【業種別】おしゃれな店舗デザイン事例50選 費用相場や依頼先も解説

おしゃれな店舗デザイン事例50選、費用相場や依頼先も解説

店舗の開業やリニューアルを考える際、その成功を大きく左右するのが「店舗デザイン」です。優れた店舗デザインは、ただ空間をおしゃれに見せるだけでなく、ブランドの魅力を伝え、お客様を引きつけ、売上を向上させる力を持っています。しかし、いざデザインを考え始めると、「どんなデザインにすれば良いのか」「費用はどれくらいかかるのか」「どこに依頼すれば良いのか」といった多くの疑問に直面するでしょう。

この記事では、これから店舗デザインに取り組むオーナー様に向けて、その基本から実践的なノウハウまでを網羅的に解説します。業種別のおしゃれなデザインのポイントから、具体的な費用相場、信頼できる依頼先の選び方、そしてオープンまでの流れまで、この記事を読めば店舗デザインに関するあらゆる疑問が解消されるはずです。成功する店舗作りの第一歩は、正しい知識を得ることから始まります。ぜひ最後までお読みいただき、あなたの理想の店舗を実現するためのヒントを見つけてください。

店舗デザインとは

店舗デザインとは

店舗デザインと聞くと、単に「内装をおしゃれにすること」と考えるかもしれません。しかし、その本質はもっと深く、多岐にわたります。店舗デザインとは、事業のコンセプトやブランドの世界観を、空間を通じてお客様に伝えるための総合的な設計を指します。それは、外観(ファサード)から内装、照明、家具、小物、さらにはBGMや香りに至るまで、お客様が五感で感じるすべての要素を含みます。

ここでは、店舗デザインが持つ本来の重要性と役割、そしてそれがビジネスの根幹である「売上」にどのように貢献するのかを掘り下げて解説します。

店舗デザインの重要性と役割

店舗デザインは、ビジネスの成功に不可欠な「サイレントセールスマン」とも言える重要な役割を担っています。その役割は、大きく分けて以下の5つに集約されます。

  1. ブランドアイデンティティの具現化
    店舗は、ブランドの理念や価値観を物理的な空間として表現する最も強力なメディアです。例えば、「オーガニックで健康的なライフスタイルを提案する」というコンセプトのカフェであれば、無垢材や植物を多用したナチュラルなデザインにすることで、言葉で説明する以上に雄弁にブランドの姿勢を伝えられます。店舗デザインは、目に見えないブランドの想いを、お客様が体感できる形に翻訳する役割を担っているのです。
  2. ターゲット顧客へのアピールと集客
    店舗の外観は、いわば「お店の顔」です。通行人が「何のお店だろう?」「なんだか素敵だな、入ってみたい」と感じるかどうかは、ファサードのデザインにかかっています。ターゲットとする顧客層が好むデザイン(例えば、若者向けならポップでカラフル、富裕層向けなら重厚でラグジュアリーなど)を採用することで、お店の前を通りかかった潜在顧客を、実際の来店客へと転換させる強力なフックとなります。
  3. 顧客体験(CX)の向上
    一度来店してくれたお客様に「また来たい」と思ってもらうためには、快適で心地よい体験を提供することが不可欠です。適切な広さの通路、座り心地の良い椅子、リラックスできる照明、落ち着いたBGMなど、デザインによって作られる空間の質が顧客体験を大きく左右します。商品やサービスの質はもちろん重要ですが、「この空間にいること自体が心地よい」と感じさせることが、リピーター獲得の鍵となります。
  4. 従業員のモチベーションと作業効率の向上
    店舗デザインは、お客様のためだけのものではありません。そこで働くスタッフにとっても重要な意味を持ちます。効率的に作業できるキッチンレイアウト、スムーズなサービス提供を可能にする動線計画、休憩時間にリラックスできるバックヤードなど、働きやすい環境は従業員の満足度とモチベーションを高めます。その結果、サービスの質が向上し、離職率の低下にも繋がるなど、経営全体に良い影響を与えます。
  5. 競合との差別化
    同じような商品やサービスを提供する競合店がひしめく中で、お客様に選ばれるためには明確な差別化が必要です。独自のコンセプトに基づいたユニークな店舗デザインは、他店にはない強い個性を放ち、お客様の記憶に深く刻まれます。「あの独特な雰囲気のお店」として認知されれば、価格競争に陥ることなく、唯一無二の価値を持つ店舗としてブランドを確立できます

店舗デザインが売上に与える影響

優れた店舗デザインが、具体的にどのようにして売上向上に結びつくのでしょうか。そのメカニズムは、お客様の購買行動の各ステップに深く関わっています。

  • 入店率の向上 → 新規顧客の獲得
    前述の通り、魅力的で分かりやすいファサードは、通行人の足を止め、店内へと誘導します。特に、何を売っている店なのかが一目でわかること、そしてターゲット顧客が「自分向けのお店だ」と感じられることが重要です。入店客数が増えれば、それに比例して売上の機会も増大します。
  • 滞在時間の延長 → 購買機会の増加
    居心地の良い空間は、お客様の滞在時間を自然と延ばします。例えば、カフェでゆったりとしたソファ席を用意したり、アパレル店で商品の世界観に浸れるようなディスプレイを施したりすることで、お客様はリラックスして店内を回遊します。滞在時間が長くなれば、当初は買うつもりのなかった商品に目が留まったり、「ついで買い」をしたりする可能性が高まります。滞在時間と買い上げ点数には相関関係があると言われています。
  • 客単価の上昇 → 利益率の改善
    デザインは、商品の価値認識にも影響を与えます。高級感のある内装や照明の下に陳列された商品は、雑然とした空間にある同じ商品よりも価値が高く見える「ハロー効果」が働きます。これにより、お客様は高価格帯の商品にも納得感を持ちやすくなります。また、レジ横に衝動買いを誘うような小物を効果的に配置するなど、レイアウトの工夫によっても客単価アップを狙えます。空間演出によって商品の付加価値を高め、結果的に客単価を引き上げることが可能です。
  • リピート率の向上 → 安定した経営基盤
    「商品が良かった」という満足だけでなく、「あの空間が良かった」「気持ちよく過ごせた」という体験的な満足が加わることで、お客様のロイヤルティは格段に高まります。「またあの場所に行きたい」という動機は、強力な再来店促進力となります。リピーターは新規顧客獲得コストがかからないため、安定した売上を確保し、経営を盤石にする上で極めて重要な存在です。優れた店舗デザインは、このリピーターを育む土壌となります。
  • 口コミ・SNSでの拡散 → 広告宣伝効果
    写真映えする「フォトジェニック」な空間は、現代において非常に強力な集客ツールです。お客様が自発的に店内や商品の写真を撮り、InstagramなどのSNSに投稿してくれれば、それは無料で効果的な広告宣伝活動に他なりません。「#(店名)」や「#(地名)カフェ」といったハッシュタグを通じて情報が拡散され、それを見た新たな顧客が来店するという好循環が生まれます。デザインそのものが、広告塔としての役割を果たすのです。

