毎日使うキッチンは、家の中でも特にこだわりたい場所の一つです。しかし、いざリフォームを考え始めると、「一体いくらかかるのだろう?」「この予算でどこまでできるの?」といった費用の疑問がつきものです。キッチンリフォームの費用は、選ぶキッチンのグレードや工事の規模によって大きく変動するため、相場が分かりにくいと感じる方も少なくありません。
この記事では、キッチンリフォームにかかる費用の中心価格帯から、価格帯別に実現可能な工事内容、費用の詳細な内訳、そして費用を賢く抑えるコツまで、網羅的に解説します。さらに、キッチンの種類別の費用相場や、後悔しないための注意点、信頼できるリフォーム会社の選び方まで、キッチンリフォームを成功させるために知っておきたい情報を凝縮しました。
本記事を読めば、ご自身の希望するリフォーム内容と予算のバランスを具体的にイメージできるようになり、満足度の高いキッチンリフォーム計画を立てるための確かな知識が身につきます。これからキッチンリフォームを検討される方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
キッチンリフォームの費用相場は50万〜150万円
結論からお伝えすると、キッチンリフォームの費用相場は、一般的に50万円から150万円の価格帯に収まるケースが最も多いです。この金額には、新しいシステムキッチンの本体価格と、解体・設置などの基本的な工事費用が含まれています。
もちろん、これはあくまで目安となる中心価格帯です。リフォームの内容によっては50万円未満で済むこともあれば、オーダーメイドキッチンや大幅なレイアウト変更を伴う場合は200万円、300万円を超えることもあります。なぜ、これほどまでに価格に幅が生まれるのでしょうか。
その理由は、キッチンリフォームの費用が主に以下の3つの要素によって大きく左右されるためです。
- キッチン本体のグレード: システムキッチンは、機能や素材によって価格が大きく異なります。シンプルな機能の普及価格帯モデルから、最新機能を搭載し、高級素材を使用したハイグレードモデルまで、幅広い選択肢があります。
- 工事の規模と内容: 現在のキッチンと同じ場所に新しいキッチンを設置する「入れ替え」のみであれば工事費は比較的安く済みます。しかし、壁付けキッチンを対面キッチンにするなど、キッチンの位置やレイアウトを変更する場合は、給排水管やガス管、電気配線の移設工事が伴うため、費用が大幅に上がります。
- 内装工事の範囲: キッチン本体の交換だけでなく、壁紙(クロス)や床材の張り替え、キッチンパネルの設置など、内装工事をどこまで行うかによっても総額は変わります。
50万~150万円という相場は、多くの家庭で選ばれる普及価格帯~ミドルグレードのシステムキッチンを選び、基本的な交換工事、あるいはそれに伴う部分的な内装工事を行った場合の費用と捉えると分かりやすいでしょう。
例えば、「古くなったI型キッチンを、同じ場所で新しいI型システムキッチンに交換し、周りの壁紙と床もきれいにしたい」というような、最も一般的なリフォームがこの価格帯の典型例です。
一方で、50万円未満のリフォームは、コンロやレンジフードといった設備の部分的な交換や、内装工事なしで最も安価なグレードのキッチンに交換する場合に限られることが多いです。逆に150万円を超えるリフォームでは、ハイグレードなキッチンを選んだり、間取り変更を伴う大掛かりな工事が可能になったりします。
このように、キッチンリフォームの費用は「何を」「どこまで」行うかによって大きく変動します。まずはご自身の予算と、実現したいリフォームの優先順位を明確にすることが、計画を具体的に進めるための第一歩です。次の章では、それぞれの価格帯で具体的にどのようなリフォームが可能なのかを、さらに詳しく掘り下げていきます。
【価格帯別】キッチンリフォームでできること
キッチンリフォームの費用相場が50万~150万円であることを踏まえ、ここでは予算ごとにどのような工事が可能になるのかを具体的に解説します。ご自身の予算と照らし合わせながら、理想のキッチンのイメージを膨らませてみましょう。
50万円未満でできること
予算50万円未満のリフォームは、「部分的な改修」または「限定的な全体交換」が中心となります。キッチン全体を新しくするというよりは、今あるキッチンの悩みや不満をピンポイントで解決する工事がメインです。
主な工事内容
- ビルトイン設備の交換: ガスコンロからIHクッキングヒーターへの交換、古いレンジフードを掃除しやすい最新型への交換、ビルトイン食洗機の新規設置や交換などが代表的です。これらは10万~30万円程度で実現可能な場合が多く、キッチンの使い勝手や掃除のしやすさを手軽に向上させられます。
- キッチン本体のみの交換(シンプルグレード): 現在のレイアウトを変更せず、内装工事も行わないという条件であれば、50万円未満でキッチン本体を交換することも可能です。この場合、選べるのは各メーカーが提供する最もシンプルなグレードのI型キッチン(間口255cm程度まで)が中心となります。最低限の機能でとにかく新しくしたい、という場合に適しています。
- 水栓やガスコンロの交換: タッチレス水栓への交換や、安全機能付きのガスコンロへの交換など、より小規模な設備の入れ替えもこの価格帯です。数万円から対応可能な工事もあります。
具体例
- 築15年のマンションで、プロペラファン式のレンジフードの油汚れがひどく、掃除も大変なため、スリム型のシロッコファンに交換。費用は約15万円。
- 賃貸アパートの退去に伴う原状回復で、古いブロックキッチン(セクショナルキッチン)を、同サイズのシンプルなI型システムキッチンに入れ替える。工事は1日で完了し、費用は約45万円。
この価格帯でリフォームを検討する際のポイントは、目的を絞ることです。「掃除を楽にしたい」「安全性を高めたい」など、最も改善したい点を一つか二つに絞ることで、予算内で満足度の高いリフォームが実現できます。
50万〜100万円でできること
この価格帯は、キッチンリフォームで最も需要が多いボリュームゾーンです。システムキッチン本体の交換と、それに伴う周辺の内装工事を合わせて行う、バランスの取れたリフォームが実現できます。
主な工事内容
- 普及価格帯(スタンダードグレード)のシステムキッチンへの交換: 国内主要メーカーが最も力を入れている価格帯のキッチンが選択肢に入ります。デザインやカラーバリエーションが豊富になり、スライド収納や静音シンクなど、使い勝手を高める基本的な機能が標準搭載されているモデルを選べます。I型やL型キッチンが中心です。
