横浜は、日本有数の人口を誇る国際都市であり、洗練された街並みと活気ある商業エリアが共存する魅力的な場所です。ビジネスと観光の両面で高いポテンシャルを持つこの街で、自身の店舗を開業したいと考える方は少なくありません。しかし、成功のためには、綿密な計画と戦略的な物件探しが不可欠です。
この記事では、横浜で店舗物件を探している方に向けて、開業前に知っておくべき基礎知識から、人気エリアの賃料相場、具体的な物件の探し方、契約時の注意点までを網羅的に解説します。初期費用を抑えるための居抜き物件の活用法や、利用できる補助金・融資制度についても触れていきますので、ぜひ最後までご覧いただき、理想の店舗探しの第一歩を踏み出してください。
目次
横浜で店舗物件を探す前に知っておきたい基礎知識

横浜での店舗開業を成功させるためには、まずこの街が持つポテンシャルと特性を深く理解することが重要です。横浜市の全体像を把握し、なぜ多くの起業家がこの地を選ぶのか、その魅力を知ることから始めましょう。ここでは、物件探しを始める前の土台となる基礎知識を詳しく解説します。
横浜市の特徴と商業エリアの概要
横浜市は、人口約377万人(2024年5月1日時点)を誇る、日本最大の市町村です。東京都心へのアクセスも良好でありながら、独自の文化と歴史を育んできた国際的な港湾都市として、唯一無二の存在感を放っています。(参照:横浜市 毎月の人口)
地理的には、東京湾に面した広大な港を中心に、西側には丘陵地帯が広がり、多様な地形を持っています。この多様性が、エリアごとに異なる街の表情を生み出しています。市内にはJR、東急、京急、相鉄、横浜市営地下鉄など多数の鉄道路線が張り巡らされており、市民や来訪者の移動を支える交通インフラが非常に発達しているのも大きな特徴です。
横浜の商業エリアは、それぞれが異なる個性と魅力を持っています。
- 横浜駅周辺: 市内最大のターミナル駅を擁し、百貨店や大型商業施設が集積する中心地です。ビジネスパーソンから買い物客、観光客まで、常に多くの人で賑わっています。
- みなとみらい21地区: 近代的な高層ビル群と美しいウォーターフロントが融合した、横浜のシンボルともいえるエリア。オフィス、商業施設、ホテル、文化施設が計画的に配置され、洗練された雰囲気を持ちます。
- 関内・伊勢佐木町エリア: 横浜市庁舎や神奈川県庁が立地する行政の中心地であり、歴史的な建造物も多く残ります。一方、伊勢佐木町には活気あふれる商店街が広がり、新旧が交差する独特の魅力があります。
- 元町・中華街エリア: 元町はハイセンスなブティックが並ぶショッピングストリート、中華街は世界最大級のチャイナタウンとして、国内外から多くの観光客を惹きつけるエリアです。
- 新横浜エリア: 東海道新幹線の停車駅があり、日本の大動脈と直結する横浜の玄関口です。駅周辺にはオフィスビルやホテル、横浜アリーナや日産スタジアムといった大規模集客施設が立地しています。
これらのエリアは、ターゲットとする顧客層や提供したいサービスのコンセプトによって、最適な選択肢が異なります。自身の事業計画と各エリアの特性を照らし合わせることが、横浜での店舗探しにおける最初の重要なステップとなります。
横浜で店舗を開業する魅力とは
多くの人々が横浜での開業を目指すのには、明確な理由があります。その魅力は、単に人口が多いというだけではありません。ビジネスを展開する上で有利な要素が数多く存在します。
1. 圧倒的な集客力と多様なターゲット層
横浜市の昼間人口は、市外からの通勤・通学者を含めると非常に多くなります。これに加えて、年間を通じて国内外から多くの観光客が訪れるため、安定した集客基盤があるのが最大の魅力です。さらに重要なのは、その客層の多様性です。
例えば、横浜駅周辺やみなとみらいエリアでは、平日はビジネスパーソン、休日はファミリーやカップルといったように、曜日や時間帯によって異なるターゲットにアプローチできます。元町・中華街は観光客が中心であり、関内はオフィスワーカーと地元住民が混在しています。このように、エリアを選ぶことで、狙うべきターゲット層を明確に設定しやすい環境が整っています。自身の店舗のコンセプトに合致した顧客層が集まる場所を見つけることで、効率的なマーケティングと安定した経営が期待できます。
2. 高いブランドイメージと情報発信力
「横浜」という地名には、「おしゃれ」「国際的」「先進的」「歴史がある」といったポジティブなブランドイメージが定着しています。この都市ブランドは、店舗の価値や信頼性を高める上で非常に強力な武器になります。例えば、「横浜元町のカフェ」や「みなとみらいのレストラン」といっただけで、顧客は一定の品質や雰囲気を期待します。
また、横浜はメディアに取り上げられる機会も多く、雑誌やテレビ、Webメディア、SNSなどで常に新しい情報が発信されています。魅力的な店舗を開業すれば、こうしたメディアの力を借りて、自然な形で情報が拡散していく可能性も秘めています。これは、広告宣伝費を抑えながら認知度を高める上で大きなアドバンテージとなるでしょう。
3. 充実したビジネス支援体制
横浜市は、創業を志す人々を支援するための様々な施策を用意しています。後述する「横浜市創業支援融資」をはじめとする金融支援や、経営に関する相談窓口、創業者向けのセミナーなどが充実しています。
例えば、横浜市経済局が運営する「横浜市中小企業支援センター(IDEC YOKOHAMA)」では、専門家による経営相談や事業計画作成のサポートを受けることができます。こうした公的な支援をうまく活用することで、開業時の不安を軽減し、スムーズなスタートを切ることが可能になります。
このように、横浜は単に人が集まる場所というだけでなく、事業を成長させるための土壌が整った都市であるといえます。これらの魅力を最大限に活かすためにも、まずは市の特徴やエリアの個性を深く理解し、自身のビジネスに最適な場所を見つけ出すことが成功への第一歩となるのです。
横浜の店舗物件における賃料相場
店舗物件を探す上で、最も気になる要素の一つが「賃料」です。横浜市はエリアによって街の特性が大きく異なるため、賃料相場も場所によってかなりの差があります。ここでは、横浜市全体の平均的な賃料と、主要エリアごとのより詳しい相場観について解説します。これらの数値を把握することで、事業計画における資金計画をより現実的なものにできます。
横浜市全体の平均賃料(坪単価)
店舗物件の賃料は、一般的に「坪単価」で示されることが多くあります。坪単価とは、1坪(約3.3平方メートル)あたりの月額賃料のことです。物件の賃料を広さで比較するための共通の指標となります。
横浜市全体の店舗物件の賃料相場を調査すると、平均坪単価は概ね15,000円~25,000円前後がひとつの目安となります。ただし、これはあくまで市全体の平均値であり、実際には物件の条件によって大きく変動します。
例えば、以下のような要因が賃料に大きく影響します。
- 立地: 駅からの距離、人通りの多さ、周辺の商業施設の状況など。
- 階層: 1階の路面店は最も高く、2階以上の空中階や地下階は比較的安くなる傾向があります。
- 物件の状態: 新築か中古か、内装が整っている居抜き物件か、何もないスケルトン物件か。
- 視認性: 通りからの見えやすさ、間口の広さなど。
特に、横浜駅やみなとみらいといった人気商業エリアの1階路面店となると、坪単価が50,000円を超えることも珍しくありません。一方で、少し駅から離れたり、空中階の物件を探したりすれば、坪単価10,000円以下の物件が見つかることもあります。
事業計画を立てる際には、この平均値を参考にしつつも、希望するエリアや物件の条件に合わせて、より具体的な相場を調べていくことが不可欠です。不動産情報サイトなどで希望条件を入力し、複数の物件の坪単価を比較検討してみましょう。