このように、店舗デザインは単なる見た目の問題ではなく、集客、顧客体験、単価向上、リピート促進、そして広告宣伝という、ビジネスの根幹に関わるあらゆる側面に直接的な影響を与える、極めて戦略的な経営投資であると言えるでしょう。

【業種別】おしゃれな店舗デザインの事例

カフェ・喫茶店、美容室・サロン、飲食店・レストラン、アパレル・物販店、オフィス・コワーキングスペース、クリニック・病院

ここでは、特定の店舗名を挙げるのではなく、業種ごとに人気のあるデザインの方向性や、おしゃれで機能的な空間を作るためのポイントを「事例」として紹介します。自店のコンセプトと照らし合わせながら、デザインのヒントを見つけてください。

カフェ・喫茶店

カフェは、顧客がコーヒーや食事だけでなく、「過ごす時間」そのものを求めて来店する場所です。そのため、コンセプトに合わせた世界観の作り込みが特に重要になります。

  • ナチュラル&オーガニックスタイル: 無垢材のテーブルやフローリング、観葉植物をふんだんに取り入れ、白やアースカラーを基調としたデザイン。心身ともにリラックスできる空間を演出し、健康志向の強い層や女性客に人気です。大きな窓から自然光を取り入れると、より開放的で心地よい雰囲気になります。
  • インダストリアル(工業系)スタイル: コンクリート打ちっ放しの壁や天井、むき出しの配管、スチール製の家具などを組み合わせた、無骨でクールなデザイン。ヴィンテージ感のある照明やレザーのソファを合わせると、洗練された大人の隠れ家のような雰囲気を醸し出せます。スペシャルティコーヒー専門店など、こだわりを強く打ち出したい店舗におすすめです。
  • レトロ&アンティークスタイル: 昭和の喫茶店やヨーロッパの古いカフェを彷彿とさせる、懐かしくも温かみのあるデザイン。使い込まれた木の家具、ステンドグラス、ベロア素材の椅子などが特徴です。純喫茶ブームもあり、若い世代から年配層まで幅広く支持されます。BGMにジャズやクラシックを流すと、より世界観が深まります。
  • 北欧スタイル: シンプルで機能的、かつ温かみのあるデザイン。白を基調に、明るい木材やファブリック、そしてアクセントカラー(ブルーやイエローなど)を効果的に使います。ミニマルでありながら居心地の良さを感じさせ、長時間滞在しても疲れにくい空間です。
  • 韓国風カフェスタイル: 白やベージュを基調としたミニマルな空間に、無機質なステンレスやアクリル、個性的なデザインのミラーやアートを配置するスタイル。シンプルながら写真映えするため、SNSでの拡散を狙う店舗に最適です。

美容室・サロン

美容室やサロンは、お客様が「美しくなる」ための期待感を抱いて訪れる場所。清潔感と非日常感を両立させることがポイントです。

  • ラグジュアリー&ホテルライクスタイル: 大理石調の床や壁、ゴールドやカッパー(銅色)の金物をアクセントに使い、上質で高級感のある空間を演出。間接照明を効果的に使い、落ち着いた雰囲気を醸し出します。高単価メニューを提供するサロンや、大人女性をターゲットにする店舗に適しています。
  • ミニマル&モダンスタイル: 白やグレーを基調とし、余計な装飾を排したシンプルで洗練されたデザイン。施術スペースを広く見せる効果があり、清潔感を際立たせます。ガラスや鏡を多用することで、開放感が生まれます。技術力の高さをアピールしたい実力派サロンに合います。
  • 西海岸&ボヘミアンスタイル: 明るい木材や白壁をベースに、ヘリンボーン柄の床、流木、マクラメ編みのタペストリーなどを取り入れたリラックス感のあるスタイル。海辺のカフェのような開放的な雰囲気で、お客様の緊張を和らげます。特にサーフカルチャーが根付くエリアや、ナチュラル志向の顧客層に人気です。
  • プライベートサロン風スタイル: 半個室や完全個室を設け、お客様一人ひとりのプライベート空間を確保したデザイン。隣の席が気にならないレイアウトは、リラックス効果を最大限に高めます。ヘッドスパなど、癒やしメニューに力を入れるサロンで特に重要です。
  • アンティーク&シャビースタイル: 使い古されたような風合いの家具や建具、ドライフラワーなどを飾り、フレンチシックで可愛らしい雰囲気を演出。女性の「かわいい」という感性に響き、固定ファンを獲得しやすいスタイルです。

