東京の貸事務所の賃料相場をエリア別に比較【格安物件の探し方】

東京の貸事務所の賃料相場をエリア別に比較、格安物件の探し方

東京でビジネスを始める、あるいは事業を拡大する上で、貸事務所の確保は重要な経営課題の一つです。しかし、日本の経済の中心地である東京は、エリアによって賃料相場が大きく異なり、物件数も膨大であるため、自社に最適な貸事務所を見つけ出すのは容易ではありません。賃料は固定費の大部分を占めるため、相場を理解し、賢く物件を選ぶことが、事業の成長を左右すると言っても過言ではないでしょう。

この記事では、東京の貸事務所の賃料相場をエリア別に徹底比較し、都心5区から23区外まで、それぞれの特徴と坪単価の目安を詳しく解説します。さらに、コストを抑えながらも良質な物件を見つけるための「格安の貸事務所を見つけるための5つのコツ」や、契約までの具体的な流れ、事前に知っておくべき注意点まで、網羅的にご紹介します。

これから東京でオフィスの開設や移転を検討している経営者や担当者の方は、ぜひ本記事を参考に、自社の事業戦略に合致した最適なオフィス探しの第一歩を踏み出してください。

東京の貸事務所の賃料相場

東京で貸事務所を探す際に、まず把握しておくべきなのが賃料相場です。相場を知ることで、予算計画が立てやすくなるだけでなく、提示された賃料が妥当かどうかを判断する基準にもなります。東京のオフィス賃料は、主に「エリア」「駅からの距離」「築年数」「ビルのグレード(規模や設備)」といった要素によって決まりますが、特にエリアによる価格差は顕著です。

ここでは、最新の市場データに基づき、東京の主要エリアにおける貸事務所の平均賃料(坪単価)を詳しく見ていきましょう。なお、ここでいう「賃料」は、月額の坪単価(共益費込)を指すのが一般的です。「坪単価」とは、1坪(約3.3平方メートル)あたりの月額賃料のことで、オフィス賃料を比較する際の基本的な指標となります。

エリア別の平均賃料(坪単価)

東京のオフィスマーケットは、いくつかの主要エリアに分類できます。ここでは「都心5区」「都心3区」「東京23区全体」「23区外」に分けて、それぞれの賃料相場と特徴を解説します。

エリア分類 主な区 平均賃料(共益費込・坪単価)の目安 特徴
都心5区 千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区 20,000円~25,000円前後 東京のビジネス中心地。交通の便が良く、大企業やIT企業が集積。ステータス性が高い。
都心3区 千代田区、中央区、港区 22,000円~27,000円前後 都心5区の中でも特に賃料が高いエリア。金融、商社、外資系企業などが集中する。
東京23区全体 18,000円~21,000円前後 都心部と周辺エリアを含んだ平均。エリアによる価格差が大きい。
23区外 立川市、八王子市、武蔵野市、町田市など 10,000円~15,000円前後 都心へのアクセスも可能で、比較的リーズナブル。地域密着型のビジネスに適している。
*上記賃料は、各種不動産マーケットレポートを参考に作成した目安であり、実際の募集賃料とは異なる場合があります。

都心5区(千代田区・中央区・港区・新宿区・渋谷区)の賃料相場

都心5区は、東京のオフィス市場の中核を成すエリアであり、国内外の名だたる企業が本社を構える、まさにビジネスの一等地です。交通網が発達し、商業施設や飲食店も充実しているため、従業員の利便性や採用活動における競争力の面で大きなアドバンテージがあります。

  • 千代田区(丸の内・大手町・番町・麹町エリア): 日本を代表するビジネス街であり、大手金融機関や総合商社、大企業の本社が集まっています。東京駅に隣接し、圧倒的な交通利便性とステータス性を誇ります。賃料は東京で最も高い水準にありますが、その分、最高グレードのオフィスビルが立ち並びます。
  • 中央区(日本橋・京橋・銀座エリア): 江戸時代からの商業の中心地であり、歴史と革新が共存するエリアです。老舗企業から新興企業まで多様な業種が集積しています。東京駅へのアクセスも良好で、再開発も活発に進んでいます。
  • 港区(新橋・虎ノ門・六本木・赤坂エリア): 官公庁に近く、弁護士事務所やコンサルティングファーム、外資系企業が多く見られます。近年はIT企業の集積地としても知られ、特に虎ノ門ヒルズ周辺の再開発により、新たなビジネス拠点として注目度が高まっています。
  • 新宿区(西新宿・東新宿エリア): 東京都庁を擁し、超高層ビルが林立する日本有数のオフィス街です。ターミナル駅である新宿駅の交通利便性は抜群で、多様な業種の企業が集まります。IT、人材、サービス業など幅広いニーズに対応できるエリアです。
  • 渋谷区(渋谷・恵比寿・代官山エリア): 「ビットバレー」とも呼ばれ、IT・Web関連のベンチャー企業やスタートアップの聖地として知られています。若者文化の発信地でもあり、クリエイティブで革新的な企業イメージを構築したい場合に最適なエリアです。

これらのエリアの賃料相場は、オフィスマーケット全体の動向を左右する重要な指標です。例えば、三鬼商事が発表した2024年4月時点のオフィスマーケットデータによると、都心5区の平均賃料は坪あたり20,000円を超える水準で推移しています。(参照:三鬼商事株式会社 Office Market Data)
この価格帯は、事業の安定した大企業や、資金調達を終えた成長フェーズのベンチャー企業が主なターゲットとなります。

都心3区(千代田区・中央区・港区)の賃料相場

都心5区の中でも、特に賃料相場が高いのが千代田区、中央区、港区の「都心3区」です。この3区は、日本の政治・経済・金融の中心機能が集中しており、他のエリアとは一線を画すブランド力を持っています。

都心3区の平均賃料は、都心5区の平均よりもさらに高く、坪単価で22,000円から27,000円程度が目安となります。特に、丸の内・大手町、虎ノ門といったピンポイントのエリアでは、坪単価が40,000円を超えるハイスペックなビルも珍しくありません。

このエリアにオフィスを構えることは、企業の信頼性やブランドイメージを大きく向上させる効果が期待できます。主要な取引先がこのエリアに集中している場合や、優秀な人材、特に金融やコンサルティング、外資系などの専門職を採用したい企業にとっては、高い賃料を支払ってでも得られるメリットは大きいでしょう。