エリア別の詳しい賃料相場
次に、主要な商業エリアごとの賃料相場を詳しく見ていきましょう。ここでは、特に人気が高く、店舗出店の候補となりやすいエリアを取り上げ、その特徴と賃料水準を比較します。
| エリア名 | 特徴 | 賃料相場(坪単価)の目安 | 主なターゲット層 |
|---|---|---|---|
| 横浜駅周辺 | 市内最大のターミナル駅。商業・ビジネスの中心地で集客力は圧倒的。 | 30,000円~80,000円 | ビジネス層、買い物客、学生、観光客 |
| みなとみらい | 近代的な街並み。大型商業施設やオフィスビルが集積。 | 25,000円~70,000円 | 観光客、ファミリー層、高感度な若者 |
| 関内・伊勢佐木町 | 行政の中心地と下町情緒が共存。地元密着型とオフィス需要。 | 15,000円~40,000円 | オフィスワーカー、地元住民、シニア層 |
| 元町・中華街 | 観光地として絶大な人気。元町はファッション、中華街は飲食。 | 20,000円~60,000円 | 観光客(国内外)、若者、カップル |
| 新横浜 | 新幹線の玄関口。ビジネス・イベント需要が中心。 | 18,000円~50,000円 | ビジネスパーソン、出張者、イベント参加者 |
※上記の賃料相場は、各エリアの1階路面店を想定した大まかな目安です。物件の個別条件により大きく変動します。
横浜駅周辺は、言うまでもなく市内で最も賃料相場が高いエリアです。特に西口のメインストリート沿いや、東口のポルタ地下街に面した物件などは、坪単価が10万円近くになることもあります。しかし、その分、平日休日を問わず絶大な人通りが期待できます。
みなとみらいエリアも横浜駅に次いで賃料が高い水準にあります。ランドマークプラザやクイーンズスクエアといった大型商業施設内のテナントが中心となるため、個別の路面店は少なめです。施設のブランド力や集客力を活用できるメリットがあります。
関内・伊勢佐木町エリアは、横浜中心部の中では比較的リーズナブルな物件が見つかりやすいエリアです。特に伊勢佐木モールから一本入った通りや、空中階の物件には掘り出し物があるかもしれません。オフィスワーカー向けのランチやディナー、地元住民向けのサービス業などに向いています。
元町・中華街エリアは、通りの特性によって賃料が大きく異なります。元町ショッピングストリートや中華街大通りに面した1階店舗は非常に高額ですが、一本路地を入るだけで賃料が大きく下がることがあります。観光客の流れをどう掴むかが鍵となります。
新横浜エリアは、駅周辺のオフィスビルやホテルに近い立地は需要が高く、賃料も高めですが、少し離れると手頃な物件も出てきます。平日のビジネスランチ需要や、週末のイベント開催時の集客が見込めるのが特徴です。
重要なのは、賃料の高さだけで物件の良し悪しを判断しないことです。賃料が高くても、それに見合う売上が期待できる立地であれば、それは「良い物件」と言えます。逆に、賃料が安くても、ターゲット顧客が全くいない場所では事業の成功は難しいでしょう。自社の事業計画と損益分岐点をしっかりと計算し、支払える家賃の上限を定めた上で、最適なエリアと物件を探すことが成功への道筋です。
【エリア別】横浜の人気商業エリア5選
横浜で店舗を開業するにあたり、どのエリアを選ぶかは事業の成否を左右する最も重要な決断の一つです。ここでは、特に人気が高く、それぞれに異なる魅力を持つ5つの商業エリアをピックアップし、その特徴、ターゲット層、賃料相場をさらに詳しく掘り下げていきます。
① 横浜駅エリア
特徴とターゲット層
横浜駅は、JR各線、東急東横線、京急本線、相鉄本線、横浜市営地下鉄ブルーライン、みなとみらい線の6社11路線が乗り入れる、日本有数の巨大ターミナル駅です。一日あたりの乗降客数は200万人を超え、その集客力は横浜市内でも群を抜いています。
駅周辺は、西口と東口で大きく様相が異なります。
- 西口: 高島屋や相鉄ジョイナスといった百貨店・ファッションビルが集積し、若者や買い物客で常に賑わっています。飲食店街も充実しており、昼夜を問わず活気があります。近年再開発が進み、新しい商業施設も誕生しています。
- 東口: そごう、マルイシティ横浜、ルミネ横浜といった大型商業施設に加え、横浜ポルタという広大な地下街が広がっています。みなとみらいエリアへの玄関口でもあり、洗練された雰囲気を持っています。
ターゲット層は非常に幅広く、ビジネスパーソン、学生、ファミリー、観光客など、あらゆる層を網羅しています。そのため、アパレル、雑貨、飲食、サービス業など、ほとんどの業態で出店のチャンスがあるエリアと言えます。ただし、競合も非常に多いため、他店との差別化が成功の鍵となります。
賃料相場の目安
横浜駅エリアは、市内で最も賃料相場が高いエリアです。特に、人通りの多いメインストリートに面した1階路面店の場合、坪単価は40,000円~80,000円、場合によっては100,000円を超えることもあります。
駅から少し離れたり、ビルの2階以上の空中階や地下階であれば、坪単価20,000円台の物件が見つかる可能性もありますが、それでも市内の他のエリアに比べると高水準です。高い賃料をカバーできるだけの売上計画が必須となります。
② みなとみらいエリア
特徴とターゲット層
みなとみらい21地区は、1980年代から開発が続く計画都市です。横浜ランドマークタワーやクイーンズスクエア横浜などの超高層ビル群が立ち並び、オフィス、商業施設、ホテル、美術館、コンベンションセンターなどが集積しています。
電線が地中化され、緑も豊かで、近未来的で洗練された美しい街並みが最大の特徴です。海に面したロケーションは開放感があり、観光地としても絶大な人気を誇ります。
主なターゲット層は、観光客、ショッピングを楽しむファミリー層やカップル、そして周辺のオフィスに勤務する高感度なビジネスパーソンです。街全体のブランドイメージが高いため、高級レストラン、ハイブランドのアパレル、コンセプトの明確なカフェやショップなどがマッチします。店舗は大型商業施設内のテナントとして出店するケースがほとんどです。
賃料相場の目安
みなとみらいエリアの賃料も、横浜駅周辺に次いで高い水準です。大型商業施設内のテナントが中心となるため、単純な坪単価だけでなく、売上に応じた歩合賃料が設定されることもあります。目安としては、坪単価30,000円~70,000円程度を見ておくとよいでしょう。
路面店は非常に数が限られており、希少価値が高い分、賃料も高額になります。このエリアで出店するには、施設のコンセプトや客層と自社のブランドが合致しているかが非常に重要です。
③ 関内・伊勢佐木町エリア
特徴とターゲット層
関内駅周辺は、神奈川県庁や横浜市役所などの官公庁が集まる行政の中心地です。横浜スタジアムや馬車道の歴史的建造物などもあり、落ち着いた雰囲気が漂います。平日は周辺のオフィスワーカーで賑わいます。
一方、関内駅から少し歩いた伊勢佐木町は、「イセザキ・モール」として知られる活気ある商店街が中心です。老舗から新しいチェーン店まで多種多様な店舗が軒を連ね、下町情緒と活気が共存するエリアです。
ターゲット層は二極化しており、関内駅周辺はビジネスパーソンが中心ですが、伊勢佐木町は地元住民やシニア層、若者まで幅広く利用しています。そのため、関内ではオフィスワーカー向けのランチや居酒屋、伊勢佐木町では地域密着型の日用品店や大衆的な飲食店、サービス業などに向いています。横浜の中心部でありながら、比較的落ち着いた環境で事業を始めたい場合に適しています。
賃料相場の目安
関内・伊勢佐木町エリアの賃料は、横浜駅やみなとみらいに比べると手頃になります。坪単価の目安は15,000円~40,000円程度です。