飲食店・レストラン

飲食店のデザインは、提供する料理のジャンルや価格帯との連動が不可欠です。お客様が料理をより美味しく感じられるような空間作りが求められます。

  • 和モダンスタイル(割烹・寿司店など): 伝統的な和の要素(格子、白木、和紙など)に、モダンでシンプルなデザインを融合させたスタイル。凛とした空気感の中に、現代的な洗練さを感じさせます。カウンター席を主役に据え、職人の手仕事が見えるライブ感を演出するのが定番です。
  • カジュアルダイニングスタイル(イタリアン・ビストロなど): レンガ調の壁や温かみのある木材、黒板メニューなどを使い、活気と親しみやすさを演出。オープンキッチンにして調理の音や香りをお客様に届けることで、ライブ感と安心感を与えます。テーブル間隔を調整し、賑わいとプライベート感のバランスを取ることが重要です。
  • ファインダイニングスタイル(高級レストランなど): 重厚感のある素材、上質なファブリック、計算された照明計画で、非日常的で特別な空間を創造します。隣のテーブルとの距離を十分に確保し、プライバシーに配慮したレイアウトが必須です。静かで落ち着いた雰囲気の中、食事と会話に集中できる環境を提供します。
  • アジアンリゾートスタイル(タイ・ベトナム料理店など): ダークブラウンの木材、ラタン(籐)の家具、トロピカルな植物、民族的なテキスタイルなどを使い、異国情緒あふれるリゾート感を演出。現地の雰囲気を忠実に再現することで、食事と共に旅行気分を味わえる付加価値を提供します。
  • 専門特化型スタイル(ラーメン・焼肉店など): 機能性を最優先しつつ、ブランドイメージを強く打ち出すデザイン。例えば、ラーメン店ならカウンター席中心のレイアウトで回転率を高め、焼肉店なら排煙設備をデザインに組み込みながら、グループで楽しめるテーブル席を配置するなど、業態に特化した設計が求められます。

アパレル・物販店

物販店では、商品が主役です。デザインは商品を魅力的に見せ、お客様の購買意欲を掻き立てるための「舞台装置」としての役割が強くなります。

  • ギャラリースタイル: 白を基調としたミニマルな空間に、商品をアート作品のように一点一点ゆったりと展示するスタイル。商品の価値を際立たせ、ブランドの世界観をストイックに表現できます。デザイナーズブランドや高価格帯のセレクトショップに向いています。
  • ライフスタイル提案型スタイル: 商品だけでなく、関連する家具や雑貨、書籍などを一緒にディスプレイし、特定のライフスタイルを丸ごと提案するスタイル。例えば、アウトドアウェアの店なら、テントやランタン、焚き火台などを一緒に飾ることで、顧客は実際の使用シーンを想像しやすくなります。
  • ヴィンテージショップスタイル: 古材やアンティーク什器を使い、商品の持つ歴史や物語を感じさせる空間。商品の世界観と店舗の内装が一体となり、宝探しのようなワクワク感を提供します。商品の陳列量を多くしても雑然と見えないような、計算された配置が重要です。
  • コンセプトストアスタイル: 特定のテーマや物語性を強く打ち出した、没入感のあるデザイン。例えば、「未来の宇宙船」や「秘密の書斎」といったテーマを設定し、内装から什器、照明、BGMまで徹底的に作り込むことで、他にはないユニークな購買体験を提供します。
  • フレキシブルなポップアップストアスタイル: 可動式の什器やシンプルな内装で、商品の入れ替えやイベント開催に柔軟に対応できるデザイン。壁面をプロジェクターで演出したり、照明の色を変えたりすることで、期間ごとに全く異なる表情を見せることができます。

オフィス・コワーキングスペース

近年、オフィスの役割は「単なる作業場所」から「コミュニケーションと創造の場」へと変化しています。働き方の多様化に対応したデザインが求められます。

  • コミュニケーションハブ型: カフェのような開放的なラウンジスペースをオフィスの中心に設け、偶発的な出会いや会話が生まれる仕掛けを作るデザイン。執務エリアとは異なるリラックスした雰囲気で、部門を超えたコラボレーションを促進します。
  • ABW(Activity Based Working)型: 固定席を設けず、その日の業務内容に合わせて働く場所を自由に選べるスタイル。「集中ブース」「ミーティングエリア」「リラックスゾーン」「フォンブース」など、多様な機能を持つ空間を用意することで、生産性の向上を図ります。
  • ウェルネス重視型: 自然光を多く取り入れ、観葉植物を配置し、スタンディングデスクやリフレッシュルームを完備するなど、従業員の心身の健康(ウェルネス)を第一に考えたデザイン。働きがいとエンゲージメントの向上に繋がります。
  • ブランド発信型: エントランスやラウンジに、自社の製品やサービス、歴史などを展示するスペースを設け、来訪者に対して企業ブランドを効果的にアピールするデザイン。採用活動においても、企業の魅力を伝える重要な役割を果たします。

クリニック・病院

医療機関のデザインは、患者の不安を和らげ、安心感を与えることが最も重要です。清潔感はもちろん、温かみやプライバシーへの配慮が求められます。

  • ホスピタリティ重視型: ホテルのロビーのような上質な待合室、プライバシーに配慮した診察室など、患者を「ゲスト」として迎えるおもてなしの心を表現したデザイン。木材やファブリック、間接照明などを使い、医療機関特有の冷たさを払拭します。
  • 小児科向けデザイン: 子供が恐怖心を感じずに楽しく過ごせるよう、明るい色彩や丸みを帯びた家具、キャラクターや動物のモチーフなどを取り入れたデザイン。キッズスペースを充実させ、待ち時間も飽きさせない工夫が重要です。
  • 専門クリニック向けデザイン: 産婦人科なら柔らかく優しい雰囲気、心療内科なら特にプライバシーに配慮し落ち着ける空間にするなど、診療科目の特性と患者層の心理に寄り添ったデザイン。それぞれの専門性に合わせた機能性と快適性を両立させます。
  • ユニバーサルデザイン: 高齢者や車椅子利用者、ベビーカー利用者など、あらゆる人が安全かつ快適に利用できるよう、段差の解消、手すりの設置、広い通路幅の確保などを徹底したデザイン。誰もが安心して通えるクリニックとしての信頼感を高めます。

店舗デザインにかかる費用の相場

店舗デザインには、決して安くはない費用がかかります。しかし、その内訳や相場を正しく理解し、計画的に進めることで、予算内で理想の店舗を実現することは可能です。ここでは、費用の全体像から、コストを抑えるための具体的なコツまでを詳しく解説します。

