は、従業員の働きやすさや満足度、ひいては生産性に直結する重要なポイントです。サイトの情報だけで「この物件に決めよう」と判断してしまうのは非常に危険です。
繰り返しになりますが、気になる物件が見つかったら、必ず内見を行い、自分の目で確かめるプロセスを省略してはいけません。 サイトの情報は「内見する物件を絞り込むためのフィルター」と位置づけ、実際の判断は現地での確認後に行う、という鉄則を守ることが、後悔のないオフィス選びに繋がります。
オフィス移転完了までの基本的な流れ
オフィス移転は、物件を探して契約すれば終わり、という単純なものではありません。多くのタスクが複雑に絡み合う長期的なプロジェクトです。ここでは、移転計画の立案から入居完了までの基本的な流れを、時系列に沿って解説します。余裕を持ったスケジュールを組むための参考にしてください。
移転計画を立てる(移転の6ヶ月~1年前)
すべての始まりは、綿密な移転計画です。 この段階での準備が、プロジェクト全体の成否を左右します。
- ① 移転目的の明確化: なぜ移転するのか(増員、コスト削減、ブランディング等)を定義し、関係者間で共有します。
-
- ② プロジェクトチームの発足: 経営層、総務、経理、情報システム、各事業部の代表者などからなる専任チームを結成します。
- ③ 現状分析と課題の洗い出し: 現在のオフィスの問題点(狭い、古い、通勤が不便、コミュニケーションが取りにくい等)をリストアップします。
- ④ 要件定義と予算策定: 新オフィスに求める条件(立地、面積、レイアウト、設備等)を整理し、移転にかかる総予算(物件取得費、内装工事費、引越し費用等)を算出します。
- ⑤ スケジュール策定: 解約予告期間(通常6ヶ月前)を考慮し、全体のスケジュールを策定します。大規模な移転の場合は、1年以上前から準備を始めるのが理想です。
物件を探し、情報を集める(移転の6ヶ月~9ヶ月前)
計画が固まったら、いよいよ具体的な物件探しを開始します。
- ① オフィス検索サイトの活用: 本記事で紹介したようなサイトを使い、設定した要件に合う物件を広くリストアップします。
- ② 不動産仲介会社の選定: 複数のサイトや会社に問い合わせ、信頼できるパートナーとなる仲介会社を選定します。この際、自社の移転計画を具体的に伝え、プロの視点からのアドバイスを求めます。
- ③ 物件情報の比較検討: 仲介会社からの提案物件も含め、候補となる物件の情報を比較し、内見する物件を10〜20件程度に絞り込みます。
内見して物件を絞り込む(移転の5ヶ月~7ヶ月前)
リストアップした物件を実際に訪れ、詳細を確認します。
- ① 内見の実施: プロジェクトメンバーで手分け、あるいは一緒に内見に回ります。チェックリストを作成し、客観的な評価ができるようにしておくと良いでしょう。
- ② 比較検討と絞り込み: 内見の結果と写真、資料を基に、候補物件を比較検討します。この段階で、候補を2〜3件の「最有力候補」に絞り込みます。
- ③ レイアウトプランの作成: 絞り込んだ物件について、設計会社や内装業者に依頼し、具体的なレイアウトプランの作成を進めます。実際に自社の部署や什器が収まるか、動線はスムーズかなどを確認します。
申し込みと審査(移転の4ヶ月~6ヶ月前)
移転先を最終決定し、入居の意思表示を行います。
- ① 入居申込書の提出: 最も希望する物件のオーナー(貸主)に対し、不動産仲介会社を通じて入居申込書を提出します。この際、賃料やフリーレントなどの希望条件も提示し、交渉を開始します。
- ② 入居審査: 貸主側で、入居希望企業の事業内容や財務状況などを基にした入居審査が行われます。会社の登記簿謄本や決算書の提出を求められるのが一般的です。
契約手続きを進める(移転の3ヶ月~5ヶ月前)
審査に通過したら、法的な契約手続きに入ります。
- ① 重要事項説明: 宅地建物取引士から、契約に関する重要な事項について説明を受けます。
- ② 賃貸借契約の締結: 契約内容を十分に確認した上で、貸主と賃貸借契約を締結します。
- ③ 旧オフィスの解約予告: 現在のオフィスの賃貸借契約書を確認し、定められた予告期間(通常3〜6ヶ月前)に従って、貸主に解約を通知します。
- ④ 内装・インフラの準備: 新オフィスの内装工事の業者選定と発注、電話やインターネット回線の手配などを進めます。
移転作業と入居(移転の1ヶ月前~当日)
いよいよ移転の最終段階です。やるべきことが多いため、計画的に進める必要があります。
- ① 各種届出: 官公庁への住所変更等の届出(法務局、税務署、社会保険事務所など)を行います。
- ② 引越し業者の選定・手配: 複数の業者から見積もりを取り、引越し業者を決定します。
- ③ 関係者への告知: 取引先や顧客、従業員の家族などへ、移転の案内状を送付します。
- ④ 原状回復工事: 旧オフィスの契約内容に基づき、内装を借りた時の状態に戻す原状回復工事を手配します。
- ⑤ 引越し・入居: 引越し作業を実施し、新オフィスでの業務を開始します。
この流れはあくまで一例です。企業の規模や移転の複雑さによって、各フェーズの期間は変動します。重要なのは、各ステップで何をするべきかを把握し、余裕を持ったスケジュールで着実に進めることです。
オフィス探しに関するよくある質問
最後に、オフィス探しや移転に関して、多くの企業担当者が抱える疑問について、Q&A形式でお答えします。
オフィス探しはいつから始めるべき?