馬車道通りや伊勢佐木モールのメインストリート沿いは比較的高めですが、一本路地に入ると賃料は大きく下がります。隠れ家的な飲食店や専門的なサービスを提供する店舗であれば、あえて路地裏の物件を選ぶのも戦略の一つです。コストを抑えつつ中心部で開業したい事業者にとって、魅力的な選択肢が多いエリアと言えるでしょう。
④ 元町・中華街エリア
特徴とターゲット層
元町と中華街は隣接していながら、全く異なる個性を持つエリアです。
- 元町: オリジナルのファッションブランドや輸入家具、おしゃれなカフェが並ぶ、洗練された雰囲気のショッピングストリートです。石畳の通りやガス灯が、ヨーロッパのような雰囲気を醸し出しています。
- 中華街: 日本最大かつ東アジア最大級のチャイナタウン。約600もの店舗がひしめき合い、常に多くの観光客で賑わっています。飲食店のほか、中国雑貨や食材店も豊富です。
ターゲット層は、両エリアともに国内外からの観光客が中心です。元町はファッションやライフスタイルにこだわりのある層、中華街は食や異国文化に関心のある層を惹きつけます。このエリアで成功するには、観光客のニーズを的確に捉え、非日常的な体験を提供することが重要です。
賃料相場の目安
観光地としての価値が高いため、メインストリート沿いの1階路面店は高額です。坪単価の目安は20,000円~60,000円程度ですが、元町ショッピングストリートや中華街大通りに面した一等地では、これを超えることもあります。
ただし、このエリアも路地による賃料の差が大きく、中華街の細い路地や、元町から少し離れたエリアでは、比較的安価な物件も見つかります。特に飲食店の場合、目的来店が見込めるのであれば、必ずしも大通りに面している必要はないかもしれません。
⑤ 新横浜エリア
特徴とターゲット層
新横浜は、東海道新幹線の停車駅として、横浜の、そして首都圏の玄関口としての役割を担っています。駅周辺にはオフィスビルやホテルが林立し、ビジネス街としての性格が強いエリアです。
また、横浜アリーナや日産スタジアム(横浜国際総合競技場)といった大規模集客施設があるのも大きな特徴です。コンサートやスポーツイベントが開催される日には、全国から多くの人が集まります。
主なターゲット層は、出張や会議で訪れるビジネスパーソンと、イベント参加者です。そのため、平日のランチやディナー需要、週末のイベント前後の飲食需要が明確に見込めます。ビジネスホテルも多いため、宿泊者をターゲットにしたサービスも考えられます。駅直結の商業施設「キュービックプラザ新横浜」には、多様な飲食店やショップが入居しています。
賃料相場の目安
賃料相場は横浜中心部に比べるとやや落ち着いており、坪単価の目安は18,000円~50,000円程度です。駅に近いほど、また大通りに面しているほど賃料は高くなります。
オフィスビル内の店舗や、駅から少し歩いた場所にある路面店など、多様な選択肢があります。ビジネス需要とイベント需要という二つの大きな波をどう捉えるかが、このエリアでの成功のポイントとなります。
横浜での店舗物件の探し方5つのステップ

理想の店舗物件に出会うためには、行き当たりばったりで探すのではなく、計画的かつ戦略的に進めることが重要です。ここでは、事業計画の具体化から内見に至るまで、物件探しを5つのステップに分けて具体的に解説します。この流れに沿って進めることで、失敗のリスクを減らし、スムーズに開業準備を進めることができます。
① 事業計画とコンセプトを具体化する
物件探しを始める前に、まず取り組むべき最も重要なステップが「事業計画とコンセプトの具体化」です。どんなに良い立地の物件を見つけても、提供する商品やサービスに魅力がなければ事業は成功しません。 物件はあくまで事業を成功させるための「器」であり、中身である事業計画がしっかりしていなければ、器を活かすことはできません。
具体的には、以下の項目を明確に言語化・数値化しておく必要があります。
- 店舗コンセプト: 誰に(ターゲット顧客)、何を(商品・サービス)、どのように(店舗の雰囲気、接客スタイル)提供するのか。店舗の「軸」となる考え方です。
- (例)「30代の働く女性が、平日の仕事帰りに一人でも気軽に立ち寄れる、野菜中心のヘルシーなデリと自然派ワインを提供する隠れ家的バル」
- ターゲット顧客(ペルソナ): 年齢、性別、職業、ライフスタイル、価値観など、具体的な顧客像を詳細に設定します。このペルソナが、後のエリア選定の重要な基準となります。
- 商品・サービスの詳細と価格設定: 看板メニューや主力サービスは何か。価格はいくらに設定するのか。競合と比較して優位性はあるか。
- 売上目標と損益分岐点: 1日に何人の顧客に来てもらい、客単価はいくらで、月の売上はいくらを目指すのか。そして、利益が出る最低ライン(損益分岐点)はどこか。
- 資金計画: 自己資金はいくらか。融資はいくら必要か。初期費用(物件取得費、内装工事費、設備費など)と運転資金(仕入れ費、人件費、家賃など)にいくら使えるか。
これらの計画が具体的であればあるほど、「どのエリアで」「どのくらいの広さで」「家賃はいくらまで」という物件に求める条件が自ずと明確になります。 この土台が曖昧なまま物件探しを始めると、不動産会社の担当者にうまく希望を伝えられなかったり、見た目の良さだけで物件を決めてしまい、後から「こんなはずではなかった」と後悔することになりかねません。
② エリアとターゲット層を絞り込む
事業計画が固まったら、次はその計画を実現するのに最もふさわしい「エリア」を絞り込んでいきます。ステップ①で設定したターゲット顧客(ペルソナ)が、実際にどこに多く集まるのかを考えるプロセスです。
例えば、
- ターゲットが流行に敏感な若者や観光客なら、「横浜駅エリア」や「みなとみらいエリア」が候補になります。
- ターゲットが近隣で働くオフィスワーカーなら、「関内エリア」や「新横浜エリア」が有力です。
- ターゲットが地域に根差した地元住民なら、主要な商業エリアから少し離れた「東急東横線沿線の住宅街(日吉、綱島など)」や「相鉄線沿線の駅周辺」なども視野に入ってきます。
エリアを絞り込む際には、地図上での検討だけでなく、必ず自分の足で現地を歩き、街の雰囲気や人々の流れを肌で感じることが重要です。
- 時間帯を変えて訪れる: 平日の昼、夜、休日の昼、夜では、街の表情や行き交う人々が全く異なります。ターゲット顧客が最も活動する時間帯に、そのエリアがどのような状況かを確認しましょう。
- 人の流れを観察する: 駅のどの出口から人が流れてくるのか、大通りと路地裏では人の流れがどう違うのか。人々はどこから来てどこへ向かうのかを観察します。
- 周辺施設を確認する: 集客の核となる施設(駅、商業施設、オフィスビル、大学、大規模マンションなど)は何か。逆に、競合となりうる店舗はどこにあるかを確認します。
このステップで、「このエリアなら自分の店が繁盛するイメージが湧く」という確信を持てる場所をいくつか候補として挙げることが目標です。
③ 物件の種類(居抜き・スケルトン)を選ぶ
出店したいエリアの候補が決まったら、次は物件の種類を選びます。店舗物件は、大きく「居抜き物件」と「スケルトン物件」の2種類に分けられます。それぞれにメリット・デメリットがあり、どちらを選ぶかによって初期費用や開業までのスケジュールが大きく変わります。
- 居抜き物件: 前のテナントが使用していた内装や設備(厨房設備、空調、トイレなど)がそのまま残された状態で貸し出される物件。
- メリット: 内装工事や設備導入の費用を大幅に抑えられる。開業までの準備期間を短縮できる。
- デメリット: レイアウトの自由度が低い。設備の老朽化リスクがある。前の店のイメージが残ってしまうことがある。
- スケルトン物件: 建物の構造躯体(床・壁・天井)がコンクリート打ちっ放しなど、内装が何もない状態で貸し出される物件。
- メリット: ゼロから自由に店舗デザインができる。新品の設備を導入できる。オリジナリティを最大限に発揮できる。