東京23区全体の賃料相場

都心5区以外の18区を含めた東京23区全体の平均賃料は、坪単価で18,000円から21,000円前後が目安となります。都心5区に比べると少し下がりますが、これは比較的賃料が手頃な城東エリア(墨田区、江東区、葛飾区、江戸川区)や城北エリア(豊島区、北区、板橋区、練馬区)などが含まれるためです。

  • 準都心エリア(品川区、目黒区、文京区、豊島区など): 都心へのアクセスが良好でありながら、都心5区よりは賃料が抑えられるため、コストパフォーマンスを重視する企業に人気です。特に品川駅周辺や池袋駅周辺は、交通の結節点としてオフィス需要が高いエリアです。
  • 周辺エリア(世田谷区、中野区、杉並区、大田区、江東区など): 都心からは少し離れますが、その分賃料はリーズナブルになります。住宅街に近く、職住近接を重視する企業や、クリエイティブ系の小規模オフィス、地域に根差したサービスを提供する企業などに適しています。

このように、23区内でもエリアによって賃料と環境は大きく異なります。自社の事業内容や従業員の通勤、取引先へのアクセスなどを総合的に考慮してエリアを選定することが重要です。

23区外の賃料相場

八王子市、立川市、武蔵野市(吉祥寺)、町田市といった23区外のエリアでは、賃料相場はさらに下がり、坪単価10,000円から15,000円程度でオフィスを借りることも可能です。

これらのエリアは、都心へのアクセスも中央線や京王線、小田急線などを利用すれば可能であり、多摩地区のビジネスハブとしての機能を持っています。特に立川駅周辺や町田駅周辺は商業施設が集積し、利便性も高いです。

23区外にオフィスを構えるメリットは、何よりも賃料や人件費などの固定費を大幅に削減できる点です。また、地域の大学や研究機関との連携を図りたい企業や、その地域に住む人材をターゲットに採用活動を行いたい企業にとっては、戦略的な選択肢となり得ます。リモートワークを主体とし、社員がたまに出社する「サテライトオフィス」としての活用も増えています。

このように、東京の貸事務所の賃料相場はエリアによって明確な差があります。まずは自社の予算と事業戦略を明確にし、どのエリアが最適なのかをじっくりと検討することが、後悔のないオフィス移転の第一歩となるでしょう。

東京で貸事務所を探すための基本的な方法

エリアから探す、路線・駅から探す、こだわりの条件から探す

自社に最適な貸事務所を見つけるためには、やみくもに物件を探すのではなく、体系的なアプローチが必要です。ここでは、東京で貸事務所を探す際の王道ともいえる3つの基本的な方法、「エリアから探す」「路線・駅から探す」「こだわりの条件から探す」について、それぞれの特徴と具体的な探し方を掘り下げて解説します。

エリアから探す

エリアから探す方法は、事業の特性やブランドイメージ、取引先との関係性を重視する場合に非常に有効です。どのエリアに拠点を構えるかは、企業の「顔」ともなり、ビジネスの展開に大きな影響を与えます。

東京23区から探す

前述の通り、東京23区はそれぞれ異なる特徴と賃料相場を持っています。まずは大まかなエリアの方向性を定めることから始めましょう。

  • 都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷): 企業のブランド力やステータスを最優先する場合に選択します。大手企業との取引が多い、あるいは金融、IT、外資系といった特定の業種が集まる場所でビジネスを展開したい場合に適しています。ただし、賃料は最も高額になるため、十分な予算確保が前提です。
  • 準都心エリア(品川・目黒・文京・豊島など): コストと利便性のバランスを重視する企業におすすめです。都心へのアクセスも30分圏内と良好で、比較的落ち着いた環境で業務に集中できます。特に五反田や目黒周辺は近年ITベンチャーの集積が進んでおり、「五反田バレー」とも呼ばれています。池袋は複数の路線が乗り入れるターミナル駅でありながら、新宿や渋谷よりは賃料が抑えられる傾向にあります。
  • 城東・城北エリア(台東・墨田・江東・北・板橋など): コストを最大限に抑えたい場合に有力な選択肢です。ものづくり系の企業や、地域に根差したサービスを展開する企業、倉庫機能も兼ねたい物流関連の企業などに適しています。近年は、清澄白河や蔵前といったエリアがクリエイティブな街として注目され、デザイン事務所やアトリエなどが集まりつつあります。
  • 城南・城西エリア(世田谷・中野・杉並・大田など): 住宅街が広がり、落ち着いた環境が特徴です。職住近接を実現しやすく、従業員のワークライフバランスを重視する企業文化にマッチします。小規模なオフィスや、コンサルタント、士業などの個人事業主にも人気があります。

人気のエリアから探す

業界のトレンドや特定のビジネスコミュニティへの参加を目的とする場合、人気のエリアに絞って探すのも一つの方法です。

  • 丸の内・大手町: 日本の経済を動かす大企業が集まるエリア。金融、商社、コンサルティングファームなど、BtoBビジネスの拠点として最高の立地です。
  • 渋谷: IT・Web業界のメッカ。最新のテクノロジーやトレンドに触れやすく、同業者とのネットワーキングや情報交換が活発に行えます。優秀な若手エンジニアやクリエイターの採用にも有利です。
  • 新宿: 多様な業種が集まる巨大ビジネスエリア。交通の利便性が非常に高いため、従業員の通勤エリアが広範囲にわたる場合や、地方からのアクセスを重視する場合に最適です。
  • 虎ノ門・新橋: 官公庁に近く、弁護士、会計士などの士業や、外資系企業に人気のエリア。再開発が進み、新しい大規模オフィスビルも増えています。
  • 日本橋・京橋: 歴史ある企業と新しいベンチャーが共存するエリア。伝統を重んじつつも、革新的なビジネスを展開したい企業に適しています。

エリアから探す際のポイントは、自社の「事業戦略」と「企業文化」を明確にすることです。どのような企業イメージを発信したいのか、どのような人材を集めたいのか、主要な取引先はどこかをリストアップすることで、おのずと最適なエリアが見えてくるでしょう。

路線・駅から探す

従業員の通勤利便性や、クライアントの来訪しやすさを最優先に考えるなら、路線・駅から探すアプローチが効果的です。特に人材採用において、通勤のしやすさは応募者にとって重要な判断基準となります。