- キッチン周辺の内装工事: キッチンの入れ替えに伴い、古くなった壁紙や床材を新しくすることができます。特にキッチンは油汚れや水はねで壁や床が傷みやすいため、本体交換と同時に行うことで、空間全体が見違えるようにきれいになります。壁には汚れを拭き取りやすいキッチンパネルを設置するのが一般的です。
- オプションの追加: 予算に余裕があれば、ビルトイン食洗機や浄水器一体型水栓など、家事を楽にする便利なオプションを追加することも可能です。
具体例
- 築20年の戸建てで、開き戸タイプの古い壁付けI型キッチン(間口255cm)を、収納力の高いスライド引き出しタイプのシステムキッチンに交換。同時に、油汚れが目立っていた壁にはキッチンパネルを施工し、床のクッションフロアも張り替える。総額は約85万円。
- 中古マンションの購入に伴い、L型キッチンを新しいものに入れ替え。基本的な仕様はスタンダードグレードで選びつつ、オプションでビルトイン食洗機を追加。費用は約100万円。
50万~100万円の予算があれば、多くの人が「キッチンが新しくなった」と実感できる、満足度の高いリフォームが可能になります。ただし、キッチンのレイアウト変更など、大掛かりな配管工事を含む場合はこの予算を超えることが多いため、注意が必要です。
100万〜150万円でできること
予算が100万円を超えると、リフォームの自由度が格段に上がります。キッチンのグレードアップはもちろん、キッチンの配置を変えるレイアウト変更も現実的な選択肢に入ってきます。
主な工事内容
- ミドルグレード〜ハイグレードのシステムキッチンへの交換: 各メーカーの中級〜高級モデルが選べるようになります。デザイン性に優れた扉材(天然木や塗装など)や、人工大理石の中でも質感の高いカウンター、最新機能を持つレンジフードやコンロなど、こだわりを反映したキッチンづくりが可能です。
- キッチンのレイアウト変更: これまで壁付けだったキッチンを、リビング・ダイニングを見渡せる対面式のペニンシュラキッチンに変更するといった、人気のレイアウト変更も視野に入ります。ただし、これには給排水管や電気配線の移設、排気ダクトの延長工事などが必要になるため、工事費が高くなります。また、元のキッチンの床や壁の補修も必要です。
- キッチン空間全体の内装工事: キッチン周りだけでなく、隣接するダイニングスペースの壁紙や床材も一緒に張り替えるなど、LDK空間としてトータルコーディネートできます。
具体例
- 独立していたキッチンとリビングの間の壁を一部撤去し、開放的なLDK空間を創出。壁付けだったI型キッチンを、リビング側を向いたペニンシュラキッチンに変更。キッチン本体はミドルグレードを選び、床はリビングダイニング全体をフローリングで統一。総額は約140万円。
- 使い勝手にこだわって、天板やシンクの素材をグレードアップしたL型キッチンを導入。収納ユニット(カップボード)もキッチンと同じシリーズで揃え、統一感のある空間を実現。費用は約120万円。
この価格帯では、「使い勝手」や「デザイン性」、「家族とのコミュニケーション」といった、機能面以外の付加価値を追求したリフォームが可能になります。
150万円以上でできること
予算150万円以上は、妥協のない理想のキッチンを追求できるハイエンドなリフォームです。最高級グレードのキッチンやオーダーメイド、間取り変更を伴う大規模な工事も可能になります。
主な工事内容
- ハイグレード・最高級グレードのシステムキッチン: 海外製キッチン(ミーレの食洗機など)や、国内メーカーの最上位シリーズ(例:LIXIL「リシェルSI」、Panasonic「L-CLASS」)など、デザイン・機能・素材すべてにおいて最高品質のキッチンを選べます。
- アイランドキッチンの設置: 四方からアクセスできる独立したアイランドキッチンは、開放感とデザイン性の高さから人気ですが、設置には広いスペースと大掛かりな設備工事が必要です。床下での配管・配線工事や、天井裏の排気ダクト工事などが必要となり、工事費も高額になります。
- オーダーメイドキッチン: 素材、サイズ、レイアウト、設備機器などをすべて自由に組み合わせるオーダーメイドキッチンもこの価格帯から実現可能です。建築家やインテリアデザイナーと相談しながら、世界に一つだけのキッチンをつくれます。
- 間取り変更を伴う大規模リノベーション: キッチンだけでなく、LDK全体の間取りを変更するような、より大規模なリノベーションも可能です。例えば、和室をなくしてLDKを広げ、そこに新しいアイランドキッチンを設置するといったプランも考えられます。
具体例
- リビングダイニングの中央に、セラミックトップの天板と海外製の大型食洗機を組み込んだ、デザイン性の高いアイランドキッチンを設置。床暖房も新たに追加し、冬でも快適なLDK空間を実現。総額は約250万円。
- 料理好きのこだわりを詰め込み、シンクとコンロが分かれたII型レイアウトのオーダーメイドキッチンを製作。壁面には見せる収納棚を造作し、タイルにもこだわったカフェのような空間を演出。総額は約300万円。
150万円以上のリフォームは、もはや単なる設備の交換ではなく、「ライフスタイルを形にする」ための投資と言えるでしょう。理想の暮らしを実現するために、とことんこだわりたい方におすすめの価格帯です。
キッチンリフォームにかかる費用の内訳
キッチンリフォームの見積もりは、一見すると複雑に見えるかもしれません。しかし、その内訳は大きく分けて「キッチン本体の価格」「工事費用」「その他諸経費」の3つで構成されています。それぞれの項目を理解することで、見積書の内容を正しく把握し、どこに費用がかかっているのかを判断できるようになります。
キッチン本体の価格
リフォーム費用の中で最も大きな割合を占めるのが、新しいシステムキッチンの本体価格です。この価格は、キッチンのグレード(価格帯)、サイズ、素材、そして組み込むオプションによって大きく変動します。
一般的に、システムキッチンはメーカーごとに価格帯の異なるシリーズが用意されています。
グレード | 価格帯の目安(本体のみ) | 特徴 |
---|---|---|
普及価格帯(シンプルグレード) | 20万円~60万円 | 基本的な機能に絞ったコストパフォーマンスの高いモデル。デザインやカラーは限定的。 |
中級価格帯(ミドルグレード) | 50万円~120万円 | 最も選択肢が豊富なボリュームゾーン。デザイン性、収納力、機能性のバランスが良い。 |
高級価格帯(ハイグレード) | 100万円~ | 最新機能、高級素材(セラミック、天然石など)を使用。デザイン性が高く、カスタマイズの自由度も高い。 |
さらに、同じシリーズのキッチンでも、以下の要素を選ぶことで価格が上下します。
- 扉材: 最も価格に影響する部分の一つ。安価なシート化粧板から、鏡面仕上げ、木目調、天然木、塗装扉など、グレードが上がるほど高価になります。