- デメリット: 内装工事費や設備費が高額になる。デザインや工事に時間がかかり、開業までの期間が長くなる。
初期費用をできるだけ抑えたい、早く開業したいという場合は居抜き物件が有力な選択肢になります。特に、前のテナントが同業種(例:ラーメン店の跡地にラーメン店)であれば、既存の設備をほぼそのまま活用できる可能性があり、非常に効率的です。
一方、店舗のコンセプトや世界観を徹底的に追求したい、独自のレイアウトにこだわりたいという場合はスケルトン物件が向いています。資金と時間に余裕があるなら、理想の店舗を一から作り上げる楽しみがあります。
どちらが自社の事業計画に適しているかを判断し、物件探しの条件に加えましょう。
④ 物件情報を集めて比較検討する
エリアと物件の種類が決まったら、いよいよ具体的な物件情報を集めていきます。情報収集の方法は主に以下の通りです。
- 不動産情報ポータルサイト: 「SUUMO(スーモ)」や「at home(アットホーム)」といった総合サイトのほか、「店舗市場」「居抜き市場」といった事業用物件の専門サイトを活用します。希望のエリア、賃料、広さ、物件の種類などの条件で絞り込み検索ができます。
- 地元の不動産会社: ポータルサイトに掲載されていない「未公開物件」の情報を持っていることがあります。希望エリアに強い不動産会社を訪ね、直接相談してみるのも有効な手段です。熱意を伝えることで、良い物件を優先的に紹介してもらえる可能性もあります。
- 自分の足で探す: 希望エリアを歩き回り、「テナント募集」の貼り紙が出ている物件を探します。意外な掘り出し物が見つかることもあります。
集めた情報は、スプレッドシートなどに一覧でまとめることをお勧めします。
比較検討リストの項目例:
- 物件名、住所
- 賃料、共益費
- 保証金、礼金
- 広さ(㎡、坪)
- 坪単価
- 階層(1階路面、空中階など)
- 物件種別(居抜き、スケルトン)
- 駅からの距離
- 築年数
- 備考(飲食可否、設備状況など)
複数の物件を客観的な指標で比較することで、それぞれの長所・短所が明確になり、冷静な判断がしやすくなります。
⑤ 内見で物件の状態を隅々までチェックする
気になる物件が見つかったら、必ず内見(現地見学)を申し込みます。図面や写真だけではわからない情報が、現地には溢れています。 内見は、契約を結ぶ前の最後の、そして最も重要な確認作業です。
内見の際は、メジャーやメモ帳、カメラ(スマホで可)を持参し、以下のポイントを隅々までチェックしましょう。
- 寸法と形状: 天井の高さ、間口の広さ、柱の位置や大きさなど、レイアウトに影響する部分を実測します。図面と異なる場合もあるため、必ず確認が必要です。
- 設備の状態: (居抜きの場合)厨房設備、空調、給排水、排気ダクトなどが正常に動作するか、古すぎないか。電気・ガス・水道の容量は十分か。
- 内外装の劣化具合: 壁のシミ、床の傷み、雨漏りの跡などがないか。修繕が必要な場合、費用は誰が負担するのか(貸主か借主か)も確認します。
- 周辺環境: 昼と夜、平日と休日で、周辺の人通りや騒音、街の雰囲気はどうか。近隣にどのような店舗や住民がいるか。悪臭や害虫の問題はないか。
- 搬入経路: 商品や機材を運び込むための通路やドアの広さは十分か。エレベーターの有無や大きさも確認します。
- 視認性: 実際に店の前に立ち、通りからの見えやすさを確認します。街路樹や電柱、看板などが視界を遮っていないか。
可能であれば、内装業者やデザイナーなど、専門家と一緒に内見するのが理想です。プロの視点から、素人では気づかない問題点や、その物件のポテンシャルを指摘してもらえます。
複数の物件を内見し、ステップ④で作成した比較検討リストと照らし合わせながら、総合的に判断して最終的な候補を絞り込みます。
契約前に要確認!店舗物件選びで失敗しないための注意点

理想の物件が見つかり、申し込みをしようという段階になったら、契約前に最終確認すべき重要なチェックポイントがいくつかあります。ここで見落としがあると、開業後に「こんなはずではなかった」というトラブルに発展しかねません。賃貸借契約書に署名・捺印する前に、必ず以下の点を確認し、不明な点は不動産会社や貸主にはっきりと質問しましょう。
業態に合った物件か(用途地域・飲食可否など)
まず最も基本的なこととして、その物件で計画している事業を営業できるかどうかを確認する必要があります。これには、法律や建物のルールが関わってきます。
- 用途地域: 都市計画法により、地域ごとに建てられる建物の種類や用途が定められています。これを「用途地域」といいます。例えば、「第一種低層住居専用地域」では原則として店舗の営業はできません。「商業地域」や「近隣商業地域」であれば、ほとんどの業態の店舗を開業できます。不動産会社に、検討中の物件がどの用途地域に属しているか、そして計画している業態が許可されるかを必ず確認しましょう。
- 飲食店の可否(重飲食・軽飲食): 特に飲食店を開業する場合、この確認は必須です。物件によっては「飲食不可」であったり、「軽飲食(火をあまり使わないカフェなど)は可、重飲食(煙や臭いが多く出る焼肉、中華など)は不可」といった制限が設けられていることがあります。これは、建物の排気設備や構造、他のテナントへの影響などが理由です。契約書や重要事項説明書に記載されているはずですが、口頭でも念入りに確認することが重要です。
- その他法令: 深夜0時以降に酒類を提供する場合は、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)に基づく許可が必要です。物件の場所や構造がその要件を満たしているか、事前に警察署に相談する必要があります。また、店舗の構造や設備は、建築基準法や消防法に適合していなければなりません。内装工事を行う際は、これらの法令を遵守した設計が求められます。
これらの制限を知らずに契約してしまうと、最悪の場合、開業許可が下りずに営業できないという事態に陥ります。
設備・インフラ(電気・ガス・水道・排気)の容量
業態によっては、大量の電気やガス、水を使用します。物件に引き込まれているインフラの容量が、事業に必要な量を満たしているかを確認することは極めて重要です。
- 電気容量: 使用する厨房機器や空調、照明などの総ワット数を計算し、物件の電気容量(アンペア数)で足りるかを確認します。容量が不足している場合、増設工事が必要になりますが、建物全体の容量に上限がある場合は増設できないこともあります。工事費用は借主負担となるのが一般的で、高額になるケースもあります。
- ガス: 都市ガスかプロパンガスかを確認します。ガスの口径(太さ)も重要で、火力の強い厨房機器を使う場合は、十分な太さが必要です。ガス管の増設や引き込み工事も、費用と時間がかかります。
- 給排水設備: 給水管の口径(水量)と、排水管の口径および勾配を確認します。特に飲食店では、グリストラップ(油脂分離阻集器)の設置が義務付けられている場合が多く、設置スペースがあるか、設置可能かを確認する必要があります。美容室であれば、シャンプー台の設置場所に給排水設備があるかが重要です。
- 排気設備: 重飲食を行う場合、煙や臭いを外部に排出するための強力な排気ダクトが必要です。ダクトが屋上まで伸びているか、設置するスペースはあるか、近隣に迷惑がかからない排気口の位置か、などを確認します。ダクトの新設工事は特に費用が高額になりがちです。
これらのインフラ設備は、後から変更するのが難しい、あるいは非常にコストがかかる部分です。 契約前に、内装業者などの専門家にも見てもらい、計画している営業に支障がないかを判断してもらうのが賢明です。
周辺環境と競合店の調査
物件そのものだけでなく、その周辺環境を改めて調査することも忘れてはなりません。