費用の内訳と項目

店舗デザインにかかる総費用は、大きく分けて以下の4つの項目で構成されます。それぞれの内容を理解することが、適切な予算計画の第一歩です。

費用項目 内容 費用の目安(総工費に対する割合)
デザイン・設計料 コンセプトの策定、図面(基本設計図、実施設計図)の作成、工事監理など、デザインに関わる業務全般への対価。 5%~15%
内装・外装工事費 壁、床、天井の工事、塗装、建具の設置、ファサード(外観)の工事など、店舗の骨格を作るための工事費用。 40%~60%
設備工事費 電気、ガス、水道、空調、換気、防災設備などのインフラを整備するための工事費用。 15%~25%
什器・家具費用 テーブル、椅子、陳列棚、カウンター、レジ、ソファ、照明器具、看板などの購入・製作費用。 10%~20%

デザイン・設計料

デザイン・設計料は、店舗デザイナーや設計事務所に支払う報酬です。単に図面を描くだけでなく、コンセプトのヒアリングから始まり、デザイン提案、各種図面の作成、施工業者の選定補助、そして工事が図面通りに進んでいるかを確認する「工事監理」までを含みます。料金体系は、総工費の一定割合(パーセンテージ方式)や、坪単価、あるいはプロジェクト一式で固定額(タイムチャージ方式)など、依頼先によって異なります。 一般的には総工費の10%前後が目安とされていますが、著名なデザイナーや実績豊富な事務所の場合は15%以上になることもあります。

内装・外装工事費

これは工事費の中で最も大きな割合を占める部分です。具体的には、床・壁・天井の下地作りや仕上げ(クロス貼り、塗装、タイル貼りなど)、間仕切り壁の設置、ドアや窓などの建具工事、そして店舗の顔となる外観(ファサード)の工事が含まれます。使用する素材のグレード(例:無垢材フローリングか塩ビタイルか)や、造作(現場での手作り)の多さによって費用は大きく変動します。デザインに凝れば凝るほど、この工事費は高くなる傾向にあります。

設備工事費

目に見えにくい部分ですが、店舗運営に不可欠なインフラを整えるための重要な費用です。

  • 電気設備工事: コンセントの増設、照明器具の配線、専用電源の確保など。
  • 給排水設備工事: キッチンやトイレ、シャンプー台などのための給水管・排水管の設置・移設。
  • ガス設備工事: 厨房機器のためのガス管の引き込み。
  • 空調・換気設備工事: エアコンの設置、特に飲食店では大規模な換気扇やダクトの設置が必須。
  • 防災設備工事: 火災報知器やスプリンクラー、誘導灯などの設置。
    これらは法律(建築基準法、消防法など)で設置が義務付けられているものも多く、特に飲食店や美容室など、専門的な設備が必要な業種では高額になりがちです。

什器・家具費用

店舗の機能性や雰囲気を決定づける、テーブル、椅子、棚、カウンターなどの費用です。既製品を購入するか、店舗のサイズやデザインに合わせてオーダーメイドで製作(造作什器)するかで費用が大きく変わります。造作什器は空間にぴったり収まり、統一感を出せる反面、コストは高くなります。 また、厨房機器(飲食店)、シャンプー台(美容室)、POSレジシステムなどもこの項目に含まれる場合があります。

坪単価で見る費用相場

店舗のデザイン・工事費用を表す際によく使われるのが「坪単価(1坪=約3.3㎡あたりの費用)」です。物件の状態によって、坪単価は大きく異なります。

  • スケルトン物件の坪単価: 40万円~100万円以上
    スケルトン物件とは、建物の構造躯体(コンクリートなど)がむき出しの、何もない状態の物件です。床・壁・天井の内装から、電気・水道・ガスといった設備まで、すべてゼロから作り上げる必要があります。そのため、デザインの自由度は非常に高いですが、工事の規模が大きくなるため坪単価は高額になります。特に、重飲食店など大規模な設備が必要な場合は100万円を超えることも珍しくありません。
  • 居抜き物件の坪単価: 20万円~60万円
    居抜き物件とは、前のテナントが使用していた内装や設備が残された状態の物件です。既存の設備や内装を活かせるため、スケルトン物件に比べて大幅に初期費用を抑えられます。ただし、残された設備が古かったり、自分のお店のコンセプトに合わない場合は、結局撤去・改修費用がかさみ、割高になってしまうケースもあるため注意が必要です。どこまで既存のものを流用できるかが、コストを左右する鍵となります。

業種別の費用相場目安

必要な設備や工事内容が異なるため、費用相場は業種によっても大きく変わります。以下に代表的な業種の坪単価目安をまとめました。

業種 スケルトン物件の坪単価目安 居抜き物件の坪単価目安 費用の特徴
飲食店 50万円~120万円 30万円~70万円 厨房の防水、ガス、給排水、排気など大規模な設備工事が必要なため高額になりやすい。特に重飲食店(焼肉、中華など)は高くなる。
物販店 30万円~80万円 20万円~50万円 大規模な設備工事は少ないが、ブランドイメージを表現するための内装や造作什器にこだわると費用が上がる。
美容室 40万円~90万円 25万円~60万円 シャンプー台の設置に伴う給排水工事や、多くのコンセントを必要とする電気工事などで費用がかさむ。保健所の基準を満たす必要もある。

飲食店の費用相場

飲食店は、厨房設備にコストがかかるのが最大の特徴です。業務用冷蔵庫、コンロ、フライヤー、シンク、食洗機などの厨房機器購入費に加え、それらを動かすための強力な電気容量、ガス、給排水、そして煙や熱を排出するための大規模な換気・排気(ダクト)工事が必須となります。これらが費用を押し上げる主な要因です。

物販店の費用相場

物販店は、飲食店のような大掛かりな設備工事は不要な場合が多いため、坪単価は比較的抑えやすい傾向にあります。しかし、商品を魅力的に見せるための照明計画や、ブランドの世界観を表現するための内装材、オリジナルの陳列棚(造作什器)などにこだわると、費用は大きく上昇します。どこまでデザインに投資してブランド価値を高めるか、という判断が重要になります。