- ワークトップ(天板): 最も普及しているステンレスや人工(人造)大理石のほか、高級感のあるクォーツストーンやセラミックなどがあります。素材によって耐久性やメンテナンス性も異なります。
- シンク: ワークトップ同様、ステンレスや人工大理石が主流です。汚れが流れやすい工夫がされたものや、静音性の高いものなど、機能によって価格が変わります。
- 水栓金具: 通常のシングルレバー混合水栓のほか、浄水器一体型や、手をかざすだけで水が出るタッチレス水栓など、高機能なものほど高価です。
- 加熱機器: ガスコンロかIHクッキングヒーターかを選びます。それぞれにグレードがあり、掃除のしやすいガラストップコンロや、複数の鍋を同時に効率よく加熱できるIHなどが人気です。
- レンジフード(換気扇): フィルターの手入れが不要なノンフィルタータイプや、自動洗浄機能付きのものが人気ですが、その分価格は上がります。
- ビルトイン食洗機: 容量や洗浄力、静音性などによって価格が異なります。海外製の大容量モデルは高価になる傾向があります。
- 収納ユニット: スライド式のフロアキャビネットが主流ですが、足元まで収納できるタイプや、電動で昇降する吊戸棚など、高機能なものもあります。
これらの選択肢を一つひとつ吟味し、自分たちのライフスタイルに本当に必要な機能を見極めることが、予算内で満足度の高いキッチンを選ぶ鍵となります。
工事費用
キッチン本体価格の次に大きなウェイトを占めるのが工事費用です。これは、古いキッチンの撤去から新しいキッチンの設置、さらには関連する内装や設備工事まで、リフォームに関わる作業全般の費用を指します。
キッチンの交換・設置工事費
これは、新しいシステムキッチンを現場で組み立て、水平垂直を正確に保ちながら設置するための費用です。キッチンのサイズや形状、現場の状況によって変動しますが、一般的には10万円~20万円程度が目安となります。メーカーの施工研修を受けた専門の職人が作業にあたることが多いです。
既存キッチンの解体・撤去・処分費
現在使用している古いキッチンを解体し、搬出して処分するための費用です。解体作業費と、廃材の処分費(産業廃棄物処理費用)が含まれます。キッチンの大きさや材質にもよりますが、目安は5万円~10万円程度です。解体した際に、壁や床の下地が傷んでいることが判明すると、後述する補修費用が追加で発生することがあります。
内装工事費(壁・床など)
キッチン本体を新しくすると、これまで隠れていた壁や床のアラが目立つことが多いため、同時に内装工事を行うのが一般的です。
- 壁: 古いキッチンパネルやタイル、壁紙を剥がし、新しい内装材を施工します。コンロ周りには、耐火性と清掃性に優れたキッチンパネルを貼るのが主流で、1㎡あたり8,000円~15,000円程度が相場です。その他の壁は、ビニールクロス(壁紙)で仕上げることが多く、1㎡あたり1,000円~2,000円程度が目安です。
- 床: 油や水で汚れやすいキッチンの床は、耐久性と清掃性の高いクッションフロア(CFシート)やフロアタイルが人気です。クッションフロアは1㎡あたり2,500円~4,500円、フロアタイルは1㎡あたり4,000円~8,000円程度が相場です。既存の床を剥がすか、上から重ねて貼るか(重ね張り)によっても費用は変わります。
給排水・ガス・電気の配管工事費
これは、リフォームの規模によって大きく変動する費用項目です。
- 既存のキッチンと全く同じ位置・レイアウトで交換する場合、既存の配管・配線をそのまま利用できるため、接続作業のみで済み、費用は2万円~5万円程度で収まることが多いです。
- 一方、キッチンの位置を移動したり、壁付けからアイランドキッチンへ変更したりする場合は、床下や壁の中で給排水管、ガス管、電気配線を延長・移設する大掛かりな工事が必要になります。これには、10万円~30万円、あるいはそれ以上の追加費用がかかることも珍しくありません。特に、IHクッキングヒーターを新規導入する際は、200Vの専用回路が必要になるため、電気工事費が別途発生します。
その他諸経費
見積書では「諸経費」や「現場管理費」といった項目で一括りにされることが多い費用です。総工事費の5%~15%程度が目安とされます。
- 現場管理費: 工事全体の進捗管理、職人の手配、近隣への挨拶など、工事を円滑に進めるための管理費用です。
- 設計・デザイン料: オーダーメイドキッチンや複雑なレイアウト変更を伴う場合に、プランニングや図面作成のために発生することがあります。
- 運搬費: キッチン本体や資材を現場まで運ぶための費用です。
- 養生費: 工事中に他の部屋や共有部分(マンションの廊下やエレベーターなど)を傷つけないように、シートやボードで保護するための費用です。
- 駐車場代: 工事車両を停めるスペースがない場合に、近隣のコインパーキングなどを利用するための実費です。
見積もりを取る際は、これらの諸経費に何が含まれているのかをリフォーム会社に確認しておくことが重要です。不明瞭な点があれば、必ず質問して内訳を明らかにしてもらいましょう。
【キッチンの種類・レイアウト別】リフォーム費用相場
キッチンの使い勝手やデザイン、そしてリフォーム費用を大きく左右するのが「レイアウト」です。ここでは、代表的な5つのキッチンレイアウトの特徴と、それぞれのリフォーム費用の相場を解説します。既存のレイアウトから変更する場合は、前述の通り配管工事費などが加わるため、費用は高くなる傾向があります。
キッチンの種類(レイアウト) | リフォーム費用相場(本体+標準工事) | 特徴・メリット | デメリット |
---|---|---|---|
I型キッチン | 50万円~120万円 | シンプルで省スペース。最も一般的で費用が安い。 | 横移動が長くなりがち。作業スペースが狭くなることも。 |
L型キッチン | 70万円~140万円 | 作業動線が短く効率的。作業スペースが広い。 | コーナー部分がデッドスペースになりやすい。I型より高価。 |
対面キッチン(ペニンシュラ) | 80万円~160万円 | 開放感があり家族とコミュニケーションが取りやすい。 | 油はねや臭いがリビングに広がりやすい。広いスペースが必要。 |
対面キッチン(アイランド) | 120万円~250万円以上 | デザイン性が高く、複数人での作業がしやすい。 | ペニンシュラ以上に広いスペースが必要。最も高価になりやすい。 |
II型キッチン | 100万円~200万円 | 作業スペースと収納が豊富。動線が短く効率的。 | シンクとコンロ間で振り返る動作が必要。通路幅の確保が重要。 |