人気の駅から探す

複数の路線が乗り入れるターミナル駅は、どこからでもアクセスしやすく、ビジネスの拠点として非常に人気があります。

  • 東京駅: 新幹線をはじめ、JR各線、東京メトロ丸ノ内線が乗り入れ、日本の玄関口ともいえる駅です。地方への出張が多い企業や、全国に支社を持つ企業にとっては最高の立地です。
  • 新宿駅: JR、私鉄、地下鉄合わせて10以上の路線が利用でき、一日の乗降客数は世界一とも言われます。埼玉、神奈川、西東京方面からのアクセスが抜群です。
  • 渋谷駅: JR山手線、埼京線、湘南新宿ラインに加え、東急線、京王線、東京メトロ各線が利用可能です。神奈川方面からのアクセスに優れています。
  • 品川駅: 新幹線の停車駅であり、羽田空港へのアクセスも京急線で一本という利便性が魅力です。出張が多いビジネスパーソンにとって非常に便利な拠点となります。
  • 池袋駅: JR、西武線、東武線、東京メトロが乗り入れ、特に埼玉方面からのアクセスが良いのが特徴です。

主要な路線から探す

特定の沿線に従業員が多く住んでいる場合や、主要な取引先が特定の沿線に集中している場合は、路線を軸に探すのが合理的です。

  • JR山手線: 都心を環状に結び、主要なビジネス街のほとんどをカバーしています。山手線沿線の駅であれば、まず間違いなく利便性は高いと言えます。
  • JR中央線: 東京駅から西東京の立川、八王子方面へと伸びる路線。都心へのアクセスと、郊外の落ち着いた環境を両立させたい場合に人気です。
  • 東京メトロ銀座線: 渋谷から浅草まで、表参道、赤坂見附、虎ノ門、銀座、日本橋といった都心の一等地を結ぶ路線。歴史あるビジネス街を貫いています。
  • 東京メトロ丸ノ内線: 池袋から東京駅、銀座、新宿を経由して荻窪を結びます。山手線の内側を走り、主要なビジネスエリアを効率的にカバーしています。

路線・駅から探す際は、乗り換えの回数や所要時間も考慮に入れることが大切です。複数の路線が使える駅であれば、一部の路線で遅延や運休が発生した場合でも、代替ルートを確保しやすくなります。

こだわりの条件から探す

エリアや路線の次に、オフィスのスペックに関する具体的な条件を固めていきます。これにより、膨大な物件情報の中から、候補を効率的に絞り込むことができます。

オフィスの広さ(坪数)で探す

オフィスの広さは、事業規模や従業員数によって決まります。一般的に、従業員1人あたりに必要な面積は、2坪から4坪が目安とされています。

  • ミニマム(~2坪/人): 席が密集し、通路も狭くなりがち。コストは抑えられるが、窮屈に感じる可能性があります。
  • スタンダード(2~3坪/人): 執務スペースに加え、小規模な会議スペースや収納も確保できる広さ。
  • ゆとりあり(3~4坪/人): 快適な執務スペースに加え、リフレッシュスペースや複数の会議室など、多様な働き方に合わせたレイアウトが可能です。

例えば、10人の従業員がいる場合、20坪から40坪の広さを目安に探すことになります。将来的な人員増加計画も考慮に入れ、少し余裕を持った広さを選ぶのが賢明です。

建物の特徴で探す

ビルのスペックは、従業員の働きやすさや企業の信頼性に直結します。

  • 新耐震基準: 1981年6月1日以降に建築確認を受けた建物が対象です。大地震のリスクを考慮すると、これは必須条件と考えるべきでしょう。
  • OAフロア: 床下に配線スペースが確保されているオフィス。LANケーブルや電源コードをすっきりと収納でき、レイアウト変更にも柔軟に対応できます。
  • 空調システム:
    • 個別空調: 各部屋やエリアごとに温度設定が可能。部署ごとの働き方や体感温度の違いに対応できます。
    • セントラル空調: ビル全体で一括管理。コアタイム外は利用できない場合や、追加料金が発生する場合があるため注意が必要です。
  • セキュリティ: 機械警備(セコム、アルソックなど)、24時間有人管理、ICカードによる入退室管理など、ビルのセキュリティレベルを確認します。取り扱う情報の機密性に応じて、必要なレベルは異なります。
  • ビルのグレード: 大規模で最新設備の整ったAグレードビルから、中小規模のBグレード、築年数が古いCグレードまで様々です。企業のブランドイメージや予算に合わせて選びましょう。

物件の種類で探す

一般的な賃貸事務所の他にも、多様なオフィス形態があります。

  • サービスオフィス: 受付サービスや会議室、OA機器などが共用で利用でき、月額料金に含まれていることが多いオフィス。小規模で事業を始めたいスタートアップに適しています。
  • レンタルオフィス: 1名から数名用の個室を短期間から借りられるオフィス。初期費用が安く、すぐに事業を開始できます。
  • コワーキングスペース: オープンな空間を複数の企業や個人で共有するワークスペース。異業種交流の機会も生まれます。
  • 居抜きオフィス: 前のテナントが使用していた内装や設備をそのまま引き継いで入居できる物件。内装工事費を大幅に削減できるメリットがあります。
  • セットアップオフィス: ビルオーナー側が基本的な内装や什器をあらかじめ設置している物件。デザイン性が高く、入居後すぐに業務を開始できます。

これらの探し方を組み合わせることで、「渋谷エリアで、ITベンチャー向けの、30坪前後の、新耐震基準を満たした、個別空調のオフィス」といったように、具体的な物件像を明確にすることができます。これが、効率的で満足度の高いオフィス探しの鍵となります。

格安の貸事務所を見つけるための5つのコツ

都心から少し離れたエリアを検討する、築年数が古い物件も視野に入れる、駅から徒歩10分以上の物件も探す、居抜き・セットアップオフィスを狙う、複数の不動産ポータルサイトを横断して比較する

東京の高い賃料は、多くの企業にとって悩みの種です。しかし、少し視点を変え、探し方を工夫するだけで、コストを抑えながらも満足のいく貸事務所を見つけることは十分に可能です。ここでは、予算内で最適な物件を見つけるための、実践的な5つのコツをご紹介します。