美容室の費用相場

美容室では、シャンプー台の設置が特有のコスト要因です。給水・給湯・排水の配管工事が必要で、複数台設置する場合は工事も大規模になります。また、ドライヤーやヘアアイロンなど多くの美容機器を同時に使用するため、十分な電気容量の確保とコンセントの増設も必須です。加えて、保健所の開設検査をクリアするための衛生基準(床材、消毒設備など)を満たす必要もあります。

店舗デザインの費用を安く抑える5つのコツ

予算には限りがある中で、できるだけコストを抑えたいと考えるのは当然です。賢く費用を抑えるための5つの方法を紹介します。

① 相見積もりを取る

複数のデザイン会社や工務店から見積もりを取る(相見積もり)ことは、コスト削減の基本中の基本です。 1社だけの見積もりでは、その金額が適正かどうか判断できません。3社程度から見積もりを取り、項目ごとに金額を比較検討しましょう。ただし、単に一番安い業者を選ぶのではなく、提案されたデザインの内容や、担当者とのコミュニケーションの質なども含めて総合的に判断することが重要です。

② 中古品やDIYを取り入れる

すべての什器や家具を新品で揃える必要はありません。厨房機器やテーブル、椅子などは、質の良い中古品を専門に扱う業者から購入することで、大幅にコストを削減できます。また、壁の塗装や簡単な棚の取り付けなど、専門技術が不要な部分を自分たちでDIY(Do It Yourself)するのも有効な手段です。ただし、電気工事や配管工事など、資格が必要な作業は必ず専門業者に依頼してください。

③ 居抜き物件を活用する

前述の通り、居抜き物件は初期費用を劇的に抑えられる可能性があります。特に、同業種の居抜き物件で、内装の傷みが少なく、設備も比較的新しいものであれば理想的です。ただし、リース契約が残っている厨房機器がないか、設備の動作確認は必ず行うなど、契約前に細かくチェックすることが失敗を防ぐポイントです。

④ シンプルなデザインにする

凝ったデザインや複雑な形状、特殊な素材を使えば使うほど、工事費は高くなります。壁や天井はシンプルな塗装仕上げにする、間仕切りを少なくして開放的な空間にするなど、デザインをシンプルにすることで工事の手間と材料費を削減できます。シンプルながらも、照明や家具、小物などでアクセントをつけることで、おしゃれな空間は十分に実現可能です。

⑤ 補助金や助成金を活用する

国や地方自治体は、中小企業や小規模事業者の支援のために、様々な補助金・助成金制度を用意しています。代表的なものに「小規模事業者持続化補助金」や「事業再構築補助金」などがあり、店舗の改装費用の一部が補助される場合があります。制度によって対象者や条件、申請時期が異なるため、商工会議所や自治体の窓口、専門家などに相談し、活用できるものがないか積極的に情報収集しましょう。

店舗デザインの依頼先の種類と選び方

理想の店舗デザインを実現するためには、信頼できるパートナー選びが不可欠です。店舗デザインの依頼先は、主に「設計事務所」「店舗デザイン会社」「工務店・内装会社」の3つに大別されます。それぞれの特徴を理解し、自分のプロジェクトに最適な依頼先を見つけましょう。

主な依頼先3つの特徴

それぞれの依頼先には得意分野や料金体系に違いがあります。メリット・デメリットを比較し、何を最も重視するかで選び方が変わってきます。

依頼先の種類 特徴・メリット デメリット・注意点 こんな人におすすめ
① 設計事務所 ・デザイン性が非常に高く、独創的・個性的な空間を実現できる。
・設計と施工が分離しているため、第三者の立場で工事を厳しく監理してくれる。
・施主の利益を最優先に考えてくれる。
・設計料が別途必要で、総費用は高くなる傾向がある。
・設計から施工まで時間がかかる場合がある。
・店舗デザインを専門としていない事務所もある。
・デザインに徹底的にこだわりたい
・唯一無二の空間を作りたい
・予算と時間に余裕がある
② 店舗デザイン会社 ・デザインから施工まで一気通貫(ワンストップ)で対応してくれる。
・店舗デザインに関する専門知識や実績が豊富。
・集客やブランディングなど、経営的な視点からの提案も期待できる。
・会社によってデザインのテイストや得意な業種が異なる。
・設計と施工が一体のため、工事監理の客観性に欠ける場合がある(自社チェックになる)。
・デザインと施工をまとめて任せたい
・店舗運営のノウハウも相談したい
・初めて店舗を作る
③ 工務店・内装会社 ・設計施工で対応するため、コストを比較的抑えやすい。
・地域に密着しており、地元の特性を理解している場合がある。
・施工の技術力は高い。
・デザイン力は会社によって差が大きい。デザイン提案は不得意な場合も。
・基本的には施主側で明確なデザインイメージを持っている必要がある。
・デザインイメージが固まっている
・とにかくコストを抑えたい
・小規模な改装や部分的な工事

① 設計事務所

建築家が主宰する設計事務所は、デザインの創造性を最も重視する場合の選択肢です。建築に関する深い知識に基づき、法的規制をクリアしながら、独創的で芸術性の高い空間を設計します。大きな特徴は「設計」と「施工」が分離している点です。設計事務所は施主の代理人として、複数の施工会社から見積もりを取り、最も適した業者を選定します。そして工事期間中は、施工が設計図通りに行われているかを厳しくチェック(工事監理)します。これにより、施工品質が担保されやすくなります。一方で、デザイン料が総工費とは別に発生するため、コストは割高になる傾向があります。

② 店舗デザイン会社

店舗デザイン会社は、その名の通り店舗のデザインと内装工事を専門に扱うプロ集団です。デザインから設計、施工までをワンストップで請け負うため、窓口が一つで済み、打ち合わせなどがスムーズに進むのが大きなメリットです。また、多くの店舗を手がけてきた経験から、集客に繋がる動線計画や、オペレーション効率を上げるレイアウト、業種ごとの法規制など、ビジネスの成功に直結するノウハウを豊富に持っています。「おしゃれなだけでなく、儲かる店づくり」という経営的な視点からのアドバイスが期待できるのが強みです。多くのオーナーにとって、最もバランスの取れた依頼先と言えるでしょう。