U型キッチン | 120万円~220万円 | 収納量が最も多い。作業スペースが広く、動線も短い。 | 広い設置スペースが必要。コーナーがデッドスペースになりやすい。 |
I型キッチン
シンク、コンロ、調理スペースが一列に並んだ、最もシンプルで基本的なレイアウトです。
費用相場:50万円~120万円
壁付けにするのが一般的で、省スペースで設置できるため、多くの住宅で採用されています。構造がシンプルな分、キッチン本体の価格も他のレイアウトに比べて安く、工事費も抑えやすいのが最大のメリットです。リフォーム費用をできるだけ抑えたい場合や、設置スペースが限られている場合に最適な選択肢と言えます。ただし、間口が長すぎるとシンクとコンロの間の移動距離が長くなり、作業効率が落ちることがあります。
L型キッチン
キッチンをL字型に配置したレイアウトです。
費用相場:70万円~140万円
I型に比べて作業動線が短くなり、シンクとコンロの間の移動が楽になります。作業スペースを広く確保できるのも魅力です。ただし、コーナー部分がデッドスペースになりやすく、収納に工夫が必要です。また、I型キッチンよりも本体価格、設置費用ともに高くなる傾向があります。調理中の移動を少なくし、効率的に作業したい方におすすめです。
対面キッチン(ペニンシュラ・アイランド)
リビングやダイニングと向かい合う形で設置する、人気の高いレイアウトです。
ペニンシュラキッチンは、キッチンの左右どちらかが壁に接している半島(Peninsula)のような形状です。
費用相場:80万円~160万円
アイランドキッチンは、キッチンが壁から完全に独立した島(Island)のような形状です。
費用相場:120万円~250万円以上
どちらも開放感があり、料理をしながら家族とのコミュニケーションが取りやすいのが最大の魅力です。しかし、設置には広いスペースが必要で、特にアイランドキッチンは四方に通路を確保しなければなりません。また、壁付けからのレイアウト変更では大規模な設備工事が必要となるため、費用は高額になります。油はねや煙、臭いがリビング側に広がりやすいというデメリットもあるため、高性能なレンジフードの選定が重要になります。
II型キッチン
シンクのあるカウンターと、コンロのあるカウンターを、2列に平行に並べたレイアウトです。セパレートキッチンとも呼ばれます。
費用相場:100万円~200万円
作業スペースと収納スペースをそれぞれ広く確保できるのが特徴です。シンクで食材を洗い、振り返ってコンロで加熱するといった短い動線で作業ができます。複数人での調理もしやすいですが、2つのカウンター間の通路幅が狭すぎると作業しにくく、広すぎると移動が大変になるため、適切な通路幅(90cm~120cm程度)の確保が重要です。
U型キッチン
キッチンをU字型に配置したレイアウトです。
費用相場:120万円~220万円
3方向をカウンターに囲まれるため、収納スペースが非常に豊富で、作業スペースも広く確保できます。体の向きを変えるだけでシンク、コンロ、調理台に手が届き、作業動線も非常に効率的です。本格的に料理を楽しみたい方には理想的なレイアウトですが、設置にはかなりの広さが必要で、費用も最も高価になる傾向があります。また、コーナー部分が2箇所できるため、収納の工夫が求められます。
【工事内容別】キッチンリフォームの費用相場
リフォーム費用は、キッチンのレイアウトだけでなく、工事の規模によっても大きく変わります。ここでは、代表的な4つの工事パターン別に、費用の目安を見ていきましょう。
キッチン本体のみを交換する場合
費用相場:50万円~80万円
現在のキッチンの位置やレイアウトは変えずに、古いキッチンを新しいシステムキッチンに入れ替えるだけの、最もシンプルなリフォームです。給排水管やガス管、電気配線の移設が不要なため、工事費を大幅に抑えることができます。内装も既存のままで、最低限の補修で済ませるケースです。
「とにかくコストを抑えてキッチンを新しくしたい」「今のレイアウトに不満はないが、設備が古くなった」という場合に最適なプランです。工期も2~4日程度と短く済みます。ただし、壁や床の汚れや傷みが激しい場合は、キッチンだけが新しくなってしまい、アンバランスな印象になる可能性もあります。
内装も含めてリフォームする場合
費用相場:80万円~120万円
キッチン本体の交換と同時に、壁紙(クロス)の張り替えや床材の張り替え、キッチンパネルの設置など、キッチン空間全体の内装工事を行うパターンです。多くのリフォームがこのケースに該当します。
キッチンを撤去した際にしかできない壁や床の工事を同時に行うことで、効率的に空間全体を一新できます。油汚れや水はねで傷んだ内装もきれいになり、まるで新築のようなキッチン空間が手に入ります。費用は内装工事の範囲や使用する素材によって変動しますが、最もコストパフォーマンスと満足度のバランスが取れたリフォームと言えるでしょう。
キッチンの場所を移動する場合
費用相場:120万円~250万円以上
「壁付けのI型キッチンを、開放的な対面式のペニンシュラキッチンにしたい」「独立していたキッチンをリビングダイニングと一体化させたい」といった、キッチンの位置やレイアウトを大幅に変更するリフォームです。
この場合、キッチン本体の価格や内装工事費に加えて、給排水管、ガス管、電気配線、換気ダクトを新しい場所まで移設・延長するための設備工事費が追加で発生します。床や壁を一度解体して配管・配線を行うため、工事は大規模になり、費用も工期も大幅に増加します。壁を撤去・新設する場合は、さらに費用がかかります。間取りから見直して、理想のLDK空間を実現したい方向けのプランです。
オーダーメイドキッチンを設置する場合
費用相場:200万円~
既製品のシステムキッチンではなく、自分の好みやライフスタイルに合わせて、天板の素材、扉のデザイン、収納の形状、寸法などを自由に設計するのがオーダーメイドキッチンです。
世界に一つだけの、こだわり抜いたキッチンを実現できるのが最大の魅力です。海外製の食洗機やコンロを組み込んだり、特殊な素材を使用したりと、自由度は無限大です。その分、設計料や製作費がかかるため、費用は既製品に比べて高額になります。素材や仕様によっては500万円以上になることもあります。デザイン性やオリジナリティを最優先したい、特別なキッチンを求める方に選ばれています。
注意!追加費用が発生するケース
リフォーム工事では、当初の見積もりには含まれていなかった予期せぬ費用が、工事の途中で発生することがあります。こうした事態を避けるためにも、追加費用が発生しやすいケースを事前に把握しておくことが重要です。
建物の下地補修や補強が必要な場合
古いキッチンを解体して初めて、壁や床、土台の状態が明らかになります。特に築年数が経過した木造住宅では、以下のような問題が見つかることがあります。