- 商圏調査: 自分の店舗の顧客となりうる人々が、どの範囲にどのくらい住んでいるか、あるいは働いているか(商圏)を分析します。昼間人口と夜間人口の差、世帯構成、年齢層などをデータで確認することも有効です。
- 競合店の調査: 周辺にどのような競合店があるかをリストアップします。
- 直接的な競合: 同じ業態の店舗(例:ラーメン店に対する他のラーメン店)。価格帯、メニュー、客層、繁盛具合などを調査し、自店がどのように差別化できるかを考えます。
- 間接的な競合: 業態は違うが顧客を奪い合う可能性のある店舗(例:カフェに対するコンビニのイートインスペース)。
競合が多すぎるのは厳しい戦いになりますが、逆に一軒もない場合は、そのエリアにそもそも需要がない可能性も考えられます。
- 周辺の将来性: 物件の周辺で、大規模な再開発計画や大型マンションの建設計画、新駅の設置計画などはないかを確認します。将来的に人流が増える見込みがあれば、それは大きなプラス材料になります。逆に、大型の競合施設ができる計画があれば、注意が必要です。自治体の都市計画情報などで確認できます。
契約内容(契約期間・更新料・解約予告)
賃貸借契約書の内容は、専門用語も多く難解ですが、隅々まで目を通し、理解できない部分は必ず質問しましょう。特に重要なのは以下の項目です。
- 契約の種類: 「普通借家契約」か「定期借家契約」かを確認します。
- 普通借家契約: 契約期間が満了しても、借主が希望すれば原則として契約を更新できます。貸主側からの正当な事由がない限り、立ち退きを求められることはなく、安定して長く営業したい場合に有利です。
- 定期借家契約: 契約期間が満了すると、更新されることなく契約が確定的に終了します。再契約できる場合もありますが、貸主の合意が必要です。期間が定められているため、将来的な立ち退きリスクがあります。その分、賃料が相場より安く設定されていることもあります。
- 契約期間と更新料: 契約期間は何年か。更新は可能か。更新する際の更新料はいくらか(通常は賃料の1ヶ月分程度)。
- 解約予告期間と違約金: やむを得ず契約期間の途中で解約する場合、何ヶ月前に予告する必要があるか(通常3~6ヶ月)。また、解約時に違約金(償却金として保証金の一部を差し引かれるなど)が発生するかどうか、その条件は何かを確認します。
諸費用(保証金・礼金・仲介手数料など)の内訳
月々の賃料以外に、契約時に支払う「初期費用」があります。その内訳を正確に把握し、資金計画に組み込んでおく必要があります。
- 保証金(または敷金): 賃料の滞納や物件の破損などに備えて、貸主に預けるお金です。退去時に、原状回復費用や償却費を差し引いて返還されます。相場は賃料の6~12ヶ月分と、住居に比べて高額になる傾向があります。
- 償却(または敷引): 保証金のうち、契約終了時に返還されない金額のことです。「解約時に保証金の20%を償却する」といった特約が定められている場合があります。契約時に償却の有無と割合を必ず確認しましょう。
- 礼金: 貸主に対して、お礼として支払うお金です。返還はされません。相場は賃料の1~2ヶ月分です。
- 仲介手数料: 物件を紹介してくれた不動産会社に支払う手数料です。法律上の上限は賃料の1ヶ月分(+消費税)です。
- 前払賃料: 入居する月の賃料を前払いで支払います。月の途中で入居する場合は、日割り計算されます。
- 造作譲渡料: (居抜き物件の場合)前のテナントから内装や設備を譲り受ける対価として支払うお金です。金額は交渉次第ですが、設備の価値に見合っているかを慎重に判断する必要があります。
これらの諸費用を合計すると、賃料の10ヶ月分以上になることも珍しくありません。 契約直前になって資金が足りないという事態を避けるためにも、事前に総額をしっかりと把握しておくことが不可欠です。
初期費用を抑えるカギ!居抜き物件とスケルトン物件の比較
店舗開業における最大のハードルの一つが、高額な初期費用です。特に、内装工事や設備投資にかかる費用は、数百万円から一千万円を超えることもあり、多くの開業者の頭を悩ませます。この初期費用を大きく左右するのが、「居抜き物件」を選ぶか、「スケルトン物件」を選ぶかという選択です。ここでは、それぞれのメリット・デメリットを詳しく比較し、どちらが自分の事業に適しているかを判断するための指針を示します。
居抜き物件のメリットとデメリット
居抜き物件とは、前のテナントが使用していた内装・設備・什器などがそのまま残された状態で売りに出されたり、貸し出されたりする物件のことです。特に飲食店や美容室、クリニックなどで多く見られます。
| 項目 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 費用面 | 内装工事費や設備購入費を大幅に削減できる。 これが最大のメリット。 | 設備の所有権を買い取るための「造作譲渡料」が発生する場合がある。 |
| 時間面 | 工事期間が不要、または短期間で済むため、開業までの時間を大幅に短縮できる。 | 設備の老朽化が進んでいる場合、修理や交換に予期せぬ費用と時間がかかるリスクがある。 |
| デザイン・レイアウト面 | 必要なものが一通り揃っているため、すぐに営業を開始しやすい。 | レイアウトの自由度が低い。 既存の設計が自分のコンセプトと合わない場合、変更に多額の費用がかかることも。 |
| その他 | 前の店が繁盛店だった場合、その顧客を一部引き継げる可能性がある。 | 前の店の評判が悪かった場合、そのマイナスイメージを引きずってしまうリスクがある。 |
メリットの深掘り
居抜き物件の最大の魅力は、なんといっても圧倒的なコスト削減効果です。例えば、飲食店をスケルトンから開業する場合、厨房設備(コンロ、シンク、冷蔵庫、フライヤーなど)、空調設備、排気ダクト、給排水工事、内装工事などで、1,000万円以上の費用がかかることも珍しくありません。居抜き物件でこれらの設備が活用できれば、数百万円単位での初期費用削減に繋がります。この削減できた資金を、運転資金や広告宣伝費に回すことができ、事業の安定性を高めることができます。
また、開業準備期間の短縮も大きなメリットです。スケルトンからの工事は、設計から施工完了まで数ヶ月を要しますが、居抜きであれば、清掃や一部の手直しだけで、早ければ数週間でオープンすることも可能です。早く営業を開始できる分、家賃の空払い期間(売上がないのに家賃だけが発生する期間)を短くできるという利点もあります。
デメリットへの対策
一方で、デメリットも軽視できません。特に注意すべきは設備のコンディションです。内見時に動作確認をしても、実際に高負荷で使い始めるとすぐに故障するケースもあります。リース品が残置されていることもあり、その所有権や契約関係は明確にしておく必要があります。「造作譲渡契約書」を結ぶ際には、譲渡される設備の一覧や状態、故障時の責任の所在などを細かく記載し、トラブルを未然に防ぐことが重要です。
また、レイアウトの制約も大きな課題です。動線が悪かったり、客席の配置が理想と異なったりしても、大幅な変更はスケルトンから作るのと変わらない費用がかかることも。「安物買いの銭失い」にならないよう、自分の事業コンセプトと、その居抜き物件のレイアウトが本当にマッチしているかを冷静に判断する必要があります。
スケルトン物件のメリットとデメリット
スケルトン物件とは、建物の骨格(構造体)のみの状態で、内装や設備が何もない物件を指します。コンクリート打ちっ放しの状態であることが多いです。
| 項目 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 費用面 | 「造作譲渡料」は発生しない。自分の予算に合わせて設備を選べる。 | 内装工事費、設備購入費など、初期費用が非常に高額になる。 |