③ 工務店・内装会社

工務店や内装会社は、もともとは設計図に基づいて「施工」を専門に行う会社です。そのため、施工技術には定評がありますが、デザイン提案力は会社によって大きく異なります。デザイナーを社内に抱えている会社もありますが、基本的には施主側である程度のデザインイメージを持っていて、それを形にしてもらう、という流れになります。デザインに強いこだわりがなく、シンプルな内装でコストを最優先したい場合や、小規模なリフォーム・改装などに向いています。コストを抑えやすい反面、デザイン面での提案はあまり期待できない可能性があることを理解しておく必要があります。

失敗しない依頼先の選び方

どの種類の会社に依頼するかが決まったら、次は具体的な会社選びです。数多くの会社の中から、最適なパートナーを見つけるためのチェックポイントを挙げます。

  • ポートフォリオ(施工事例)の確認:
    その会社が過去に手がけた店舗の写真や実績(ポートフォリオ)を必ず確認しましょう。自分の作りたいお店のテイストや業種と、その会社が得意とするデザインが合っているかが最も重要なポイントです。ウェブサイトで確認するだけでなく、可能であれば実際にその会社が手がけた店舗を訪れて、空間の雰囲気や細部の仕上げなどを自分の目で確かめるのが理想です。
  • 担当者との相性・コミュニケーション:
    店舗デザインは、完成まで数ヶ月にわたる長い付き合いになります。担当デザイナーや営業担当者との相性は非常に重要です。こちらの要望を親身に聞いてくれるか、専門用語ばかりでなく分かりやすく説明してくれるか、レスポンスは迅速かなど、信頼してプロジェクトを任せられる相手かどうかを見極めましょう。初回の相談時の対応が、一つの判断基準になります。
  • 提案力とヒアリング力:
    良いデザイン会社は、こちらの要望をただ聞くだけでなく、プロの視点から「こうした方がもっと良くなる」というプラスアルファの提案をしてくれます。漠然としたイメージを具体的な形に落とし込み、課題を解決してくれる提案力があるかどうかが腕の見せ所です。そのためには、まずこちらの事業内容やコンセプト、ターゲット顧客について深く理解しようとする「ヒアリング力」が不可欠です。
  • 見積もりの透明性:
    提示された見積書の内容が明確かどうかも重要です。「内装工事一式」のように大雑把な項目ばかりでなく、「〇〇工事」「△△製作」といったように、何にいくらかかるのかが詳細に記載されているかを確認しましょう。不明な点があれば遠慮なく質問し、納得できるまで説明を求める姿勢が大切です。

店舗デザイン会社を探せるおすすめサービス・サイト

自力で一社一社探すのは大変です。ここでは、効率的に店舗デザイン会社を探せる代表的なマッチングサービスやポータルサイトを3つ紹介します。

店舗デザイン.COM

日本最大級の店舗デザイン会社のマッチングサイトです。全国の多数の会社が登録しており、エリアや業種、デザインのテイストなど、様々な条件で検索できます。豊富な施工事例写真から、好みのデザインを手がけた会社を直接探せるのが大きな魅力です。コンペ形式で複数の会社からデザイン案を募集することも可能で、幅広い提案を比較検討したい場合に便利です。(参照:店舗デザイン.COM 公式サイト)

archirearch(アーキリサーチ)

建築家やデザイナーを探すことに特化したプラットフォームです。特にデザイン性の高い店舗作りを目指すオーナーに向いています。登録されている建築家やデザイナーのプロフィールやポートフォリオを閲覧し、直接コンタクトを取ることができます。自分の感性に合うクリエイターをじっくり探したいという場合に適したサービスです。(参照:archirearch 公式サイト)

比較ビズ

店舗デザインに限らず、様々なビジネス分野で業者を探せるBtoBのマッチングサイトです。複数の業者に一括で見積もりや資料請求ができるため、手間をかけずに相見積もりを取りたい場合に非常に効率的です。コストや条件を比較して、スピーディーに依頼先候補を絞り込みたいというニーズに応えてくれます。(参照:比較ビズ 公式サイト)

これらのサービスをうまく活用し、情報収集の幅を広げることで、理想のパートナーに出会える可能性が高まります。

店舗デザイン依頼からオープンまでの6つのステップ

コンセプトの決定と事業計画、依頼先の選定と相談、現地調査とヒアリング、基本設計とデザイン提案、実施設計と見積もり、施工と監理・引き渡し

思い描いた理想の店舗が実際に形になるまでには、いくつかの段階を踏む必要があります。ここでは、デザイン会社に依頼してから店舗がオープンするまでの一般的な流れを6つのステップに分けて解説します。各ステップで何をすべきかを把握しておくことで、計画をスムーズに進めることができます。

① コンセプトの決定と事業計画

すべての始まりは、ここからです。デザイン会社に相談する前に、まずは自分自身で「どんなお店にしたいのか」を徹底的に突き詰める必要があります。

  • コンセプトの明確化:
    • 誰に(ターゲット顧客): 年齢、性別、ライフスタイル、価値観など、具体的な顧客像をイメージします。
    • 何を(提供価値): 商品やサービスだけでなく、その店で過ごすことで得られる体験や感情(例:リラックス、非日常感、ワクワク感)は何か。
    • どのように(店舗の個性): 競合店と比べて何が違うのか、どんな世界観で魅力を伝えるのか。
      これらの要素を言語化し、一言で表現できるようなコアコンセプトを定めましょう。
  • 事業計画の策定:
    コンセプトと並行して、現実的な事業計画を立てます。物件取得費、デザイン・工事費、運転資金など、必要な資金を算出し、自己資金や融資でどう賄うかを計画します。デザインにかけられる予算の上限を明確にしておくことが、後の工程で非常に重要になります。この段階で予算が曖昧だと、デザイン会社も現実的な提案ができません。