- 下地の腐食: 長年の水漏れや湿気により、床の根太(ねだ)や壁の柱が腐食しているケース。
- シロアリ被害: 土台や柱がシロアリによって食害を受けているケース。
これらの問題が発覚した場合、新しいキッチンを設置する前に、腐食した木材の交換やシロアリの駆除・防除、構造の補強といった追加工事が必須となります。安全性に関わる重要な工事ですが、数万円から数十万円の追加費用がかかる可能性があります。
給排水管が劣化している場合
キッチン本体だけでなく、それに接続されている給排水管も経年劣化します。特に古い鉄管が使われている場合、内部にサビが発生して赤水が出たり、詰まりやすくなったり、最悪の場合は水漏れを起こす危険性があります。
工事の際に配管の著しい劣化が見つかった場合は、将来的なトラブルを防ぐために配管の交換(引き直し)を提案されることがあります。これも見積もり外の追加費用となりますが、安心して長く使うためには必要な投資と言えます。
アスベストの撤去が必要な場合
2006年(平成18年)9月1日以前に建築された建物では、壁や天井、床などの建材にアスベスト(石綿)が含まれている可能性があります。アスベストは飛散すると健康被害を引き起こすため、リフォームで解体する際には法律に基づいた厳重な管理と適切な除去作業が必要です。
もし解体する部分にアスベスト含有の疑いがある場合、まずは事前調査(費用:数万円)を行います。含有が確認された場合、専門の業者による除去作業が必要となり、その費用は数十万円から百万円以上になることもあります。これはリフォーム計画全体に大きな影響を与えるため、築年数の古い建物の場合は特に注意が必要です。
(参照:厚生労働省 アスベスト(石綿)に関するQ&A)
マンションの規約による制約がある場合
マンションのリフォームは、戸建てと違って管理規約という独自のルールに従う必要があります。規約によっては、以下のような制約から追加費用が発生したり、希望の工事ができなかったりする場合があります。
- 工事時間の制限: 平日の日中のみなど、工事ができる曜日や時間が制限されている場合、工期が延びて人件費が余分にかかることがあります。
- 床材の遮音規定: リビングの床をフローリングにする場合、「L-45」や「L-40」といった遮音等級が定められていることがほとんどです。この基準を満たす遮音性能の高い床材や下地材を使う必要があり、材料費が高くなることがあります。
- 資材搬入のルール: 共有部分である廊下やエレベーターの養生方法が細かく定められており、そのための養生費用が追加でかかることがあります。
- ガスや電気容量の制限: IHクッキングヒーターを導入したくても、マンション全体の電気容量が足りず、設置できないケースもあります。
マンションリフォームの場合は、契約前に必ず管理規約を確認し、リフォーム会社にも共有しておくことが不可欠です。
キッチンリフォームの費用を安く抑える6つのコツ
理想のキッチンを実現しつつも、費用はできるだけ抑えたいというのが本音でしょう。ここでは、賢くコストダウンするための6つの実践的なコツをご紹介します。
① キッチンのグレードやオプションを見直す
費用に最も大きく影響するのがキッチン本体の価格です。「本当にその機能や素材は必要か?」と一つひとつ見直すことで、数十万円単位でのコストダウンも可能です。
- 扉のグレード: 扉の素材は価格への影響が大きいです。見た目に大きな差がなければ、グレードを一つ下げることを検討しましょう。
- ワークトップ(天板): セラミックやクォーツストーンは高価ですが、人工大理石やステンレスでも十分に機能的でデザイン性の高いものがあります。
- オプション機能: 最新の自動洗浄レンジフードや、海外製の大型食洗機は魅力的ですが、本当に必要か優先順位をつけましょう。例えば、食洗機を付けずにその分を収納に回す、浄水器は後付けできる簡易的なものにする、といった判断も有効です。
ショールームで夢が膨らみがちですが、「あったら便利」と「なくては困る」を冷静に仕分けることが重要です。
② 今のキッチンと同じレイアウトにする
前述の通り、キッチンの位置やレイアウトの変更は、給排水管や電気配線の移設工事が伴うため、費用が高額になる最大の要因です。現在のキッチンの配置に大きな不満がないのであれば、同じ場所に新しいキッチンを設置する「入れ替え」リフォームに徹するのが最も効果的なコスト削減策です。これにより、数十万円の工事費を節約できる可能性があります。
③ 補助金や助成金を活用する
国や地方自治体は、省エネ性能の向上やバリアフリー化、子育て支援などを目的としたリフォームに対して、様々な補助金・助成金制度を用意しています。
例えば、節湯水栓やビルトイン食洗機の導入、断熱性の向上などが対象となる補助金があります。申請には条件や期間があるため、リフォームを計画する段階で、利用できる制度がないかリフォーム会社に相談したり、自治体のホームページで確認したりすることをおすすめします。数万円から数十万円の補助が受けられることもあり、大きな助けになります。
④ 複数のリフォーム会社から相見積もりを取る
同じ工事内容でも、リフォーム会社によって見積もり金額は異なります。適正な価格を知り、信頼できる会社を選ぶためには、最低でも3社から相見積もりを取ることが不可欠です。
単に総額の安さだけで比較するのではなく、見積書の内訳が詳細で分かりやすいか、不要な工事が含まれていないか、担当者の提案力や対応は誠実か、といった点も総合的に判断しましょう。他社の見積もりがあることで、価格交渉の材料になる場合もあります。
⑤ 設備を施主支給する
コンロや水栓、レンジフードといった設備機器を、リフォーム会社を通さずに自分でインターネットなどで購入し、取り付けだけを依頼する方法を「施主支給」といいます。中間マージンがかからないため、同じ製品でも安く手に入れられる可能性があります。
ただし、注意点も多くあります。
- リフォーム会社によっては施主支給を認めていない、あるいは別途手数料がかかる場合があります。
- 製品の保証は購入店(施主)の責任となり、取り付け後の不具合が製品の問題か工事の問題か、責任の所在が曖昧になるリスクがあります。
- 製品の納期管理も自分で行う必要があります。
メリット・デメリットをよく理解し、必ず事前にリフォーム会社に施主支給が可能か、その場合の条件などを確認してから進めましょう。
⑥ リフォーム会社の得意分野を見極める
リフォーム会社にはそれぞれ得意分野があります。デザイン性の高いリノベーションが得意な会社、水回り専門で大量仕入れによりコストを抑えている会社、地域密着で細やかな対応が売りの工務店など様々です。