| 時間面 | 自分のペースで計画的に工事を進められる。 | 設計から施工まで時間がかかり、開業までの期間が長くなる。 家賃の空払い期間も長くなる傾向がある。 |
| デザイン・レイアウト面 | レイアウトの自由度が非常に高い。 ゼロから理想の空間を創造できる。 | デザインや設計に関する専門知識が必要になる。業者選定も重要。 |
| その他 | 完全にオリジナルの店舗を作れるため、ブランドイメージを構築しやすい。 | 全ての設備を自分で管理する必要がある。 |
メリットの深掘り
スケルトン物件の最大の魅力は、完全な自由設計が可能な点です。店舗のコンセプトや世界観、ブランドイメージを細部に至るまで追求したい事業者にとっては、これ以上ない選択肢と言えます。お客様が過ごす空間の雰囲気、スタッフが働く動線の効率性、提供するサービスに最適化されたレイアウトなど、すべてをゼロから作り上げることができます。
これにより、他店との強力な差別化を図ることが可能になります。独自の空間体験は、顧客満足度を高め、リピーター獲得に繋がる重要な要素です。また、すべての設備を新品で導入するため、当面は故障のリスクが低く、最新の省エネ設備を選ぶことで長期的なランニングコストを抑えることも可能です。
デメリットへの対策
最大のネックは、やはり高額な初期費用です。自己資金だけで賄うのは難しい場合が多く、融資を前提とした綿密な資金計画が不可欠です。複数の内装業者から相見積もりを取り、コストとクオリティのバランスを慎重に見極める必要があります。
また、開業までの期間が長期化することも覚悟しなければなりません。設計プランの確定、各種許認可の申請、内装工事、設備搬入と、オープンまでにやるべきことが山積みです。スケジュール管理を徹底し、遅延が発生する可能性も考慮に入れた上で、運転資金には十分な余裕を持たせておくことが重要です。
どちらの物件が自分の事業に向いているか
では、最終的にどちらを選べば良いのでしょうか。これは、あなたの事業計画、資金力、そして何を重視するかによって決まります。
- 居抜き物件が向いている人・事業
- とにかく初期費用を抑えたい人
- できるだけ早く開業して収益を上げ始めたい人
- 前のテナントと同業種、または近い業態で開業する人 (例: カフェの跡地でカフェを開業)
- 内装やレイアウトに強いこだわりがない、または既存のものを活かすアイデアがある人
- スケルトン物件が向いている人・事業
- 資金に比較的余裕がある人
- 店舗のコンセプトやデザイン、世界観を徹底的に追求したい人
- 独自のレイアウトや最新設備で、他店との差別化を図りたい人
- 長期的な視点で、理想の店舗を育てていきたい人
最終的な判断は、メリット・デメリットを天秤にかけ、自身の事業計画と照らし合わせて行う必要があります。 例えば、コンセプト重視の事業でも、理想に近いレイアウトの居抜き物件が見つかれば、コストを抑えつつ理想を実現できるかもしれません。逆に、コストを抑えたいと思っていても、希望エリアに良い居抜き物件がなく、結果的にスケルトンを選ばざるを得ない場合もあります。
柔軟な視点を持ちながら、両方の可能性を視野に入れて物件探しを進めることが、最良の選択に繋がるでしょう。
横浜の店舗物件探しに役立つおすすめサイト6選
効率的に理想の店舗物件を見つけるためには、信頼できる情報源を活用することが不可欠です。現在では、インターネット上に数多くの不動産情報サイトが存在し、自宅にいながら豊富な物件情報を比較検討できます。ここでは、横浜エリアの店舗物件探しに特に役立つ、代表的なポータルサイトや専門サイトを6つ厳選してご紹介します。それぞれの特徴を理解し、目的に合わせて使い分けることが成功の鍵です。
① at home(アットホーム)
「at home(アットホーム)」は、全国の不動産情報を網羅する、日本最大級の不動産情報ポータルサイトの一つです。賃貸・売買、住居用・事業用を問わず、非常に多くの物件情報が掲載されています。
- 特徴:
- 圧倒的な情報量: 全国規模のネットワークを活かし、横浜市内の物件も豊富に掲載されています。主要な商業エリアから郊外まで、幅広い選択肢の中から探すことができます。
- 詳細な検索条件: 「事業用」のカテゴリから、「貸店舗」「貸事務所」「貸店舗・事務所」などを選択できます。さらに、「飲食店可」「1階」「駅徒歩5分以内」「駐車場あり」といった詳細なこだわり条件で絞り込むことができ、希望に近い物件を効率的に探せます。
- 地域に密着した情報: 全国の不動産会社が加盟しているため、大手だけでなく、その地域に根差した中小の不動産会社が扱う物件情報も見つかる可能性があります。
- こんな人におすすめ:
- まずは幅広く多くの物件情報を見て、相場観を養いたいと考えている方。
- 特定の業態(飲食店、美容室など)だけでなく、様々な可能性を検討したい方。
(参照:アットホーム株式会社 公式サイト)
② SUUMO(スーモ)
「SUUMO(スーモ)」は、リクルートが運営する知名度No.1の不動産情報サイトです。緑色のキャラクター「スーモ」でお馴染みで、使いやすいインターフェースと豊富なコンテンツが魅力です。
- 特徴:
- 優れた操作性: 直感的でわかりやすいデザインになっており、スマホアプリの使い勝手も良いため、隙間時間に手軽に物件探しができます。
- 豊富な写真と情報: 物件の外観や内装の写真が多く掲載されている傾向があり、現地のイメージを掴みやすいです。パノラマ画像や動画で紹介されている物件もあります。
- お役立ちコンテンツ: 住まいや不動産に関するコラムやノウハウ記事が充実しており、物件探しだけでなく、開業準備の知識を得るのにも役立ちます。
- こんな人におすすめ:
- スマホ中心で物件探しをしたい方。
- 写真やビジュアル情報で、物件の雰囲気を重視したい方。
(参照:株式会社リクルート 公式サイト)
③ ケン・コーポレーション
「ケン・コーポレーション」は、都心部を中心に、高級賃貸住宅や事業用不動産を専門に扱う不動産会社です。自社サイトでも豊富な物件情報を公開しています。
- 特徴:
- 事業用不動産に特化: 賃貸オフィスや店舗、SOHOなど、事業用物件の取り扱いに強みを持っています。専門のコンサルタントによるサポートも期待できます。
- 質の高い物件情報: 特に都心部や横浜の主要エリアにおける、グレードの高いオフィスビルや商業施設の物件情報が豊富です。
- 横浜エリアにも強い: 本社は東京ですが、横浜にも支店を構えており、横浜駅周辺やみなとみらいエリアなどの人気商業地の物件も数多く扱っています。
- こんな人におすすめ:
- みなとみらいや横浜駅周辺など、一等地での出店を検討している方。
- オフィス兼店舗や、ある程度の規模・グレード感のある物件を探している方。
(参照:株式会社ケン・コーポレーション 公式サイト)
④ 店舗市場
「店舗市場」は、その名の通り、店舗物件に特化した専門の不動産情報サイトです。飲食店や物販、サービス業など、あらゆる業態の店舗物件情報がまとめられています。
- 特徴:
- 店舗物件に特化: 掲載されているのは事業用の店舗物件のみなので、住居用物件などが混ざらず、効率的に探すことができます。
- 居抜き物件が豊富: 「居抜き物件」のカテゴリが充実しており、初期費用を抑えたい事業者にとっては非常に有用なサイトです。造作譲渡料の有無や金額も明記されていることが多いです。
- 業種別の検索: 「ラーメン・中華」「カフェ」「居酒屋・ダイニングバー」「美容室・エステ」など、希望の業種から物件を検索できる機能があり、非常に便利です。
- こんな人におすすめ:
- 飲食店や美容室など、特定の業種での開業を考えている方。
- 居抜き物件を重点的に探したい方。
(参照:株式会社店舗市場 公式サイト)