② 依頼先の選定と相談

コンセプトと予算が固まったら、いよいよパートナーとなるデザイン会社を探し始めます。

  • 依頼先候補のリストアップ:
    前述の「店舗デザインの依頼先の種類と選び方」を参考に、ポートフォリオやウェブサイトを確認し、自店のコンセプトに合いそうな会社を3~5社程度リストアップします。
  • 初回相談とヒアリング:
    リストアップした会社に連絡を取り、初回の相談を申し込みます。この時、ステップ①で固めたコンセプトや事業計画をまとめた資料を持参すると、話がスムーズに進みます。相談では、会社の得意分野や過去の実績、仕事の進め方などを確認すると同時に、担当者が自分たちの想いをどれだけ理解してくれるか、信頼できる相手かを見極めましょう。

③ 現地調査とヒアリング

依頼する会社を1~2社に絞り込んだ段階で、より具体的な話に進みます。

  • 現地調査:
    デザイン会社の担当者が、実際に店舗となる物件を訪れて調査します。天井の高さ、柱や梁の位置、電気・ガス・水道などの設備容量や配管経路、周辺環境などをプロの目で詳細にチェックします。この調査結果が、実現可能なデザインやレイアウトを考える上での基礎情報となります。
  • 詳細ヒアリング:
    現地調査の結果を踏まえ、再度オーナーへの詳細なヒアリングが行われます。コンセプトの再確認はもちろん、具体的な席数、必要な厨房機器、スタッフの作業動線、お客様にどんな風に過ごしてほしいかなど、より細かな要望を伝えます。この段階で、できるだけ多くの情報を共有しておくことが、後の手戻りを防ぐ鍵です。

④ 基本設計とデザイン提案

ヒアリング内容と現地調査の結果を基に、デザイン会社が具体的なデザイン案を作成します。

  • 基本設計(プランニング):
    平面図(レイアウトプラン)、デザインの方向性を示すイメージパースやCG、コンセプトボードなどが提示されます。平面図では、客席、厨房、バックヤードなどのゾーニングや、お客様とスタッフの動線が合理的かを重点的に確認します。イメージパースでは、内装の雰囲気や色使い、素材感がコンセプトに合っているかをチェックします。
  • デザインのすり合わせ:
    提示された案に対して、オーナーはフィードバックを行います。「ここの通路はもう少し広くしたい」「この素材はイメージと違う」など、納得がいくまで何度も打ち合わせを重ね、デザインを修正・ブラッシュアップしていきます。この基本設計の段階でデザインの骨格を固めることが非常に重要です。

⑤ 実施設計と見積もり

基本設計が固まったら、それを基に実際の工事を行うための詳細な図面を作成し、正確な工事費用を算出します。

  • 実施設計:
    基本設計図を基に、より詳細な「実施設計図」を作成します。これには、仕上材の品番、コンセントやスイッチの正確な位置、家具の寸法、照明器具の仕様など、工事に必要な情報がすべて盛り込まれます。この図面が、施工会社への指示書となります。
  • 本見積もりの提示:
    実施設計図に基づいて、施工会社が正確な工事費用を算出します。これが「本見積もり」です。項目ごとに詳細な金額が記載されているので、内容をしっかり確認し、予算内に収まっているか、不要な項目がないかをチェックします。金額に問題がなければ、ここでデザイン会社(または施工会社)と正式な「工事請負契約」を締結します。

⑥ 施工と監理・引き渡し

契約が完了すると、いよいよ工事がスタートします。

  • 施工:
    施工会社が、実施設計図に基づいて内装や設備の工事を進めます。工期は、店舗の規模や工事内容にもよりますが、小規模な店舗で1~2ヶ月、大規模なものでは3ヶ月以上かかることもあります。
  • 工事監理:
    工事期間中、デザイン会社の担当者は定期的に現場を訪れ、工事が図面通りに、かつ適切な品質で行われているかをチェックします(工事監理)。オーナーも、可能であれば時々現場に顔を出し、進捗状況を確認すると良いでしょう。
  • 施主検査と引き渡し:
    工事が完了すると、オーナー、デザイン会社、施工会社の三者立ち会いのもと、「施主検査」が行われます。図面と照らし合わせながら、傷や汚れ、不具合がないか、設備は正常に作動するかなどを隅々までチェックします。問題があれば手直し(是正工事)を依頼し、すべてが完了したら、晴れて店舗の「引き渡し」となります。この後、保健所や消防署の検査を経て、いよいよオープン準備に入ります。

おしゃれで集客できる店舗デザインにするための7つのポイント

コンセプトとターゲットを明確にする、お客様とスタッフの動線を考慮する、外観(ファサード)で通行人の興味を引く、照明計画で空間の雰囲気を演出する、素材や色使いでブランドイメージを表現する、看板やサインを分かりやすく配置する、メンテナンスのしやすさも考慮する

店舗デザインは、ただおしゃれであれば良いというものではありません。「集客」に繋がり、かつ「運営」しやすい、ビジネスとして成功するためのデザインであることが重要です。ここでは、そのために押さえるべき7つの重要なポイントを解説します。

① コンセプトとターゲットを明確にする

これはすべての基本であり、最も重要なポイントです。誰に、何を伝え、どんな体験を提供したいのかという「コンセプト」が曖昧なままでは、デザインの方向性も定まりません。 例えば、「30代女性が仕事帰りに一人で立ち寄れる、ご褒美感のある隠れ家カフェ」というように、ターゲット顧客と提供価値を具体的に設定します。このコンセプトが、内装の色味、家具の選定、照明の明るさなど、すべてのデザイン判断の揺るぎない「軸」となります。この軸がブレてしまうと、ちぐはぐで誰にも響かない空間になってしまいます。

② お客様とスタッフの動線を考慮する

動線計画は、店舗の快適性と効率性を左右する生命線です。

  • お客様の動線(回遊性): お客様が入口から入って、店内をスムーズに移動し、商品を見たり、席に着いたり、レジやトイレに行ったりするまでの流れを計画します。通路幅は十分に確保し、お客様同士がすれ違えるようにします。物販店では、お客様にできるだけ店内をくまなく歩いてもらい、多くの商品に触れてもらう「回遊性」を高めるレイアウトが売上向上に繋がります。
  • スタッフの動線(作業効率): スタッフがサービスを提供したり、商品を補充したり、調理や片付けをしたりする際の動きやすさを考慮します。お客様の動線と交錯しすぎないように計画し、短い移動距離で効率的に作業できるレイアウトにすることが、サービスの質とスピードを向上させ、人件費の最適化にも繋がります。