自分のやりたいリフォーム内容と、会社の得意分野が合致しているほど、質の高い工事を適正価格で実現できる可能性が高まります。例えば、シンプルなキッチン交換であれば水回り専門の会社、間取り変更を含む大規模なリフォームなら設計力のある会社、といったように、会社のウェブサイトで施工事例などを確認し、自分の希望に合った会社を選びましょう。
キッチンリフォームで使える補助金・助成金制度
キッチンリフォームは決して安い買い物ではありません。しかし、特定の条件を満たすことで、国や地方自治体が実施する補助金・助成金制度を活用できる場合があります。これらの制度を賢く利用すれば、費用の負担を大きく軽減できます。
国が実施している補助金制度
国の補助金は、省エネルギー化や住宅の長寿命化、子育て支援といった政策目的に沿ったリフォームを対象としており、予算規模が大きいのが特徴です。年度によって制度の内容が変わるため、常に最新の情報を確認することが重要です。
子育てエコホーム支援事業
2024年度の主要な住宅支援事業の一つです。子育て世帯・若者夫婦世帯を対象とした新築購入支援がメインですが、全世帯を対象としたリフォーム支援も含まれています。
- 対象となる工事(キッチン関連):
- ビルトイン食洗機の設置: 21,000円/戸
- 掃除しやすいレンジフードへの交換: 13,000円/戸
- 節湯水栓への交換: 5,000円/戸
- 補助額: 上記の必須工事のいずれかを含む、複数の対象工事の補助額合計が5万円以上の場合に申請可能です。補助上限額は、世帯の属性や既存住宅の購入の有無によって20万円~60万円と定められています。
- 注意点: 予算がなくなり次第終了となります。また、申請はリフォーム会社などの登録事業者が行うため、この制度を利用したい場合は契約前に事業者に対応可能か確認が必要です。
(参照:国土交通省 子育てエコホーム支援事業 公式サイト)
長期優良住宅化リフォーム推進事業
住宅の性能を向上させ、長く良好な状態で使用できる「長期優良住宅」を目指すリフォームを支援する制度です。
- 対象となる工事: 住宅の劣化対策、耐震性向上、省エネルギー対策など、住宅全体の性能を向上させる工事が必須となります。キッチンのリフォームは、これらの必須工事と併せて行う場合に補助対象となることがあります。
- 補助額: 工事費用の3分の1を上限に、リフォーム後の住宅性能に応じて1戸あたり最大250万円(条件による)と、補助額が大きいのが特徴です。
- 注意点: 補助を受けるには、工事前にインスペクション(住宅診断)を行うなど、専門的な要件が多く、手続きも複雑です。大規模なリノベーションを検討している方向けの制度と言えます。
(参照:国立研究開発法人建築研究所 長期優良住宅化リフォーム事業に関する技術的審査業務 公式サイト)
地方自治体が実施している補助金制度
お住まいの市区町村が独自に実施しているリフォーム補助金制度も数多く存在します。国の制度との併用が可能な場合もあります。
- 制度の例:
- 耐震改修補助: 地震対策として住宅の耐震性を高めるリフォームへの補助。
- 三世代同居・近居支援: 親・子・孫の三世代が同居または近くに住むための住宅リフォームへの補助。
- 省エネ設備導入補助: 高効率給湯器や断熱窓などの導入に対する補助。キッチンのリフォームと直接関連は薄いですが、同時に行うことで対象となる場合があります。
- 地域材利用促進: 地元の木材を使用してリフォームする場合の補助。
これらの制度は自治体によって内容、予算、申請期間が大きく異なります。「(お住まいの市区町村名) リフォーム 補助金」などのキーワードで検索したり、役所の担当窓口に問い合わせたりして、利用できる制度がないか確認してみましょう。
介護保険やその他減税制度
- 介護保険の住宅改修費支給:
要支援・要介護認定を受けている方が、自宅で安全に暮らすために行うバリアフリーリフォームが対象です。キッチンの場合、車椅子でも使いやすい高さへの調整や、安全な通路の確保、レバー式水栓への交換などが該当する可能性があります。支給限度基準額20万円の範囲内で、費用の7~9割(所得による)が支給されます。利用にはケアマネージャーへの相談と事前の申請が必要です。 - リフォーム促進税制(減税制度):
特定の条件を満たすリフォームを行った場合、所得税や固定資産税が減額される制度です。- 住宅ローン減税: 10年以上の住宅ローンを利用してリフォームした場合、年末のローン残高の0.7%が最大13年間、所得税から控除されます。
- 特定の改修工事に対する所得税額の特別控除: ローンを利用しない場合でも、耐震、バリアフリー、省エネ、三世代同居、長期優良住宅化リフォームなどを行った場合に、工事費の一部がその年の所得税から控除される制度があります。
これらの税制優遇は、確定申告が必要です。適用条件が細かく定められているため、リフォーム会社や税務署に確認することをおすすめします。
後悔しないために!キッチンリフォームの注意点
高額な費用をかけて行うキッチンリフォームだからこそ、絶対に失敗したくないものです。ここでは、完成後に「こんなはずじゃなかった…」と後悔しないために、計画段階で押さえておきたい6つの重要な注意点を解説します。
ショールームで実物を確認する
カタログやウェブサイトの写真だけでキッチンを決めてしまうのは危険です。色味や質感は、照明やモニター環境によって実物と大きく異なって見えることがあります。また、収納の使い勝手や扉の開閉のスムーズさ、ワークトップの高さなどは、実際に触れて動かしてみないと分かりません。
面倒でも必ずメーカーのショールームに足を運び、実物を見て、触れて、体感しましょう。アドバイザーに相談すれば、自分たちのライフスタイルに合ったプランを提案してもらえます。複数のメーカーのショールームを回って比較検討することで、より納得のいく選択ができます。
身長に合ったキッチンの高さを選ぶ
毎日使うキッチンだからこそ、ワークトップの高さは非常に重要です。高さが合わないと、腰痛や肩こりの原因になり、調理が苦痛になってしまいます。
一般的に、使いやすいキッチンの高さの目安は「身長(cm) ÷ 2 + 5cm」と言われています。例えば、身長160cmの方なら「160 ÷ 2 + 5 = 85cm」が目安となります。しかし、これはあくまで一般的な計算式です。腕の長さや姿勢、スリッパを履くかどうかなどでも最適な高さは変わります。ショールームで実際に立ってみて、包丁で切る、フライパンを振るといった動作をシミュレーションし、少し肘が曲がるくらいの自然な姿勢で作業できる高さを選ぶのが最も確実です。
作業動線(ワークトライアングル)を考慮する