⑤ 居抜き市場
「居抜き市場」は、居抜き物件の売買・賃貸に特化したマッチングサイトです。店舗を閉店したい事業者(売り手)と、これから開業したい事業者(買い手)を直接繋ぐプラットフォームとしての役割を担っています。
- 特徴:
- 居抜き物件に完全特化: サイトに掲載されているすべての物件が居抜きです。内装や設備の写真が豊富で、どのような状態で引き継げるかを詳しく確認できます。
- 造作譲渡のマッチング: 厨房設備や什器などの「造作」を、売り手と買い手の間で適正な価格で取引できるようサポートしています。
- 非公開物件の情報: Webサイトに公開されていない非公開物件の情報も多数保有しており、会員登録することで紹介を受けられる場合があります。
- こんな人におすすめ:
- 初期費用を最大限に抑えるため、居抜き物件一択で探している方。
- 同業種の店舗跡地を探しており、設備を有効活用したいと考えている方。
(参照:株式会社居抜き市場 公式サイト)
⑥ テンポバックス
「テンポバックス」は、特に飲食店の出店・退店支援に強みを持つ不動産サービスです。物件仲介だけでなく、事業計画の相談から資金調達、内装デザイン、M&Aまで、幅広いサポートを提供しています。
- 特徴:
- 飲食店に特化: 飲食店の開業・経営に関する深いノウハウを持っており、物件探しだけでなく、事業全体のコンサルティングを受けることができます。
- ワンストップサービス: 物件探しから内装工事、什器の手配、販促支援まで、開業に必要な様々なサービスを一つの窓口で相談できるのが大きな魅力です。
- M&A・事業譲渡: 閉店する店舗を物件だけでなく事業ごと引き継ぐ「M&A」や「事業譲渡」の案件も扱っており、既存の顧客やブランドを活かしてスタートしたい場合に有効です。
- こんな人におすすめ:
- 初めて飲食店を開業するため、物件探し以外にも専門的なサポートを求めている方。
- 出店だけでなく、将来的な売却(M&A)なども視野に入れている方。
これらのサイトを複数活用し、それぞれの強みを活かしながら情報を集めることで、より多くの選択肢の中から、自身の事業に最適な物件を見つけ出すことができるでしょう。
開業資金の負担を軽減!横浜で活用できる補助金・融資制度

店舗開業には、物件取得費、内装工事費、設備費、当面の運転資金など、多額の資金が必要です。自己資金だけでは賄うのが難しい場合も少なくありません。しかし、国や地方自治体は、新たなビジネスに挑戦する人々を支援するための様々な補助金や融資制度を用意しています。ここでは、横浜市で店舗を開業する際に活用できる可能性のある、代表的な制度をご紹介します。これらの制度をうまく活用することで、資金面の負担を軽減し、より安定したスタートを切ることが可能になります。
横浜市の創業支援融資
横浜市が、市内で新たに事業を始める方や創業後間もない方を対象に設けている融資制度です。市の制度であるため、横浜市民や横浜市内で創業する方が対象となり、比較的利用しやすいのが特徴です。
- 制度の概要:
横浜市、取扱金融機関、横浜市信用保証協会の三者が連携して提供する融資制度です。創業者が必要とする事業資金を、低利で借り入れることができます。横浜市が利子の一部を負担(利子補給)してくれるため、創業者本人が支払う金利が低く抑えられるのが最大のメリットです。 - 対象者:
- 事業を営んでいない個人で、1ヶ月以内に新たに横浜市内で個人として創業するか、2ヶ月以内に横浜市内に会社を設立して創業する具体的な計画を持つ方。
- 横浜市内で創業してから5年未満の中小企業者(個人・会社)。
上記のいずれかに該当し、横浜市の「特定創業支援等事業」による支援を受け、証明書の発行を受けた方などが対象となります。
- 融資条件(主なもの):
- 融資限度額: 3,500万円
- 融資期間: 運転資金は7年以内、設備資金は10年以内
- 創業者金利(本人負担利率): 年1.4%以内(令和6年度時点)など、市の利子補給により変動します。
- 担保・保証人: 原則として、法人の場合は代表者が連帯保証人となり、個人の場合は不要です。ただし、審査内容によっては必要となる場合があります。
- 申込方法:
まずは、横浜市が指定する取扱金融機関(銀行、信用金庫など)に相談することから始まります。事業計画書などを準備し、金融機関と横浜市信用保証協会の審査を受ける必要があります。
この制度を利用するには、しっかりとした事業計画の策定が不可欠です。 詳細は必ず横浜市経済局の公式サイトで最新情報を確認してください。
(参照:横浜市経済局「横浜市中小企業融資制度のご案内」)
国の小規模事業者持続化補助金
「小規模事業者持続化補助金」は、日本商工会議所や全国商工会連合会が窓口となり、国の委託を受けて実施している補助金制度です。小規模事業者が、地域の商工会議所や商工会の助言等を受けて経営計画を作成し、その計画に沿って行う販路開拓等の取り組みを支援するものです。
- 制度の概要:
店舗の賃料や内装工事費といった「ハコモノ」への投資に直接使えるわけではありませんが、開業後の販路開拓や生産性向上のための経費の一部が補助されます。例えば、以下のような経費が対象となります。- 広報費: 新店舗のオープンを知らせるためのチラシ作成・配布、ウェブサイト制作、Web広告の出稿など。
- 開発費: 新しい商品の試作開発、新たなサービスメニューの開発など。
- 機械装置等費: 生産性向上に繋がる設備の購入費用(例:POSレジシステム、調理効率を上げる厨房機器など)。
- 対象者:
商業・サービス業の場合、常時使用する従業員の数が5人以下の会社および個人事業主(「小規模事業者」)が対象です。 - 補助上限額・補助率:
補助金の枠(通常枠、賃金引上枠、卒業枠など)によって異なりますが、通常枠の場合、補助上限は50万円、補助率は対象経費の3分の2というのが一般的です。公募回ごとに要件や上限額が変更されることがあるため、注意が必要です。 - 申込方法:
管轄の商工会議所または商工会に相談し、事業支援計画書の作成支援を受け、申請書類を提出します。公募期間が定められており、年に数回募集が行われます。
開業直後の集客や宣伝は非常に重要です。この補助金を活用して、効果的なスタートダッシュを切るための費用を賄うことができます。
(参照:日本商工会議所 小規模事業者持続化補助金 公式サイト)
その他利用できる可能性のある制度
上記以外にも、創業者を支援する制度は存在します。
- 日本政策金融公庫の「新規開業資金」:
政府系の金融機関である日本政策金融公庫が提供する、創業者向けの代表的な融資制度です。全国で利用可能で、無担保・無保証人で利用できる制度もあり、多くの創業者に活用されています。金利も民間の金融機関に比べて低めに設定されていることが多いです。横浜市の制度と併用して検討する価値があります。
(参照:日本政策金融公庫 公式サイト) - 各業界団体の助成金など:
特定の業種によっては、業界団体が独自の助成金や支援制度を設けている場合があります。自身が開業する業界の団体について調べてみるのも良いでしょう。
これらの補助金や融資制度は、それぞれに目的、対象者、申請期間、必要書類などが異なります。また、制度内容は頻繁に改定されます。利用を検討する際は、必ず公式サイトで最新の公募要領を確認し、不明な点は担当窓口に直接問い合わせることが不可欠です。 専門家の支援を受けながら、自社の事業計画に合った制度を賢く活用し、資金調達を成功させましょう。
横浜の店舗物件探しに関するよくある質問

ここまで横浜での店舗物件探しについて詳しく解説してきましたが、まだ個別の疑問や不安が残っている方もいるかもしれません。ここでは、店舗開業を目指す方から特によく寄せられる質問とその回答をまとめました。
飲食店を開業するのにおすすめのエリアはどこですか?