① 都心から少し離れたエリアを検討する

最も効果的で直接的なコスト削減方法は、希望する都心の主要駅から1〜2駅離れたエリアを検討することです。例えば、渋谷にオフィスを構えたいと考えている場合、賃料相場は非常に高くなります。しかし、同じ東急東横線沿線の「中目黒」や「代官山」、あるいは田園都市線の「三軒茶屋」「池尻大橋」まで範囲を広げるだけで、坪単価は数千円単位で下がることがあります。

希望エリア 検討候補エリア(例) 期待できる効果
渋谷 池尻大橋、三軒茶屋、中目黒 坪単価が下がり、落ち着いた環境が得られる。
新宿 中野、高田馬場、代々木 ターミナル駅の喧騒から離れつつ、アクセス性を維持。
東京・丸の内 神田、日本橋、茅場町 一等地から徒歩圏内でありながら、賃料は比較的リーズナブル。
品川 大崎、五反田、田町 JR山手線沿線で利便性を保ちつつ、コストを抑制。

都心のブランド力は魅力的ですが、実際の業務においてその立地が本当に必要不可欠なのかを再検討してみましょう。従業員の多くが特定の沿線に住んでいる場合、むしろ少し離れた駅の方が通勤しやすいケースもあります。クライアントへのアクセスも、主要駅から電車で5分程度の距離であれば、大きな問題にならないことが多いでしょう。エリアの「イメージ」に固執せず、自社の「実利」を優先することが、格安物件を見つける第一歩です。

② 築年数が古い物件も視野に入れる

新築や築浅のビルは、設備が最新で見た目も美しいですが、その分賃料は高額に設定されています。一方で、築年数が経過した、いわゆる「築古」物件は、同じエリア・同じ広さでも賃料が割安になる傾向があります。

築古物件を検討する際に絶対に確認すべきなのが「新耐震基準」を満たしているかどうかです。1981年(昭和56年)6月1日以降の建築確認申請によって建てられた建物は新耐震基準に適合しており、震度6強から7程度の大地震でも倒壊・崩壊しないことが基準とされています。これ以前の「旧耐震基準」の物件は、耐震補強工事が行われているかを確認することが不可欠です。

新耐震基準を満たしていれば、築古であっても安全性に大きな問題はありません。むしろ、以下のようなメリットも期待できます。

  • リノベーションによる魅力: 近年では、築古ビルを現代的なデザインにフルリノベーションした物件が増えています。コンクリート打ちっ放しの壁や、レトロな雰囲気を活かした内装など、新築ビルにはない独特の魅力を放つオフィスも少なくありません。
  • 管理状態の良さ: 長年運営されているビルは、管理体制がしっかりしていることが多いです。内覧時には、共用部(エントランス、廊下、トイレなど)が清潔に保たれているかを確認しましょう。

設備の古さ(特に空調や水回り)は懸念点ですが、内覧時にしっかりと動作確認を行うことでリスクは軽減できます。「古い=悪い」という先入観を捨て、個々の物件の状態を丁寧に見極めることが重要です。

③ 駅から徒歩10分以上の物件も探す

駅からの距離も賃料を左右する大きな要因です。「駅近」、特に徒歩5分以内の物件は人気が高く、賃料も高騰しがちです。しかし、検索条件を「徒歩10分」あるいは「徒歩12分」まで広げるだけで、選択肢は一気に増え、賃料も下がります。

駅から少し歩くことには、デメリットばかりではありません。

  • 静かな環境: 駅前の喧騒から離れるため、オフィス周辺は比較的静かで、業務に集中しやすい環境が手に入ります。
  • 広い物件が見つかりやすい: 同じ賃料予算でも、駅から離れることでより広い面積のオフィスを借りられる可能性があります。
  • 周辺環境の魅力: 駅からオフィスまでの道中に、隠れ家的な飲食店や緑豊かな公園など、新たな発見があるかもしれません。従業員のランチの選択肢が増えたり、気分転換の散歩ができたりと、働く環境の質が向上することもあります。

もちろん、来客が多い業種や、猛暑・悪天候時の従業員の負担は考慮すべきです。しかし、バス便が利用できる、あるいは大通りに面していてタクシーが捕まえやすいといった立地であれば、デメリットは十分にカバーできます。「駅徒歩5分以内」という固定観念を外すだけで、思わぬ優良物件に出会える可能性が高まります。

④ 居抜き・セットアップオフィスを狙う

オフィスのコストは月々の賃料だけではありません。入居時にかかる初期費用、特に内装工事費は大きな負担となります。スケルトン状態(コンクリート打ちっ放しの何もない状態)からオフィスを作り上げる場合、坪単価10万円〜30万円以上の工事費がかかることも珍しくありません。

この内装工事費を劇的に削減できるのが、「居抜きオフィス」と「セットアップオフィス」です。

  • 居抜きオフィス: 前のテナントが設置した内装、間仕切り、什器などをそのまま引き継いで利用できる物件です。
    • メリット: 内装工事が不要なため、初期費用と入居までの時間を大幅に削減できます。
    • デメリット: レイアウトの自由度が低い、前の企業のイメージが残る可能性がある、設備の劣化具合を確認する必要がある、といった点が挙げられます。
  • セットアップオフィス: ビルのオーナー側が、あらかじめ受付、会議室、デスク、チェアといった基本的な内装・什器を整備した状態で貸し出す物件です。
    • メリット: デザイン性が高く、プロが設計したおしゃれな空間で、すぐさま業務を開始できます。内装工事の手間やコストはかかりません。
    • デメリット: 賃料が相場よりやや高めに設定されていることが多いです。また、家具や内装のデザインは変更できません。

自社の希望するレイアウトと、居抜きオフィスの現状がうまく合致すれば、これ以上ないほどコストパフォーマンスの高い選択となります。初期費用を抑えたいスタートアップや、急な増員で早急にオフィスが必要な企業にとって、これらの物件は非常に魅力的な選択肢です。

⑤ 複数の不動産ポータルサイトを横断して比較する

貸事務所を探す際、多くの人が不動産ポータルサイトを利用します。しかし、一つのサイトだけを見ていると、情報が偏ってしまう可能性があります。不動産会社によって得意なエリアや物件の種類が異なり、特定のサイトにしか掲載されていない「掘り出し物」物件も存在します。