キッチンの作業効率を左右するのが、「ワークトライアングル」と呼ばれる動線です。これは、「シンク(洗う場所)」「コンロ(加熱する場所)」「冷蔵庫(保存する場所)」の3点を結んだ三角形のことを指します。
この三角形の3辺の合計が360cm~660cmの範囲に収まるのが、移動しやすく効率的に作業できる理想的なバランスとされています。この三角形が大きすぎると移動距離が長くて疲れ、小さすぎると作業スペースが窮屈になります。リフォームプランを考える際には、冷蔵庫の配置も忘れずに考慮し、このワークトライアングルが適切に確保できているかを確認しましょう。
収納スペースやゴミ箱の置き場所を確保する
デザインにばかり気を取られ、意外と見落としがちなのが収納計画とゴミ箱の置き場所です。
- 収納: 新しいキッチンを選ぶ際には、今持っている調理器具や食器、ストック食材などがすべて収まるか、どこに何を収納するかを具体的にシミュレーションしましょう。吊戸棚は手が届きにくいこともあるため、出し入れのしやすいスライド式フロアキャビネットやパントリー(食品庫)の設置も検討すると良いでしょう。
- ゴミ箱: キッチンの使い勝手を大きく左右するのがゴミ箱の配置です。分別が複雑化している現在、複数のゴミ箱を置くスペースが必要です。見た目をスッキリさせたいなら、キャビネットの一部をオープンスペースにしてゴミ箱を収納するプランも人気です。設計段階でゴミ箱のサイズと数を伝え、置き場所を確保しておくことが後悔しないための重要なポイントです。
コンセントの数と位置を確認する
現代のキッチンでは、炊飯器、電子レンジ、電気ケトル、コーヒーメーカー、ミキサーなど、多くの家電製品を使用します。いざ使い始めてから「コンセントが足りない!」「使いにくい場所にある!」と後悔するケースは非常に多いです。
リフォーム計画の段階で、現在使っている家電、将来的に使いたい家電をすべてリストアップし、必要なコンセントの数を割り出しましょう。設置場所も重要です。調理台の上で使うミキサー用、カウンターの端で使うコーヒーメーカー用など、実際の作業をイメージしながら、使いやすい高さと位置に複数設置することをおすすめします。
アフターサービスや保証内容を確認する
リフォームは、工事が終わればすべて完了というわけではありません。万が一、工事後に水漏れや設備の不具合などが発生した場合、迅速に対応してもらえるかが重要です。
契約前に、リフォーム会社の保証制度(工事保証)と、キッチンメーカーの保証(製品保証)の内容と期間を必ず確認しましょう。保証書を発行してくれるか、トラブル時の連絡先はどこか、定期的な点検はあるかなど、アフターサービスの体制がしっかりしている会社を選ぶと、長く安心してキッチンを使い続けることができます。
キッチンリフォームの基本的な流れ5ステップ
キッチンリフォームを思い立ってから完成するまで、どのようなステップで進んでいくのでしょうか。全体像を把握しておくことで、スムーズに計画を進めることができます。
① 情報収集とリフォーム会社の選定
まずは、理想のキッチンのイメージを固めることから始めます。インターネットや雑誌で好きなデザインやレイアウトの事例を探したり、メーカーのショールームを訪れて実物を見たりして、やりたいことの優先順位を整理しましょう。
同時に、リフォームを依頼する会社を探します。ウェブサイトで施工事例や会社の強みを確認し、口コミなども参考にしながら、相談したい会社を3~4社に絞り込みます。
② 現地調査と見積もり依頼
候補となるリフォーム会社に連絡を取り、現地調査を依頼します。担当者が実際に自宅を訪れ、キッチンの寸法や既存の設備の状況、搬入経路などを確認します。このとき、事前に整理しておいた要望や予算を具体的に伝え、悩みや不安も相談しましょう。
現地調査の結果と要望に基づき、各社からプランと見積書が提出されます。この段階が、リフォーム会社を見極める最も重要なステップです。
③ プラン決定と契約
提出された複数の見積書とプランを比較検討します。単に金額の安さだけでなく、プランの内容が要望を満たしているか、見積もりの内訳は明確か、担当者の対応は信頼できるかなどを総合的に判断し、依頼する1社を決定します。
プランの詳細な仕様(キッチンの色や素材、オプションなど)を最終決定し、工事内容、金額、工期、支払い条件、保証内容などを明記した「工事請負契約書」を取り交わします。契約内容は隅々まで確認し、不明な点があれば必ず質問しましょう。
④ リフォーム工事の開始
契約後、キッチン本体や資材の発注が行われます。工事開始前には、リフォーム会社の担当者が近隣住民へ挨拶回りを行うのが一般的です。
工事当日は、まず既存のキッチンや内装を傷つけないように、床や壁、搬入経路を養生します。その後、古いキッチンの解体・撤去、配管・配線工事、内装工事、新しいキッチンの設置・接続といった流れで工事が進められます。
⑤ 完成と引き渡し
すべての工事が完了したら、リフォーム会社の担当者と一緒に仕上がりをチェックします。扉の開閉はスムーズか、傷や汚れはないか、水漏れはないか、設備は正常に作動するかなど、細かく確認しましょう。
問題がなければ、設備の取扱説明書や保証書を受け取り、引き渡しとなります。残金の支払いを行い、リフォームは完了です。
キッチンリフォームにかかる期間・日数の目安
リフォーム中はキッチンが使えなくなるため、工事にどれくらいの期間がかかるのかは事前に把握しておきたい重要なポイントです。工事の規模によって期間は大きく異なります。
キッチンの交換のみの場合
工事期間の目安:2日~4日
現在のキッチンのレイアウトを変更せず、古いキッチンを撤去して新しいシステムキッチンを設置するだけの最もシンプルな工事の場合、期間は比較的短く済みます。
- 1日目: 養生、既存キッチンの解体・撤去、給排水管・ガス管の準備
- 2日目: 新しいキッチンの搬入・組み立て・設置、設備機器の接続
- 3日目以降: 壁のキッチンパネル施工や床のクッションフロア張り替えなど、簡単な内装工事が加わる場合は、さらに1~2日かかることがあります。
この期間中はキッチンで調理や洗い物が一切できなくなるため、外食や中食(お弁当、惣菜など)、電子レンジで温めるだけの食事などで対応できるよう、事前に準備しておく必要があります。
レイアウト変更や内装工事も行う場合
工事期間の目安:1週間~2週間、場合によってはそれ以上
壁付けキッチンを対面キッチンにするなど、キッチンの位置を移動するリフォームや、周辺の内装を広範囲にわたって変更する場合は、工期が長くなります。
- 壁の解体・造作: 1日~3日
- 床の解体・下地作り: 1日~2日
- 給排水・ガス・電気の配管・配線工事: 1日~3日
- 内装工事(床張り、壁紙貼りなど): 2日~4日
- キッチン設置: 1日~2日