A. 一般的には、移転希望日の「6ヶ月~1年前」から始めるのが理想的です。
これは、多くのオフィスビルの賃貸借契約において、解約予告期間が「6ヶ月前」と定められているためです。現在のオフィスの解約を通知してから、実際に退去するまでの6ヶ月間に、新オフィスの選定、契約、内装工事、引越しなどをすべて完了させる必要があります。
- 小規模な移転(~30坪程度): 最低でも6ヶ月前には探し始めたいところです。
- 中規模な移転(~100坪程度): 8ヶ月~10ヶ月前から準備を始めると、余裕を持って進められます。
- 大規模な移転(100坪以上)や、こだわりの内装を施したい場合: 1年以上前から計画をスタートするのが賢明です。
探し始めるのが早すぎるということはありません。準備期間が長ければ長いほど、より多くの物件を比較検討でき、納得のいく移転が実現できる可能性が高まります。「そろそろ移転かな」と考え始めたら、まずは情報収集からでも始めてみることをお勧めします。
居抜きオフィスとは何ですか?
A. 前のテナントが使用していた内装や設備(間仕切り、会議室、受付、什器など)を、そのまま引き継いで入居できる物件のことです。
通常のスケルトン状態(何もないコンクリート打ちっぱなしの状態)から内装工事を行う場合に比べて、以下のようなメリット・デメリットがあります。
項目 | メリット | デメリット |
---|---|---|
コスト | 内装工事費を大幅に削減できる。 | 既存の内装が不要な場合でも、撤去費用がかかることがある。 |
時間 | 工事期間が不要なため、短期間で入居できる。 | 既存のレイアウトに縛られるため、レイアウトの自由度が低い。 |
デザイン | – | 自社のブランドイメージやカルチャーに合ったデザインにしにくい。 |
設備 | – | 設備が古かったり、故障したりするリスクがある。 |
居抜きオフィスは、特に初期費用を抑えてスピーディーに移転したいスタートアップやベンチャー企業に適しています。 ただし、レイアウトの制約などもあるため、自社の働き方や文化に合っているかを慎重に見極める必要があります。
賃料以外にどんな費用がかかりますか?
A. オフィスの契約時には、月々の賃料の他に、まとまった初期費用が必要です。 一般的に「賃料の6~12ヶ月分」が目安とされています。
主な費用の内訳は以下の通りです。
費用項目 | 内容 | 費用の目安 |
---|---|---|
保証金(敷金) | 賃料の滞納や退去時の原状回復費用に充てられる担保金。退去時に一部が返還される。 | 月額賃料の6~12ヶ月分 |
礼金 | 貸主に対して支払う謝礼金。返還されない。 | 月額賃料の0~2ヶ月分 |
仲介手数料 | 不動産仲介会社に支払う手数料。 | 月額賃料の1ヶ月分 + 消費税 |
前払賃料 | 入居する月の賃料(日割計算の場合もあり)と共益費。 | 月額賃料の1ヶ月分 |
火災保険料 | 万が一の火災などに備える保険の加入費用。 | 2年間で2万円~5万円程度 |
【例】月額賃料50万円、保証金10ヶ月、礼金1ヶ月の場合の初期費用概算
- 保証金:500万円
- 礼金:50万円
- 仲介手数料:55万円(税込)
- 前払賃料:50万円
- 合計:655万円
この他にも、内装工事費、オフィス家具購入費、引越し費用、旧オフィスの原状回復工事費など、多額の費用が発生します。オフィス移転は非常に大きな投資です。資金計画をしっかりと立て、余裕を持った予算を確保することが極めて重要です。
まとめ
本記事では、オフィスビル検索サイトの基本から、おすすめサイト15選、選び方のポイント、活用術、注意点、そして移転全体の流れまで、幅広く解説しました。
オフィス検索サイトは、多様化する働き方や企業戦略に合わせて最適なワークプレイスを見つけるための、現代における必須ツールです。その利便性を最大限に活かすためには、以下のポイントを改めて押さえておくことが重要です。
- サイト選びは慎重に: 掲載物件数、検索機能、サポート体制、運営会社の信頼性、情報の鮮度という5つの視点から、自社のニーズに合ったサイトを選びましょう。
- 活用にはコツがある: 移転目的を明確にし、複数のサイトを比較し、必ず内見を行い、専門家のアドバイスを仰ぐことで、サイトの価値を何倍にも高めることができます。
- 注意点を忘れずに: 「おとり物件」や古い情報に注意し、サイトの情報だけで判断せず、必ず自分の目で確かめることが、後悔しないオフィス移転の鉄則です。
オフィス移転は、企業にとって大きな負担とコストを伴う一大プロジェクトですが、同時に、生産性の向上、従業員満足度の向上、企業ブランドの強化など、大きな成長機会をもたらすポテンシャルを秘めています。
まずはこの記事を参考に、自社にぴったりのオフィス検索サイトを見つけることから始めてみましょう。そして、計画的かつ戦略的にオフィス移転を進め、事業のさらなる飛躍に繋げてください。