そこで重要になるのが、複数のポータルサイトを横断的にチェックし、比較検討することです。

  • 大手総合サイト(SUUMO、アットホームなど): 掲載物件数が多く、幅広いエリアと価格帯をカバーしています。まずは市場の全体像を掴むのに役立ちます。
  • 事業用不動産専門サイト(officee、CBREなど): オフィス物件に特化しており、より専門的な情報(ビルの詳細スペック、周辺のオフィス市況など)が得られます。独自の非公開物件を扱っていることもあります。
  • 地域特化型サイト(東京事務所探し.comなど): 特定のエリアに絞って深い情報を提供しています。地域の不動産会社との繋がりが強く、地元の優良物件が見つかる可能性があります。

複数のサイトを定期的に巡回し、気になる物件があればすぐに問い合わせることが、良い物件を逃さないコツです。また、サイトごとに開催しているキャンペーン(仲介手数料割引など)が異なる場合もあるため、コスト削減の観点からも複数サイトのチェックは欠かせません。

これらの5つのコツを組み合わせることで、東京という賃料の高い市場でも、賢く、戦略的に、自社の成長を支える最適なオフィスを見つけることができるでしょう。

貸事務所を契約するまでの流れ

移転計画を立てる、物件を探し、内覧する、入居を申し込み、審査を受ける、賃貸借契約を結ぶ、内装工事や引越しの準備を進める、入居を開始する

理想の貸事務所を見つけてから、実際に入居して業務を開始するまでには、いくつかのステップを踏む必要があります。オフィス移転は一大プロジェクトであり、計画的に進めないと、思わぬトラブルやスケジュールの遅延に見舞われる可能性があります。ここでは、一般的な貸事務所の契約から入居までの流れを6つのステップに分けて、時系列で詳しく解説します。

移転計画を立てる

すべての始まりは、周到な移転計画です。この段階での準備が、プロジェクト全体の成否を左右します。一般的に、オフィスの移転計画は、希望入居日の6ヶ月前から1年前に開始するのが理想的です。

  1. 移転目的の明確化: なぜオフィスを移転するのかを明確にします。「事業拡大による増員」「コスト削減」「ブランディング向上」「従業員の労働環境改善」など、目的をはっきりさせることで、物件選びの軸が定まります。
  2. プロジェクトチームの結成: 移転に関わるタスクを分担するため、総務、経理、情報システム、各事業部の代表者などからなるプロジェクトチームを立ち上げます。
  3. 要件定義(Wants & Needs): 新しいオフィスに求める条件を具体的に洗い出します。
    • エリア: 都心5区、準都心など、事業戦略に基づいたエリア。
    • 広さ: 現在の従業員数と将来の増員計画を考慮した坪数。
    • 賃料予算: 月額賃料の上限を設定します。
    • 設備: 新耐震基準、OAフロア、個別空調、セキュリティレベルなど、譲れない条件(Needs)と、できれば欲しい条件(Wants)を整理します。
  4. スケジュール策定: 現オフィスの解約予告期間(通常3~6ヶ月前)を確認し、そこから逆算して、物件探し、契約、内装工事、引越しなどの各フェーズのスケジュールを具体的に設定します。
  5. 予算策定: 月額賃料だけでなく、敷金・礼金、仲介手数料、内装工事費、什器購入費、引越し費用、通信インフラ工事費、原状回復費用など、移転にかかるすべてのコストを算出し、予算を確保します。

物件を探し、内覧する

移転計画が固まったら、いよいよ具体的な物件探しを開始します。このフェーズは、希望入居日の4~6ヶ月前に進めるのが一般的です。

  1. 情報収集: 前述の不動産ポータルサイトや、不動産仲介会社のウェブサイトを活用して、条件に合う物件をリストアップします。気になる物件があれば、積極的に問い合わせを行いましょう。
  2. 物件の絞り込み: リストアップした物件の中から、図面や写真、詳細情報をもとに、候補を5~10件程度に絞り込みます。
  3. 内覧(現地調査): 絞り込んだ物件は、必ず現地に足を運び、内覧します。内覧時には、複数の視点でチェックすることが重要です。
    • 室内: 広さの感覚、天井高、窓からの採光、コンセントの位置と数、空調の効き具合、携帯電話の電波状況。
    • 共用部: エントランスの雰囲気、エレベーターの数と待ち時間、トイレの清潔さ、給湯室の設備。
    • 建物全体: ビルの管理状態(清掃状況)、駐車場の有無、駐輪場の有無、セキュリティ体制。
    • 周辺環境: 最寄り駅からの実際の所要時間、道のりの安全性、周辺の飲食店やコンビニ、銀行、郵便局の有無、騒音や匂いの有無。

内覧には、経営層だけでなく、実際に働く従業員の代表者も同行することをおすすめします。異なる視点から物件を評価することで、より客観的な判断が可能になります。

入居を申し込み、審査を受ける

内覧の結果、入居したい物件が決まれば、不動産会社を通じて「入居申込書」を提出します。これは、「この物件を借りたい」という意思表示であり、これをもって物件が仮押さえされるのが一般的です。申込から審査結果が出るまでは、1週間から2週間程度かかります。

  1. 申込書の提出: 不動産会社指定のフォーマットに、会社情報(名称、所在地、代表者名など)や連帯保証人の情報を記入して提出します。
  2. 必要書類の提出: 申込書と合わせて、以下の書類の提出を求められることが一般的です。
    • 会社の登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
    • 会社案内やパンフレット
    • 決算書(通常2~3期分)
    • (設立間もない会社の場合)事業計画書
    • 代表者の身分証明書
  3. 入居審査: オーナー(貸主)と保証会社が、提出された書類をもとに、申込者の支払い能力や事業の継続性、社会的な信用度などを審査します。特に、財務状況は厳しくチェックされるため、決算内容に不安がある場合は、事前に不動産仲介会社に相談しておくと良いでしょう。

賃貸借契約を結ぶ

審査に無事通過すると、いよいよ賃貸借契約の締結です。契約は非常に重要なステップであり、内容を十分に理解しないまま署名・捺印することのないよう、細心の注意を払いましょう。

  1. 重要事項説明: 契約に先立ち、宅地建物取引士から物件や契約条件に関する「重要事項説明」を受けます。登記上の権利関係、法令上の制限、契約解除に関する事項など、専門的な内容が含まれるため、不明な点があればその場で必ず質問し、解消してください。
  2. 契約書の確認: 契約書(賃貸借契約書)の全ての条項に目を通します。特に以下の項目は念入りに確認が必要です。
    • 賃料、共益費、支払日
    • 契約期間、更新条件、更新料
    • 解約予告期間と方法
    • 敷金(保証金)の額と返還条件、償却の有無
    • 禁止事項(用途制限、転貸など)
    • 原状回復義務の範囲(特約の有無)
  3. 契約締結・初期費用の支払い: 内容に合意できれば、契約書に署名・捺印します。同時に、敷金、礼金、前払賃料、仲介手数料などの初期費用を指定の口座に振り込みます。