これらの工程が組み合わさるため、全体で1週間から2週間程度かかるのが一般的です。さらに、間取り変更を伴う大規模なリノベーションの場合は、1ヶ月以上かかることも珍しくありません。
リフォーム会社との打ち合わせの際に、詳細な工程表を提示してもらい、いつからいつまでキッチンが使えなくなるのかを正確に把握しておくことが、工事期間中の生活の負担を減らすために重要です。
信頼できるリフォーム会社の選び方
キッチンリフォームの成功は、良いパートナーとなるリフォーム会社選びにかかっていると言っても過言ではありません。数多くの会社の中から、信頼できる一社を見つけるためのポイントをご紹介します。
- 必要な許認可や資格を保有しているか
リフォーム工事を行うのに必須の資格は多くありませんが、会社の信頼性を測る指標はあります。500万円以上の工事を請け負う場合は「建設業許可」が必要です。また、建築士や建築施工管理技士といった国家資格を持つスタッフが在籍しているか、リフォーム関連の団体に加盟しているかも一つの目安になります。 - リフォーム瑕疵(かし)保険に加入しているか
リフォーム瑕疵保険は、工事中や工事後に欠陥が見つかった場合に、その補修費用を保険でカバーできる制度です。万が一リフォーム会社が倒産してしまっても、保険法人から直接保険金が支払われます。この保険に登録している事業者は、一定の基準を満たしていることの証しでもあり、施主にとっては大きな安心材料となります。 - 希望する工事の施工実績が豊富か
会社のウェブサイトなどで施工事例を確認し、自分がやりたいリフォーム(例:アイランドキッチンの設置、マンションリフォームなど)の実績が豊富かどうかをチェックしましょう。実績が多ければ、それだけノウハウが蓄積されており、様々な状況に的確に対応できる提案力や技術力が期待できます。 - 見積書の内訳が詳細で分かりやすいか
信頼できる会社の見積書は、「〇〇工事一式」といった曖昧な表現が少なく、項目ごとに単価や数量が細かく記載されています。何にいくらかかっているのかが明確で、素人でも内容を理解しやすい見積書を提出してくれる会社を選びましょう。不明な点について質問した際に、丁寧に説明してくれるかも重要な判断基準です。 - 担当者との相性が良く、コミュニケーションが円滑か
リフォームは担当者と二人三脚で進めていくプロジェクトです。こちらの要望を親身になって聞いてくれるか、専門用語ばかりでなく分かりやすい言葉で説明してくれるか、メリットだけでなくデメリットもきちんと伝えてくれるかなど、コミュニケーションの取りやすさは非常に重要です。話しやすく、信頼できると感じる担当者であれば、工事中の不安も少なく、満足のいく結果につながりやすいでしょう。
これらのポイントを踏まえ、複数の会社と実際に会って話をし、総合的に比較検討して、最も信頼できるパートナーを見つけることが成功への近道です。
おすすめのキッチンメーカー3選
日本国内には多くのキッチンメーカーがあり、それぞれに特徴や強みがあります。ここでは、特に人気が高く、多くのリフォームで選ばれている代表的な3つのメーカーをご紹介します。
① LIXIL(リクシル)
トイレや窓、建具など幅広い住宅設備・建材を扱う総合メーカーです。そのスケールメリットを活かし、デザイン、機能、価格のバランスが取れた豊富なラインナップを揃えています。
- 特徴:
- セラミックトップ: 最上位シリーズ「リシェルSI」で選べるセラミック製のワークトップは、熱や傷、汚れに非常に強く、焼き物ならではの高級感のある質感が人気です。
- Wサポートシンク: 2段のレーンとプレート・水切りカゴを組み合わせることで、シンクを作業スペースとしても活用できる独自の機能です。
- らくパッと収納: 軽く引くだけで扉が大きく開き、中のものが取り出しやすい傾斜した収納。テコの原理を応用しており、使い勝手の良さに定評があります。
- 主なシリーズ:
- リシェルSI: 機能性とデザイン性を追求したハイグレードモデル。
- ノクト: インテリアに調和するデザイン性を重視したミドルグレードモデル。
- シエラS: 基本性能をしっかり押さえた、コストパフォーマンスに優れた普及価格帯モデル。
(参照:株式会社LIXIL 公式サイト)
② Panasonic(パナソニック)
家電メーカーとしての強みを活かし、先進的な機能や設備連携に優れたキッチンを提供しています。IHクッキングヒーターや食洗機、レンジフードなど、使い勝手を追求した独自機能が魅力です。
- 特徴:
- トリプルワイドIH/ガス: 横一列に3つのコンロを配置した独自のレイアウト。手前にスペースができるため、調理や盛り付けがしやすく、複数人での作業も快適です。
- ほっとくリーンフード: 10年間ファンのお手入れが不要なレンジフード。油汚れを自動で吹き飛ばす機能で、面倒な掃除の手間を大幅に削減します。
- PaPaPaシンク: スムーズに調理や片付けができるよう、洗剤ポケットやスラくるネットなど、細やかな工夫が施されたシンクです。
- 主なシリーズ:
- L-CLASS(エルクラス): 素材やデザインを自由に選べる最高級のオーダー対応キッチン。
- ラクシーナ: 調理のしやすさ、片付けやすさを追求した人気のミドルグレードモデル。
- V-style: シンプルなデザインと基本機能を備えた、価格を抑えたモデル。
(参照:パナソニック株式会社 公式サイト)
③ Cleanup(クリナップ)
日本で初めてシステムキッチンを開発した専門メーカーとして知られています。長年のノウハウと、ステンレス加工技術へのこだわりが強みです。
- 特徴:
- ステンレスキャビネット: 多くのシリーズで、キャビネットの骨組み(構造体)にステンレスを採用。湿気やサビ、カビに強く、臭いもつきにくいため、清潔で長持ちするのが最大の魅力です。
- 流レールシンク: シンク内のゴミや汚れが、水を使うたびに自然に排水口に向かって流れるように設計されており、シンクをきれいに保ちやすいです。
- 洗エールレンジフード: ボタン一つでフィルターとファンをまるごと自動洗浄してくれる機能。お湯を入れてボタンを押すだけで、約2ヶ月に1度の洗浄で済みます。
- 主なシリーズ:
- CENTRO(セントロ): 最高級の素材と機能を備えたフラッグシップモデル。
- STEDIA(ステディア): ステンレスキャビネットを標準搭載した、デザイン性と機能性を両立する中核モデル。
- rakuera(ラクエラ): 家具のようなデザイン性と、選びやすさを重視した価格帯のモデル。
(参照:クリナップ株式会社 公式サイト)
これらのメーカーはそれぞれに個性があり、得意とする機能も異なります。ショールームで実際に比較しながら、ご自身のライフスタイルや価値観に最も合うキッチンを見つけてみてください。