これは非常によくある質問ですが、「このエリアが絶対におすすめ」という一つの正解はありません。 最適なエリアは、開業したい飲食店の「業態」と「ターゲット顧客」によって大きく異なるからです。
以下に、業態別の考え方の例を挙げます。
- 高級レストラン・コース料理専門店:
特別な日の利用が想定されるため、日常的な人通りよりも「雰囲気」や「ブランドイメージ」が重要になります。みなとみらいの夜景が見える高層階や、元町の落ち着いた通り、馬車道の歴史的な街並みなどが候補となるでしょう。客単価が高いため、賃料が高くても採算が合う可能性があります。 - 大衆的な居酒屋・ラーメン店:
仕事帰りの一杯や普段の食事での利用が中心となるため、とにかく「集客力」と「アクセスの良さ」が鍵となります。横浜駅西口の飲食店街や、関内・伊勢佐木町エリア、新横浜の駅周辺など、ビジネスパーソンや多くの人が集まるエリアが適しています。競合が多いですが、その分需要も大きい市場です。 - おしゃれなカフェ・ベーカリー:
ターゲット層によってエリア選択が変わります。流行に敏感な若者や観光客を狙うなら「横浜駅周辺の商業施設内」や「元町・中華街エリアの路地裏」などが考えられます。一方、地域住民の憩いの場を目指すなら、あえて中心部を離れ、「東急東横線沿線(日吉、綱島、白楽など)」や「市営地下鉄沿線の住宅街」で、落ち着いた立地を探すのも良い戦略です。
重要なのは、まず自分の店のコンセプトを固め、そのコンセプトに共感してくれるお客様がどこにいるかを考えることです。 その上で、各エリアの特徴と照らし合わせ、現地調査を行って最終的に判断することをお勧めします。
居抜き物件を探すメリットは何ですか?
居抜き物件を探す最大のメリットは、大きく分けて2つあります。
- 初期費用の大幅な削減: これが最も大きなメリットです。スケルトン物件から店舗を作ると、内装工事費、厨房や空調などの設備購入費、給排水・ガス・電気の工事費などで、数百万円から一千万円以上の費用がかかります。居抜き物件では、これらの内装や設備をそのまま、あるいは安価な造作譲渡料で引き継げるため、開業資金を劇的に抑えることができます。 浮いた資金を運転資金や広告宣伝費に回せるため、事業の立ち上がりが安定しやすくなります。
- 開業までの期間短縮: スケルトンからの工事は、設計に1ヶ月、工事に2〜3ヶ月といったように、長い準備期間が必要です。その間も家賃は発生するため(フリーレント期間がない場合)、売上がないままコストだけがかさみます。居抜き物件であれば、大規模な工事が不要なため、契約から数週間〜1ヶ月程度でオープンすることも可能です。これにより、家賃の空払い期間を最小限に抑え、いち早く収益を上げ始めることができます。
ただし、レイアウトの自由度が低い、設備が古い可能性があるといったデメリットも存在します。これらのメリット・デメリットを十分に理解した上で、自分の事業計画に合っているかを慎重に判断することが重要です。
駐車場付きの物件を探すにはどうすれば良いですか?
自動車での来店が見込まれる業態(郊外のファミリー向けレストラン、大型商品を扱う物販店など)の場合、駐車場の有無は死活問題となります。駐車場付きの物件を探す方法はいくつかあります。
- 不動産情報サイトの条件検索: 「at home」や「SUUMO」などのポータルサイトでは、検索条件で「駐車場あり」「駐車場付き」といった項目にチェックを入れて絞り込むのが最も効率的です。
- エリアで探す: 一般的に、横浜駅周辺やみなとみらいといった都心部では、専用駐車場付きの店舗物件は非常に希少で高額です。駐車場を必須条件とする場合は、都心部から少し離れた郊外や、幹線道路沿いの「ロードサイド店舗」を中心に探すと見つかりやすくなります。
- 近隣の月極・コインパーキングを確認: 物件自体に駐車場がなくても、すぐ隣や向かいに月極駐車場やコインパーキングがあれば、それを実質的な顧客用駐車場として活用できる場合があります。内見の際には、物件だけでなく、周辺の駐車場の位置、台数、料金体系もしっかりと確認しましょう。駐車料金の割引サービスなどを提供することで、顧客の利便性を高めることができます。
- 不動産会社に直接相談: 希望エリアと駐車場が必要な旨を地元の不動産会社に伝えておけば、条件に合う物件が出た際に優先的に紹介してくれる可能性があります。
美容室やサロン向けの物件を探す際のポイントは?
美容室やエステサロン、ネイルサロンなどのビューティー系サロンは、飲食店とはまた違った視点での物件探しが求められます。
- 空中階も積極的に検討する: 美容室やサロンは、多くの場合、お客様が予約をしてから来店する「目的来店型」のビジネスです。そのため、不特定多数の目に触れる1階の路面店である必要性は、飲食店ほど高くありません。むしろ、2階以上の「空中階」は賃料が割安になるため、コストを抑える上で非常に有効な選択肢です。エレベーターの有無や、入り口の分かりやすさは重要になります。
- プライベート感を重視する: 特にエステサロンやリラクゼーションサロンでは、お客様がリラックスできる静かでプライベートな空間が求められます。大通りの喧騒から一本入った、落ち着いた環境の路地裏物件などがかえって好まれる場合もあります。
- 給排水設備の確認は必須: 美容室のシャンプー台や、エステサロンのシャワーなど、水回りの設備は生命線です。内見の際には、給水管・排水管の位置や容量を必ず確認しましょう。容量が足りない場合や、希望の場所に設備がない場合、増設工事に高額な費用がかかることがあります。内装業者に同行してもらい、専門的な視点でチェックしてもらうのが最も確実です。
- ターゲット層とのマッチング: 例えば、高価格帯のエイジングケアサロンであれば富裕層の多い住宅街、トレンドに敏感な若者向けのヘアサロンであれば横浜駅周辺や元町などが候補になります。自店のコンセプトと、そのエリアの住民層・来街者層がマッチしているかを見極めることが重要です。