内装工事や引越しの準備を進める

契約が完了し、物件の引き渡し日が決まったら、入居に向けた具体的な準備を加速させます。この期間は、契約後から入居までの1~2ヶ月間で、複数のタスクを並行して進める必要があります。

  1. レイアウト設計: オフィスのレイアウトを確定させ、内装工事業者を選定・発注します。消防法などの法令に準拠した設計が必要なため、専門知識のある業者に依頼するのが安心です。
  2. インフラ手配: 電話回線、インターネット回線、複合機などの契約と工事手配を進めます。工事には時間がかかる場合があるため、早めに申し込みましょう。
  3. 什器・備品の手配: デスク、チェア、キャビネット、PCなどの什器や備品を選定し、購入またはリース契約を結びます。
  4. 引越し業者の選定: 複数の引越し業者から見積もりを取り、サービス内容と料金を比較して業者を決定します。
  5. 各種届出: 官公庁への届出(法務局への本店移転登記、税務署への異動届など)や、取引先、金融機関への住所変更の連絡を行います。

入居を開始する

すべての準備が整い、いよいよ新しいオフィスでの業務がスタートします。

  1. 鍵の受け取り: 契約した引き渡し日に、不動産会社からオフィスの鍵を受け取ります。
  2. 引越し作業: 引越し業者による荷物の搬入作業に立ち会います。
  3. 業務開始: 新しい環境で、心機一転、業務を開始します。

この一連の流れを理解し、各ステップで何をすべきかを把握しておくことが、スムーズで計画的なオフィス移転を実現するための鍵となります。

貸事務所を借りる前に知っておきたい注意点

貸事務所の契約は、企業にとって大きな決断です。後々のトラブルを避け、快適なオフィス環境を維持するためには、契約前にいくつかの重要なポイントを確認しておく必要があります。見た目の良さや賃料の安さだけで判断せず、契約内容やビルのルールを深く理解することが不可欠です。ここでは、特に注意すべき4つのポイントを解説します。

初期費用の内訳を確認する

月々の賃料に目が行きがちですが、契約時に一括で支払う初期費用も大きな負担となります。一般的に、初期費用の総額は月額賃料の6ヶ月分から12ヶ月分に相当すると言われており、事前に正確な内訳と金額を把握し、資金計画を立てておくことが極めて重要です。

費用項目 内容 目安
敷金(または保証金) 賃料滞納や退去時の原状回復費用に充当される担保金。残額は返還される。 賃料の6~12ヶ月分(物件による)
礼金 貸主(オーナー)に対して支払う謝礼金。返還されない。 賃料の0~2ヶ月分
仲介手数料 物件を紹介してくれた不動産会社に支払う手数料。 賃料の1ヶ月分 + 消費税(上限)
前払賃料 入居する月の賃料(日割りの場合もある)。 賃料の1ヶ月分
前払共益費 入居する月の共益費(管理費)。 共益費の1ヶ月分
火災保険料 万一の火災や水漏れに備える保険。加入が義務付けられていることが多い。 15,000円~30,000円程度(2年間)
保証会社利用料 連帯保証人の代わりとなる保証会社を利用する場合の費用。 賃料の0.5~1ヶ月分、または総賃料の50%~100%

特に注意したいのが「敷金(保証金)」です。契約書に「償却」や「敷引き」といった特約が記載されている場合があります。これは、預けた敷金・保証金の一部(例:20%や賃料の2ヶ月分など)が、解約時に理由を問わず返還されないという取り決めです。この特約の有無で、将来戻ってくる金額が大きく変わるため、契約前に必ず確認しましょう。

契約内容(用途制限・原状回復義務)をよく読む

賃貸借契約書は、貸主と借主の権利と義務を定めた重要な書類です。内容を軽視すると、後で「知らなかった」では済まされない事態に発展する可能性があります。特に以下の2点は、事業運営に直接影響するため、細心の注意を払って確認してください。

用途制限

契約書には、借りたスペースをどのような目的で使用できるかという「用途」が定められています。通常、「事務所」として契約した場合、そのスペースを店舗として不特定多数の客を招き入れたり、住居として使用したりすることはできません。
また、看板の設置についてもルールが定められていることが多く、設置できる場所、大きさ、デザインなどが制限される場合があります。会社のロゴや名称を大きく掲げたいと考えている場合は、契約前に看板設置の可否と条件を必ず確認しておきましょう。

原状回復義務

原状回復義務は、オフィス移転において最もトラブルになりやすい項目の一つです。これは「退去時に、借りた時の状態に戻して返還する義務」のことですが、どこまで元に戻す必要があるのか、その範囲が契約書によって異なります。

  • 通常損耗・経年劣化: 壁紙の日焼けや、通常使用による床のわずかな傷など、時間の経過や普通に使っていて生じる損耗は、原則として貸主の負担で修繕されるべきものです。
  • 借主の故意・過失による損傷: 一方で、借主が意図的に、あるいは不注意で付けた傷や汚れは、借主の負担で修復する義務があります。
  • 原状回復の特約: 注意が必要なのは、契約書に「通常損耗や経年劣化も借主の負担で修復する」という特約が盛り込まれているケースです。この特約があると、退去時の費用が想定よりも大幅に高くなる可能性があります。
  • スケルトン返し: 入居時に内装が施されていた場合でも、退去時にはすべてを解体・撤去し、建物の躯体だけの状態(スケルトン)にして返還することを求められる契約もあります。この場合、高額な解体費用が発生するため、契約前に必ず確認が必要です。