これら2つの動線は、時に相反することがあります。両者のバランスをいかに取るかが、デザイナーの腕の見せ所です。

③ 外観(ファサード)で通行人の興味を引く

店舗の外観、すなわちファサードは、新規顧客を獲得するための最大のチャンスです。通行人が「お、なんだこの店は?」「ちょっと入ってみようかな」と思うかどうかは、ほんの数秒で決まります。

  • 視認性: 遠くからでも何のお店か分かること。看板のデザインや店名ロゴの大きさ、フォントなどが重要です。
  • コンセプトの表現: ファサードのデザインで、店内の雰囲気やコンセプトが一目で伝わるようにします。例えば、ナチュラルなカフェならウッド調の扉や緑を配置するなど。
  • 入店しやすさ: 店内の様子が少し見えるガラス張りの部分を作る、入口周りを明るくするなど、心理的な入店のハードルを下げる工夫が有効です。逆に、高級店やバーなどでは、あえて中を見せず、特別感や隠れ家感を演出する手法もあります。

④ 照明計画で空間の雰囲気を演出する

照明は、空間の雰囲気を劇的に変える魔法のようなツールです。単に明るくするだけでなく、光と影を巧みにコントロールすることで、ドラマチックな空間を演出できます。

  • ベース照明(全般照明): 空間全体を均一に照らす基本的な明かり。
  • タスク照明(作業照明): レジカウンターや厨房、客席の手元など、特定の作業に必要な場所を照らす明かり。
  • アクセント照明(演出照明): 壁のアートやディスプレイ商品、特定の建築的特徴などをスポットライトで照らし、視線を集めるための明かり。

これらの照明を組み合わせ、時間帯によって明るさや色温度(光の色味)を変えることで、昼は明るく爽やかな雰囲気、夜は落ち着いたムーディーな雰囲気といったように、一つの空間で異なる表情を作り出すことも可能です。

⑤ 素材や色使いでブランドイメージを表現する

壁や床、家具に使われる素材(マテリアル)や色彩は、店舗のブランドイメージを直接的に伝える重要な要素です。

  • 素材: 無垢材や石は「自然・本物感・温かみ」を、コンクリートやスチールは「モダン・無骨さ・クールさ」を、真鍮や大理石は「高級感・クラシック」を表現します。素材の持つ質感(テクスチャ)は、視覚だけでなく触覚にも訴えかけ、空間の深みを増します。
  • 色彩: 色にはそれぞれ心理的な効果があります。例えば、赤やオレンジは食欲を増進させ、青はリラックス効果や清潔感を、緑は安心感や癒やしを与えます。ブランドカラーをアクセントとして効果的に使うことで、統一感のあるブランドイメージを強く印象づけることができます。

⑥ 看板やサインを分かりやすく配置する

看板やサイン計画は、お客様をスムーズに誘導し、情報を提供する上で不可欠です。

  • ファサードサイン: 店舗の顔となるメインの看板。店名を明確に示します。
  • 誘導サイン: トイレの場所、レジの場所、各フロアの案内など、お客様を目的地まで導くサイン。
  • 説明サイン: 営業時間、メニュー、Wi-Fiの有無など、必要な情報を提供するサイン。

これらのサインは、店舗全体のデザインテイストと統一感を保ちながらも、誰にとっても見やすく、分かりやすいことが大前提です。ユニバーサルデザインの観点から、ピクトグラム(絵文字)を活用したり、適切な文字サイズやコントラストを確保したりすることも重要です。

⑦ メンテナンスのしやすさも考慮する

オープンした時が一番美しい、では意味がありません。美しい状態を長く保ち、日々の清掃やメンテナンスがしやすいデザインであることは、長期的な運営において非常に重要です。

  • 素材選び: 汚れが付きにくく、掃除しやすい床材や壁材を選ぶ。特に飲食店や美容室など、汚れや水濡れが多い業種では必須の視点です。
  • 設計の工夫: ほこりが溜まりやすい複雑な装飾を避ける、掃除用具を収納するスペースを確保するなど、設計段階から清掃のしやすさを考慮します。
  • 設備のメンテナンス: エアコンのフィルター清掃や、照明器具の電球交換がしやすい位置に設置するなど、設備の維持管理のしやすさも忘れてはなりません。

メンテナンスコストを抑え、常に清潔で美しい店舗を維持することが、お客様の満足度とブランドの信頼を守ることに繋がります。

まとめ

本記事では、店舗デザインの基本的な考え方から、業種別のデザインポイント、具体的な費用相場、信頼できる依頼先の選び方、オープンまでの流れ、そして集客に繋がるデザインの秘訣まで、幅広く解説してきました。

店舗デザインは、単なる空間の装飾ではありません。それは、ブランドの哲学を具現化し、お客様とのコミュニケーションを創出し、ビジネスの成功を力強く後押しする、極めて戦略的な経営投資です。魅力的なデザインは集客力を高め、快適な空間は顧客満足度とリピート率を向上させ、効率的なレイアウトはスタッフの生産性を引き上げます。これらすべてが、最終的に「売上」という成果に結びついていくのです。

店舗づくりは、多くの時間と労力、そして資金を要する一大プロジェクトです。だからこそ、その中核をなすデザインで後悔はしたくありません。成功の鍵は、以下の3点に集約されるでしょう。

  1. 明確なコンセプトと事業計画: すべての土台となる「誰に何を届けたいか」という軸をぶらさずに持つこと。
  2. 情報収集と計画性: 費用相場やプロセスを正しく理解し、現実的な予算とスケジュールを立てること。
  3. 信頼できるパートナー選び: 自社の想いを共有し、共に理想を追求してくれるプロのパートナーを見つけること。

この記事が、これから店舗デザインに取り組む皆様にとって、その一歩を踏み出すための確かな道しるべとなれば幸いです。あなただけの個性が光る、お客様に愛され、長く繁盛する店舗の実現を心から応援しています。まずは自店のコンセプトをじっくりと練り上げ、理想の店舗像を描くことから始めてみましょう。