原状回復の範囲を明確にするため、入居時に室内の写真を撮っておくことを強くお勧めします。これが退去時の交渉で重要な証拠となります。

ビルの管理規約やインフラ設備をチェックする

契約書本体だけでなく、ビル全体のルールを定めた「管理規約」や、業務に不可欠なインフラ設備の仕様も必ず確認しましょう。

  • 利用時間: ビルのエントランスが開いている時間、空調やエレベーターが稼働している時間を確認します。特に、残業や休日出勤が多い業種の場合、24時間入退館が可能か、夜間や休日の空調は個別に追加料金で利用できるか、といった点は死活問題になり得ます。
  • セキュリティ: ビルのセキュリティシステム(機械警備、有人警備など)が、自社の求めるレベルを満たしているかを確認します。
  • 電気容量: 使用するOA機器の総電力を考慮し、オフィスの電気容量が十分かを確認します。容量が不足している場合、増設工事が必要となり、追加費用が発生します。
  • インターネット回線: どのような回線がMDF室(ビル内の通信設備の集約場所)まで引き込まれているか、また、そこから自室までどのように配線するかを確認します。光回線の引き込み工事にオーナーの許可が必要な場合もあります。

駐車場の有無を確認する

営業車や役員車を使用する企業にとって、駐車場の確保は重要な課題です。

  • 敷地内駐車場の有無: ビルに駐車場が併設されているか、空きがあるか、月額の料金はいくらかを確認します。
  • 近隣の月極駐車場: 敷地内に駐車場がない、あるいは空きがない場合は、周辺の月極駐車場の場所と料金相場を調べておく必要があります。都心部では月極駐車場の料金も高額になるため、事前に予算に組み込んでおくことが大切です。

これらの注意点を一つひとつ丁寧に確認し、不明な点や懸念点はすべて契約前に解消しておくことで、安心して新しいオフィスでのスタートを切ることができるでしょう。

東京の貸事務所探しにおすすめのポータルサイト

東京の膨大な貸事務所の中から自社に合った物件を見つけ出すには、効率的な情報収集が欠かせません。その強力なツールとなるのが、事業用不動産に特化したポータルサイトです。ここでは、それぞれに特徴がある、おすすめのポータルサイトを5つ厳選してご紹介します。これらのサイトを併用することで、より広く、深く、物件を探すことが可能になります。

officee(オフィシー)

officee(オフィシー)は、掲載物件数が国内最大級で、仲介手数料が無料という大きな特徴を持つ貸事務所専門のポータルサイトです。(参照:officee公式サイト)

  • 特徴:
    • 仲介手数料0円: 通常、賃料の1ヶ月分かかる仲介手数料が無料になるため、初期費用を大幅に削減できます。これは、貸主側から手数料を得るビジネスモデルによって実現されています。
    • 豊富な物件情報: 都心5区を中心に、東京23区、さらには全国の主要都市の物件を網羅しています。物件の外観・内観写真が豊富で、中には360°パノラマビューで室内をバーチャル内覧できる物件もあります。
    • 専門コンサルタント: 物件探しから条件交渉、契約までを専門のコンサルタントがサポートしてくれます。市場の動向や非公開物件の情報提供も期待できます。
  • こんな企業におすすめ:
    • 初期費用を少しでも抑えたいスタートアップや中小企業
    • オンラインで多くの情報を得て、効率的に物件を比較検討したい企業
    • 初めてのオフィス移転で、専門家のアドバイスを受けながら進めたい企業

CBRE

CBRE(シービーアールイー)は、事業用不動産サービスの分野で世界をリードする企業です。個人向けというよりは、法人向け、特に大規模なオフィス移転や、専門的な不動産戦略を求める企業に強みを持っています。(参照:CBRE公式サイト)

  • 特徴:
    • グローバルなネットワークと知見: 世界中の不動産マーケットに関する深い知見と豊富なデータを持っており、それに基づいた質の高いコンサルティングが受けられます。
    • 大規模・ハイグレード物件に強い: 都心の大規模オフィスビルや、企業の戦略的拠点となるようなハイグレード物件の取り扱いに長けています。
    • 詳細なマーケットレポート: 定期的に発行されるオフィス市場に関する調査レポートは、賃料相場や空室率の動向を把握する上で非常に有益な情報源となります。
  • こんな企業におすすめ:
    • 中規模から大規模なオフィス移転を計画している企業
    • 外資系企業や、グローバルな事業展開を行う企業
    • データに基づいた客観的な分析と、専門的な不動産戦略の提案を求める企業

アットホーム 貸店舗・事務所

アットホームは、全国の不動産会社が加盟する情報ネットワークであり、住居用のイメージが強いですが、「貸店舗・事務所」の専門サイトも運営しています。その強みは、地域に密着した豊富な情報量にあります。(参照:アットホーム公式サイト)

  • 特徴:
    • 地域密着型の物件が豊富: 都心の大規模ビルだけでなく、各地域の不動産会社が扱う中小規模のビルや、少し変わった物件なども見つかる可能性があります。
    • 幅広い選択肢: 23区内はもちろん、23区外の市部の物件情報も充実しており、幅広いエリアで探したい場合に適しています。
    • 多様な検索軸: 一般的な条件に加え、「1階の物件」「倉庫付き」「看板掲載スペースあり」など、事業内容に合わせた細かい条件で検索できます。
  • こんな企業におすすめ:
    • 都心から少し離れたエリアや、特定の地域に絞って探したい企業
    • 中小規模のビルや、個性的な物件を探している企業
    • 事務所兼店舗や、倉庫付き物件など、特殊な要件を持つ企業

SUUMO(スーモ) 事務所

SUUMO(スーモ)は、リクルートが運営する日本最大級の不動産情報サイトです。住居探しのイメージが圧倒的に強いですが、「事務所」カテゴリも存在し、その知名度と使いやすさから多くのユーザーに利用されています。(参照:SUUMO公式サイト)

  • 特徴:
    • 圧倒的な知名度と集客力: 多くの不動産会社が物件情報を掲載しており、物件数は豊富です。
    • ユーザーフレンドリーなインターフェース: 直感的で分かりやすいサイトデザインと、スムーズな検索機能が特徴。スマートフォンアプリも使いやすく、移動中などにも手軽に物件探しができます。
    • 豊富なコンテンツ: 物件情報だけでなく、オフィス探しのノウハウやエリア情報など、関連する読み物コンテンツも充実しています。
  • こんな企業におすすめ:
    • 初めてオフィス探しをする方で、まずは手軽に情報収集を始めたい企業
    • 使い慣れたインターフェースで、ストレスなく物件を探したい企業
    • 幅広い物件を網羅的にチェックしたい企業

東京事務所探し.com

その名の通り、東京の貸事務所・賃貸オフィスに特化したポータルサイトです。エリアを東京に絞っている分、より深く、きめ細やかな情報提供が魅力です。(参照:東京事務所探し.com公式サイト)

  • 特徴:
    • 東京特化の専門性: 東京のオフィス市場に精通したスタッフによる情報提供が期待できます。エリアごとの特徴や相場観に関する詳しい解説が参考になります。
    • 独自の物件情報: 地元の不動産会社との強固なネットワークを活かし、他の大手サイトには掲載されていない独自の物件情報を扱っている場合があります。
    • テーマ別の物件特集: 「居抜きオフィス特集」「10坪以下のスモールオフィス特集」など、特定のニーズに合わせた特集が組まれており、目的の物件を探しやすいです。
  • こんな企業におすすめ:
    • オフィスを構える場所を「東京」に定めている企業
    • 大手サイトでは見つからない、掘り出し物の物件を探したい企業
    • 特定のテーマ(居抜き、小規模など)に合致する物件を効率的に探したい企業

これらのサイトは、それぞれに強みと特徴があります。一つのサイトに固執するのではなく、自社のニーズに合わせて複数のサイトをブックマークし、並行して活用することで、情報収集の幅と質が格段に向上し、理想のオフィスに出会える確率が高まるでしょう。

東京の貸事務所に関するよくある質問

貸事務所探しを始めると、様々な疑問が浮かんでくるものです。ここでは、特に多くの方が抱く基本的な質問について、Q&A形式で分かりやすくお答えします。

賃貸事務所とは何ですか?

賃貸事務所とは、企業が事業活動を行うためのスペース(オフィス)として、月々の賃料を支払って借りる物件のことを指します。一般的に「貸事務所」や「賃貸オフィス」とも呼ばれ、不動産オーナーとの間で「事業用賃貸借契約」を結んで利用します。

賃貸事務所と混同されやすい他のオフィス形態との違いは以下の通りです。

形態 契約形態 特徴 適した企業
賃貸事務所 事業用賃貸借契約 ・契約期間が長い(通常2年~)
・内装の自由度が高い
・敷金など初期費用が高額
・中長期的に安定した拠点を持ちたい企業
・従業員数が10名以上の中小~大企業
レンタルオフィス 利用契約や施設利用契約 ・契約期間が短い(数ヶ月~)
・家具や通信環境が完備
・初期費用が安い
・1~5名程度の少人数で起業するスタートアップ
・プロジェクト単位の短期利用
サービスオフィス 利用契約や施設利用契約 ・レンタルオフィスに受付や秘書サービスが付加
・共用の会議室やラウンジが利用可能
・企業の信用度を高めたいスタートアップ
・来客対応が多い企業
コワーキングスペース 利用契約(ドロップイン、月額など) ・オープンな空間を他社と共有
・コミュニティ形成が目的の一つ
・フリーランス、個人事業主
・異業種交流を求める創業者

賃貸事務所は、自社のブランドイメージに合わせた内装を施したり、独自のセキュリティを導入したりと、カスタマイズの自由度が高いのが最大のメリットです。その分、初期費用や原状回復義務が伴いますが、事業の「本拠地」として、腰を据えてビジネスに取り組むための最適な選択肢と言えるでしょう。

SOHO可物件と事務所専用物件の違いは何ですか?

オフィス探しをしていると、「SOHO可」という表記を目にすることがあります。これは「事務所専用」物件とは性質が異なるため、違いを正確に理解しておくことが重要です。

  • SOHO可物件:
    • SOHOとは「Small Office / Home Office」の略で、小さなオフィスや自宅を仕事場とすることを指します。
    • 「SOHO可物件」は、基本的には居住用のマンションやアパートですが、オーナーの許可を得て、事業所として使用することも認められている物件です。
    • 契約形態は、事業用ではなく「住居用賃貸借契約」を結ぶのが一般的です。
    • メリット: 住居と事務所を兼ねられるため、通勤時間がなくなり、家賃の一部を経費として計上できる場合があります。賃料も事務所専用物件より安いことが多いです。
    • デメリット: 不特定多数の人の出入りが想定されていないため、来客が多い業種には不向きです。法人登記や看板の設置が認められないケースが多く、社会的な信用度の面では事務所専用物件に劣ります。
  • 事務所専用物件:
    • その名の通り、事業活動を行うことのみを目的とした物件です。住居としての使用は認められていません。
    • 契約形態は「事業用賃貸借契約」となります。
    • メリット: 法人登記や看板設置が原則として可能です。企業の「顔」として、取引先や金融機関からの信用を得やすくなります。OAフロアやビジネス用のインフラが整っていることが多いです。
    • デメリット: 賃料や初期費用がSOHO可物件に比べて高額になります。

どちらを選ぶべきかは、事業のフェーズや業種によって異なります。 創業したばかりのフリーランスや個人事業主で、来客がほとんどない場合はSOHO可物件が適しているかもしれません。一方、従業員を雇用し、事業を拡大していくフェーズにある企業や、企業の信用力が重要なBtoBビジネスを行う企業は、事務所専用物件を選ぶべきでしょう。

貸事務所の契約に必要な初期費用はどのくらいですか?

貸事務所を契約する際にかかる初期費用は、物件の賃料や契約条件によって大きく変動しますが、一般的には月額賃料の6ヶ月分から、高い場合は12ヶ月分以上が必要になると考えておくと良いでしょう。

例えば、月額賃料30万円の物件を契約する場合の初期費用のシミュレーションは以下のようになります。

費用項目 計算例(賃料30万円の場合) 金額
敷金(保証金) 賃料の6ヶ月分 180万円
礼金 賃料の1ヶ月分 30万円
仲介手数料 賃料の1ヶ月分 + 消費税 33万円
前払賃料 賃料の1ヶ月分 30万円
前払共益費 (仮に月3万円として) 3万円
火災保険料 2年契約 2万円
保証会社利用料 賃料の1ヶ月分 30万円
合計 308万円

このシミュレーションでは、初期費用は合計で308万円となり、これは月額賃料(30万円)の約10ヶ月分に相当します。

これはあくまで一例であり、敷金の月数が多い物件や、礼金が不要な物件など様々です。また、この費用に加えて、内装工事費、什器購入費、引越し費用などが別途必要になることを忘れてはいけません。

オフィス移転は、単に場所を移すだけでなく、多額の資金を必要とする経営判断です。事前にしっかりとシミュレーションを行い、余裕を持った資金計画を立てることが、プロジェクトを成功に導くための不可欠な要素となります。